御役目御免? 販売減少に転じた恵方巻き

 今年、多くのメディアが取り上げていた恵方巻きのフードロス問題。節分を前に、農林水産省も注意を喚起。作り過ぎないように勧告を出しました。スーパーやコンビニは、予約販売を積極的に展開し、フードロス対策に貢献の姿勢を見せましたが、一方で、前年実績を上回る販売目標を立てていて、そのせいか、廃棄量は前年と変わらなかったようです。
 節分の日に、その年の決まった方角を向き、願いを込めて無言で一気に食べると縁起が良いとされる恵方巻き。もともとは関西を中心に行われていた風習だったのが、20年ほど前からコンビニが全国的に展開を開始。今では具のバリエーションも増え、エスニック風からスイーツまで登場しています。
 そもそも関西の風習がなぜここまで広がったのでしょうか。その理由は、主婦の言い訳消費を喚起したからです。「縁起が良くて願い事も叶う(かもしれない)家族で楽しめるイベント」。スーパーやコンビニが用意してくれている恵方巻きを購入するには、充分な理由です。夕食を、惣菜を買って済ますことに後ろめたい気持ちを持つ主婦も、この日ばかりは、前向きに買って帰れます。
 恵方巻きを購入する人は、平成29年をピークに減少に転じています。夫婦共働き世帯が急増し、食の外部化が急速に進んでいる今、恵方巻きに言い訳を求める必要がなくなっているのかもしれません。

バレンタイン。義理チョコはパワハラ?

今年もバレンタインの季節が始まりました。
注目のチョコレートは、なんと言っても、ルビーチョコレート。スイスのチョコレート会社「バリー・カレボー」が開発したピンク色のチョコレートで、ダーク、ミルク、ホワイトに次ぐ第4のチョコレートとして、約80年ぶりに発明された全く新しいカテゴリーのチョコレートです。2017年から、さまざまなブランドがルビーチョコレートを使った新作スイーツを発表していますが、今年は、今までになく洗練されたデザインの商品が揃いました。
昨年、ゴディバが日本経済新聞に「日本は義理チョコをやめよう」というタイトルの広告を、代表取締役社長ジェローム・シュシャン氏からのメッセージというカタチで掲載しました。「バレンタインデーは嫌いだ、という女性がいます。」という書き出しで始まる内容は、バレンタインデーが楽しい日であって欲しいと願う同社の気持ちが込められています。
そして今年ニュースになったのは、義理チョコがパワハラにつながる恐れがあるため、社内でのチョコレートのやり取りを禁止する会社が増えているというもの。ある調査では、男性社員が女性社員に義理チョコを要求することに対し、4割近くの人がパワハラだと思うと回答しています。
今のご時世、立場を利用して「チョコレートをくれ」と上司がせがめば、間違いなくパワハラでしょうし、社内で慣習になっていれば、女性社員にとっては義務以外の何物でもありません。でも、会社が規制すべきことなのでしょうか。ゴディバのメッセージは理解できますが、会社という組織においての禁止措置は、私には行き過ぎたことのように思えます。

消費税増税を前に激化始まるデリバリーシステム

 最近、都市部では、「UberEats」と書かれた大きな四角い箱を背負って自転車で滑走する若者、「出前館」のマークが付いたバイク、「楽天デリバリー」の自転車が並ぶスペースを、本当によく見掛けるようになりました。
 今年10月に導入が予定されている消費税増税、軽減税率適用。それを待たずして、積極的にデリバリー市場に参入を始める飲食店は着実に増えています。理由は、人手不足や食材のコスト高。利益向上のためには、ビジネスチャンスを拡げる必要があります。
 関東から始め、関西にも拠点を拡げた「ウーバーイーツ」は昨年11月、営業地域を愛知県名古屋市にも拡大。提携する飲食店は4,000店を超えました。
 また「出前館」を運営する「夢の街創造委員会」も、都市圏が中心だった宅配拠点を地方に広げていて、今年8月期末には210拠点と前期末の2.5倍に増やす計画です。「出前館」で注文できる店舗数は1万7,000店を超えていて、「吉野家」「天丼てんや」などファストフードを中心に利用企業が増加。年間アクティブユーザーも269万人と昨年から14%増えています。
 さらに同社は新しい取り組みとして、プロバスケットボールのBリーグと提携。今年1月のオールスター戦で会場内にデリバリーシートを設置しました。来場者は観戦しながら「出前館」を使って届いた料理が食べられます。同社は、利用状況を見ながら他のスポーツ会場にもサービスを広げていくといいます。
 飲食店とお客様を結ぶデリバリーシステム。お客様がいるところならどこへでも。その場所探しが、すでに始まっています。

