秋の味覚、不漁と天候不順で。一方、松茸は・・・

 9月に入り、大分過ごしやすくなりましたね。夜には虫の音が聞こえ、秋を感じます。
 今年、「サンマ」は驚異的不漁。8月の漁獲量は、過去最低だった昨年の2割程度でした。サンマの水揚げ量が日本一の北海道・根室の花咲港では、初競りで付いた値段は、かつてない最高値のキロ5,508円。産地の北海道東部でも1尾300円前後で売られているといいます。一方、秋を待たずして豊作だったのが、「松茸」。6~7月の記録的な降水量と涼しい気候のおかげで、7月末から採れ始めました。今秋は量が多く、価格も安めのようです。ハロウインが近くなると、惣菜やスイーツで大量に使われる「かぼちゃ」。産地の北海道では長雨と日照不足の影響で生育が悪く、収穫量も少なめ。8割高で推移しています。秋スイーツの材料として女性に大人気の「栗」は、開花時期の7月が低温、夏は猛暑で虫が大量発生。イガは大きいのですが、虫喰い状態で売り物にならないものが例年より多くなっています。同じく女性が好きな「さつま芋」。今年は安定しているようです。
 さつま芋は、土地がやせていても、素人でも作りやすいと言われる優良野菜。私も学生のときに必須科目の生物学で畑を一区画与えられ、さつま芋を植えました。今思えばもったいない話ですが、当時はまったく関心がなく、雑草だらけ。それでもちゃんと収穫できました。そんなたくましいさつま芋、安値安定のイメージがありますが、近年は焼き芋人気で価格は上がっています。

コロナのおかげ?! 動画で見られるプロの技

 新型コロナウイルスの感染対策が続く中、料理人たちが料理動画の配信を積極的に展開しています。
 緊急事態宣言が発令されたとき、NHKが「仕事の流儀」の緊急企画として「プロのおうちごはん」と題する番組を放映していました。日本各地のプロの料理人たちが「自宅でできる簡単・絶品レシピ」を自撮りで紹介する番組で、プロならではの“知恵”と“技術”が詰まっていました。
 そんな動画を、今、You Tubeでたくさん見ることができます。家庭でできるよう、材料も作り方もシンプル。でもプロのコツはしっかり教えてくれているので、挑戦欲をかき立てられるという意味では、料理に余り自信のない男性にもぴったりです。
 家庭料理だけでなく、店で提供しているメニューのレシピを公開する料理人もいます。自慢料理のレシピは、店の財産。門外不出とも言えるのではないかと思いますが、レシピを公開した方が店にとってのメリットは大きいと考える人が増えているそうです。理由は、レシピを試した人から感想が届き、それを参考に作り方を改良することができたり、紹介した料理がおいしいとネット上で評判になれば料理人や店が有名になり、「店で食べてみたい」と思う人が出てきたりもするから。
 もともと個性豊かな人が多い料理人。料理だけでなく、シェフのキャラクターも楽しめるのは、動画ならではです。馴染みのシェフたちの動画には、それぞれに人柄が滲み出ていて。お店に行かれない分、余計に懐かしさがこみ上げてきました。

コロナ禍の今冬、鍋トレンドは個鍋?!

 飲食店のメニュー写真投稿サイトを運営するSARAHが、約70万の投稿データを元に生活者の外食嗜好を分析するサービス「Food Data Bank」で6月の投稿数を分析した結果があります。
 それによると、鉄板や大皿で提供され、客同士が席で分け合うことが多いメニューが敬遠される一方、ラーメンやカレー、うどん、パスタ、ハンバーグなど、1人前ずつ提供される料理の投稿は多くなっているとか。そう言えば、高島屋の来年のおせち商戦。1人用や少人数向けのタイプを例年の1.5 倍に増やす計画なのだそうです。帰省しないでひとりでお正月を過ごす人が多くなるとの予想もありますが、コロナ禍で取り分けて食べるスタイルを敬遠する向きもあるとか。
 ならば、今冬の鍋市場はどうなってしまうのでしょうか。もちろん、忘・新年会などできる状況ではないと考える生活者も多いでしょうし、密になりやすいので宴会料理として選びづらい状況でもあり、外食市場における鍋料理の出現率はかなり低くなると容易に予想できます。
 一方、ここ1年、「しゃぶしゃぶつかだ・渋谷スクランブルスクエア店」(東京・渋谷)や「ひとりしゃぶしゃぶ 七代目 松五郎」(同・赤坂)など、ひとりしゃぶしゃぶの店が大人気です。数年前、デパ地下では「ひとり鍋」がよく売れました。家族の好みに合わせてひとり鍋を複数個購入する客が増えたのです。今冬の鍋トレンドは、やはり“個鍋”でしょうか。

