韓国でも増えるひとりごはん。「ホンパプ」

 儒教文化の影響を受け、家族の団欒をとても大切にする韓国においてすら、近年、独身世帯の増加に伴い、ひとりで外食する若者が増えているといいます。
 日本で「おひとりさま」が話題になったのは、2005年。それまで2人以上で行動していた女性たちが、人に気を使いたくないという理由で、ひとりで行動するようになりました。食事も、飲みも、ひとり。この流れを受けて、女性ひとりでも気軽に入れる立ち飲み屋が増え、旅館は「おひとりさまプラン」を企画しました。当時、雑誌「Hanako」は、「おひとりさま」の特集を展開。ひとりで行けるフレンチや和食などのゴージャスラインから、普段着ごはん、カフェやバー、ホテルや温泉旅館まで、さまざまな「おひとりさま御用達」を紹介しています。
 そして今再び、人気漫画「孤独のグルメ」さながらに、外食店で‟ひとり夕食”を楽しむ20〜30代が目立つようになっています。ホットペッパーグルメ外食総研の調査によると、2014年度の外食店でのひとり夕食の市場規模(首都圏・関西圏・東海圏)は3114億円で、13年度比3.1%と伸び率がトップ。外食単価をみても、15年度の全体平均が14年度比4.1%増だったのに対し、ひとり夕食は1211円と同12%増えたといいます。理由はやはり、人に気を使いたくないから。コンビニで食事を買って家で食べると、ゴミが出るから嫌だという意見もあります。
 韓国では最近、ひとりの食事を意味する‟ホンパプ(ひとりごはん)”という造語が浸透しているとか。ストレスフルな日常の中で、食事くらいは気を遣わず好きにしたいという気持ち、日本も韓国も同じなんですね。

水清ければ海苔育たず。海苔価格が高騰

 海苔の価格が急騰しています。理由はずはり、生産量の落ち込み。海苔は、海苔メーカーが養殖業者から海苔の原料となる海草を仕入れて加工します。その仕入れ価格が上がっているのです。漁業・養殖業生産統計によると、海苔の養殖生産量は1994年の48万3000トンから2016は30万トンと4割近く減少しました。価格高騰は、4年連続。毎年10%近く上昇しています。
 海苔は保存ができるので、生鮮野菜のように悪天候即値上がりとはなりません。だだ、これまでは周期的に訪れていた豊作に恵まれず、不漁が連続。結果、流通在庫を確保できなくなっています。加えて、産地が点在していたため、北はダメでも南はイイと、平均値を取ることができたのですが、東日本大震災で宮城県の生産力が低下。供給バランスがくずれました。
 生産量減少の背景にあるのは、海水の水質なのだそうです。と聞くと、悪化しているから?と思いますが、実は反対。きれいになったからなのだそうです。「水清ければ魚棲まず」という言葉が「孔子家語」にあります。過剰に清廉な人は、却って人に親しまれず孤立してしまうことの例えですが、事実、あまりにも水が清く澄んでいると、魚の餌になるプランクトンが繁殖しないので魚は棲みつかないとか。海苔生産地では、養殖シーズンの冬場に海水の栄養を取り戻すため水質を維持しつつ、下水処理能力を落とす取り組みを進めているといいます。
 海苔と言えばコンビニのおにぎり。価格に敏感な業態だけに、「塩むすび」のアレンジや海苔を使わない新種のおにぎりの商品化を始めているかもしれません。

