意外とストレス!? ゆで卵

 キユーピーが今年4月から全国販売を始めた袋入りの殻なしゆで卵「そのままパクっと食べられる ゆでたまご」(実勢価格88円)が売れ続けています。卵は、アミノ酸スコア100の良質なタンパク質源。しかもリノール酸や数々のビタミン、ミネラルも含まれています。新型コロナウイルス禍で、手軽にタンパク質を摂りたい生活者にとって最適な商品であることは分かります。

 が、しかし。10個220円程度で買える卵を、ただゆでてあるだけなのに、4倍のお金を払って買うのはなぜでしょう。答えは、“ゆで卵“という料理のハードルが高いからです。「ゆでるだけじゃない」と言う人が圧倒的だと思いますが、そうは思わない人もたくさんいるのです。私の周りにもいます。

 鍋に卵と水を入れて火にかける、タイマーをセットする、水で軽く冷やして殻をむく。たったこれだけの作業の中に、ストレスがいくつも潜んでいます。まず1個の卵をゆでるのにちょうどよい大きさの鍋がない。だから、卵がかぶる量の水とそれを沸かすためのガス代がもったいない。タイマーをかけるのが面倒、鳴ったらキッチンに戻らなくてはいけない、ツルンとむけないとイライラする、結果、殻には白身がいっぱいくっ付き、肝心のゆで卵はでこぼこ。こうなったら悲劇。というのが、“ゆで卵買う派”の主張です。

 鍋で湯を沸かし、時間を計ることに、ストレスを感じる人は多いのかもしれません。アピックスインターナショナルが開発した、レトルト食品を温めるだけの専用調理家電「レトルト亭 」。Makuakeで 20%オフの6140円~で先行販売したところ、用意していた1200台が27時間で完売したと言います。

 因みに私は、バーボンのつまみとして毎日ゆで卵を2個食べます。もちろん、自分でゆでます。

選挙運動と炊き出し

 立候補者を一度も生で見ることなく、主張を聞くこともなく、衆議院選挙が終わりました。夜8時から一斉に始まる選挙結果速報番組。作り置いたチリビーンズをつまみにバーボンを飲みながらずっと見ていました。自分が1票を入れた立候補者は当選したのか、政党は議席を伸ばしたのか。もちろんそれも気になりますが、何より、投票率の高低や票を集めた政党、落選した議員や健闘した立候補者に興味があります。生活者の気持ち、空気感が分かるからです。

 私は、選挙というと炊き出しの光景を思い出します。子どもの頃、政党支援をしている組織に属している夫を持つ妻たちが集まって、おにぎりや煮物などを作っていました。冠婚葬祭や祭りと同じような光景です。昭和時代の女性たちは、炊事で選挙運動を応援していたのです。

 今は、もちろん仕出し弁当。しかも、有名な料理店の弁当を集めたサイトもあり、いろいろなお店の味が楽しめます。ただし公職選挙法で、選挙運動員や労務者への弁当の提供は、1食につき1000円、1日につき3000円が上限になっています。しかも、提供できる弁当の数は候補者1人当たり15人分。掛ける3食で45食に、掛ける告示から投票日までの日数の範囲内と定められています。つまり誰がどの弁当を食べたのか、きちんと管理しなくてはいけないということです。過酷な選挙運動の日々、作り立ての温かい料理で元気付けてあげようという意味では、炊き出しもありなのでしょうが、食材費などの経費を食べた人数で割って、厳密には、誰がどの程度食べたのかを把握する必要もあり、現実的ではありません。活気に溢れた選挙運動と炊き出し。もう見ることのない光景です。

飲食店の制限解除を前に食材費が高騰

 ランチの常連店が、11月1日からランチの価格を10~15%値上げすると言います。食材費の高騰が理由なのだそうです。非常事態宣言が解除され、飲食店に対する制限も緩和から解除に進もうとしている今。“さあ、これからだ”と勢いづく飲食店経営者に、食材費の高騰と人手不足という大きな壁が立ちはだかります。

 食材費の高騰には、大きくふたつの原因があります。ひとつは、世界的規模で起こっている異常気象による農作物の不作です。今年だけでも、北米、シベリア、トルコ、ギリシャなど世界各地で大規模な山火事や森林火災がいくつも発生し、農作物に甚大な被害をもたらしました。北半球の各地では、干ばつにより小麦などの作物が生育せず、家畜に与える餌に窮する国もあります。一方、南半球では、異常低温でとうもろこしやコーヒーの収穫に影響が出ています。

