トランプ大統領が来日。2日間という短い滞在期間の中で、政府はどんな食事でもてなしたのか、気になるところです。
来日早々、「霞が関カントリークラブ」でのゴルフ会議を前にクラブハウスで提供されたのは、米国産アンガスビーフを使ったハンバーガー。東京・芝の「マンチズバーガーシャック」のオーナーシェフが作りました。“肉好きを120%満足させるMUNCH’S(やみつき)な一品”がコンセプトだけに、つなぎを一切使わず、塊から叩いた肉で作ったパテは、噛みしめると溢れだす肉汁がたまらないといいます。夕食は、鉄板焼きの高級店「銀座うかい亭」。ミシュランで星を得たこともある有名店で、最近はドラマ「ドクターX」のロケ地としても話題です。報道によるとメニューは、北海道産帆立て貝と白トリュフのサラダ、伊勢エビのソテー・ビスク仕立て、但馬牛のステーキです。翌日、迎賓館で行われた歓迎晩餐会では、松茸の茶碗蒸し、伊勢エビの酢の物など和の献立の中に、焼き物として佐賀牛のステーキが入っています。トランプ大統領の肉好きは有名。米国産牛肉と和牛のおもてなしは、米国産牛肉の良さも認めつつ、和牛の格別なおいしさを体験させて強硬な輸入圧力を回避するという目論見なのかな・・・などと、深読みしてしまいます。
因みに、トランプ大統領。ファストフードやスナック菓子もお好きなようで、選挙キャンペーン中の食事は、ドミノピザとケンタッキーフライドチキン、マクドナルドのビッグマックが定番だったとか。こと食においては、「アメリカ・ファースト」を実践しているようです。
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ベトナムでひとり鍋がブーム。食習慣に変化?
しゃぶしゃぶの食べ放題店「しゃぶしゃぶれたす」(東京・中目黒)は、1席に1つずつ小鍋を設置。複数人で来店しても同伴者を気にすることなく、ひとり鍋が楽しめるサービスを始めました。メニューは‟和豚のもちぶた”や‟熟成牛タン”、“霜降り黒毛和牛”などメインの肉を選ぶ4コース。だしは、カツオだしや豆乳だしなど8種類、調味料はごまだれやぽん酢など約30種類から選べます。
実はベトナムには、有名なひとり鍋専門の食べ放題店があります。店名は、「KICHI-KICHI」。しかも回転寿司よろしく、具材はベルトコンベアに乗せられて回っています。鍋のスープは、ベトナムではメジャーなきのこ、わさび、トムヤムクン、ちゃんこ(しょうゆ味)の4種類。回っている具材は、肉や魚、野菜やきのこなどの他、〆のインスタントラーメンも。お国柄でカエルもあります。
共働きが一般的なベトナムでは、家族揃っての夕食をとても大切にしています。家族の一体感を重視していて、皆、同じ料理をいただきながら、その日にあったことを話します。そんなベトナムにおいて、ひとり鍋は受け入れられるとは思えないスタイルです。が、ちょっとしたブームになっているのは、提供スタイルの珍しさと、好みに合わせてカスタマイズできる点、そして何よりも、ベトナム人が鍋好きだということが大きいと推測されます。
日本において、鍋料理は家族でつつくものという観念が強くありました。ですから、個食化が進み小鍋ブームが到来したとき、私は強い違和感を覚えました。経済発展と共に、家族の在り方や食習慣が変化した例は、数多くあります。ベトナムのひとり鍋はブームで終わるのか、はたまた、個食化への始まりなのか。注目したいと思います。
販路に合わせた商品開発を
コンビニで売れている「サラダチキン」。セブンイレブンは、冷蔵の売り場で、「サラダチキン」と味の素のレトルトスープ「サラダチキンで作る参鶏湯」や「サラダチキンで作る濃厚ミネストローネ」を並べて販売。ちぎったサラダチキンとスープを器に入れてレンジで温めるだけで本格的な味わいが楽しめることを提案しています。2016年秋に試験販売したところ、並べて陳列した店は別々の売り場で販売していた店に比べてサラダチキン、レトルトスープともに売り上げが伸びたといいます。特にレトルトスープは常温売り場だけに置いた店に比べ、販売数量は12倍に。このほか、サラダチキンの棚の近くにカットサラダを陳列することも勧めています。
