ドンキは新しいスーパーのカタチを創れるのか

 ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)は、総合スーパーユニーの全株式(60%)をドンキホーテHDに売却。これによりユニーは、ドンキホーテHDの完全子会社になりました。
 両者は、昨年8月に業務提携を結び、11月にドンキホーテHDはユニーに40%出資したばかり。1年を経たずして100%株主となったわけです。実際、出資後のドンキの行動は早かった。3カ月後には、ユニーが展開する総合スーパー「アピタ」や「ピアゴ」の中から、売り上げが不振だった6店舗を一気に業態転換。「MEGAドン・キホーテUNY」としてリニューアルオープンさせ、売り上げを1.9倍に伸ばしたと言います。ドンキはまた、都内のファミリーマート3店舗で実験的に共同運営を始めていて、こちらも売り上げは、従来と比べて1.25倍のペースが続いているようです。
 ドンキと言えば、通路にまではみ出し、天井まで積み上げられた陳列手法。どこに何があるのか分からないことが却って、こんな所にこんなものがという驚きに変わるワクワク感が魅力です。安売り価格のPOPもドカーンと大きく、多くのスーパーの整然とした店内とは印象が異なります。商品構成や価格設定は本部ではなく各店舗が地域に合わせて決定。PB偏重ではなく、その時々で売れそうな仕入れ品を多数揃えて“編集”することを重視している点も、利益の集約と効率化を優先させるスーパーの施策とは逆行します。
 ドンキのユニークな戦法がユニーを復活させるだけでなく、不振に悩むスーパー業界全体の変革にまで繋がっていくのか、これからが楽しみです。

消費税10%まで1年。軽減税率でなくなる“イートイン”

 来年10月に予定されている消費税10%への引き上げを前に、4日、コンビニエンスストア業界が、客が持ち帰ることを前提に、酒類を除いた飲食料品全てを軽減税率の対象品にすることで、政府と調整に入っていると伝えられました。対外食戦略で拡大路線を続けて来たイートインコーナーについては休憩施設とみなし、「飲食禁止」の貼紙などで対応すると言います。
 コンビニのこの対応策に、軽減税率対象外の外食業界からは批判の声が上がるでしょう。税額2%の差がある上に、“休憩施設”で食事をさせないことの徹底がどれほどなされるのかは、疑問です。因みに、持ち帰れば8%、店内で食べれば10%の線引きが必要なファストフード店では、持ち帰る予定だったのが、会計後、店内で飲食することになった場合、またその逆の場合、お客様の申し出があれば、2%をいただいたり、返したりの対応を検討しているようです。
 3年前、スーパーマ―ケットはこぞってイートインコーナーを開設。店内で購入した惣菜を食べるお客様が増えました。ならばもっと居心地を良くしようと、店側は、テーブルを拭いたり、食べ終わった惣菜の容器を片付けたりするスタッフを常駐させ、焼き立てピザを皿に盛り付け、ワインをグラスで販売するなど、サービスを強化しました。が、これでは外食扱いになってしまうのではという懸念が。消費税10%導入を前に、せっかく始めたサービスを続けるべきかやめるべきか悩んでいたことを思い出します。
 さて今回は待ったなしの様相。スーパーは、イートインコーナーの扱いをどうするのでしょうか。

男だって甘いもので癒されたい。増えるスイーツ男子

 お菓子やケーキが大好きなスイーツ男子が増えているようです。マーケティング会社マーシュが5月に実施した調査によると、会社で仕事中や休憩中にお菓子を「毎日」または「よく食べる」男性はそれぞれ25%と23%で、合計すると半数近くに上ります。
 私が、甘いもの好きな男性が目立ち始めたなと思ったのは、2005年、夜の西麻布でのこと。お酒を飲んでいたと思われる男性たちが、ホブソンズ(アイスクリームショップ)の前でアイスを食べている光景をよく見掛けるようになったことがきっかけでした。“お酒の〆が、ラーメンからアイスに変わった!” と思った瞬間です。この年、森永乳業から「MEN’S バニラ」が発売されました。またグリコ乳業(当時)からは10-20代の男性をターゲットにした「とろーりクリームonプリン」が発売されています。この商品、開発のきっかけは“ビッグサイズ”の「プッチンプリ」です。元々は、お腹が空いた女子高校生向けにと開発されたのですが、ボリュームがあっていいと、夜のコンビニで男性を中心に売れました。ならば、男性が好むプリンを作ろうということで調査したところ、男性は、こってりとした甘さが好きということが判明。“量と味にこだわるメンズプリン”として、「とろ~りクリームonプリン」ができたそうです。その後、男のチョコレート、男のゼリーなど、男性をターゲットにしたスイーツ商品がたくさん発売されました。
 およそ半世紀前、「男は黙ってサッポロビール」というテレビCM がありました。男のやせ我慢を美学としてとらえていたと思います。が、時代は徐々に、男性にやせ我慢を求めなくなりました。“男だって癒されたい。酒ではなくスイーツで”。潜在的ニーズが顕著になったのが、2005年だったのかもしれません。