 もうひとつは、ワクチン接種による経済復活の動きと急激な消費量の拡大です。中国は牛肉を輸入したく、米国は、巣ごもり生活と住宅バブルで中国製の家電や家具、自動車部品が欲しい。頻繁な往復に船賃が上がり、“日本行き”は割の合わない航路になっているとか。希少な農産物を高騰した船賃で運ぶのですから、食材費が値上がるのは当然です。

 異常気象と新型コロナウイルス。地球の主人公は決して人間ではないこと、日本は自給率の向上を含め、持続可能な循環型食生活への取り組みを真剣に考えなくてはいけないことを、痛感しています。

料理レシピを愛読します

 料理を作るとき、私はよくレシピを見ます。手慣れた料理でもたまにはレシピを検索して、もっとおいしくなるレシピはないか、おもしろいアレンジをしているレシピはないかと探すのです。

 よく見るのは、「みんなのきょうの料理」(NHKエデュケーショナル)。Webに掲載されているレシピは、今は亡き料理研究家、新鋭の料理研究家、お世話になった料理研究家の息子や娘、親しいシェフたちのオリジナル。どのレシピも、読んでいるだけで楽しく、作りたい欲求が高まってきます。

 料理番組では、昼時間に放映される「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」(朝日放送テレビ)をよく見ます。大阪あべの辻調理師専門学校の、西洋料理、日本料理、中華料理の3人の教授が講師です。司会の上沼氏がひと口食べて感想を話すのですが、その表現がお上手で。今すぐに味見をしたい欲求に駆られます。しかも番組HPに掲載されているレシピもシンプルで、よく考えられているのです。これは、前出のシェフのレシピにも言えることですが、プロの技術とセンスが家庭料理に溶け込んでいて、その点がとても魅力的です。

 私は料理編集者をしていたので、レシピを読むと、料理のポイントと段取りがすっと頭に入ってきます。作りづらい書き方には、ケチをつけることも。“料理記者”の草分け的存在だった岸朝子先生は、「レシピを書く時は、左手に鍋、右手に菜箸を持ちなさい」とおっしゃっていました。順序だけではなく、流れを大切にすることを教えていただきました。

昭和ノスタルジーを満喫。万平ホテル

 緊急事態宣言が解除され、所用で軽井沢に行きました。久しぶりに、万平ホテルでランチをいただきました。

 軽井沢は、本通りも銀座通りも万平ホテルも観光客でいっぱい。規制緩和を受けて関東地区から観光客がどっと押し寄せたのでしょう。10月にしては暑い日でしたから、“夏休みの軽井沢?”と錯覚してしまうほどの混み具合でした。

 万平ホテルのメインダイニングのメニューは、コース料理とアラカルトで構成されています。押しは、コース料理。牛肉のグリルや鶏肉の赤ワイン煮、舌平目のムニエルや真鯛のポワレ、ビーフコンソメスープ、野菜にはヴィネグレットソースがかけられます。何もかもが懐かしい名前の料理。昭和のまま時間が止まっています。

 アラカルトは、名物のカレー。これは正確には、カツレツや魚介、野菜のソテーなどにライスが添えられていてカレーソースをかける提供スタイルなので、料理名は「○○とライス カレーソースと共に」と記されています。ほかには、ハンバーグにビーフストロガノフとこれまた昭和を代表する洋食がずらり。デザートに至ってはそのものずばり、「昭和50年代のレシピで作った カスタードプリン」「昭和50年代のレシピで作った ババロア アプリコットソース」など。本格的なスイーツのおいしさに日本人が驚いた半世紀近く昔の味が楽しめます。給仕人の、黒いスーツに蝶ネクタイの装いも昭和のまま。敢えて時代を追わないのは1936年に建てられた館との調和を考えてのことでしょうし、軽井沢で最初の洋式ホテルという伝統と誇りを守るという目的もあるのでしょう。

 おしゃれなカフェやブーランジェリー、大きなアウトレットモール、風格のある別荘群に加え、そこかしこに漂う昭和の趣が、若者たちを軽井沢に惹き付けているのかもしれません。

何かに模られる砂糖。昭和は鯛でした

 可愛いお土産をいただきました。白色や薄茶色のねこの顔を模った砂糖です。私は、コーヒーも紅茶もストレート派なので、飲み物に砂糖を使うことはほぼありませんが、余りに可愛いのでホットコーヒーに1個。ねこの顔が溶ける様を見ていたら、なんて残酷なことをしているのだろうという気分になり、思わず砂糖に詫びていました。

