国内でモスクが増えています。昨年6月時点で全国のモスクは149ヵ所。25年でおよそ10倍になったそうです。推計によれば、在日イスラム教徒はおよそ35万人。単純計算で日本の人口の350人に1人がイスラム教徒です。理由は、人手不足を背景に技能実習や特定技能の在留資格で来日するインドネシア人が増えたため。インドネシア人の9割近くは、イスラム教徒です。
「2014年 食市場のトレンド」講演でも同じような情報を取り上げ、「ハラール食(当時の表記はハラル食)」はキーワードに挙がっています。前年9月、20年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定したことを受け、空港や宿泊施設、外食店などは、その日を目指して早くも外国人旅行者向けに“おもてなし”に磨きを掛け始めました。
成田国際空港では、第1、第2旅客ターミナルそれぞれに「礼拝室」を設置。前年12月から「ハラール食」のケータリングサービスを開始し、有料待合室利用者を対象に、専用キッチンで調理した「ハラール食」を予約制で提供していましたし、06年から礼拝室を設けていた関西国際空港も、その数を増やし、讃岐うどん店など2店でハラール対応のメニューを用意しました。
首都圏の観光施設やホテルでも、イスラム教徒が多いマレーシアやインドネシアなどからの旅行客に対応する動きが広がり、「新宿ワシントンホテル」は事前予約でハラール料理を提供。食品メーカーはビジネスチャンスと見て、ハラールに対応した加工食品の開発を急ぎました。政府もハラール食品の輸出を後押し。高級和牛や果物など日本が強みを持つ農畜産物を、輸出先が求める基準や品質を満たすようにする施設の整備を助成し、日本ブランドの食品人気が高まるアジアやイスラム圏向けに輸出の拡大を図りました。
それから10余年。海外にルーツを持つ子どもが増え、1千人以上のバングラデシュ人が暮らす東京都北区にある認可保育園では、ハラールに配慮した給食を始めています。労働人口の減少が続く日本において、労働を目的に移住を希望する外国人は、大変ありがたい存在。ハラール食への取り組みが、いよいよ本格化しそうです。
あなたは何の「プロパ志向」?
春は講演の季節。講演原稿作成のため、暮れから2月初めまで忙殺されます。晩秋、社内会議を重ねて決める翌年のトレンドキーワード。原稿を重ねていくうちに、次から次へとキーワードに関する新しい情報が入り、原稿の刷新を繰り返します。手前みそですが、弊社が挙げたトレンドキーワードが間違っていないという証しです。
2/12から幕張メッセで開催されるスーパーマーケットトレードショーのセミナーで、“2025年 食市場のトレンド ―「タイパ」と「プロパ」のハイブリッド戦略―”というテーマでお話をします。だからでしょう。お昼ご飯を作っているときなど、「プロパだなぁ」としみじみ思うのです。忙しいのだから、ちょっと出掛けて食べても、コンビニで買って来てもいいのに、料理をしたくなるから不思議です。気分転換? 逃避かも。
料理のプロパの魅力は、料理を1度も、1ミリも楽しいと思ったことがない人、料理をまったくしない人には分からないでしょう。たとえば、古い家具を補修して磨き、ペイントするプロセスを楽しむ人がいます。それを面倒だと思う人は、家具屋に行って新品を買えばいいのです。私は、古いタオルで雑巾を縫います。針と糸でシクシクシクシク。新品のタオル地、ミシン縫いですが3枚110円で売っています。縫い物が苦手な人には、無駄なプロセスに思えるでしょう。昨今、梅干しを漬けたり、ぬか床を育てたり、そんな“手仕事”に挑戦する生活者が増えています。お金と引き換えに得るものではなく、頭と手を動かして時間を楽しむものに癒やされ、そこに価値を求め、アイデンティティの確認をしているかのように思えます。そして今、フツーの高齢者が著す“ていねいな暮らし本”が人気です。
料理をあまり経験していない食業界人さん。あなたが好きなプロセスはありますか。大丈夫。その気持ちを思い起こしながら「プロパ志向」を理解していただければ、外すことはないと思います。
活躍広がる「ふりかけ」と世界に広がる「FURIKAKE」