コロナで「ぬか漬け」始めました

 新型コロナウイルス感染予防で巣ごもりが続く中、東京モンは迷惑をかけてはと遠出も憚られ、お盆も夏休みもなかったという人、多いのでは。私もそうです。こんなに長く東京に居続けたことはありません。コロナが終息しない限り海外旅行はおろか国内旅行も叶わないのなら、いっそ、家に居続けなくてはできないことをやろう。そう思い、再びぬか床に挑戦しています。
 同じことを思う人は多いようで、コロナでぬかが品薄になるほど売れました。マスクを手作りするためにミシンに挑戦する人がいたり、節約を兼ねて家庭菜園を始める人がいたり。家にいる時間を、手を動かすことで充実させたい、豊かにしたいと思う生活者は少なくないようです。
 ぬかに加えるものは、粗塩と水は必須。うま味を与えるカツオ節や昆布、味を引き締め、防腐剤としての役割もしてくれる赤唐辛子、風味をよくする陳皮(干したみかんの皮)や山椒の実など、他に混ぜ込むものは好みや都合。今は、水を入れるだけですぐに本漬けができると謳うぬか漬けの素も販売されています。そこから自分の好みの風味に育てていくのもいいと思います。
 さて、ウチのぬか床はそろそろ本漬け。もちろんまだまだ好みの味にはほど遠く、育て甲斐があります。初めに“再び”と書きましたが、そう、私がぬか床を作るのは覚えているだけでも3回目。いつも飽きて放ったらかしにしてだめにしてしまいます。あのまま手をかけ続けていたら、どんなにかおいしいぬか漬けが食べられたことか・・・。思わないでもありませんが、過去を振り返っていても仕方ありません。今度こそ、“おばあちゃんのぬか漬け”を目指して頑張ります!

具もたれもバラエティ豊かに。深化を続ける冷やし中華

 暑い日が続くと食べたくなるのが、冷たい麺。ランチに冷やし中華をいただくことが多くなりました。
 冷やし中華の具は錦糸卵、きゅうり、ハムやチャーシュー、蒸し鶏などのタンパク質食品。これが定番。現在は、トマトがかなりの確率でのっていますが、昭和の時代には一般的ではありませんでした。反対に、タンパク質食品として魚肉ソーセージも使われていたと記憶しています。紅しょうがと和辛子、炒りごまは必須。たれはごま油入りの酢じょうゆと決まっていました。
 外食で、家庭で、それぞれに深化した冷やし中華。具もバラエティ豊かです。ツナ、エビ、クラゲ、うなぎ、ゆで卵、カニカマ、もやし、貝割菜、コーン、わかめ、ゴーヤ、オクラ、みょうが、アボカド、すいかなどなど、合わないものはないかも。味付けも、ごまだれやマヨネーズはもはや定番。ナンプラーやスイートチリソースでエスニックに、トマトスープでイタリアンに仕上げることもできます。
 「冷やし中華始めました」。店先に貼られる短冊に書かれたこの言葉は、初夏の風物詩になっています。ところが、これに反旗を翻したのが“全日本冷し中華愛好会”。生ビールやアイスクリームは冬でも売っているのに、冷やし中華が夏しか食べられないのは差別だ!という主張を基に、ジャズピアニストの山下洋輔氏、漫画家の故赤塚不二夫氏や作家の筒井康隆氏、タモリ氏などがメンバーになって1975年に発足しました。会報『冷し中華』を発行するなど活動を続けていたようですが、今でも、大半の店が夏しか冷やし中華を提供しない現実をみると、道半ばにして・・・ということでしょうか。