ファミリーマートがコインランドリー事業に参入

 ファミリーマートが、100億円強を投じてコインランドリー事業に参入すると発表しました。これには驚くと共に、正直、いいところに目を付けたと思いました。
 現在コンビニ業界は、客単価は上がっているものの、集客数は伸び悩んでいます。弁当・惣菜といった自社開発商品での差別化、雑貨の値下げでの集客には限界があります。そこで目を付けたのが、近年、急成長しているコインランドリー市場です。集客手段は、コンビニ目的でなくてもいいという発想がそこにはあると思います。加えて、都心部以外、コンビニには広い駐車場は付き物。その空間を有効利用するというアイデアです。
 以前はコインランドリーというと、洗濯機を持たない下宿生活の大学生や単身者が利用するというイメージが強く、若い女性は、特に夜間は怖くて利用しづらい存在でした。ところが最近は、そんなイメージを一変するコインランドリーが次々にオープンしています。布団やカーペットが洗える大型機、衣類がふんわりと仕上がるガス乾燥機、清潔で明るい店内は防犯の目的でガラス張りが基本です。滞在時間に読めるものは、新聞から女性向け雑誌まで最新号が揃っていますし、Wi-Fiが使える店もあります。単身者の増加、共働きで休日にまとめて洗濯をする生活者が多いこと、布団やカーペットなどの大物に洗える素材の商品が増えたことなどが、コインランドリーの利便性をより高めていると言えます。
 ファミリーマートは、コインランドリー併設店舗を2019年度末までに500店展開する計画で、実現すればコインランドリー業界で最大規模の店舗網になります。因みに、ファミリーマートの現在の店舗数は、サークルK・サンクスを合わせると1万8000店舗以上。これは奇しくも、現在のコインランドリー店とほぼ同じ数です。

ワタミ復活の兆し。“鶏”で脱・総合居酒屋

 脱・総合居酒屋を目指すワタミが、長らく続いた低迷から脱しつつあります。回復をけん引しているのは焼鳥店「三代目鳥メロ」と鶏料理中心の居酒屋「ミライザカ」です。2016年6月から出店を始め、今年3月には「和民」からの転換を一気に加速。今期中には「鳥メロ」「ミライザカ」が、和民ブランドの店舗数を抜く見通しです。
 ワタミは、脱・居酒屋依存にも挑戦しています。昨年8月には、テキサス風メキシコ料理店「TEXMEX FACTORY」を渋谷にオープン。現地風の内装や賑やかなサービスで非日常感を演出。女性客を増やしています。昨秋オープンさせたのが、ステーキ・サラダ専門店「にくスタ」。店内でカットしたチルド肉のステーキや牛肉100%の粗挽きハンバーグが看板メニューで、集客の目玉は15種類以上の野菜と20種類以上の惣菜などを常時揃えた「サラダ&デリカバー」です。自社農場や食材加工施設を持つ強みを生かし、有機野菜や手の込んだ惣菜を提供しています。集客は順調で、開業の翌月には黒字化。多店舗化を急いでいます。
 もちろん、すべての新業態が順調というわけではありません。「にくスタ」より一足先に多店舗化を進めた、刺身定食やしらす丼などを提供する「港町食堂ちゃぶまる」は、2015年に1号店を開業。一時は、首都圏で5店舗まで増えましたが、現在はすべて閉店しています。
 因みに、「三代目鳥メロ」展開のきっかけとなった「鳥貴族」は、28年ぶりの値上げが響いたのか、10月の既存店売上高は前年同月比で3.8%減少しました。塚田農場、モンテローザ、コロワイドも参入している焼鳥市場は、いよいよ競争が激化。ワタミに、一服している暇はないようです。

増える情報量。広がる食環境の格差と強まるストレス

 給食受託サービスのミールケアが、幼稚園や保育園を対象に、AIを利用した給食献立提案サービスを始めます。
 サービスに加入すると、園には、保護者が入力した園児たちの情報を基に組み立てられた献立表が届きます。全園児、同じメニューにはなりますか、アレルギーのある園児には配慮したメニューが提供されます。一方保護者には、園児が園で食べる食材の情報が写真付きで送信されるため、アレルゲンの有無も確認できます。さらには、栄養バランスに優れた1ヵ月分の献立を提案。加えて、園で提供される料理の作り方を動画で見ることができるほか、園での食事から、夜、家で食べるとよい献立なども教えてくれます。まさに至れり尽くせりです。
 子どもの食事を真剣に考えている保護者にとっては、うれしいサービスでしょう。文字による献立表では知りえない、さまざまな情報が入手できます。いやな言い方ですが、園の給食をある意味、監視することも可能です。
 保護者の中には、子どもが食べた給食の料理と量、栄養を確認して、夕食の献立を考える人もいるでしょう。かなり大変ですが、使いこなせば、完璧な食生活を子どもに実践させることができます。情報は役立ててこそ価値があるもの。前向きな家庭とそうでない家庭。情報が手に入りやすくなればなるほど、子どもの食環境の格差は広がります。そしてもうひとつ言えることは、まったく無関心な人を除けば、保護者にとってはさらなるストレスが加わることになるのです。