子どものご飯が進まないとき、おかずが少ないとき、ちょっと別の味を楽しみたいとき、「ふりかけ」は強い味方です。が最近、「ふりかけ」はそれだけにとどまらない活躍を見せています。
オリジン東秀は、カップ焼きそば“ペヤング”とコラボ。「キッチンオリジン」「オリジン弁当」などの店舗で、店の人気メニューに特製ペヤングソースとスパイス風味のふりかけを組み合わせた“そばめし おにぎり ペヤングソースやきそば味”などを展開。エースコックは、関西と関東の味わいを一気に楽しめるカップ麺“超大盛りスーパーカップ2.0倍 豚骨醤油ラーメン 関西風から関東風”を発売しました。食べ始めは、“関西風のトンコツしょうゆ味”、別添の味変用ふりかけを加えると、“魚介強めな関東風のトンコツしょうゆスープ”に変化します。
スイーツ用ふりかけに力を入れているのは、ナショナルデパートです。スイーツふりかけ&珍味ブランド「ふりちん」を立ち上げ、アイスやトースト、ヨーグルトにかけるユニークな風味のふりかけ、豆腐をスイーツにしてしまうふりかけなどを次々に開発しています。一方、サプリメントブランドを展開するサンセリテ札幌が提案しているのは、だしに含まれる各種栄養素に注目した“KAKEDASHI”。そばやうどん、鍋料理や鉄板料理、ご飯にかけたり混ぜたりするだけで、だしに含まれるミネラルやタンパク質が摂取でき、料理のうま味もぐんと上がります。もともとふりかけは、大正時代初期に熊本県の薬剤師がカルシウム不足を補うために考案したそう。
近年、海外でも「FURIKAKE」への関心が高まっていて、オーストラリアではカフェのメニューになったり、米国ではトレーダー・ジョーズが自社ブランドの「furikake」を販売したり。フランスでは、国内産の無添加ふりかけブランド「FURIFURI(フリィフリィ)」が話題になりました。
海外にも「seasoning(シーズニング)」と呼ばれる、複数のスパイスやハーブ、塩、調味エキスなどが配合された、粉末タイプの調味料があります。「FURIKAKE」は、「seasoning」とは別の存在として、その認知が広がっています。
2020年の時産ニーズと2025年のプロパ志向」
料理SNS「Snapdish」を運営するスナップディッシュは、ユーザーの投稿を基に2024年の「料理SNSトレンド大賞」を3つ選出。そのひとつに「電鍋」を挙げました。「電鍋」とは、台湾の総合電機メーカー、大同公司が販売している、“炊く”“煮る”“蒸す”などの調理を一台で行える炊飯器兼鍋製品。ここ数年、自主的に「電鍋」の投稿を行いコメントのやり取りをする動きが活発に行われているとか。
「電鍋」は、「2020年 食市場のトレンド」講演でも取り上げています。忙しい生活者のニーズは、時間を節約する「時短」という考え方から、もっとほかの大切なことをするための時間を作り出す「時産」という価値観に変わっていると予測。「時産ニーズ」に繋がるキーワードのひとつとして「時産家電」を挙げました。この年、子育て世帯や共働き世帯に売れたのが、“ほったらかし家電”です。自動調理メニューを65種類搭載した電気圧力鍋や、新メニューをどんどん覚えてくれる無線LAN搭載の自動調理鍋などと一緒に紹介したのが、「大同電鍋」です。台湾では嫁入り道具の一品として選ばれたり一家に一台あるといわれたりするほど普及している国民的家電は、当時、どこか懐かしくレトロなデザインが注目され、シンプルな仕組みで使い勝手がいいと口コミで広がりました。
「時産ニーズ」に派生するもうひとつのキーワードは「進化系料理キット」。料理の時間を節約したいと思う反面、「“料理をしている実感”をもっと持ちたい」という生活者のニーズに応え、新たなコンセプトの商品が登場。料理経験や技術がそれほどなくても、短時間で手作りの楽しさ、充実感を味わうことができる料理キットが、Oisixブランドから発売されました。
24、25年連続して弊社が取り上げたトレンドキーワードに、「プロパ(=プロセスパフォーマンス)志向」があります。「時短」を求めることと、じっくり時間をかけたいことの二極化が鮮明になっていて、中でもプロセスを楽しみたいという欲求は大きくなっているというキーワードです。20年の「時産ニーズ」と同じです。