増加する単身者。強まる“共食”ニーズ

 2035年、日本の15歳以上全人口の5割が独身者になると予想されています。死別、離婚による高齢の単身者、未婚による単身者を合わせると、独身者は約4800万人。高齢者の人口は約3740万人と予想されていますから、独身者の人口が高齢者のそれを上回ることになります。
 そんな日本において確実に進んでいるのが、一人で食事をする“孤食化”です。65歳以上を対象にした調査によると、孤食の死亡リスクは、誰かと一緒に食べるのに比べ、男性で1.5倍、女性で1.2倍になったといいます。一緒に食べる人がいればいいのですが、ひとり暮らしではままなりません。そんな中、誰かと一緒に食卓を囲みたいというニーズがますます高まっています。
 地域の空きスペースなどを使い、シニア層ら住民同士が食卓を囲む「共食」が広がっています。東京都大田区の商店街では毎週金曜日、「元気かあさんのミマモリ食堂」がオープン。500円程度で食事を提供しています。管理栄養士の指導の下、地元に暮らす70歳前後の女性たちが食事を作ります。この食堂に集まる高齢者の中には、ほぼ毎回通う人もいて、この食堂をきっかけに住民同士の関係性が深まっています。
 一方、ネットを使いこなす中高年の間では、見知らぬ人と食事する動きもみられます。「キッチハイク」は、共食を希望する人同士を繋ぐネットサービス。自宅のキッチンと食卓を提供する人、料理をする人、食べる人がネットで繋がり、一緒に食卓を囲みます。集う人は、「どうせ食べるなら誰かと一緒の方がおいしい」「知らない人の方が気を遣わずに話せる」といいます。
 食事を共にすることには、栄養バランスを改善する効果もあるといわれ、政府や自治体も「共食」を推奨しています。

おせちは、手作りと惣菜を上手に合わせて

 年末のワイドショーは、年末年始に寒波が来ると大騒ぎでしたが、幸いにも関東から関西にかけての太平洋側はそうでもなかったような。日中は日差しも温かく、いつものように、穏やかなお正月だったように思います。
 私は今年も、おせち料理を作り、婚家の親族の集まりのための料理を作りと、年末から正月にかけて台所で過ごしました。雑誌「Mart」2月号に、読者を対象に‟おせち料理”について調査した結果があります。それによると、おせち料理を1品でも自分で作る人は56%、そのうち、数品作る人は半数以上でした。作る料理のトップ3は、「紅白なます」(60%)、「煮しめ」(56%)、「きんとん」(47%)。一方、おせち料理を買う場合、「単品のおかずを買う」と答えた人は60%で最多。次いで「買わない」(27%)、「お重のセット物を買う」(13%)でした。買う料理は、「黒豆」(60%)、「数の子」(58%)、「昆布締め」(48%)がベスト3です。
 手作りと惣菜を上手に組み合わせて、おせち料理を用意。お正月の気分を食卓で楽しむことに積極的な生活者は、まだまだいます。因みに、私が作るのは、「黒豆・田作り・煮しめ」、買うのは「数の子」です。「Mart」の読者とはやや異なります。年代の差かな?
 今年も昨年に引き続き、外食チェーンやスーパーマーケットの多くは元旦を休業しました。年末のスーパーは、お正月の準備と買いだめの客で大賑わいです。2日には買えるのだからと思うのですが、スーパーが開いていないという小さな恐怖心は、まだまだ私の中からも消えません。

