ダスキンは2020年までに、「ミスタードーナツ」の約4割に相当する500店でドーナツの店内調理をやめ、近隣の店舗から届けると公表しました。
原因はやはり、コンビニのドーナツ市場参入による売上の低下です。セブンイレブンがドーナツの販売を本格化した2015年。6億個販売、600億円の売上を計画していました。これは、ドーナツ市場の半分を飲み込む計算です。が、全国展開が完了した8月頃には早くも失速。翌年1月には全面リニューアルを開始しています。
一方、ドーナツ市場の9割近くを独占していたミスド。セブンイレブンの脅威に対し、店内でドーナツを揚げていることを武器に差別化が図れるとし、レシピや油の温度などの製造工程を見直しました。また1回に揚げるドーナツの個数を、約70個から、20~30個に減らして商品の鮮度をアップ。「ひと味違う、揚げ立てのドーナツ」をアピールしました。
しかしわずか2年で方向転換。ここに来て“揚げ立て”を放棄する理由は、利益の確保です。揚げないことで人件費を抑えられるほか、設備の保守など経費も削減できます。現行より2~3割売上高が減っても採算が合うよう、利益構造を組み直すのだそうです。さらに、ドリンクバーを導入したり、食事メニューを増やしたりして客単価を引き上げるとしています。
ミスドは、ドーナツで勝負することをあきらめてしまったのでしょうか。因みにセブンイレブンは、ドーナツの個包装化を進めていて、一部店舗ではパンコーナーに並べています。もともと100円コーヒーとの併せ買いを狙って投入したレジ横ドーナツ。今はドーナツより、おにぎりやロールパンの方が、コーヒーとの同時購入の比率が高くなっていると言います。
2年前、火蓋を切った“ドーナツ戦争”。揚げ立てドーナツが簡単に食べられなくなったという結果だけが残りました。セブンのせい? ミスドのせい?
投稿者: himeko company
魚介と肉を同時に。欲張りメニュー “サーフ&ターフ”
“サーフ&ターフ”。直訳するとサーフ=海、ターフ=牧草地です。これが料理のカテゴリーとなると、サーフ=魚介、ターフ=肉となります。ステーキとロブスターを盛り合わせた一品など、米国などではお馴染みの昔ながらのメインディッシュ“サーフ&ターフ”。魚介と肉のおいしさを同時に味わえる欲張りなメニューは、最近、よりクリエイティブで多様な料理に進化し、世界のガストロミックなレストランに登場しています。
パリの「パピヨン」では、豚の血入りのソーセージ”ブータン”に、肉厚なノルマンディー産のカキを合わせます。またコペンハーゲンの「レストラン レレ」では、低温調理したマスにカリカリに焼いた鶏肉の皮を重ね、それをパリパリに焼いた長ねぎで覆った一皿が人気です。
東京では、奥渋谷の人気レストラン「PATH (パス)」が、軽く火を通したカキに馬肉のタルタルを載せた一皿を提供。カキのクリーミーさとミネラル感が、馬肉の淡泊な風味を生かしつつ、味わいとボリュームをアップさせています。「L’Octave Hayato Kobayashi(ロクターヴ・ハヤト・コバヤシ)」(東京・渋谷)では、穴子のグリルに、とろりとしたフォアグラをソース代わりにからませます。「KABCO(カブコ)」(東京・六本木)では、海の幸と熟成肉のマリアージュのコースを展開。その中のひとつ、カキと熟成肉を合わせた”牡蠣肉”は、カキの天然アミノソースが熟成肉のアミノ酸と絡み合う絶品だといいます。
一方、和食店でも“サーフ&ターフ”は大人気。行列が絶えない高級立ち飲み割烹「かねます」(東京・勝どき)の“生うに牛巻き”は、高級海鮮のウニを贅沢な和牛で巻く、同店の”顔”と言われるメニュー。毎朝、築地で仕入れる鮮魚を使用した料理がメニューに並ぶものの、ほとんどの人が “生うに牛巻き”を目当てに足を運ぶというほどです。
いよいよ始まります “プレミアムフライデー”
今週24日、初めての「プレミアムフライデー」が実施されます。参加を表明しているのは、2000社超。いずれも百貨店や外食店、テーマパークなどサービスを提供する側の企業です。
例えば、「ザ・プリンス さくらタワー東京」は2/24限定で、広々とした部屋での宿泊と、SNSに投稿したくなるような料理を揃えた‟ストロベリーアフタヌーンティー”のセット商品を、女子会向けプランとして提供します。また京都ホテルオークラも2/24限定で、スイートルームに安く泊まれるプランを用意。シャンパンやグラスワインが飲み放題になるビュッフェ形式のディナーレストランの利用券1万円分も付けました。その他、新横浜プリンスホテル、ホテルニューオータニ幕張、第一ホテル東京などでも2/24限定プランを用意しています。ホテルが用意しているプランはいずれも働く女性をターゲットにした女子限定プランです。
一方、百貨店は。伊勢丹新宿本店では、レストラン各店で趣向を凝らしたおつまみとドリンクのセットを1001円で提供する特別メニューを用意。三越伊勢丹HDでは落語イベントを開催します。東急百貨店は飲食店「宇田川カフェ」と連携。東急フードショーのスタンディング式イートスペース「シブヤSTAND」で、できたて惣菜をつまみながら「シブヤビール」が楽しめるイベントを開催します。
外食市場では、モスフードサービスが紅茶専門店「マザーリーフ」の本店で、午後4時から紅茶セミナーを開催。焼鳥チェーン「大吉」は、一部の店舗で通常より2時間早い午後3時に開店。サッポロライオンは午後3時以降、「エビス生ビール」を半額にします。その他、ほとんどの飲食店は、ハッピーアワーで対応するものと予想します。
旗振り役の経済産業省と経団連などの経済団体は、消費喚起を期待していますが、果たして結果は?