感謝!「食のトレンド情報」vol.1000
「食のトレンド情報」Excel版は、配信1000回を迎えました。これもひとえに会員の皆さまのご厚情の賜物と心より感謝申し上げます。
スタートは1999年。ある食品会社の依頼で始まりました。新聞や雑誌から食の情報を集めてほしいという内容です。当時、HanakoやDIMEのほか、現在は休刊しているChouChou、Olive、東京ウォーカーやTOKYO★1週間といったさまざまな雑誌が、街と食の情報を頻繁に掲載。食品商業や月刊コンビニなどの業界誌も多数出版されていました。テレビのワイドショーや情報番組は、毎日のように食の情報を取り上げていて、その内容もまとめてほしいと要望されました。ある特定の食品と健康効果を関連付けた内容が放送されると、その食品があっという間に売り場から消えるという現象が起こるほど、影響力が大きかったからです。特に、「午後は○○おもいッきりテレビ」(日本テレビ)と「ためしてガッテン」(NHK)は食業界に注目されていました。とにかく、誌(紙)面と画面に食の情報が溢れていた時代です。
2003年からは、それらの情報を基に食市場のトレンドをキーワードで表現。食市場を俯瞰で考察した「食市場のトレンド相関図」を作成し、講演を始めました。初回の講演は、「FOODEX JAPAN 2003(第28回国際食品・飲料展)」です。04年から現在の「食のトレンド情報」Excel版とほぼ同じ構成になり、同年12/6に配信したvol.1から数えて今回が1000回になります。22年1/1、もっと手軽に読みたいとのご要望にお応えして内容をコンパクトにした「食のトレンド情報」Web版をローンチしています。
今回、1000回を記念して【食市場のトレンド相関図/2003-2024年】、毎年年末配信分に掲載される、その年のトレンドを振り返るhimeko’s VIEW【HITキーワードBEST10】を初回の13年から24年の12年分を添付いたしました。トレンドの流れを再確認していただければ幸いです。
今後も、ひめこカンパニー並びに「食のトレンド情報」をよろしくお願い申し上げます。
海外で抹茶はスーパーフード?
海外で、抹茶が大人気のよう。京都の日本茶専門店には、オープン前から外国人旅行者が並び、抹茶を何缶も買っていくとか。30g入り1缶、1万2000円、8000円などの高級な抹茶は、ほとんどが売り切れ状態。生産が追い付かない状況です。
抹茶人気の理由は、健康と美容。日本人が長寿で女性が年齢よりも若く見え、肌がきれいなのは、抹茶を飲んでいるからと思っているよう。抹茶を常飲している日本人は茶道関係者以外ごく稀だし、日本茶を淹れる人もどんどん減少しているのだから、この説は間違っていると思いますが、日本茶が健康にも美容にもいいことは確かです。
茶の木に直射日光が当たらないように覆いをかけ、甘みとうま味を十分に溜め込んだ新芽だけを摘み、蒸気で蒸した後、乾燥させ、茎や葉脈などを除いて軟らかな茶葉のみを選別。これを石臼で挽いたものが抹茶になります。機械で粉砕する方法もありますが、機械自体が熱くなり、茶葉が変質して色や香りが落ちるといいます。24時間石臼を回し続けてもできる量はほんのひと山。高級抹茶は量産できるものではありません。海外では転売も行われているようで、価格は高騰。円安が追い風になり、外国人旅行者には安く手に入れられるスーパーフードになっているのかもしれません。できれば、茶道という日本固有の文化に興味を持ったり、ヒーリングなど精神的な効果を期待したりなどの理由で、深く長く愛していただけるとうれしいのですが。
昨年末、高校の同級生が自宅の茶室で茶会を開いてくれました。母の遺品となった茶道具をもらっていただいたのはずっと前のこと。その道具を使って私にお茶を点ててあげたかったという涙が出るほどありがたいお誘いです。が、私はまったくの不調法。足が攣って正座すらできぬ有様。目の前に置かれたお菓子を取ったら「まだ早い!」と一喝。お点前をいただくあいさつすらままならない。外国人に、文化だ精神だなどと宣う資格などない日本人です。
