2/14は、バレンタインデー。百貨店やコンビニ、製菓会社は、毎年、さまざまな趣向で商品を展開し、紙面を賑わせます。
百貨店は、イートインに注力しています。西武百貨店池袋本店、小田急百貨店新宿店、高島屋新宿店いずれもその場でいただけ有名ブランドのチョコレート、チョコレートソフトクリーム、チョコレートシェイクなど、限定商品を販売して連日満席の人気ぶりです。
バレンタインデーは本来の「女性が心に秘めた思いを男性に告白する日」から、「義理チョコで職場の人間関係を円滑にする日」「家族でチョコレートをあげ合う日」「自分にご褒美をあげる日」と多様性が市場を拡げ、イートインで限定商品をいただくという楽しみ方も生まれました。
そんな中、ゴディバが日本経済新聞に「日本は義理チョコをやめよう」というタイトルの広告を、代表取締役社長ジェローム・シュシャン氏からのメッセージというカタチで掲載しました。「バレンタインデーは嫌いだ、という女性がいます。」という書き出しで始まる内容は、バレンタインデーが楽しい日であって欲しいと願う同社の気持ちが込められています。ですから、楽しい義理チョコは否定していませんし、女性同士でバレンタインデーを祝うことも歓迎しています。
この広告に対して、ネットやワイドショーではいろいろな意見が。女性の多くは、実際そうするかは別として「よくぞ言ってくれた」という賛同の声が、男性の中では「義理でもいいから欲しい」という意見が多いようで、義理チョコ消滅はなかなか難しそうです。
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サードプレイスとしての存在価値が高まるプロント
1/31までの期間限定で提供しているパスタメニュー‟サーモンとほうれん草のアーモンドミルクソース”を食しに、久しぶりにプロントへ行きました。このメニューは、アーモンドミルク飲料「アーモンド効果」を使用した、江崎グリコとのコラボ商品。「アーモンド効果」自体、それほど強い風味ではないので、パスタソースはやわらかなクリーミーさで汎用性のある味に仕上がっています。
プロントと言えば、フードメニューに力を入れてきたコーヒーチェーン。パスタメニューが女性に人気で、ランチタイムには、パスタにプラス300円で小さなサラダとドリンクをセットした食事を楽しむ女性たちで賑やかです。加えて、トレンドをいち早く取り入れるのも得意で、今年流行りそうな、消化されにくい難消化性デンプン「レジスタントスターチ」を含む“ハイレジ生パスタ”を使ったメニューを、2016年に既に展開しています。またベーカリーやアルコールの導入も早く、今ではすっかり“食事&アルコール”の利用スタイルが定着。会社からまっすぐに帰宅せず、気分転換をしてから帰路につきたい女性たちのオンオフ消費の場としても人気です。弊社近くの青山店では、生ビールなどを割引価格で提供する平日16~19時の利用客の半数は女性。ひとりで1~2杯飲んで帰る常連客も多いそうです。
今年、働き方改革の推進によって退勤時間が早まり、職場でも家庭でもない居場所、「サードプレイス」を求める生活者が増加すると予想されています。プロントは、ずっと以前からそれを提供してきたことになります。
野菜の価格が高騰。この冬、人気の鍋料理は?