商品名に“サラダチキンで作る”というフレーズがあるがゆえの展開です。コンビニで売られているレトルトカレーやカップラーメンも、サラダチキンを加えてアップグレードさせる提案はできますが、店頭販促だけでは伝えづらいでしょう。商品名に“サラダチキンで作る”とあれば、お客様には分かりやすく、何より、店舗の協力も得やすいと思います。
スーパーマーケットは長らく、メニュー提案による組み合わせ販売を提案してきました。が、それがなかなか奏功しないのは、青果、鮮魚、精肉、日配など、部門の壁があるからです。温度帯の違うものは同じ場所に並べられないなど、制約もあります。コンビニの場合、店舗の裁量でいかようにも販促はできます。販路に合わせた商品開発がますます重要になっています。
小売、外食市場の人手不足。今が改革期
日本経済新聞社がまとめた2018年度採用状況調査の結果で、百貨店・スーパー、外食・その他サービスの分野で内定者の確保が進まなかったことが分かりました。
百貨店・スーパーでは計画を下回る企業が目立ち、ライフコーポレーションは17年実績比4割増となる230人の採用を予定していましたが、内定は214人でした。外食・その他サービスは、17年度実績に対して内定者数は3.6%増えましたが、計画値を14.3ポイント下回り、外食大手のコロワイドは内定者が75人と、計画の約半数にとどまりました。
一方、大学生を対象とした2018年就職希望企業ランキング(キャリスタ就活)で200位以内に入っている小売り・フードサービスの会社は、ニトリ(47位)、三越伊勢丹グループ(129位)、アマゾンジャパン(140位)のみ。小売り・フードサービスのみの企業に絞れば、スーパーではイオンリテールが、コンビニではローソンが上位に入りますが、外食企業はひとつもありません。
地方のスーパーでは、出店攻勢をかけたくても人手不足がブレーキをかけます。あるスーパーの社長は、レジ係を時給1500円で募集しても応募がないと嘆いていらっしゃいました。外食企業は長い間、パートの学生でも調理ができるように業務用食材を多用し、レシピの簡素化を図ってきました。そして今は、ベトナム人を積極的に採用しています。
スーパーではレジの無人化が、外食店では厨房内でのロボット化が進められています。必要は発明の母というように、困難は改革のチャンスです。
立ち食いの店で思ったこといろいろ
「いきなりステーキ」「次郎丸」「俺のだし」。最近行った、立ち食いの店です。
まずは「いきなりステーキ」。客の9割は男性です。ステーキ300gに山盛りのライスは当たり前という感じ。女性客がライスなしステーキのみのオーダーをしていて、イマドキ感満載です。特製ステーキソースは、濃い目の味付け。熱々の鉄皿で水分が蒸発するため終盤にはかなり濃くなり、ライスが進むこと。ここのステーキは日本食です。
「次郎丸」は、1切れ30円からオーダーできる立ち食い焼き肉店。内臓やカシラ(頭)など安い部位のみをオーダーし続けていれば安く上がりますが、A5等級などランクが付いたロースやカルビを挟み込むと、当然のことながら支払額はドンドン上がります。肉1枚1枚を懐具合と相談しながらオーダーするからか、焼き肉を食べているのに、なぜか寿司屋にいる気分になりました。
「俺のだし」は俺の株式会社の店。そば屋とおでん屋がありますが、行ったのはそば屋の方です。メニューは、“肉そば”“鶏そば”“鴨つけそば”など数種のみ。あれ? 「俺のだし」なのに、“かけそば”や“もりそば”といっただしがストレートに味わえるメニューがない・・・と思い伺ったところ、この店、旧店名は「俺のそば」。しかし同名の店がすでにあったため、「俺のだし」に変更したとか。それって、名が体を表していないよね・・・と思いながら、最もだしが利いていそうな“海苔胡麻もり”をオーダー。食べてびっくり。つけ汁にラー油が入っていました(笑)。
人気の商店街。活気があって店の種類が多いこと
地元住民に愛され続けている商店街。それが今、土日を中心に、他地域からの客やインバウンドなども訪れ、ちょっとした観光名所になっています。活気のある商店街として有名な、品川区にある戸越銀座商店街、北区の十条銀座商店街、江東区の砂町銀座商店街。人気のある商店街の共通項を、ネットの「商店街調査」を基に利用者の声から探ってみました。この調査は、週に1度以上商店街を利用する生活者100人に対して、商店街の「好きなところ」「改善して欲しいところ」などをアンケートしたものです。