2025年、不安感が広がる食市場のキーワード
2025年が始まりました。例年以上に不安な気持ちでお正月を迎えました。不安感は年々強くなっています。
今年は、トランプ氏が再び米国の大統領に。世界中が彼の手腕(?)に戦々恐々としています。日本においては、円安がますます進んで食料品が値上がりするのではないか、米国への輸出品の税率が上がり産業が衰退するのではないか、増税路線が加速するのではないか。ますます激しくなる気候変動による農産物への影響も懸念され、私たち生活者にとって、心落ち着く1年にはなりそうもありません。
そんな状況を鑑み、私は、“2025年のトレンドキーワード”の決定に当たり、「身体と心の健康」と「癒やしニーズ」を柱にしました。先行き不安を感じる生活者が食に求めるものは、「健康に寄与し、心の安定をもたらすもの」。そして「無理のない楽しさ」です。
前者を反映するキーワードとして「骨活」「美活腸育」「エビデンス重視」「ウェルパ志向」「チューニングフード&ドリンク」などを、後者のそれとして「プロパ志向」「五感消費」「エモ消費」「背徳ウェルビーイング」「利他消費」などを挙げました。過去にも経済が低迷し、先行き不安感が広がり、節約志向が高まった年には、ちょっとした驚きや楽しさが得られる「五感消費」や、ヘルシー志向に疲れ、敢えて健康的ではないものを求める「アンチヘルシー」、心が動くか否かを消費行動の基準に置いた「マインド重視」、自他共に満足したい「共感消費」などのキーワードが挙がっています。
2/12の“スーパーマーケットトレードショー”を皮切りに2/14には日本惣菜協会主催の“フォローアップセミナー”など、今年もさまざまな会場で「2025年食市場のトレンド」講演をいたします。もちろん、「食のトレンド情報Excel版」法人会員の皆様には、貴社に伺って講演をさせていただきます。是非、最新の情報をお聞きください。
素敵なご夫妻とおしゃれなキッチン
料理が好きで、料理が上手な人のキッチンはすぐに分かります。20代前半、駆け出しの料理編集者だった私にとって、撮影で伺う料理研究家のおしゃれなキッチンは憧れでした。週末、そんな時代を彷彿とさせる素敵な出会いがありました。避暑地の築48年の家にお住まいの齢80を超えたご夫妻です。
迎えてくださったご主人はデニムにギンガム柄のフランネルのシャツをアンダーに合わせ、首にはラフなスカーフ。マダムは真っ赤なカーディガンにパンツ、胸元には金のブローチ。カーディガンと色を合わせたかのようなルージュを、白い肌と軽くアップにしたグレイヘアが引き立たせ、まさにマダムの貫禄です。
白いタイル貼りのキッチンカウンターは南側のテラスに向けて広がり、四季折々変化する雑木林の彩色を楽しみながら料理ができます。シンクは、理科室で使われる深めの実験用。陶器製の大きなシンクを探し求めた結果とか。古い食器棚には、ご両親から受け継いだ古伊万里の赤絵と染付の皿、イタリアで求めたというベッキオジノリホワイトの洋食器が並びます。
室内には、美しくないものは何ひとつありません。もちろん、キッチンにも。炊飯器や電子レンジなどの調理機器は一切見当たりません。その代わり、木製のスパチュラやターナーがアンティークなジャーに。水を張ったボウルにはユーカリが、小さな花器には野ばらの実がさりげなく飾られています。小粒のじゃが芋は鉄製のアンティークなカゴに入れた厚手のクラフト紙の袋に、白いタイルに映える緑色の野菜もシンプルなざるに載せられています。壁掛けのコーヒーミルで豆を挽き、ドリップしたコーヒーの香りが、暖炉ではぜる薪のにおいと混ざり合い、冬の避暑地ならではの静かな時間を演出します。
ロジェールのガスコンロの種火が点かないからマッチで火を点けるのとマダム。マッチより着火ライターのほうが安全では・・・と言い掛けましたが、マダムのキッチンには似合いませんよね。
おいしいものへの執着