カスタマイズサラダのチェーン店「サラダストップ」
「まいどおおきに食堂」を展開するフジオフードシステムがFC展開を図る、シンガポールのサラダ専門店「サラダストップ」。当初6月に東京都内に1号店を開くとリリースを出していましたが、結局、表参道に1号店をオープンさせたのは11月1日。今年1月30日には六本木に2号店ができました。
メニューは、サラダ、ラップ、グレインの3種。お客様はまず、ロメインレタスやキャベツ、ケールなどからベースの葉野菜を選び、続いて約50種類の食材からトッピングを6種類、18種類の中からドレッシングを1種類選びます。カスタマイズが基本ですが、カスタマイズが面倒な人にはシグネチャーサラダもあります。
お客様が選んだ葉野菜と具材はいったんまな板の上にあけられ、食べやすい大きさにカットされます。その後、ドレッシングを混ぜ合わせて再びボウルに盛り付けられるか、或いはラップであれば薄い生地で包まれます。こんなにも大量の野菜を包めるのかと思うのですが、青手袋をはめた手で抑え込みながら見事にラップしてしまいます。この青手袋、ちょっと違和感がありますが、食材にない色のため、混入した場合すぐに目に付くという利点があります。
トッピングは、チキンやアボカドなどは有料で、それを入れると1350円ぐらいになり、競合する「クリスプ・サラダワークス」と比較するとやや高く感じられるでしょう。お客様は迷い、野菜のカットに時間がかかり、列はなかなか進みません。スタッフは多いものの、手が回っていないのがよく分かります。
本部は、2019年までに主要都市に計20店の出店を目指しています。サラダショップがあちこちに登場している昨今。すぐに新たな付加価値が求められるでしょう。果たして何店舗まで伸ばせるのか。今後も見ていたい業態です。
欠勤のペナルティと恵方巻のノルマ。明確化したコンビニの問題
先週、コンビニに従事するアルバイトに関して、ふたつの問題が話題になりました。ひとつは、アルバイトを休んだ女子高校生に対し、代わりの人材を補充できなかったという理由で休んだ時間分の報酬と同額が、ペナルティとして支払われるべきアルバイト代から差し引かれたこと。そしてもうひとつが、恵方巻の販売ノルマです。アルバイトの学生は自分、家族、友だち、先生にまでお願いして何とかノルマをこなすとか。それが叶わない場合は、自ら購入。食べ切れないものは捨てていたと言います。
労働基準法に照らすと、ペナルティの額が法定金額を超えている、罰金は報酬と相殺してはならないなど、明らかに店側は違反をしています。何より、アルバイトの学生に人員の補充をする義務はありません。しかも、もし運よく代わりの人が見つけられたとして、オーナーは、面接や労使の契約など何の手続きもなく、その人を即日働かせるのでしょうか。現金のやり取りがあり、食品を販売している店で。余りに安易ではないでしょうか。もちろんそこには、常態化する人手不足に悩むコンビニオーナーの現状があり、同情もしますが。
さらに今回、コトが大きくなった理由に、コンビニ本部の対応のお粗末さがあります。「フランチャイズ店がやったことだから本部は関係ない」といった態度は、当事者はもちろん利用しているお客様に対しても、いい印象を与えないことは明らかです。多くのお客様はブランドを信用しているのであって、フランチャイズ契約をしている会社または個人を知りません。
恵方巻の問題も、さもあらんと容易に想像できてしまうことが、却って悲しく思います。クリスマスケーキ、おせち、恵方巻と、コンビニのイベント商品は、即ノルマ商品になります。この問題が明確化した今年、私の中で恵方巻は、縁起のいいものではなくなってしまったように思いました。
小売りから外食までセルフレジ化が進んでいます
米国のスーパーマーケット業界では、セルフレジを撤去する動きが活発化しています。約2230店を展開するアルバートソンズは、ほとんどの店舗からセルフレジを撤去する予定です。理由は、買い物客と面と向かって対話する形が好ましいから。急ぎのお客様や買い上げ点数が少ないお客様には、エキスプレスレーンを増やすことで対応します。