 製造は、老舗砂糖商の駒屋(愛知・名古屋)。それをヴィレッジヴァンガードがオンラインで販売しています。シリーズ名は「物語のある砂糖」。パステルカラーのハート形、花と蝶形、貝殻形のほか、ジグソーパズルのピース形、食パン形、手紙形などもあり、どれも砂糖菓子と呼びたくなるような、やさしいメルヘンの世界感に溢れています。

 昭和の時代、戦後しばらく砂糖は貴重な食品でした。結婚式などの祝い事の引き出物には、お赤飯の折と鯛の形をした砂糖の塊りが一緒に包まれていました。そう言えば、砂糖の四角い塊り、角砂糖も見なくなりました。街から喫茶店が消えて、角砂糖も出番がなくなったようです。

 初めてデートをする二人が喫茶店のテーブルをはさんで座っています。女性は男性のコーヒーに角砂糖を入れてあげるために「いくつ?」と聞きます。男性は「23」と年齢を答えてしまう。昭和のドラマでよく見たシーンです。固まる性質を生かし、何かに模れた砂糖。白雪糕(はくせっこう)と共に、懐かしく思う昭和のカタチです。

私のツボは、“言葉使い”と“外食店で見かける他人の行動”

 人にはそれぞれ“ツボ”というものがあります。“笑いのツボ”、“怒りのツボ”、“泣きのツボ”などなど。そこにはまると抜けられなくなってしまうのが“ツボ”です。私の場合、“どうしても気になってしまうツボ”があり、それは“言葉使い”と“外食店で見かける他人の行動”です。

 言葉使いでは「違(ちが)くて)」「難(むず)い」「こちらでよろしかったですか」など。また可愛い女性が「デカイ」「腹減った」などと言うのも気になります。かなり気になっているくせに、“言葉は生き物、変化するのが自然”“男女平等、女らしさの押し付け”と即、自身を戒めようとするところも我ながら鬱陶しい。

 外食店ではやたら他人の行動が気になります。帽子やバッグをテーブルの上に置くな、肘をついて食べるな、器はきちんと持て、箸を振り回すな、器を重ねるな、口を閉じて噛め、洋皿は持ち上げるな、スマホを見ながら食べるな、横柄な態度を取るな、残すなら最初に減らしてもらえ、ナプキンをくしゃくしゃにするな、・・・。心の中でまくしたてます。気にしなければいい、見なければいいと自分でも分かっているのですが、そこが“ツボ”だから仕方がない。その人が若い女性の場合、「この女性が息子が連れて来たお嫁さん候補だったらどうしよう」「息子が良ければそれが一番、何も言うまい」「顔に出たらどうしよう」「なるべく一緒に食事をしないようにしよう」「すごくいい娘(こ)なら気にならなくなるかも」と一連の瞬間空想が始まります。こちらも我ながら鬱陶しい。

 そして空想の後は決まって、駆け出しの料理編集者だった頃、“ばぁば”の愛称で親しまれた料理研究家の故鈴木登紀子先生宅のダイニングテーブルの上に、スーパーの袋を何も考えずに置いてしまい、先生に注意されたことを思い出すのです。

来るか!容器のリターナブル時代

 レジ袋有料化によりマイバッグが定着。次は、プラスチックのスプーンやフォーク、宿泊施設で提供される歯ブラシやカミソリといったアメニティグッズが有料化になる予定です。着々と進む脱プラスチック化。でもまだまだ私たちの生活にはプラスチックが溢れています。精肉や刺身のトレー然り、コンビニ弁当の包材然り。

 そんな中、ローソンは9/14、蓋付きの容器を持参したお客様に商品代金を割り引く「おでん鍋割セール」を一部店舗で始めると発表しました。これには、私も大賛成。保温ジャーや電子レンジ対応の汁漏れしないタッパを持って行こうと、やる気満々です。

 加工食品市場でも脱プラは進んでいます。パッケージに再生プラスチックを使ったり、内部のトレーを廃止したり。さらに一歩進めて、容器のリターナブル化に取り組む動きが世界的に拡がっています。リサイクル事業を行っているテラサイクルが運用しているサービス、「Loop」です。テラサイクルが定めた「耐久性」「洗浄のしやすさ」「LCA(Life Cycle Assessment)」という3つの基準の下、メーカーが容器を開発します。容器はメーカーの資産になるため、開発にも力が入ります。使い勝手、デザイン、耐久性、いずれも生活者が満足できるレベルになることは間違いありません。お客様はスーパーやECで商品を購入。使い終わったら購入したスーパーに持ち込むか、宅配業者に渡します。Loopが洗浄してメーカーに運び、メーカーは再び容器に商品を充填。販売します。食品では、ロッテや味の素、キリンビールが参加を表明しているようです。 

 昭和時代の牛乳のよう。ただし、牛乳瓶は生活者が洗っていましたが、Loopのモットーは「消費者に我慢や負担を強いないこと」。洗う必要はありません。

GONTRAN CHERRIER 再上陸!