昨年秋の長雨や台風などの天候不順が原因で、野菜の高値が続いています。この年末年始、休業する外食チェーン店が増えたこと、そしてスーパーで野菜が高かったことが、今年最初の困り事です。
雑煮に入れる小松菜、鍋の材料、白菜、おでんの具、大根。すべてが高く、お正月の献立に困りました。白菜はたっぷり使いたいので1個丸ごとが欲しかったのですが、すべて1/4カット。それでも200円近くします。丸ごとなら800円。それでは高い印象で売れないからでしょう。農家の方に聞くと、今年は白菜が巻かなかったとか。スーパーの白菜も、どれもスカスカです。
小松菜は茎が細くて短いものが多く、1把の株数は通常より少なめ。大根は細く、太い時期のものに比べると、半分の重さです。青果卸によれば、野菜の高値は2月頃まで続くそうです。
野菜の高値は、家計に影響。生活者の消費意欲を冷え込ませています。内閣府が発表した2017年12月の景気ウオッチャー調査で、家計動向の景気実感を示す現状判断指数(DI)は、前月比0.4ポイント低下の52.3と2ヵ月ぶりに悪化しました。おそらく1月は、もっと低下するものと思います。
葉野菜が高騰すると鍋料理の主役は、じゃが芋や玉ねぎ、にんじんといった根菜やきのこ、もやし、練り製品などになり、それらが使いやすい、トマト鍋やカレー鍋の登場回数が多くなります。この冬、どんな鍋料理で、生活者はこの難局を乗り越えているのでしょう。
年末年始、休業する外食チェーン店が増えました
今年の年末年始。外食市場には大きな変化がありました。言わずもがな、一部外食チェーン店の休業です。
ロイヤルホールディングスは、ファミリーレストランの“ロイヤルホスト”、天丼チェーンの“てんや”、ステーキチェーンの“カウボーイ家族”のほとんど全店を元旦休業にしました。また居酒屋チェーン“天狗”などを運営するテンアライドは大晦日を一斉休業に、“大戸屋ごはん処”を展開する大戸屋ホールディングスは、直営店の半数に当たる約80店で大晦日と元日を休業にしました。因みにすかいらーくグループは、“ガスト”で、年末年始のランチとハッピーアワーを休止しました。
この流れを作っているのは、人手不足による人件費の高騰や、従業員の働き方の改善を試みる企業側の意識の高まりです。大戸屋は、「少子高齢化で労働人口が減少していくことを考えると、従業員が働きやすい環境を整えることは重要」と言い、テンアライドは、「年末年始は忙しく従業員が疲弊しがち。特別な手当も支給するため人件費も上がり利益は小さい。思い切って休業を決めた」と説明します。
私は例年、年末年始は地方の街で過ごします。31日は、丸源ラーメンも、餃子の王将も休み。郊外店の多くが広い駐車場を持ち、大看板に「年中無休」とあります。「おっ、空いている」とばかり、駐車場に乗り入れて下車し、休業と知ってまた車に乗り込む家族が次々と。せめて「年中無休」の文字を隠すぐらいの配慮があってもと思いました。
東の食べ物、西の食べ物
東の人はよく食べるが、西の人は余り食べない。そんな印象がある納豆ですが、近年、関西で、納豆の消費量が上昇しているそうです。総務省の家計調査によると、2016年の年間消費量は12年比で48%も増加。わずか4年間5割近く増えたことになります。
その理由は、商品開発にあります。納豆の発酵を抑えて匂いを控えたり、たれのだしをカツオベースにしたり。西日本の人にも食べやすくしたからです。そう言えば、「日清のどん兵衛 きつねうどん」は、東日本向けはカツオだしを基本に濃口しょうゆを、西日本向けは昆布だしを基本に薄口しょうゆを使っているとか。そしてその境界線は、岐阜県関ヶ原だそうです。
うどんと言えば、西日本の食べ物。そばとの境界線は、関ケ原、愛知、富山と諸説あります。とは言え、西日本の中でも、うどんはひとつではありません。東日本で広く知られている「讃岐うどん」は強いコシとツルツルののど越しがモットー。でも「福岡のうどん」はとっても軟らかでコシがなく、『腰抜けうどん』とも呼ばれています。また「伊勢うどん」は、麺は極太で柔らかく、モチモチの歯応え。たまり醤油にカツオ節やいりこ、昆布等のだしを加えた、黒く濃厚なたれをからめながらいただきます。具は、刻みねぎだけ。お伊勢参りに来た忙しい商人たちが、さっと食べられるように柔らかな麺になったのだとか。熱い汁をかけずたれでシンプルに仕上げているのも、そのためです。江戸の職人たちが盛りそばを愛したのも、同じ理由。今風に言うなら、ファストマーケティングです。