一方日本では、すかいらーくが、東京都心にある「ジョナサン」「ガスト」「バーミヤン」で1/17から、試験的にセルフレジの導入を始めています。ランチ時にレジが混んでお客様に迷惑をかけている、レジで不要になった人手をフロアに回し、接客や片付けなどのサービス向上に繋げられる、というのが理由です。
セルフレジは、既に導入が進んでいる食品スーパーや量販店に加え、マクドナルドやアパレルのジーユー、無印良品、CD販売のHMVなど、FF業界や小売業界にも広がっています。人件費の節約と釣り銭の間違いをなくすことが目的です。
あるスーパーで聞きました。長年レジ打ちをしている女性がいて、お客様とはすっかり顔馴染みだそうです。おばあさんが安売りに気付かず割高な商品をカゴに入れていたら、「今日はもっと安いのがあるわよ」と教え、いつも夫婦で来るおじいさんが一人で来店したら「奥さんは?」と聞き、病気だと知るといたわりの言葉をかける。だから、高齢のお客様の多くがレジの女性に会うことを目的に来店するのだそうです。そんなことされたらレジが混んで仕様がない、とお思いになる方も多いでしょうね。
高齢者がセルフレジに戸惑えば、セルフレジとてスムーズには捌けないでしょう。やはりコミュニケーション重視とスピード重視の両方のレジがあるといいですね。
おみやげ選びはご当地名物より無難さを優先
JR名古屋駅構内の売店で昨年4月から中止されていた浜松名物「うなぎパイ」の販売が、9月から再開されました。8月下旬、「名古屋駅の売店からうなぎパイがなくなっている」という投稿がきっかけでSNS上で話題になり、再開が決まりました。‟おみやげは名古屋のご当地物で揃えたい”という東海キヨスクの熱い思いが否定されたのです。確かに「うなぎパイ」は、浜松の銘菓。ならば伊勢名物の「赤福餅」を売っているのはなぜ?という疑問が残ります。
改めて考えてみれば、ご当地名物が人気のおみやげだった時代ははるか昔です。川越の芋菓子、信州の栗菓子などは産物を利用したおみやげ、仙台のずんだ餅や新潟の笹だんごなどは当地の食文化から生まれたおみやげです。横浜の焼売や長崎のカステラは歴史的な背景があります。それらのいずれでもなく、おみやげとして開発された商品が、今は圧倒的に多くなっているのです。例えば、東京の「東京ばな奈 見ぃつけたっ」、仙台の「萩の月」、札幌の「ロイズ 生チョコレート」、博多の「博多通りもん」などは、おみやげとしての認知度がかなり高い商品ですが、ご当地ならではの特徴があるかと問われれば、首を傾げざるを得ません。さらに言えば、静岡駅の1番人気は、「安倍川もち」ではなく「うなぎパイ」。名古屋駅の一番人気は「赤福餅」、新大阪駅の一番人気は「豚まん」で2位は「赤福餅」です。京都駅でも「赤福餅」は2位に入ります。因みに1位は、「八つ橋」ではありません。抹茶生地のバウムクーヘン「京バウム」です。3位以下も抹茶入り菓子が並びます。京都らしいと言えばそうですが。
ご当地色より、おいしさと珍しさ、そして何より無難さが、おみやげ選びには優先されるようです。
他業界からの外食市場に参入。目的は収入源やファン獲得
紳士服大手が相次いで外食市場に参入しています。人手不足、材料費の高騰、衛生管理にクレーム対応などなど、決して楽な商売ではない外食業。アパレル各社が参入する理由は何でしょうか。
唐揚げ専門店「からやま」やトンカツ店「かつや」をFC展開するコナカ、「焼肉きんぐ」などを同じくFC展開する青山商事。両社とも、今後を見据えた新たな収入源として外食業を選び、その理由として、郊外への出店ノウハウを生かせること、紳士服店と併設することによって空き駐車場を有効利用できることなどを挙げています。
アパレル会社が外食市場に進出する例で古いのは、「コムサ・デ・モード」の系列の「カフェ・コムサ」でしょう。現在約30店舗を展開。全国に広く散らした出店は、ブランド訴求の役割が強いことを意味しています。ユナイテッドアローズも原宿本店にカフェを併設。今はバーにリニューアルして営業を続けています。自動車会社も飲食店を展開しています。メルセデス・ベンツは東京・六本木の「メルセデス・ベンツ コネクション」において期間限定で1200円のこだわりラーメンを販売、トヨタは安息と上質をテーマにしたスタイリッシュなビストロ「インターセレクトバイレクサス」を青山で展開しています。前者は若者の注目を集めるため、後者はブランドイメージの構築とファン獲得が目的でしょう。