常態化する気象異常。野菜の価格高騰も常態化 ?

 気象予報では、9月は残暑が厳くなるとのことでしたが、さにあらず、一雨ごとにと言うよりゲリラ豪雨ごとに、ガクンガクンと寒くなっているような。
 9月は曇りや雨の日が多く、早速、野菜が高くなるのではと心配しています。昨年は、秋の長雨に加え、台風21、22号と立て続けに台風に見舞われ、ビニールハウスが壊れるなどの被害によって水菜や小松菜、ブロッコリーの価格が高騰。白菜やねぎなど鍋野菜も倍近い価格になり、鍋シーズンの本格的なスタートに水を差しました。野菜の価格は、通常1、2週間で落ち着くと言われますが、昨年は2か月以上も続き、1月に入っても高いままでした。スーパーでは、キャベツや白菜は1/4にカットしたものが中心に売られ、丸ごとを求めるのが難しかったことを覚えています。
 さらにこの高値は、今年に入っても続き、野菜がたっぷり食べられると人気のリンガーハットは8月、ちゃんぽんを値上げしました。カット野菜を製造販売するサラダクラブも、品薄状態が続き、値上げせざるを得ない状況になりました。因みに、一昨年も、昨年同様、日照不足や台風の影響で葉野菜が高騰しています。
 「今年の野菜の価格高騰は異常」と言う言葉が、毎年のように聞かれるようになりました。それは気象も同じ。「異常な酷暑」も「異常な雨量」も、もはや異常とは言えない状況になっています。風雨に強く、日照時間に左右されない野菜の開発、工場生産される野菜の量産化などと同時に、比較的価格が安定している野菜を利用する料理や加工食品の提案も必要です。

北海道地震。停電が食に影響

 9月6日に発生した北海道地震は、食業界にも大きな影響を及ぼしています。
 震度7を記録した厚真町を中心とした地域では、農地や農道の地割れ、畑の地盤沈下、山崩れによる土砂の堆積など、農業自体ができない状態に。大豆やカボチャ、特産品のハスカップが被害を受けました。
 今回の地震の影響、範囲を大きくした最大の原因は、停電です。農業と言えど、大規模な農業経営になればなるほど、電気施設に頼るところも大きく、その影響は計り知れません。中でも北海道を代表する産業の酪農の場合、自動で搾乳する装置を使う生産者も多く、搾乳できなかったことで、乳量、乳質低下の原因になる乳房炎が多発。死亡する乳牛も出ています。牛乳の出荷量は低下。学校給食を優先に配布しているため、都内では、一時牛乳が店頭から消えたスーパーもありました。
 加えて、北海道には食品工場がたくさんあります。明治、森永乳業、雪印などの大手乳業メーカーを始め、北海道のじゃが芋を原料にしているカルビー、やはりじゃが芋でポテトサラダなどを作っているキユーピー、畜産に直結している伊藤ハム米久ホールディングスや丸大ハムなどの食肉加工メーカー、その他、マルハニチロの缶詰、冷凍食品工場や日清食品の即席めん工場などなど。いずれも、停電で製造停止に追い込まれました。
 農業、畜産、水産と、すべての食の生産地であり、しかもそれを加工する食品工場も多い北海道。地震で電気が止まり、鉄道や道路などのインフラが滞ると、即首都圏に影響が及びます。改めて、自然災害多発国における食の安定供給について考えさせられました。

