食料品の値上がりが止まりません。食用油と小麦粉の価格が上がれば、ほとんどの加工食品と飲食店のメニューが値上がりするのも無理はありません。
弊社近くの、青山骨董通りの行きつけの飲食店も値上げラッシュです。
カジュアルイタリアンの「YPSILON Aoyama(イプシロンアオヤマ)」のランチは、1200円から1350円に。台湾家庭料理の「ふーみん」のランチも、平日は10~50円、土曜日は10~100円の幅で値上げされました。「蕎麦青乃」は、かつ丼や親子丼、しらす丼など丼物とそばまたはうどんのセットが100円程度値上がりしたほか、私のお気に入り“鍋焼きうどん”はエビ天1本の“並”と2本の“上”があったのに、エビ天が大エビ天1本になり、“並”はなくなりました。上の金額への大きな引き上げです。
致し方ありません。店側も苦渋の選択です。この時世においては、客側も充分に理解ができることです。が、感情的には厳しくなるもの。再来店客の口コミなどを見ると、この値段でこの料理なら再々来はないといった内容のものもあります。値上げは料理の現状維持のためであり、値上げ分は食材費に吸収されます。値上げをした分、料理の質や量がアップできるわけでも、店側が儲けているわけでもありません。
私たちは、日本人の正直さと勤勉さとやさしさと器用さが生み出す安全でおいしい外食を、どの先進国と比べても比較的安くいただける幸せを当たり前のように享受してきました。しかし日本人力だけではどうしようもない現実が来ていることを、東欧で起きている惨状と苦難、それが及ぼすさまざまな影響に重ねるカタチで、思い知らされているように感じるのです。
カテゴリー: 食のトレンド
春先の気分は軽やかに。食もファッションも雑貨も同じ
20℃超えで「日中は半袖で」とお天気お姉さんに言われた翌日は、10℃を下回り北風が吹いて真冬並みの寒さに。まさに今春は「三寒四温」でした。
この時期思うのは、いつ衣替えをしようかということ。せっかちな質なので、ちょっとでも温かくなると衣替えに手を付け、何でも一回で済ませたい質なので、コートから徐々にとはいかず。結局、毎年春先に風邪をひきます。今年は、せっかちな私を思い留まらせるのに十分な「三寒四温」ぶりでした。
もうひとつ冬から春へと中身替えをするのが、冷蔵庫と食品庫です。この冬は「食のトレンド情報Web」の立ち上げで忙しく、また寒かったこともあり、昼食は持参していました。定番は、「白菜とれんこん入り鶏つくねのしょうが煮」。白菜半分がペロッと食べられ、しょうがのお陰で身体がポカポカになります。つくねを作り置きして、鶏肉や豚肉を買い置きしておけば、白菜と合わせるだけで温かい煮物が即できます。まさしく白菜は、冬を代表する野菜です。
で、春キャベツが店頭に並び始めると、白菜はお役御免とばかりにフェイドアウト。キャベツ料理に取って代わります。白菜同様、煮物にするにしても、だしからコンソメに、しょうゆから塩に、和風から洋風に料理が移り、見た目も華やかになります。不思議なもので、豚汁に筑前煮にと大活躍してくれた根菜類も重くて。もういいかなと感じるのです。
明るめの色の服を着たくなるように、春先は軽やかな気分でいたいもの。そんな心の移り変わり、私だけではないはずです。生活者の気分が求めるものは、食もファッションも雑貨も同じ。菜の花、グリンピースもいいけれど、もっともっと生活者、とくに女性の気持ちに敏感な店内装飾と販売促進をしてはいかがでしょう。スーパーの社長殿。
2022年にも通じる2007年のキーワード「楽食」
4/1からさまざまな食品や日用雑貨が値上げされました。今年も消費は、ますます保守的な傾向になりそうです。その反動のように高まっているのが、食で楽しみたいというニーズです。今年のトレンドキーワードのひとつに「Fun Foods」を挙げました。
遡ること15年前。2007年最初の食のトレンド情報vol.107 「山下智子の先週の注目記事とトレンド分析」のテーマは、“2007年。今年の食市場キーワードは「進化する楽食」です”。2007年は、楽しい食、楽(ラク)な食が、ますます求められる時代になると予想。楽しい食の中には、食べること自体の楽しみのほかに、選べる自由さ、食を介して人と触れ合う喜びなどの「楽」も含まれていること。またラクな食は、そのものずばり、ラクチンな食、ただ今までの簡便食とは一線を画するラク食で、ラクなだけでなく、ラクで楽しい、ラクだから楽しい要素が求められる食と記しています。