他業種が、目的こそ違えど外食市場の利用価値が高いと見ている理由は、食が最も生活者との接点が密な必需品だから。加えて、縦横の幅が広く表現方法が無限にあること、またFCという参入しやすく拡散しやすいシステムが構築されているからです。外食市場の活性は望ましいこと。他業界からの参入も新たな刺激剤になります。
最近、恵比寿で人気です。“天ぷらバル”
東京恵比寿では今、カジュアルな天ぷらバルが人気です。いずれの店も、定番の素材から創作的なネタまで、揚げ立てがリーズナブルにいただける、新種の天ぷら屋さんです。
その中の1店が、「喜久や」。カウンターが板場を囲む立ち飲みスタイルですが、雰囲気は女性向き。飲み物は、スパークリングから日本酒、焼酎と揃い、この時期うれしいヒレ酒もあります。人気のネタは、大根、エビ、イカ、カキ、万願寺。エビ以外はふたりでシェアできる大きさで、200円から300円台。大根には、おでんだしが浸みています。タラ白子、辛子明太、ウニも天ぷらになり、パクチーはかき揚げになって提供されます。
カウンター越しの板場では、天ぷら職人が、オーダーが入ったネタを次々に揚げていきます。江戸時代の寿司が“つまみもの“だったように、揚げ立ての天ぷらを立ち飲みでいただく。長っ尻はいけません。さっと頼んでとっとと飲んで食べて出る。そんな使い方がぴったりの店です。因みに、13坪で月商630万円。2020年までに首都圏を中心に22店の出店を目標にしているそうです。
他にも、創作系のネタをカリフォルニアワインと楽しむ「EBISU FRY BAR」や、イタリアンやスパニッシュをベースにした料理が揃う「テンプラ ワバル」など、ユニークな天ぷら屋さんが続々オープンしています。
家庭で揚げ物をしなくなり、トンカツやから揚げのFFが急増しています。天ぷらも同様。食材が多い、カラッと揚がらない、揚げている間に食欲がなくなる、揚げている人は揚げ立てが食べられない。揚げ物の中でも天ぷらは難度が高い料理。吟味されたネタを揚げ立てで、しかも手頃な値段で食べられるのなら、ウケないはずがありません。
健康志向のスーパー「ビオラル」。メッセージ力のある売り場作りを
ライフコーポレーションが6月、大阪・西区にオープンさせたBIO-RAL(ビオラル)。“心も身体も健康で美しく豊かな毎日を過ごしてもらいたいと願うスーパーマーケット”をコンセプトにした新業態です。「オーガニック、ローカル、ヘルシー」と「安心、トレンド、高質」をテーマに、通常取り扱う商品を最低限にし、その分、自然派や健康志向の商品を増やしているのが特徴です。
この種の業態の難しさを見事に表しているのが、野菜コーナー。「通常の野菜」「オーガニック」「農家さん直送」
「特別栽培・エコファーマー」と4つの種類で展開されています。「農家さん直送」はほぼ和歌山県の農家から直送されていて、栽培者の顔写真がパッケージに貼られています。そこになぜか群馬県産のよく見るパッケージのほうれん草が。価格は、198円。近くにもう1種、「飛騨ほうれんそう」と書かれたものが258円で売られています。POPに小さく「エコ農産物」とあるだけ。「野菜でエコってどういう意味?」そう思う生活者は多いでしょうね。「農家さん直送」コーナーに、フツーのほうれん草があるのは、その時期、契約農家で収穫できなかったものに関しては信用できる地域の農協から仕入れているからだそう。それなら、「通常の野菜」コーナーに並べたほうが、お客様が混乱しないと思うのですが。
お客様に、商品を通して安全安心と健康を届けたいという気持ちはあっても、それを的確に伝えるのはとても難しいことですし、商品を安定的に供給することも同様に簡単ではありません。モノは調達できても、伝える力がないと売れないのが、この手の商品。売り手の思い込みが強いほど、お客様との温度差が生まれがちです。もう一度スタートラインに戻り、商品自信が強いメッセージを放つような売り場作りを再検討すべきでしょう。