サラダイコール野菜とは限りません

 この夏行った米国アリゾナ州。ハイウェイ沿いの小さな町のイタリアンレストランでのこと。戸建てのそれは、レストランフロアが広く、街中の人が集えるのではないかと思えるほど。なのに客は、私たちと老夫婦の2組だけ。野菜が食べたくてオーダーしたのは、イタリアンサラダ。サラダの項目のトップにあったメニューです。
 ところが来てビックリ。サラダというより“アーリオ・オリオ・ペペロンチーノ風冷製パスタ”。期待の野菜はオリーブのみ。「これがサラダ???」と驚きました。
 その後も“あのイタリアンサラダ”のことをよく思い出していました。そして思い付きました。日本のマカロニサラダも同じような物だと。パスタをマヨネーズで和えただけで、野菜はほとんど入っていません。デパ地下惣菜では、ペンネをアラビアータソースで和え、冷やした料理を“ペンネサラダ”という商品名で販売していたようにも思います。「パスタ料理は、冷やせばサラダになる」の法則です。
 そういえば、サーモンや白身魚、生肉のカルパッチョも、トマトとチーズで作るカプレーゼも、イタリア料理の中ではサラダです。日本にいると、“サラダイコール生野菜”のイメージが強くなります。特に近年、パワーサラダブームの影響で、そのイメージが自分の中で固定化されているように思い、反省しました。
 パスタサラダ同様、“きんぴらサラダ”や“ひじきサラダ”など、「和惣菜に水菜を加えればサラダになる」という法則も日本にはありますね。

米国で人気。フムスとギリシャヨーグルト

 ひよこ豆をペースト状にすりつぶしてゴマペースト、オリーブオイル、にんにくやレモン汁と合わせたフムス。起源は、トルコやギリシア、イスラエルなど中東です。日本にも、中東料理のブームが来ていますが、米国ではすでに、フムスはすっかりポピュラーな食べ物になっています。
 米国のスーパー、トレーダージョーズには、冷蔵ショーケースいっぱいにフムスが並びます。ほうれん草入り、トマト入り、なす入り、オリーブ入りなど種類も豊富です。人気の理由は、ヘルシーだから。ひよこ豆は、タンパク質、ビタミン、カルシウム、葉酸、マグネシウム、亜鉛、食物繊維が豊富ですし、ごまには、リノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸や必須アミノ酸が豊富に含まれています。そこにオリーブオイルとくれば、健康と美容にいい食品として人気になるのも頷けます。
 もうひとつ近年米国で話題なのが、ギリシャヨーグルトです。特に人気を集めているのは、「CHOBANI(チョバーニ)」という新しいブランドの商品。2007年発売以来、4年でダノンのシェアを抜いたほどの加熱ぶりです。マンハッタンのソーホーにはショップがあり、「CHOBANI」に、フルーツやナッツ、チョコレートを組み合わせたメニューのほか、セイボリーメニューとして、スープやサンドイッチ、オリーブオイルをかけてディップとして楽しむものなども揃っています。健康によくておしゃれでおいしい。そんな点が米国人を魅了しているのでしょうね。

米国の肥満と食糧問題の矛盾

 この夏、久しぶりに米国に行きました。今回は、車で田舎町を周りました。そのためか、強烈に心に残ったことがあります。それは、米国人の肥満です。いつもは、ニューヨークやロスアンゼルスなど都会を中心に滞在していたので、それほど気にならなかったのです。もちろん、都会にも肥満体形の人はいますが、地方の方が圧倒的に多いと思います。
 女性の場合はまずお尻。丸いクッションを二つつなげたような大きなお尻は、日本では見たことがありません。男性はすべてに大きく、まさに大樽。そんな体形の人たちが珍しくないのです。面白いことに、グループ、カップル、家族、皆同じような体形です。やはり食生活が共通だからでしょう。
 レスラントで提供されるメニューは、相変わらずのボリュームです。私には多くても、米国の大きな体の人には適量なのだろうと思いきや、料理を残しパックに詰めて持ち帰る地元の人の多いこと。店側も慣れたもので、食事が終盤に近付いたテーブルには、持ち帰り用の包材がいるか聞いて回ります。冷めたパスタや具があらかたなくなったタイカレーを、彼らは家で食べるのでしょうか。間食として食べるのなら肥満の原因になるし、捨てるのならもったいない話しです。
 肥満が原因の疾患が医療費を増幅させ、国の経済を圧迫している米国。地球人口の増加で近い将来食料不足になると、人造肉やタンパク質代替食品の開発に余念のない米国。この矛盾を、レストランでの光景が端的に物語っています