韓国でも増えるひとりごはん。「ホンパプ」
儒教文化の影響を受け、家族の団欒をとても大切にする韓国においてすら、近年、独身世帯の増加に伴い、ひとりで外食する若者が増えているといいます。
日本で「おひとりさま」が話題になったのは、2005年。それまで2人以上で行動していた女性たちが、人に気を使いたくないという理由で、ひとりで行動するようになりました。食事も、飲みも、ひとり。この流れを受けて、女性ひとりでも気軽に入れる立ち飲み屋が増え、旅館は「おひとりさまプラン」を企画しました。当時、雑誌「Hanako」は、「おひとりさま」の特集を展開。ひとりで行けるフレンチや和食などのゴージャスラインから、普段着ごはん、カフェやバー、ホテルや温泉旅館まで、さまざまな「おひとりさま御用達」を紹介しています。
そして今再び、人気漫画「孤独のグルメ」さながらに、外食店で‟ひとり夕食”を楽しむ20〜30代が目立つようになっています。ホットペッパーグルメ外食総研の調査によると、2014年度の外食店でのひとり夕食の市場規模(首都圏・関西圏・東海圏)は3114億円で、13年度比3.1%と伸び率がトップ。外食単価をみても、15年度の全体平均が14年度比4.1%増だったのに対し、ひとり夕食は1211円と同12%増えたといいます。理由はやはり、人に気を使いたくないから。コンビニで食事を買って家で食べると、ゴミが出るから嫌だという意見もあります。
韓国では最近、ひとりの食事を意味する‟ホンパプ(ひとりごはん)”という造語が浸透しているとか。ストレスフルな日常の中で、食事くらいは気を遣わず好きにしたいという気持ち、日本も韓国も同じなんですね。
水清ければ海苔育たず。海苔価格が高騰
海苔の価格が急騰しています。理由はずはり、生産量の落ち込み。海苔は、海苔メーカーが養殖業者から海苔の原料となる海草を仕入れて加工します。その仕入れ価格が上がっているのです。漁業・養殖業生産統計によると、海苔の養殖生産量は1994年の48万3000トンから2016は30万トンと4割近く減少しました。価格高騰は、4年連続。毎年10%近く上昇しています。
海苔は保存ができるので、生鮮野菜のように悪天候即値上がりとはなりません。だだ、これまでは周期的に訪れていた豊作に恵まれず、不漁が連続。結果、流通在庫を確保できなくなっています。加えて、産地が点在していたため、北はダメでも南はイイと、平均値を取ることができたのですが、東日本大震災で宮城県の生産力が低下。供給バランスがくずれました。
生産量減少の背景にあるのは、海水の水質なのだそうです。と聞くと、悪化しているから?と思いますが、実は反対。きれいになったからなのだそうです。「水清ければ魚棲まず」という言葉が「孔子家語」にあります。過剰に清廉な人は、却って人に親しまれず孤立してしまうことの例えですが、事実、あまりにも水が清く澄んでいると、魚の餌になるプランクトンが繁殖しないので魚は棲みつかないとか。海苔生産地では、養殖シーズンの冬場に海水の栄養を取り戻すため水質を維持しつつ、下水処理能力を落とす取り組みを進めているといいます。
海苔と言えばコンビニのおにぎり。価格に敏感な業態だけに、「塩むすび」のアレンジや海苔を使わない新種のおにぎりの商品化を始めているかもしれません。
ファミリーマートがコインランドリー事業に参入
ファミリーマートが、100億円強を投じてコインランドリー事業に参入すると発表しました。これには驚くと共に、正直、いいところに目を付けたと思いました。
現在コンビニ業界は、客単価は上がっているものの、集客数は伸び悩んでいます。弁当・惣菜といった自社開発商品での差別化、雑貨の値下げでの集客には限界があります。そこで目を付けたのが、近年、急成長しているコインランドリー市場です。集客手段は、コンビニ目的でなくてもいいという発想がそこにはあると思います。加えて、都心部以外、コンビニには広い駐車場は付き物。その空間を有効利用するというアイデアです。
