節約志向が強まる中、ハンバーガーチェーンの高価格帯商品の売上が好調。各チェーン、リッチな商品の品揃えを増やしています。
「マクドナルド」は、4月に期間限定で発売した“サムライマック・炙り醤油風トリプルビーフ”(税込780円~) を顧客のアンコールに応えて6/14から12日間限定で復活、「モスバーガー」は、国産牛100%使用パティの“新とびきりチーズ~北海道チーズ~”(同690円)を4年ぶりの定番商品として発売しました。「ウェンディーズ・ファーストキッチン」は高級バーガーの第2弾として、10枚近いローストビーフをビーフパティと一緒にはさんだ“ローストビーフバーガー”(同2090円)を期間・店舗限定で4/18から販売しています。
「シェイク・シャック」や「ウマミバーガー」、古くは「クア・アイナ」など、米国発の“グルメバーガー”と称される高級ハンバーガーの広がりによって、今や日本人経営のグルメバーガーショップも珍しくはありません。それは都市部においても地方においても。が、しかしここに来て、食材費の高騰と人手不足による人件費の上昇は、またも都市部と地方での格差を生んでいます。地方で人気のグルメバーガーショップの場合、財布のひもを固くする顧客に向けて食材費の高騰をそのまま価格に反映することができません。加えて、バイト代を上げなければ人を雇えない状態。自ずと、ワンオペ経営が続き、閉店という選択肢しか残らなくなります。
ハンバーガーショップひとつを見ても、都市部と地方の格差は歴然です。が、ここで注意すべきことは、分母です。都市部は、分母が多いから高価格帯のグルメバーガーを購入する分子が多いということ。逆もまた真なりです。都市部なら、高くても売れるというわけではなく、地方だから安ければいいというものでもない。分母と分子の鉄則は、いつの時代もどこにでも当てはまるものだと思います。
投稿者: 開発担当
プロテインクライシスの解決になるのか“納豆菌粉”
代替タンパク質源として、慶應義塾大学発スタートアップ、フェルメクテス(山形・鶴岡)が開発した新素材“納豆菌粉”。納豆菌を大量培養して乾燥粉末にしたもので、主成分は100gあたり70g以上がタンパク質です。カロリーがほぼ同じ小麦粉に比べてタンパク質を効率的に摂取できるうえ、もちもち感を高めるなど食品の物性を改善する効果もあるといいます。
大きな特徴は、生産効率が極めて高いこと。約60分で2倍量になるとか。スプーン1杯(1g)の納豆菌が24時間後には1600万倍の16トンになる計算です。必要なのは、大きなタンクとバイオマス由来の培養液のみ。バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源で、石油や石炭などの化石資源を除いたもの。麦わらやもみ殻、サトウキビやとうもろこし、菜種などで、食品廃棄物や台風で倒れた樹木も含まれます。
人口に対してタンパク質の需要と供給のバランスが崩れる“プロテインクライシス”が起こると予想される2050年。インドやアフリカの一部の国々では、人口が急増すると言われています。そのような地域において、未利用だったり、廃棄されたりしていた資源を使ってタンパク質源として納豆菌粉を生産することが可能です。フェルメクテスは今後、その土地その土地の納豆菌粉が作れるよう、培地に応じて納豆菌をカスタマイズしていくことを目指します。
日本では、植物性のタンパク質源として、大豆を原料に納豆やプラントベースフードが作られています。が、知っての通り、大豆は9割を輸入に頼っているのが現状。台湾有事とシーレーン封鎖の危険性が否定できない今、改めて食糧自給率の低さが大きな問題になっている我が国においても、納豆菌粉は救世主になり得るのかもしれません。
クリスマスの定番曲の思い出
師走に入り、街はクリスマスカラー一色です。この季節になるとよく耳にするのが、山下達郎氏の「クリスマス・イブ」。この曲を聴くと必ず思い出すことがあります。それはイタリアンのマダムの話。バブル期の人気レストラン。24日のディナータイムは、2回転3回転は当たり前でした。そんな中、若い女性が来ない相手を待っていたという話です。結局彼女は、何も食べないで二人分の食事代を支払って次の予約客のために席を空けたと言います。“きっと君は来ない”このフレーズが、見てもいない場景を思い浮かばせ、切なくなるのです。
日本人は、几帳面だからでしょう。日にちが決まっている行事は、その日にしないと気が済まないところがあります。新型コロナウイルス禍の初詣。神社は人混みを避けるため、12月にお参りしてもご利益は一緒とアピールしていましたが、さすがに日本人には通用しなかったようです。クリスマスイベントも、前後含めて1週間程度の余裕があれば、彼女は傷つかずに済んだかもしれないし、ティファニーのオープンハートはもっと売れたかもしれません。
一方、ホームパーティは25日まで頻繁に行われます。ママ友と、お習い事の友人と、家族と。料理を持ち寄ったり、デリバリーをしたりして複数回クリスマスパーティに参加する女性たちは多く、あるスーパーマーケットのコンサルティングをしていたとき、「カウントダウン・クリスマス」をコンセプトに、12月各週の販促企画を立てたりもしました。クリスマスほど、人によって、年齢や状況によって価値やとらえ方が変わり、楽しみ方が多様化するイベントはほかにはないと思います。
「クリスマス・イブ」でもうひとつ思い出すのは、気象予報士の“雪は雨になるが、雨は雪へとは変わらない”というコメント。標高が高い場所で雪だったものが、地表近くでは雨に変わることがあっても逆はないというもの。確かに。でもそういう意味じゃないんだよなぁ。
TKG推しを魅了する三田製麺所のTKM
最後の食事は釜炊き熱々ご飯に生卵にしょうゆのTKGと決めている私のアンテナを、久しぶりにピピッとさせたのは、「つけ麺専門店 三田製麺所」が創業15周年を記念して11/1から販売している“たまごかけ麺”の情報。メニュー写真でそそられ、食べ方動画で魅了され、実食して確信しました。やっぱり生卵は凄い!