「好きなところ」をまとめると、人気の商店街の条件は、活気があってお店の種類、数が多く、コストパフォーマンスのよいお店や美味しいお店があるということになります。好きな店、常連の店があると答える人も多く、個人経営の店があるということも重要なポイントのようです。一方、「改善して欲しいところ」は、30%の人が“アーケードがない”と答えてトップに。次は選択肢に“あてはまるものはない”が25%程度。“人が多くて混雑している”が続きます。雨除け、日差し除けの目的で、アーケードを求める声は多いようです。因みに、アーケードのある吉祥寺サンロード商店街の利用者に対するアンケートでは、60%の人が好きな理由に“アーケードがある”を挙げています。
おもしろいのは、「好きなところ」に“個人経営の店がある”という一方で、「改善して欲しいところ」に“チェーンのコーヒー店がない”という意見があったり、“活気がある”のは良しとしながらも“混雑している”のが嫌という意見もあったりするところ。多様な価値観で語られることは、商店街が誰にとっても魅力的である証拠です。
生徒と保護者が不信感を抱く学校給食とは
神奈川県大磯町の中学校の給食。食べ残しが多いという話題がテレビのワイドショーで取り上げられていました。大磯町で給食が始まったのは、2016年1月。校内に調理室がないため、弁当を配送してもらう形で始まりました。当初から、「冷たい」「味が薄い」「おいしくない」と生徒たちのクレームが多発。残す生徒も多く、残食率は全国平均の6.9%を大きく上回る26%。最も多かったのは“照り焼きハンバーグ”のメニューで残食率は55%でした。
冷めているのは、細菌の繁殖を防ぐ意味において仕方のないこと。味が薄いのは、大磯町教育委員会から「食育のため薄味に」との要請があるからとのこと。味が薄い冷めた“照り焼きハンバーグ”が生徒たちに不評なことは、容易に想像できます。
そんな状況の中、多発した異物混入。生徒たちの給食への不信感は一気に増幅しました。その件数、町長の発表では開始時から84件。このうち15件は業者の工場での混入が確認されたものの、残りの件数については、いつ混入したものか分からないといいます。あってはいけないことですが、毛髪や虫、ビニール片などは工場での混入が推測されます。一方、混入物の中には、シャープの芯などもあり、一部報道では生徒を疑うかのような表現がされていました。
食育は、食べてもらわなくては意味がありません。味が濃い加工食品に慣れた子どもたちに、何の工夫もなく薄味を押し付けても拒絶されるだけです。食事は楽しいことが最も大切です。ここまで深刻化した状態から、給食に対する不信感を払しょくすることはかなり困難でしょう。この問題、弁当製造業者の変更で片付くものではありません。大磯町教育委員会は、給食に対する取り組みを根本から考え直し、そのことを一日も早く、生徒と保護者に伝えるべきだと思います。
サンマの不漁と遅れる日本の認証取得
今秋も、とっても悲しいことに、サンマが不漁です。実際、近くのスーパーで求めたサンマは、小さくて痩せていて。いつもはワタを粗塩に埋めて塩辛を作るのですが、ワタも小さくて作る気が萎えてしまいました。スルメイカも同じく不漁です。小さくて身は薄々。里芋と煮たらもっと小さくなって。味も見た目も寂しい煮物になってしまいました。
サンマの漁獲量は、ここ数年で最も豊漁だった2014年の同時期の半分にも及ばないとか。各地で計画されていたサンマを味わうイベントも、主役のサンマ不足で取り止める自治体も出ています。海水温の変化や他国の漁獲量の増加などが原因ですが、先週号の“himeko’s VIEW”で取り上げたように、そもそも水産資源は、地球的規模で枯渇化が進んでいるです。