まさに「Fun Foods」にも通じる「楽食」です。新型コロナウイルス禍で私たちは、食を介して人と接することの楽しさ、思いのままに外食をする自由さを懐かしく思い、それらを強く求めました。家で料理をすることが増え、初めは凝った料理に挑戦していた生活者にも自炊疲れが。冷凍食品など簡便食が売れましたが、単に簡便なだけでなくプラス「0.5手間」のアレンジが可能で、その0.5手間に個性を表現できる余地、楽しめる要素のあるラクな食が求められています。
「進化する楽食」で紹介しているのは、“イチゴ用パウダー”や“目玉焼き専用たれ”など。身近な食材や簡単な料理を、ラクしておいしくしてくれる商品であり、どう楽しむかを提案してくれる商品です。
「食のトレンド情報Web」には過去の情報も満載です。当時流行った食品や開発コンセプトがおもしろい商品、生活者のニーズなど、現在に役立つ発見もいっぱいです。これからも過去の情報を紹介しながら、繰り返すトレンド、深化するトレンドのお話をしたいと思います。
グルメも施設も充実。サービスエリア
およそ10年ぶりにスキーをしに中央道を北上。信州へ向かいました。
高速道路のサービスエリア(以下SA)は、ここ10年余りで以前とは比べものにならないくらい魅力的な施設になりました。トイレ休憩のために仕方なく立ち寄る場所から、何かありそうという期待感で寄りたくなる場所に確実に変わったのです。
今回寄ったSAは、「恵那峡」。食したのは「飛騨牛タンバーガー」です。牛タンのパティにマヨネーズとポテトサラダというシンプルな構成で、牛タンの弾力と風味がしっかりと感じられます。飛騨牛のメニューはほかにも、コロッケバーガーや串焼き肉などがあります。「恵那峡」は古いタイプのSAですが、地元の農産物を販売するなど、時流に乗っていろいろと工夫していることが伝わります。
新しいSAと言えば、新東名です。駿河湾沼津SAでは富士山の絶景と駿河湾の輝きの両方が堪能できます。グルメは、やはり海の幸。マグロやキンメダイ、ウニやイクラなどの海鮮がたっぷりと盛られた大ボリュームの海鮮丼や、新鮮な魚介類で作られた「ちぎり揚げ」も人気です。飲食店だけではありません。東名の海老名SA内の「エクスパーサ海老名」には、アパレル、百貨店、スーパーなど多種多様な業態の店舗が出店し、一大ショッピングセンターの様相を呈しています。行楽帰りに食材や惣菜を買うこともでき、“家に帰って夕食どうしよう”などと悩む必要もありません。そのほか、コインランドリーやコインシャワー、足湯や温泉、ドッグラン、観覧車、メリーゴーラウンドやゴーカートといった遊具などを揃えているSAも。SAは今、旅の目的地のひとつになっています。
パンのさらなる値上がりは必至。ご飯派転向もあり?
ウクライナは、ヨーロッパの穀倉地帯であることはよく知られています。上部が青色、下部が黄色という二色の国旗は、空と麦を表わしていると言われ、「ヨーロッパのパン籠」「ヨーロッパの穀倉」と表されます。
日本は小麦の約9割を、米国、カナダ、オーストラリアから輸入しています。昨年10月、輸入小麦の売り渡し価格は、過去2番目の上げ幅(19%)になりました。理由は、地球温暖化が原因とされる強烈な熱波による小麦の不作。北米の太平洋岸のいくつかの都市では、最高気温が50℃近くまで上がり、オーストラリアでは山火事が収まらずコアラの痛々しい姿を映した映像が地球上を駆け巡りました。
さらに農林水産省は3/9、今年4月からの売り渡し価格を、昨年10月よりさらに17.3%引き上げると公表しました。フジパンと敷島製パンは、今年1/1納品分から値上げをしています。4月以降、カップ麺や冷凍うどんなども値上げされる予定です。そして4月の売り渡し価格引き上げに加え、ウクライナの戦禍。パンや麺類の価格がどこまで上がるのか、予想ができません。
これを期に、朝食をパン派からご飯派に切り替える生活者も増えるかもしれませんね。米5kg 2500円(税込)としてご飯1膳分(150g)の価格は34円(ガス代や電気代、水道代を加えるとおよそ+5円)、食パンの平均価格が1斤180円(税込)として6枚切り1枚の価格は30円。ご飯のほうが手間が掛かるし、みそ汁やちょっとしたおかずも必要。一方、マーガリンも値上がりしていて、食パン1枚に15g塗ると+12円。さあ、どうしましょう。