“たまごかけ麺”は、麺に濃黄色の黄身がふたつのったシンプルな見た目。両手で箸とれんげを持ち、お好み焼きを返すがごとく下から上へと30回かき混ぜ、卵がふわふわになったら食べ頃。たれが全体にからんでそのままでもいいお味なのですが、味変として、トリュフオイルとカキだしじょうゆ、刻み海苔が添えられています。小ライスが付いていて、麺が終わったら残った卵液で“卵浸しご飯”が楽しめます。白身はどこにと思いますが、卵の泡立ちを見るとたれと一緒に丼の底に忍ばせているものと推測します。
この“たまごかけ麺”。発売1週間で早くも卵1万個を消費するほどの人気だとか。事実、私が店にいる間も“たまごかけ麺”は、やはり創業15周年を記念して発売された“特濃つけ麺”とオーダーを二分するほどの人気でした。濃厚な風味の卵とだしが利いたたれと三田製麺所のコシのある麺。この三者のバランスが絶妙で、TKG推しにはたまらないTKMでした。
因みに、人生の最後に食べたいもの「ラスメシランキング2022年版(パズルリング調べ)」で、1位は“寿司”、卵かけご飯は16位。同じパズルリングが「人生の最後に食べたいもの」をテーマにしたアンケート(2021年)では“卵かけご飯”が1位。どちらも分かる気がします。
青山の超格安居酒屋「中西」
こんなところにこんなお店が?ということは案外あるものです。先日、青山にずっと前からひっそりと営業するホットなうどんすきの店「中西」に行きました。
うどんすきは、〆の存在としてメニューにはあるものの、利用目的としては圧倒的に超格安居酒屋。青山にあっては、まったくもって稀有な存在です。気にはなってはいましたが、年齢がかさむほどに行きにくくなり、敷居はどんどん高くなっておりました。が、若者入りの4人組でこの店に行く機会を得ました。
ほんのりと灯る「うどんすき 中西」の灯篭式看板と板塀の外観からは、ちょっと高めな和食店の風情もあるのですが、そこには、「駐輪禁止」「携帯電話は店内で」「大声を出さないように」「近所で赤ちゃんが寝ています」などの貼り紙が。皆さん、かなりでき上がった状態でお帰りになることが分かります。それもそのはず、アルコールがかなり安いのです。例えば、ハイボールは1杯130円。これを倍量で頼むと20円引きの240円に。生ビールはジョッキで290円です。料理は、焼鳥やたこ焼きなどの定番のほか、ナン生地のピザや紅しょうがを散らした卵焼きなど、オリジナルも楽しめます。とてもラフな店内で働くのは、若い男子たち。客が少ない時間は暇を持て余しているようでしたが、いざ満席状態になるとサービスの動きの速いこと。彼らがサーバーからグラスに注ぐアルコールは、タッチパネルでオーダーすると間髪を入れずに提供されます。3時間半、4人でさんざん飲んで食べてお会計は1人3500円ほど。
帰りがけ、歩いて30秒ほどの場所にある老舗のバー「Radio(ラジオ)」へ。カクテルを1杯ずつ、チャージを入れて4人で1万3000円。青山は懐が深い。
信州のどうづきそば
11月初めの連休を利用して、友人を訪ねて蓼科に行きました。例年にない暖かさでしたが、それでも紅葉は真っ盛り。秋空をバックに落葉樹が織りなす自然の彩りは、ため息が出そうなほどです。
信州の秋と言えば、新そば。東京・青山のそば屋は、年中「新そばあります」の紙を貼っています。「新そばは秋」と固く信じていたので、「広告に偽りあり」と断定していたのですが、近年は栽培形態が変わり、春や夏に収穫した新そばもあるとか。一抹の不信感は残っているものの、己の無知を反省しています。
街道筋にはそば屋が並び、名店と言われる店には、紅葉狩りの観光客で列ができています。その中の一軒に入りました。そこで初めて出合ったのが「十割どうづきそば」。どうづきそばとは、そばの実を挽くなどして粉にせず、甘皮付きのまま低温水に2日間漬けて発芽しそうなところを杵搗機でついて直捏ねしたそば。皮付きのままなので香りやうま味が強く、栄養価も高いとのことです。まずは水そばでそばの風味を楽しみます。が、なぜか私たちにはその風味が感じられず、普通に挽いたそばと食べ比べても、その違いが分からず。こんなとき日本人は自分を責めるのが常で、何事もなかったかのように口を噤むものです。