 今年7月東京・青山に、パリ発、世界で約60店舗を展開するベーカリー「GONTRAN CHERRIER」(ゴントラン・シェリエ)が再上陸しました。初上陸は、2012年。この時の運営会社は、アパレルや飲食店のブランドを手広く展開しているベイクルーズグループ。今回は、不動産事業からIT開発までさらに幅広い事業をしている名鉄協商です。

 場所は、フレンチレストラン「ブノア東京」や「ピエール・エルメ・パリ 青山」が入っているビル「ラ・ポルト青山」。この一帯、パリ色が一気に強まった感じです。

 “Artiste Boulanger”と自称するだけあって、どの商品も芸術的。特に、ヴィエノワズリーはパンというよりケーキの見た目です。人気のクロワッサンにメレンゲが波形に絞られている「クラウドクロワッサン」はクリームが潰れないよう、テイクアウトの場合は、ひとつずつ箱に入れてくれます。冷蔵陳列されている商品は、保冷材を入れてこれまたひとつずつ箱に収まります。思わず“大変ね”とスタッフに言ってしまったのは、パン屋さんだと思うから。ここは、“Artiste Boulanger”です。

 朝7時30分からプティ・デジュネ(モーニングメニュー)を提供していて、休日は朝から客が途絶えることがありません。昼頃にはパン好き女子で満員状態。買った商品は、店先のオープンテラスや2階のテーブル席でいただけます。販売スタッフは10人ほど。ショーケースに並んだ商品を客のオーダーを聞きながらスタッフがトレーに載せ、客はそれを受け取ってレジに並ぶという手間がかかるシステム。加えて、ひとつひとつ紙袋や箱に入れる包装スタイル。時間も経費も掛かり過ぎです。パン屋さんだとしたら。

コロナ禍の米国で注目されるケトジェニック・ダイエット

 先々週に引き続き、新型コロナウイルス禍の米国で流行っていることを話題に。巣ごもりで運動不足になり、筋肉が減って代わりに脂肪が付いたと気にしているのは米国人も同じ。日本では、タンパク質を積極的に摂って炭水化物を減らす食生活を心掛ける傾向が高まっていますが、米国で近年実践する人が増えているのが、「ケトジェニック・ダイエット」です。

 私たちは通常、炭水化物や果糖などの糖質が体内で分解されて作られるグルコース(ブドウ糖)を主なエネルギー源にしています。ところが糖質を極端に制限すると、身体は脂肪を分解して「ケトン体」という物質を作り、グルコースの代わりにエネルギー源にするようになります。エネルギー源がグルコースからケトン体に切り替わった状態を「ケトーシス」と呼び、ケトーシス状態になると、身体は「超・脂肪燃焼モード」に。燃費の悪い自動車のように、皮下や内臓に蓄えられた脂肪がどんどん燃やされ、結果、痩せるというダイエット方法です。

 1日に摂取していい糖質の量は、一般に50g以下と言われています。パンやご飯を50gしか食べなければいいと単純に考えがちですが、芋や人参などの根菜類、ソースやみりんなどの調味料にも糖質は含まれていますから、これがなかなか難しいのです。タンパク質は、1日の摂取エネルギーの約20~30%、脂質は約60~70%摂ります。オリーブオイルやココナッツオイル、チーズや濃厚なクリームから。

 米国では「ケトジェニック・ダイエット」を実践している生活者のために、“Keto”“Low Carbo(低炭水化物)”と明記された加工食品も多く、低糖質にするためにパスタの代わりにズッキーニを細く切った「Zoodles」が添えられたりしています。日本でもご飯の代わりにカリフラワーを使った低糖質商品がありますが、白飯が食事の中心に鎮座する食生活を永年続けてきた日本人にとっては、米国人よりハードルが高いダイエット法かもしれませんね。