やっと定着するかも? マイボトル
ファミリーマートは3/9、東京都内の10店舗でプラスチック製のフォークと先割れスプーンの配布を休止する実証実験を約1ヵ月間行うと発表しました。
プラスチック削減で最近目立つのは、マイボトル推進活動です。魔法瓶メーカーのサーモスは昨年、マイボトル持ち込みを前提としたテイクアウト専門のコーヒー店「THERMOS COFFEE TO GO」を東京・西新橋と大手町に出店。飲みたい量だけ無駄なく買える“量り売り”でオリジナルブレンドや紅茶などの販売を始めました。一方、象印マホービンは今年2月、マイボトルを活用したモバイルオーダーサービス“ZOJIRUSHI MY BOTTLE CLOAK”の実証実験を始めました。飲食店が顧客のマイボトルを預かり、洗浄して保管。同社のLINE公式アカウントを使って顧客が飲料を注文、決済すると、店舗側はマイボトルに飲料を入れて準備し、顧客へ通知を送信。マイボトルの受け取りと返却は、店舗付近の専用ロッカーや店頭で行います。また日本コカ・コーラは、マイボトルやマイカップの内部を洗う洗浄機を併設した、炭酸水と水の自動販売機を導入。実証実験を開始しています。
プラスチック削減のためのマイボトル、マイカップ推奨の活動はかなり以前から行われています。例えば2007年、スターバックスコーヒーは井の頭公園店で、無料でマグカップを預かるサービスを実施。マイカップを使うと20円割り引きされるサービスは口コミで広がり、利用者は約300人に増えたといいます。2010年、横浜市立大学など3大学は、500個の携帯用ステンレス魔法瓶を学生に配り、給水機の数を増やしたところ、学生から高評価を得たという結果を公表しています。
よいことと分かっていても、生活者にとっては面倒なこと、企業にとっては売り上げが落ちたり経費が掛かったりすることは、長続きしません。現在のように、世の中の大きな流れが必要なのです。
食べ物を食べ物に例える話
出勤の支度をしながらAMラジオを聴くのが朝の習慣です。ニュースや街の情報が端的に分かるのが魅力ですが、何より、リスナーのメールやツイートはまさに「時代の空気」そのもの。興味深いです。
ある朝の番組で、「友だちが“森のバターと言われているほどおいしいのよ”と言ってアボカドを出してくれたが、バターとはほど遠い味で、バターのようにおいしいものではない」という内容のメールが紹介されました。これをきっかけに、話は食べ物を別の食べ物に例えた表現に。「大豆を畑の肉と呼ぶが、大豆はそもそもおいしくて立派な食品。わざわざ肉に例えなくていい」「カキのことを海のミルクというのもおかしい。たしかにカキの白い所はミルクみたいな見た目かもしれないが、口に入れたときの味はミルクとはほど遠い」とか。
私の頭にたくさんの“?”が浮かびました。
アボカドを“森のバター”、大豆を“畑の肉”、カキを“海のミルク”と呼ぶのは、味が似ているからとか、そのくらいおいしいからとか、が理由ではなく、バターのように、肉のように、ミルクのように栄養価が高い、または栄養成分が似ているからなのでは? 栄養成分が似ていれば、もちろん味も似ています。例えばアボカドは良質な脂質を多く含んでいるので、バターのような滑らかな口当たりです。大豆も言わずと知れた、植物性タンパク食品の雄。プラントベースミートの材料です。カキも牛乳のように栄養価が高く、真ガキのうま味が凝縮されたクリーミーな味わいをミルクと表現しているのだと思います。
番組のMCは、春風亭一之輔氏。博学の落語家さんだけに、話を盛り上げるためにわざと・・・かもしれませんね。
コンビニで冷凍のお刺身買ってみた
ローソンで冷凍のお刺身を買いました。「カンパチお刺身」と「真鯛お刺身」、いずれも税込498円です。
「カンパチ」は鹿児島産の養殖カンパチ、「真鯛」は高知産の養殖マダイを使用しています。委託先の工場で切り身にした後、株式会社テクニカンの液体急速凍結機「凍眠」で冷凍され、店舗に届きます。テクニカンのHPによると、【液体凍結とは、パックした食品をマイナス30℃の液体(アルコール)で冷凍する手法 ~ 通常の冷凍庫は「冷たい空気」で冷凍しますが、凍眠は「冷たい液体」を使って冷凍します。】とのこと。