そばと一緒にお薦めされたのは、どんこしいたけの天ぷら。1人前4枚が角皿に盛られて提供されたそれは、おそらく彫刻刀で仕上げたであろう幾何学模様。しかも、1枚1枚デザインが異なるのです。一皿980円は、おそらくこの細工代でしょう。
具だくさんでは不十分? ニーズは具のみに
今年、ちらし寿司や冷やし中華、焼きそばを作るとき、いろいろな具材を楽しみたい、リッチにしたい、ヘルシーにしたいといった欲求から、主役のご飯や麺よりも具材が多くなってしまうというコラムを書きました(vol.928)。が、ヘルシー感だけを求める生活者には具だくさんでは不十分なようで、主役外しを求める傾向にあるようです。
エースコックは2月、カップ麺「わかめラー 麺なし ごま・しょうゆ」をリニューアル発売しました。わかめラーメンブランドが発売40周年を迎えた節目として、過去に期間限定商品として販売、大きな反響を呼んだ「わかめラー 麺なし」を定番商品として発売したのです。“麺がなければわかめスープ?”という声が聞こえそうですが、湯を注いで3分待ったそれは、わかめたっぷりでスープの浮き実の域を超えています。麺入りが343kcalなのに対し、こちらは46kcalです。
野菜の製造販売をしているサラダコスモは、まるか食品の「ペヤング」とコラボ。緑豆もやしに、キャベツや人参、にらをミックスしたカット野菜に、ペヤング特製ソースをセットした「ペヤングやきそば風もやし炒め」を発売しました。簡単に言うと、“ペヤング風味の野菜炒めセット”。「ペヤング ソースやきそば」が544kcalなのに対し、こちらは84.1kcalです。
外食市場で、いち早く麺なしメニューを提案したのは、リンガーハット。2015年、人気商品「野菜たっぷりちゃんぽん」の麺がない、国産野菜を480g使用した「野菜たっぷり食べるスープ」を発売しました。「野菜たっぷりちゃんぽん」を注文するお客様から、「麺半分」「麺抜き」という特別な注文をいただくことか多く、発売を決断したと言います。22年11月にはリニューアル。豚肉と揚げかまぼこ、エビに代え、ゆずこしょう風味の鶏ムネ肉のスライスを加え、低カロリー高タンパク質な商品に仕上げました。「野菜たっぷりちゃんぽん」レギュラーサイズが790kcalに対し、「野菜たっぷり食べるスープ」は420kcalです。
私はというと、やっぱり主役なしはちょっと。主役ありだからのおいしさは外せません
ホテルのレストラン
これまで前時代的な印象を持たれがちだったホテルのレストランに変革の時が来ているという記事がありました。ホテルの顔として脚光を浴びるようになってきたという内容です。
“前時代的”。とりわけ、ホテルのフレンチにはその印象があります。日本のフレンチの黎明期は昭和の時代、ホテルレストランから始まっています。当時、帝国ホテルの村上信夫シェフ、オークラの小野正吉シェフなど総料理長の名前が一般にも知られるようになり、ホテルフレンチは女性たちの憧れでした。がその後、「街場フレンチ」と言われるホテル経営ではないフレンチレストランが隆盛を極め、多くの有名シェフが登場。個性的な料理で食通たちを魅了し続けています。
そんな中、「パレスホテル東京」は老舗フレンチレストラン「クラウン」を閉店。2019年に新たに「エステール」を開業しました。パートナーはフランス料理界の巨匠アラン・デュカス氏。街のレストランに負けない個性と味を打ち出すべく、土地の魅力を反映した料理を提供したところ、「クラウン」の頃と客層が大きく変わり、街のレストランと同じ感覚で利用する美食家や女性グループなどが増えたといいます。
一方、和食に磨きをかけるのが「帝国ホテル 東京」。21年、「神楽坂 石かわ」グループと組んで、「帝国ホテル 寅黒」をオープン。インバウンドとシニア層を意識して伝統と革新を“五分五分”のバランスで調え、“日本を思い出してもらえる、ここにしかない味”を提供しています。