リアルからオンラインへ。講演が一変

 毎年、3月から2ヵ月ほどの期間で行っている「食市場のトレンド」講演。今年は、新型コロナウイルス発生、自粛要請の影響を受けて、すべての講演がキャンセルまたは延期になりました。
 5月に入り、“オンライン講演を”などという声も聞かれ始めましたが、聴講してくださる皆さんのお顔を見ながらのリアル講演がしたいという気持ちが強く、お断りしていました。そのうち、できるようになると思っていたのです。ところが、コロナ終息の兆しは一向に見えず。仕方がないので、“えいっ!”とばかり、オンライン講演実施のための準備に入りました。
 Zoom、Microsoft Teams、Google Meet。それって何?から始まり、デスクトップのパソコンだからカメラが要ると知り、声が反響するとご指摘をいただきマイクを購入、Zoomのウェビナーを契約しました。人に聞いたり、試してみたり。準備にかかった期間は2週間ほど。6月にはオンライン講演を始めました。
 それでも、聞く人が誰もいない状態で話すのはツライと思い、講演主催の会社様に伺って少人数を対象に話している姿をオンライン配信させていただくなどしていましたが、来訪者禁止の会社様もあり、とうとう自室で一人配信することに。初めての時は、何て話しづらいのだろうと思いましたが、今では、まったく苦ではありません。
 来年計画されているイベントでの講演依頼が既に入っていますが、すべてオンラインです。コロナによる「新しい生活様式」。私の場合は、まさに講演が一変しました。

日照不足の次は、猛暑。農畜産物には過酷な夏です

 今年も、ものすごく暑い夏が始まりました。梅雨が長引いて青空が恋しかったのに、既に暑さにうんざりしています。
 でも、よいこともあります。日照不足や長雨の影響で心配されていた野菜の価格が、今月の後半には平年並みになるそうです。農林水産省によると、東京都中央卸売市場での主な野菜の価格は、3日の時点で平年と比べて、レタスが2.7倍、じゃが芋や人参が2倍になっているほか、ピーマンやきゅうり、なすは6割から7割高くなっているとか。葉物野菜は天候の影響を受けやすい印象がありますが、ピーマンやきゅうり、なすといった夏野菜は、安値安定の安心野菜と思っていたので、ちょっとびっくりです。
 今後、猛暑が続くと、レタスやキャベツ、ほうれん草といった葉野菜が値上がりします。それから、かつては暑さで乳牛の搾乳量が減ったり、鶏も夏バテで卵を産まなくなったり、あまりの暑さで豚が倒れたり。人間だけでなく、家畜のための快適な環境作りも必要になります。
 巣ごもりが続き、生活者は健康不安を抱えています。長引く自炊生活の中で、野菜のニーズが高まっています。野菜、特に葉野菜や果菜は、先買いして貯蔵しておくことはできません。猛烈な暑さや強烈な日差しに強い野菜の開発を期待するとともに、野菜加工品を上手に利用するといった生鮮にこだわらない摂取方法を取り入れるなど、意識の変革が必要なときに来ているのかもしれません。

コロナで進むワンストップコンビニ

 新型コロナウイルスで自粛要請が発令されて以降、コンビニ各社は売り上げを落としました。が、一方で、客単価は上がりました。その理由はよく分かります。感染予防を考えたら、遠くて混み混みのスーパーより、近くて空き空きのコンビニに行こうと思うのは当たり前です。特に高齢者は。
 しかも最近のコンビニは、弁当・惣菜、飲料や菓子だけで集客しているのではありません。使用頻度が高い野菜や果物を売り、人気ラーメン店とコラボしたオリジナルのカップ麺を次々に開発し、テレワークで在宅飲酒の機会が増えた客の利用を見込んで酒類を充実させ、家で料理を作ることが多くなった生活者のために基礎調味料や合わせ調味料の商品群をスーパー並みに拡充しています。
 以前、私がコンビニで酒や調味料を購入するのは、「しまった買い置きがない!」という緊急避難的な場合に限られていました。スーパーより値段が高く、しかも小さなサイズなので、割高感、損している感がかなり強かったのです。でも最近は、通常のサイズがあり、しかも安価なPB商品も揃っています。NB商品を選んだとしても、コンビニだから高いという感覚は薄れています。私がそんな感覚になっていったことには、PBの納豆がかなり貢献しています。卵10個入りも、スーパーの通常価格より安いですし、大きさが揃っていない分、L玉が案外の確率で入っていて、得した気分にもなるのです。
 春、通勤路にローソンがオープンしました。向かいには、大手飲料メーカーの本社。その集客を見込んでいた矢先のコロナです。近隣にはマンションも多いためか、戦略を切り替えて弁当・惣菜の種類を絞り、野菜や日配品に力を入れていて、近隣住民にはありがたがられているようです。