商品の内容量は、どちらも40g。お刺身というより薄切りが6枚。しょうゆとわさびが付いています。スーパーのお刺身に比べれば、確かに高過ぎる、そして、かなり薄過ぎる。解凍方法は流水で10分。生活者が水道代をもったいないと思うぎりぎりのところを考えると、厚くはできないのか。急速冷凍にコストがかかるのか。お刺身の弾力のある歯応えと噛むほどに強くなるうま味を期待するのは無理ですが、どうしてもどうしてもどうしてもお刺身が食べたいときに、わさびじょうゆをたっぷり付けて、また食べてみようかなと思いました。
コンビニで初めてお刺身を販売したのは、ファミリーマートで2008年のことです。中高年層を取り込むために『刺身亭』のブランドで、「まぐろのたたき」や「たこスライス」などの販売を始めました。その後、「活〆かんぱち&甘海老」「サーモン単品盛り」など切り身商品も出たのですが、いつの間にか止めてしまいました。コスト面、流通面、管理面でいろいろと難しかったのでしょう。野菜、精肉と来て、次は鮮魚、特にお刺身。期待しています。
中国で盛んなダチョウビジネス
1月、夜の車道をダチョウが爆走している中国の映像をニュースで見ました。近くの農場から逃げ出したとのこと。中国では近年、ダチョウビジネスが盛んで、短期間にダチョウ飼養企業が次々に誕生。その数は優に200社を超え、このほかに小規模な飼育場が多数存在しているといいます。
中国でダチョウビジネスが急速な成長を遂げてきた背景には、①広大な牧草地帯などは必要なく、限られた面積で飼育が可能 ②飼育管理に手間が掛からないうえ、 繁殖力が強く、 かつ乾燥や高温といった厳しい気候にも耐性がある ③飼料は、草や茎、ふすまや豆かすなど「粗食」でよい ④肉質は、高タンパク、低脂肪、低コレステロールのヘルシーミート ⑤卵は、大きいもので鶏卵30個分。しかも1羽が産む数は、年間50~100個。かつ長期間に渡り産卵が期待できる ⑥皮は、言わずと知れた「オーストリッチ」。クイルマークと呼ばれる独特なドット柄の羽軸跡は、日本の女性にも人気の高級レザー ⑦羽は、衣装の飾りに使われるほか、車のほこり取りとして今でも人気。つまり、飼育効率が高い、捨てるところがない家畜なのです。
日本で近年、ダチョウの話題といえば、やはり「ダチョウ抗体マスク」でしょう。ダチョウの卵を使って生成したウイルスの抗体を塗ったマスクです。ダチョウ抗体は、安価で素早く、大量生産できる点で、新種のウイルスが原因のパンデミックに対し、かなり有効な対策になります。因みにダチョウ抗体は、新型コロナウイルスの変異株にもしっかり結合することを、京都府立大学塚本康浩学長の研究グループが確認しています。
脳に快楽を与える「超加工食品」と甘味料
Newsweek日本版の2/1号の表紙は、大きなハンバーガーの画像と、“あぶない超加工食品”の見出し。思わず手に取ってしまいました。Newsweekは、時に食市場に警鐘を鳴らします。しかも過激気味に。こと、食に関しては極端に横ブレする米国の週刊誌らしい切り口の情報が、日本語で読むことができます。
筆者の意図と多少なりとも齟齬があることを恐れずに概要を申し上げれば、「超加工食品」とは、食品を、それらを構成する化学物質のレベルまで分解。その化学物質に手を加えてから再び合成するという工程を経た食品を指し、それらは人間の脳の“弱み”に付け込むように作られている。脳に快楽という刺激を与えるため、継続的に多食化する。米国の肥満率が高いのはそのせいである。加えて砂糖(甘味料)も同様でコカイン並みに依存性が強く、米国のスーパーで売られている食品の66%に甘味料が加えられている。問題なのは、ヨーグルトやスパゲティソースなど昔は甘くなかった食品にも含まれていること。こんな感じです。
この見解。ひとつひとつ頷けます。加工食品は日々進歩していますし、利用する生活者はますます増えています。糖分はクセになり、その常習性については広く知られているところです。日本でも、高級な食パンは甘くなっていますし、「甘じょっぱ系」の味は定着しつつあります。隠し味に甘みを加えるのは近年よくある手法ですし、外食店の料理も家庭料理のレシピも、味付けが甘くなっているように、私は感じています。
地球環境に配慮して開発されたプラントベースミートは精肉より加工度が高く、脳の唯一のエネルギー源は分解された糖質です。食の持っている多面性を表わしています。
2022年1月1日 1アカウント3,300円(税込)/月で閲覧できる「食のトレンド情報Web」をリリースしました。
→ https://trend.himeko.co.jp