折しも、1954年に開業した老舗の「山の上ホテル」が来年2月に休館するという情報が。20代の前半、先達に誘われて天ぷらをいただいたり、バーで飲んだりした思い出があります。ここだけに流れる時間と特別の趣。料理だけを切り取っては語れないものがホテルにはあります。
今の野菜に不要な下ごしらえ
料理レシピには伝承された“当たり前”がたくさん存在し、それが今の食材に適さなくなっている例がたくさんあります。そのことを改めて気付かせてくれたのが、10/12に放送されたNHKの「あしたが変わるトリセツショー」の「ごぼうのトリセツ」。
こぼうの味は好きなのに、料理はしない。なぜなら、下ごしらえが大変だからとの声に対し、ごぼうは下ごしらえをしなくてもいいという内容。昔のごぼうはしっかり成長してから収穫するので太く、長く、アクが強い。が今は、軟らかく、アクが少ない最適時に収穫される。ゆえに、土を洗い流すだけでよく、皮むきも水さらしも不要とのこと。私も以前は、母から教えられた通り包丁の背で皮をこそげ取っていましたが、ごぼうの香りと栄養は皮に多く含まれることを知ってからは、土を落とす程度に水洗いをするだけです。
このように昔の野菜を基準に今も下ごしらえが常態化、常識化している野菜があります。例えば、ほうれん草など緑が濃い葉野菜。アクの素となるシュウ酸を取り除くためにゆで、色鮮やかにするためにすぐに水に取るというのが常識ですが、昨今のほうれん草はそこまでアクが強くないので、さっと洗ってラップに包んでレンジ加熱という下ごしらえも紹介されています。
れんこんもごぼう同様、水や酢水にさらすことが当たり前のように言われますが、これは、褐変を防ぐため。筑前煮など白く仕上げる必要がなく、しかもすぐに調理をするのなら、水にさらす必要はないと思います。人参も工場で洗浄される際に皮の大部分が取り除かれているので、見た目を気にする料理でなければ皮はむかなくてもかまいません。
今の野菜を知り、下ごしらえの目的が分かれば、反対にしなくていいことにも気が付きます。が一方で、ウチはそうだから、それが当たり前だから、今までそうしてきたから。理屈は分かっていても止められないことって、案外あるのかもしれませんね。
かぼちゃとpumpkinとsquashと
10/31はハロウィンです。日本では、渋谷のバカ騒ぎとネットショップの仮装グッズ、スーパーやデパ地下の惣菜ばかりが目立ちますが、本来は秋の収穫をお祝いし、先祖の霊をお迎えするとともに悪霊を追い払うお祭り。世界各国ではさまざまなイベントが行われ、食市場も賑やかになります。
先日、米国・NYから帰国した友人がTrader Joe’s(トレーダージョーズ)やFairway(フェアウェイ)といったスーパー、国連本部前にオープンしているファーマーズマーケットの写真を送ってくれました。いずれの売り場も、ハロウィン一色。パンプキンフェイスを模ったチョコクッキー、かぼちゃのクリームを流し込んだ筒形のクッキー、キットカットもハーシーもハロウィン仕様です。
かぼちゃに至っては、緑、黄色、オレンジ、白、まだらに縞、真ん丸にひょうたん形、食用に観賞用と色も形も用途もいろいろ。それらを混ぜ合わせて買うことができ、選ぶだけでも楽しそうです。そう言えば以前、米国ではかぼちゃのことはsquash(スカッシュ)と表現すると聞きました。ところが、写真を見ると“pumpkin”の表示が。実は、私たちがかぼちゃと呼んでいる西洋かぼちゃは、米国では“winter squash”。反対にズッキーニなど皮が硬くなる前に収穫される皮も身も軟らかいものを“summer squash”と呼び、ハロウィンで使う観賞用の“pumpkin”はこの仲間に入ります。つまりpumpkinはsquashの一種ということ。因みに、オーストラリアではすべて“pumpkin”なのだそう。
最近よく見掛けるのが、日本で開発されたコリンキーという黄色のかぼちゃ。生食できるので、サラダや浅漬けにも使えます。先月伺った「オーベルジュ オー・ミラドー」では、勝又シェフがコリコリの食感を生かしたデザートに仕立てていました。