肉好きトランプ大統領の来日おもてなしメニュー

 トランプ大統領が来日。2日間という短い滞在期間の中で、政府はどんな食事でもてなしたのか、気になるところです。
 来日早々、「霞が関カントリークラブ」でのゴルフ会議を前にクラブハウスで提供されたのは、米国産アンガスビーフを使ったハンバーガー。東京・芝の「マンチズバーガーシャック」のオーナーシェフが作りました。“肉好きを120%満足させるMUNCH’S(やみつき)な一品”がコンセプトだけに、つなぎを一切使わず、塊から叩いた肉で作ったパテは、噛みしめると溢れだす肉汁がたまらないといいます。夕食は、鉄板焼きの高級店「銀座うかい亭」。ミシュランで星を得たこともある有名店で、最近はドラマ「ドクターX」のロケ地としても話題です。報道によるとメニューは、北海道産帆立て貝と白トリュフのサラダ、伊勢エビのソテー・ビスク仕立て、但馬牛のステーキです。翌日、迎賓館で行われた歓迎晩餐会では、松茸の茶碗蒸し、伊勢エビの酢の物など和の献立の中に、焼き物として佐賀牛のステーキが入っています。トランプ大統領の肉好きは有名。米国産牛肉と和牛のおもてなしは、米国産牛肉の良さも認めつつ、和牛の格別なおいしさを体験させて強硬な輸入圧力を回避するという目論見なのかな・・・などと、深読みしてしまいます。
 因みに、トランプ大統領。ファストフードやスナック菓子もお好きなようで、選挙キャンペーン中の食事は、ドミノピザとケンタッキーフライドチキン、マクドナルドのビッグマックが定番だったとか。こと食においては、「アメリカ・ファースト」を実践しているようです。

ベトナムでひとり鍋がブーム。食習慣に変化?

 しゃぶしゃぶの食べ放題店「しゃぶしゃぶれたす」(東京・中目黒)は、1席に1つずつ小鍋を設置。複数人で来店しても同伴者を気にすることなく、ひとり鍋が楽しめるサービスを始めました。メニューは‟和豚のもちぶた”や‟熟成牛タン”、“霜降り黒毛和牛”などメインの肉を選ぶ4コース。だしは、カツオだしや豆乳だしなど8種類、調味料はごまだれやぽん酢など約30種類から選べます。
 実はベトナムには、有名なひとり鍋専門の食べ放題店があります。店名は、「KICHI-KICHI」。しかも回転寿司よろしく、具材はベルトコンベアに乗せられて回っています。鍋のスープは、ベトナムではメジャーなきのこ、わさび、トムヤムクン、ちゃんこ(しょうゆ味)の4種類。回っている具材は、肉や魚、野菜やきのこなどの他、〆のインスタントラーメンも。お国柄でカエルもあります。
 共働きが一般的なベトナムでは、家族揃っての夕食をとても大切にしています。家族の一体感を重視していて、皆、同じ料理をいただきながら、その日にあったことを話します。そんなベトナムにおいて、ひとり鍋は受け入れられるとは思えないスタイルです。が、ちょっとしたブームになっているのは、提供スタイルの珍しさと、好みに合わせてカスタマイズできる点、そして何よりも、ベトナム人が鍋好きだということが大きいと推測されます。
 日本において、鍋料理は家族でつつくものという観念が強くありました。ですから、個食化が進み小鍋ブームが到来したとき、私は強い違和感を覚えました。経済発展と共に、家族の在り方や食習慣が変化した例は、数多くあります。ベトナムのひとり鍋はブームで終わるのか、はたまた、個食化への始まりなのか。注目したいと思います。