平成最後の晦日。3時代に渡り仕事を続けられる幸せ

 平成最後の晦日が終わろうとしています。来年5月には新元号が始まります。
 弊社は、昭和63年11月22日に創立しました。そして1ヶ月半後の翌年、昭和64年1月7日に昭和天皇は崩御されました。それ以前からご容態が芳しくないことは伝えられていましたから、来るであろうその日を国民全体が覚悟しているような気配が漂っていました。スポーツの大会やイベントなどは延期、もしくは中止になり、テレビ広告では“幸せ”や“おめでたい”に通じる内容、言葉はすべて差し替えられました。国を挙げての自粛ムード、弊社の業務にも少なからず影響がありました。民間人のお葬式に当たる大喪の礼は、2月24日。昭和天皇の棺を乗せた車の葬列が、冷たい雨が降る東京の街を走る映像が流され、その画像の暗さは、今でもはっきり覚えています。
 その後平成に入り、時代は一気にバブルへ。弊社にも次々と仕事が舞い込み、お断りするくらいでした。しかも業務に対する報酬が、今思えば信じられないほど高く、それを当然だと思っていました。夜な夜な、フレンチ、イタリアン、和食と食べ歩き、クラブで踊り、バーで飲み、まさにバブルに浮かれ、酔いしれていました。
 そしてバブル崩壊。暫く低迷が続いた経済は徐々に復活し、内閣府は先ごろ、景気回復の長さが高度経済成長期の「いざなぎ景気」を超えたと発表しました。と言っても、実感はありませんが。
 昭和の終わりに誕生した「ひめこカンパニー」は、まさしく平成と共に30年を歩んできました。今、31年目を迎えています。昭和、平成、そして次の元号と、3つの時代に渡り仕事が続けられることを幸せに思うとともに、お世話になっております皆さまに、衷心より感謝申し上げます。そして、今後とも、よろしくお願い申し上げます。

今は安い鍋野菜。このところの寒さが心配

 今年は初夏に雨の日が多く、日照不足だったため、夏から秋にかけて、ブロッコリーやきゅうり、人参などの価格が高騰しました。加えて、7月下旬以降の猛暑で果実の落花が多く、トマトも高くなりました。
 その後秋に入り気温が高い日が続いたため、白菜やキャベツ、レタス、大根などは成長が早く、例年より大きく、太くなっています。寒い日に食べたい、鍋物やおでんの食材はほとんど安くなっていて、鍋野菜が高騰した昨冬のことを思うとうれしい限りです。
 が、気になるのはこのところの寒さ。暖かかった11月から一転、12月は1月並みの寒さになっています。昨冬も12月中旬から1月にかけて低温状態が続き、1月22日、関東地方は大雪に見舞われました。加えて昨年は、10月の長雨や台風の影響で、12月にはすでに白菜やキャベツ、レタス、ほうれん草、大根などは高値が続いていて、特に白菜と大根は平年の2倍以上に。それが12月の低温の影響で1月に入っても一向に下がる気配を見せず、大根抜きのおでん、白菜やねぎを使わない鍋料理を考えるなど、笑いごとではない状態が続きました。
 今年はそうならないよう願うばかりですが、今、葉物野菜が安いうちに鍋料理を堪能しておいたほうがいいかもしれません。