そんな実状に対し、欧米では、サスティナビリティ(持続可能性)の機運が盛り上がっています。海に囲まれ、海の恵みをどの国よりも享受してきた日本人は、誰よりも先に取り組まなくてはいけない課題だったはずです。が、日本は、持続可能で適切に管理され、環境に配慮した漁業を認証するMSC認証など、世界的認証を外国に比べるとまだまだ取れていないのが現状。日本での認証は、京都のアカガレイ、北海道のホタテ、宮城のカツオ、ビンナガマグロの4つしかありません。
取得に必要な事務作業やコストが膨大なこと、日本は欧米に比べて普段食べる魚の種類が多いことが理由になっています。加えて、手間とコストをかけても生活者や流通業者の認知度が低く、高い価格で売れるとは限らないことも積極的取得に水を差します。東京オリンピックに向けて、生活者への啓発を含めた、水産業者から小売りまで一体となった取り組みが必要です。
産業という側面だけでは測れない食の世界
玩具販売大手の米国トイザラスが経営破綻しました(日本トイザらスは100%子会社ですが、今回の案件の対象には含まれていません)。ショッピングモールでよく見かける大型店には、子どものおもちゃからベビー用品、ランドセルや自転車、クリスマスの電飾まで、何から何まで揃っています。昭和の時代、街角には個人経営のおもちゃ屋さんがたくさんありました。それがトイザラスの上陸で、あっという間になくなってしまいました。そのトイザラスが今、ネットショップに押されているのです。
ファストファッションのブランドとしていち早く日本に上陸したGAPも、経営不振に喘いでいます。ユニクロやしまむらといった和製ファストファッションからの圧力に加え、デザインが平凡過ぎるという批判もあります。誰でも着られる無難さがウケた時代もあったのですが。確かに、ZARA 、forever 21、 H&Mなど後発のブランドは、デザイン性を重視しています。ファストファッションの隆盛によって、街の洋品店は姿を消し、百貨店は集客に苦しんでいます。そして今、服にお金をかけたくない若者たちは、メルカリなどのフリマアプリで服を売ったり買ったりする時代。ファストファッションにも終焉説が流れています。
食はどうでしょう。日本に初めてファミリーレストランとファストフードが登場したのが1970年。ブランドアピールとチェーン展開を武器に、外食市場という大きなマーケットを生み出しました。では今、おもちゃ屋や洋品店のように個人経営の店は消えたのかと言われれば、そうではありません。個人経営の喫茶店は減少しましたが、今また、店主のこだわりに惹かれて通うお客様が増えています。
成長と拡大が常に求められ、効率化を図って生産性を上げなくてはならない産業としての外食。そこにはないもの、それと相反するものも同時に求められるのが、食の世界です。
店舗から玄関先へ。宅配に乗り出す小売各社
商圏人口が細る中、小売各社は、生き残りのカギを握るのは“お客様の玄関先まで商品を届ける物流”だといいます。特に過疎化が進む地方では、自前で物流を手掛けてドライバーが接客にあたったり、物流業者を活用したりする取り組みが始まっています。
北海道の「コープさっぽろ」は、宅配の小型拠点を道内各地に増やしています。商品の鮮度を守るだけでなく、配送時間を短縮する分、利用者とのコミュニケーションをより密にするためです。過疎化が進み独居老人が急増する中、生協の宅配は重要な社会インフラになっていて、配達員との会話を楽しみにしている高齢の利用者も多いといいます。
一方ダイエーは、お客様の代わりに店内で買い物をし、それをお宅へ配送することを専門に担当する‟コンシェルジュ”を配置する新サービス「お買物らくらく便」の試験運用を始めています。利用対象者を60歳以上に限定。カタログによる受注は、ネットではなく、電話かFAXだけで。受注から梱包、配送までを同じ担当者が行うことで、利用者との個人的な関係を構築し、顧客の囲い込みに繋げるのが狙いです。
買い物代行サービスとしては、シンガポールのベンチャー企業「オネストビー」が日本での展開を本格的に始めました。スマホを使ってスーパーや専門店の商品を注文すると、買い物コンシェルジュが商品を厳選し、それを配達員が最短で1時間以内に届けてくれます。アマゾンフレッシュなど、ネット展開の食品販売とは異なり、地域の店舗で購入する商品を届けるシステムなので、小売店と競合することはなく、むしろ販売量を上げてくれる存在と言えます。