米国で拡がる植物性ミートが日本でも

 食糧不足や地球環境への懸念、動物愛護、ベジタリアンの増加、ヘルシー志向の広がりを受け、肉や魚以外のタンパク源への関心が、世界的に高まっています。中でも米国では、植物性ミートの開発が盛んで、普通の肉と遜色のない味わいのレベルにまで達している商品が、既に一般に販売されています。
 近年米国で開発されている植物性ミートは、従来の大豆で作られたベジタリアン向けパティとは異なり、味や食感、香りなどをできる限り本物の牛肉に近付けているのが特徴。食品ベンチャーの「インポッシブル・フーズ社」が開発した植物性ミートのパティは、現在、全米50店以上のレストランで提供され、昨年夏にはロサンゼルス発の高級バーガーチェーン「ウマミ・バーガー」のメニューにも加わりました。また、同様の植物性ミートを開発した「ビヨンド・ミート社」は、ホールフーズなど小売店を通じた販売経路に注力していて、同社のバーガー用パティ“ビヨンド・ミート”は全米3000以上の小売店で扱われています。またこのパティを使用するビーガン向けの新しいハンバーガーチェーン「ネクスト・レベル・バーガー」は、西海岸で急速に拡大中です。実は数年前、三井物産は「ビヨンド・ミート社」に出資をしていて、今年、日本に輸入。高級外食店を中心に売り込みを開始します。
 日本の食市場においては3月、オランダの最高級フェイクミート‟ベジタリアンブッチャー”を使ったメニューを提供する豚焼肉専門店「BUTAMAJIN池袋店」がオープンしています。‟ベジタリアンブッチャー”は、国内で流通する大豆ミートとは一線を画すクオリティで、見た目、味、食感などすべてが本物の肉と遜色がないといいます。ベジタリアンやビーガンが多いインバウンドが続々と来日する2020年に向けて、日本においても植物性ミートのニーズはどんどん高まっていくことでしょう。

“一汁一菜”という考え方

 料理研究家の土井善晴氏が上梓した「一汁一菜でよいという提案」をきっかけに、”一汁一菜”が話題になっています。
 “一汁一菜”とは、ごはんを中心として、汁(みそ汁)と菜(おかず)それぞれ一品を合わせた食事のスタイル。毎日献立を考え、料理を作るのが苦痛だという生活者に対して、土井氏は、「おかずをわざわざ考えなくても、みそ汁を具だくさんにすればそれで充分」と提案しています。
 もともと日本人の食事は、”一汁一菜”でした。ご飯にみそ汁、お漬物(一菜)だけ。よく言われる「一汁三菜」は、料亭で提供される懐石料理を家庭向けに簡略化したカタチです。土井氏は、このままでは家庭の和食がなくなってしまうと危機感を持ち、”一汁一菜”なら実践しやすいのではないかとの思いから提案したといいます。
 確かに、豚汁のように肉も野菜も入った具だくさんのみそ汁は、おかずになります。冷蔵庫の余り野菜で作れ、そうすることで、みそ汁の具について新たな発見もあるでしょう。何より、生活者は肩の荷を下ろせます。
 ただ、問題もあります。具だくさんと言えども、摂れる食品の数が限られること。特に、タンパク質は摂りずらいと思います。また野菜をたくさん摂ろうとすると塩分の摂取量が増えてしまうことも心配です。
 献立が思いつかない、料理の時間がない、料理をしたくないなど、そんなときのたまの避難措置として”一汁一菜”の発想を取り入れるのがいいと思います。
 このブームに早速乗ったのは、日清食品。8/6、和食の新しい形“ファストフード和食”を提案するカップ入り創作雑炊シリーズ「日清 日本めし」から、“一汁一菜”を採り入れた「鶏つくね豚汁めし」を発売しました。