以前はコインランドリーというと、洗濯機を持たない下宿生活の大学生や単身者が利用するというイメージが強く、若い女性は、特に夜間は怖くて利用しづらい存在でした。ところが最近は、そんなイメージを一変するコインランドリーが次々にオープンしています。布団やカーペットが洗える大型機、衣類がふんわりと仕上がるガス乾燥機、清潔で明るい店内は防犯の目的でガラス張りが基本です。滞在時間に読めるものは、新聞から女性向け雑誌まで最新号が揃っていますし、Wi-Fiが使える店もあります。単身者の増加、共働きで休日にまとめて洗濯をする生活者が多いこと、布団やカーペットなどの大物に洗える素材の商品が増えたことなどが、コインランドリーの利便性をより高めていると言えます。
ファミリーマートは、コインランドリー併設店舗を2019年度末までに500店展開する計画で、実現すればコインランドリー業界で最大規模の店舗網になります。因みに、ファミリーマートの現在の店舗数は、サークルK・サンクスを合わせると1万8000店舗以上。これは奇しくも、現在のコインランドリー店とほぼ同じ数です。
ワタミ復活の兆し。“鶏”で脱・総合居酒屋
脱・総合居酒屋を目指すワタミが、長らく続いた低迷から脱しつつあります。回復をけん引しているのは焼鳥店「三代目鳥メロ」と鶏料理中心の居酒屋「ミライザカ」です。2016年6月から出店を始め、今年3月には「和民」からの転換を一気に加速。今期中には「鳥メロ」「ミライザカ」が、和民ブランドの店舗数を抜く見通しです。
ワタミは、脱・居酒屋依存にも挑戦しています。昨年8月には、テキサス風メキシコ料理店「TEXMEX FACTORY」を渋谷にオープン。現地風の内装や賑やかなサービスで非日常感を演出。女性客を増やしています。昨秋オープンさせたのが、ステーキ・サラダ専門店「にくスタ」。店内でカットしたチルド肉のステーキや牛肉100%の粗挽きハンバーグが看板メニューで、集客の目玉は15種類以上の野菜と20種類以上の惣菜などを常時揃えた「サラダ&デリカバー」です。自社農場や食材加工施設を持つ強みを生かし、有機野菜や手の込んだ惣菜を提供しています。集客は順調で、開業の翌月には黒字化。多店舗化を急いでいます。
もちろん、すべての新業態が順調というわけではありません。「にくスタ」より一足先に多店舗化を進めた、刺身定食やしらす丼などを提供する「港町食堂ちゃぶまる」は、2015年に1号店を開業。一時は、首都圏で5店舗まで増えましたが、現在はすべて閉店しています。
因みに、「三代目鳥メロ」展開のきっかけとなった「鳥貴族」は、28年ぶりの値上げが響いたのか、10月の既存店売上高は前年同月比で3.8%減少しました。塚田農場、モンテローザ、コロワイドも参入している焼鳥市場は、いよいよ競争が激化。ワタミに、一服している暇はないようです。
増える情報量。広がる食環境の格差と強まるストレス
給食受託サービスのミールケアが、幼稚園や保育園を対象に、AIを利用した給食献立提案サービスを始めます。
サービスに加入すると、園には、保護者が入力した園児たちの情報を基に組み立てられた献立表が届きます。全園児、同じメニューにはなりますか、アレルギーのある園児には配慮したメニューが提供されます。一方保護者には、園児が園で食べる食材の情報が写真付きで送信されるため、アレルゲンの有無も確認できます。さらには、栄養バランスに優れた1ヵ月分の献立を提案。加えて、園で提供される料理の作り方を動画で見ることができるほか、園での食事から、夜、家で食べるとよい献立なども教えてくれます。まさに至れり尽くせりです。
子どもの食事を真剣に考えている保護者にとっては、うれしいサービスでしょう。文字による献立表では知りえない、さまざまな情報が入手できます。いやな言い方ですが、園の給食をある意味、監視することも可能です。
保護者の中には、子どもが食べた給食の料理と量、栄養を確認して、夕食の献立を考える人もいるでしょう。かなり大変ですが、使いこなせば、完璧な食生活を子どもに実践させることができます。情報は役立ててこそ価値があるもの。前向きな家庭とそうでない家庭。情報が手に入りやすくなればなるほど、子どもの食環境の格差は広がります。そしてもうひとつ言えることは、まったく無関心な人を除けば、保護者にとってはさらなるストレスが加わることになるのです。