販路に合わせた商品開発を

 コンビニで売れている「サラダチキン」。セブンイレブンは、冷蔵の売り場で、「サラダチキン」と味の素のレトルトスープ「サラダチキンで作る参鶏湯」や「サラダチキンで作る濃厚ミネストローネ」を並べて販売。ちぎったサラダチキンとスープを器に入れてレンジで温めるだけで本格的な味わいが楽しめることを提案しています。2016年秋に試験販売したところ、並べて陳列した店は別々の売り場で販売していた店に比べてサラダチキン、レトルトスープともに売り上げが伸びたといいます。特にレトルトスープは常温売り場だけに置いた店に比べ、販売数量は12倍に。このほか、サラダチキンの棚の近くにカットサラダを陳列することも勧めています。
 商品名に“サラダチキンで作る”というフレーズがあるがゆえの展開です。コンビニで売られているレトルトカレーやカップラーメンも、サラダチキンを加えてアップグレードさせる提案はできますが、店頭販促だけでは伝えづらいでしょう。商品名に“サラダチキンで作る”とあれば、お客様には分かりやすく、何より、店舗の協力も得やすいと思います。
 スーパーマーケットは長らく、メニュー提案による組み合わせ販売を提案してきました。が、それがなかなか奏功しないのは、青果、鮮魚、精肉、日配など、部門の壁があるからです。温度帯の違うものは同じ場所に並べられないなど、制約もあります。コンビニの場合、店舗の裁量でいかようにも販促はできます。販路に合わせた商品開発がますます重要になっています。

小売、外食市場の人手不足。今が改革期

 日本経済新聞社がまとめた2018年度採用状況調査の結果で、百貨店・スーパー、外食・その他サービスの分野で内定者の確保が進まなかったことが分かりました。
 百貨店・スーパーでは計画を下回る企業が目立ち、ライフコーポレーションは17年実績比4割増となる230人の採用を予定していましたが、内定は214人でした。外食・その他サービスは、17年度実績に対して内定者数は3.6%増えましたが、計画値を14.3ポイント下回り、外食大手のコロワイドは内定者が75人と、計画の約半数にとどまりました。
 一方、大学生を対象とした2018年就職希望企業ランキング(キャリスタ就活)で200位以内に入っている小売り・フードサービスの会社は、ニトリ(47位)、三越伊勢丹グループ(129位)、アマゾンジャパン(140位)のみ。小売り・フードサービスのみの企業に絞れば、スーパーではイオンリテールが、コンビニではローソンが上位に入りますが、外食企業はひとつもありません。
 地方のスーパーでは、出店攻勢をかけたくても人手不足がブレーキをかけます。あるスーパーの社長は、レジ係を時給1500円で募集しても応募がないと嘆いていらっしゃいました。外食企業は長い間、パートの学生でも調理ができるように業務用食材を多用し、レシピの簡素化を図ってきました。そして今は、ベトナム人を積極的に採用しています。
 スーパーではレジの無人化が、外食店では厨房内でのロボット化が進められています。必要は発明の母というように、困難は改革のチャンスです。

立ち食いの店で思ったこといろいろ

 「いきなりステーキ」「次郎丸」「俺のだし」。最近行った、立ち食いの店です。
 まずは「いきなりステーキ」。客の9割は男性です。ステーキ300gに山盛りのライスは当たり前という感じ。女性客がライスなしステーキのみのオーダーをしていて、イマドキ感満載です。特製ステーキソースは、濃い目の味付け。熱々の鉄皿で水分が蒸発するため終盤にはかなり濃くなり、ライスが進むこと。ここのステーキは日本食です。
 「次郎丸」は、1切れ30円からオーダーできる立ち食い焼き肉店。内臓やカシラ(頭)など安い部位のみをオーダーし続けていれば安く上がりますが、A5等級などランクが付いたロースやカルビを挟み込むと、当然のことながら支払額はドンドン上がります。肉1枚1枚を懐具合と相談しながらオーダーするからか、焼き肉を食べているのに、なぜか寿司屋にいる気分になりました。
 「俺のだし」は俺の株式会社の店。そば屋とおでん屋がありますが、行ったのはそば屋の方です。メニューは、“肉そば”“鶏そば”“鴨つけそば”など数種のみ。あれ? 「俺のだし」なのに、“かけそば”や“もりそば”といっただしがストレートに味わえるメニューがない・・・と思い伺ったところ、この店、旧店名は「俺のそば」。しかし同名の店がすでにあったため、「俺のだし」に変更したとか。それって、名が体を表していないよね・・・と思いながら、最もだしが利いていそうな“海苔胡麻もり”をオーダー。食べてびっくり。つけ汁にラー油が入っていました(笑)。