近場で楽しむ旅の食体験

 東京都を除外して“go to トラベル”キャンペーンが始まりました。4連休初日の23日、東京だけでなく、大阪、愛知でも、感染者がかなり増えましたから、首長から言われるまでもなく、「家から出ないようにしよう」と思っている人は多かったのではないかと思います。
 新型コロナウイルスの感染防止で自粛要請が出て以来、遠出をしていない生活者に向けて、“食”で旅行気分が味わえる商品や飲食店が登場しています。
 ファミリーマートは東京都と神奈川県の約1000店舗で7/21から期間限定で、“身近なコンビニで気軽に旅気分”をコンセプトに、「気軽に旅気分!北海道&沖縄」フェアを開催しています。普段は地区限定で販売されている売れ筋商品やみやげ商品25品をラインアップしていて、特に沖縄カテゴリーでは、「ファミリーマートコレクション 沖縄風じゅーしぃの素」や「ぬちまーすランチョンミート」など、全国発売の要望もある沖縄ファミマ限定のPB商品を取り揃えています。
 一方、外食市場では、ダイヤモンドダイニングが7/9、東京・上野に、47都道府県を代表する郷土料理や食材を使った料理を取り揃えたビュッフェレストラン「大地の贈り物」をオープンさせました。
 楽天市場では、日本各地の特産品を詰め合わせた「ふっこう復袋」が人気ですし、観光地の高級旅館ならではの名物食品を直販するECサイトは、自宅でちょっと贅沢な旅気分味わいたいというニーズをとらえています。
 旅の楽しみに食体験は欠かせません。このまま感染者が増え続ければ、夏休みも我慢が必要になるかもしれません。近場で旅気分。ニーズはまだまだ続きそうです。

盛り上がるポテトサラダ論争。作れば分かる面倒臭さ

  “ポテトサラダ論争”が、 SNSやテレビのワイドショーを賑わせています。発端は、スーパーの惣菜売り場でポテトサラダを買おうとした子ども連れの女性が、高齢の男性に「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」と言われ、うつむいてしまったという出来事を綴ったツイッター。これに対し、「料理をしたことがないから言える言葉」「自分で作ってみたら分かる」「簡単そうな料理こそ手間がかかる」という反論の声が上がり、ついには、「どんな料理が面倒だと思うか」など、論点の裾野が拡がっています。
 料理というものは押し並べてそうですが、少しでもおいしさの高みを目指そうとすると手間が増えるし、面倒なことが多くなります。ポテトサラダも同様。じゃが芋を皮ごとゆでて熱いうちに潰して下味を付けるから、じゃが芋のコクと甘味、ホクホクのおいしさが味わえるのです。でも、丸ごとのじゃが芋をちょうどよいゆで加減で火を通すには経験が必要ですし、ゆで立ての熱々のじゃが芋の皮を手でむくのは大変です。簡単に作ろうと思えば、皮をむいてカットしたじゃが芋をゆでればいいのですが、それではどうしても水っぽくなります。
 メインディッシュに添えられたり、居酒屋でお通しとして出てきたり、外食市場においてポテトサラダの地位は決して高いものではありません。ポテトサラダとはそういうものだと思っている方は、「ポテトサラダぐらい・・・」という言葉がついて出るのだと思います。
 この夏、在宅勤務で1日3回食事を作っているパートナーに、「そうめん“で”いいよ」「冷やし中華“で”いいよ」などとは決して言いませんように。両方とも、面倒な料理に挙がっていますから。