先日、再び「銀座 慈生」に伺いました。おみやげに、“明石の鯛のかぶと”をいただきました。この日、“お向こう”に刺身として出された魚です。早速、焼き物に。かぶとのほかにも身が付いた部位がいろいろ。箸でほじくりほじくりいただきました。身を食べ尽くした後は、迷わずだし取りです。ていねいにアクをすくいながらコトコト。部屋中に香ばしい焼き魚の風味が広がります。
ひと口いただくと、そのまま飲み干してしまいたくなります。この時、思い浮かべたのが、エースコックが11/4に発売した、手間のかかる魚を手軽に味わうことができる新感覚のカップスープ「飲む焼き魚 濃厚魚介醤油スープ」。“焼アジパウダー”をふんだんに加えた、苦味やうま味をしっかりと感じられる魚介しょうゆスープで、まるで焼き魚を食べているような香ばしい風味が広がるといいます。既に試したスタッフによると生臭さもなく、コンビニの塩むすびとの合わせ買いにぴったりだとか。
さて、このおいしいだしをどうしよう。「銀座 慈生」の献立は、ご飯ものから始まります。先のコラムにも書きましたが、春にいただいた“たけのこご飯”のそれはそれはおいしかったこと。今回は、しじみのうま味を十分に引き出したお粥をいただきました。そのうま味が舌に残っていたのか、迷いなくお粥に。だしにご飯を入れて塩を少し。長ねぎのせん切りを添えていただきます。こんなとき思うのです。おいしいものへの執着があってよかったと。素材を前にしてまだ味わえるまだ楽しめると思うだけでうれしくなります。誰でも、おいしいものは大好きです。でも、それを堪能できる幅は、人それぞれです。
そんなことを考えていたら、翌日のSNSに某テレビタレントが発した「生臭いからあら汁が嫌い」という記事。もちろん、鮮度や下処理の如何でいただけないあら汁もあるのでしょう。が、おいしいものには、特有のにおいがあり、それが独特のうま味に繋がっていることもまた事実。それを“臭み”と片づけてしまうのももったいない話だと思うのです。
ワタミが手掛ける新生サブウェイに期待
10/25、ワタミは日本サブウェイを完全子会社化しました。グローバル本部であるオランダのSubway International B.V.(サブウェイインターナショナルビーブイ)と日本におけるサブウェイのマスターFC契約を締結。今後は、ワタミが国内のサブウェイ事業を展開します。
ワタミは居酒屋業態で発展しましたが、近年は宅配食事サービスや介護事業、唐揚げ店、焼肉店やインバウンド向け串焼き肉店など、脱居酒屋依存を目指してさまざまな展開を試みています。特に創業者の渡邉美樹氏が議員を辞めて会長兼社長に復帰してからのワタミは話題が豊富で、私にとって目が離せない会社のひとつになっています。ワタミの素晴らしさは、真面目なところ。立場によってとらえ方はいろいろでしょうが、少なくとも私が見聞き体験してきたワタミ本部の皆さんの商品に対する姿勢は、とても真摯です。
セントラルキッチンでは加工食品はほとんど使わず、基礎調味料からオリジナルの混合調味料を作り、野菜や肉を手切りし、それをキットにして各店に配送しています。そんなワタミが2002年に「日本に有機農業を広げていくこと」を目的に設立したワタミファーム。それを生かし切れる業態として最適と思われたのが、日本サブウェイだったのでしょう。
一方、日本サブウェイは、サンドイッチ業態。とはいえ、日本人にはサンドイッチとして認識されているのかは疑問に思うところ。日本サブウェイは、「野菜のサブウェイ」をアピールしたかったようなのですが、その野菜が魅力的だったかと言えばそうでもなく。加えて、パンを選び、トッピングを選びと面倒なオーダーシステム。プレゼンテーションは頑張っているのに、なぜか満足感が得られない原因はいろいろあります。
さて、日本サブウェイでワタミは何をするのか。おそらく、モスフードサービスのような野菜の押し出し方に加えて、さらに魅力的な野菜の展開を図るのではないかと予想します。渡邉氏のもとには、ハンバーガーのチェーンをやらないかという話が多数持ち込まれていたとか。ハンバーガーでもサンドイッチでもない、おそらくは広角的概念を持ち込んだ新業態になるであろう舞台で、“オリジナル野菜で勝負をかける!”。やっぱり、渡邉氏は飲食業界で活躍すべき逸材です。