スペインで楽しむシェリーとカバ

 先週に続き、スペイン旅行の話を。
 スペインのお酒と言えば、シェリー。ポルトガルのポート・ワイン、マデラ・ワインと並ぶ、世界三大酒精強化ワインです。酒精強化ワインとは、醸造過程でブランデーなどのアルコールを添加することでアルコール度数を高めたワインで、こうすることで、気温が高い地域でも保存がしやすくなり、かつ長期の輸送にも耐えられ、同時に風味に個性を持たせることができます。日本では、ティオ・ペペ (ぺぺおじさん) が最も有名なブランドです。生産地のヘレス・デ・ラ・フロンターレで、ティオ・ペペの製造場所を訪ねました。大きな樽がいくつも並ぶ中、ジャン・コクトーやアイルトン・セナのサイン入りの樽に混ざって、昭和天皇「裕仁」のサインの樽もありました。私は20歳代、ティオ・ペペのフィノを好きになり、そこから、アモンティリャード、オロロソと、いろいろな種類のシェリー酒を堪能しました。今も、よく冷やしたシェリー酒をいただくのが、夏の楽しみになっています。
 お酒繋がりでもうひとつ。スペインでも、ホテルの朝食はビュッフェです。ハモン・セラーノやハモン・イベリコ、ドライサラミのチョリソなどたくさんの肉加工品、多種のチーズが並びます。そして用意されているのが、ワインクーラーで冷やされたスペインのスパークリングワイン、カバ。もちろん、いくら飲んでもいいです。これには感激。イベリコ・セラーノとフレッシュなチーズをつまみに、朝からカバ。シエスタを待たず、朝寝が始まってしまいます。

1000円でしっかり楽しめるスペインのバル

 先月、スペインに行きました。南部のアンダルシア州の街を転々とする旅行です。イタリア同様、スペインも北と南の経済格差は大きく、独立運動が起こっている、バルセロナを州都に置くカタルーニャ州と比較すると、州民1 人あたり生産所得格差指数は3倍の開きがあります。
 そんな南部は、物価が安いです。スペインと言えば、バルとタパス(小皿料理)ですが、タパスは3ユーロぐらいでいただけます。メニューの一番上にあるのは、どこの店もほぼ「ハモン・イベリコ」。イベリコ豚の生ハムです。これがパン皿程度の大きさの皿に盛られてきます。肉や豆の煮込み、チーズも同様。3-4人でつまみ程度にいただくなら、充分な量です。グラスワインは1.5ユーロ程度。ですから、一人1000円もあれば、しっかり楽しめます。
 スペインではメインの食事は昼食です。今でもシエスタの習慣が残っていて、14時から17時、道路に張り出したパラソル付きテーブルを囲んでゆっくりとランチを食べながらおしゃべりをしてお休みします。だから店はほとんど閉店。買い物には不便で、17時の再開を待たなくてはいけません。“郷に入れば郷に従え”と、私も3時間飲んだり食べたりして過ごすのですが、昼のワインは魔物。眠くなるわ、だるくなるわで、もはやショップ巡りの元気はなし。3時間も休んだ後、また仕事に戻れるスペイン人ってすごいと感心した次第です。

ゆっくり、でも確実に拡大するオーガニック食品市場

 米国では、ホールフーズ、トレーダージョーズ、スプラウツなどオーガニックスーパーは馴染みのある存在です。日本でも、米国ほどではありませんが、ナチュラルハウスが国産オーガニック食品の店として35年以上の歴史を刻んでいますし、他にも東京・国立のマザーズや大阪・靭のビオラルなど有機野菜にこだわるスーパーは多く、個店やネットショップなども含めると、オーガニック食品専門店は、決して珍しい存在ではなくなっています。
 通常の野菜より5割ほど高いオーガニック野菜。日本では、なかなか拡がらないのではと思っていました。が、普及のスピードは速くないものの、安全性や環境への意識の高まりで、オーガニック野菜を支持する生活者は確実に増えていると思います。
 早くから、有機野菜に着目していた野菜宅配大手のオイシックス・ラ・大地の3月末時点の宅配定期購入会員数は、16万9000人。計画を上回る数で、3年間で7割伸長しています。同社と提携して専用の売り場を設けるスーパーは全国に約35店。3年間で2倍以上に増えました。
 2年後の東京五輪に向けてインバウンド対応のひとつとして、外食市場においても、オーガニック食材の重要性は高まるものと考えます。
 農林水産省によると、2009年のオーガニック野菜の国内市場規模は、04年比で3.3倍の約1300億円。09年以降、現在まで右肩上がりが続いています。16年末時点の米国の4.7兆円、欧州の3.7兆円には遠く及びませんが、それだけに市場拡大の余地はまだまだあると言えるでしょう。