愛媛県のさつま汁と鹿児島のさつま汁

 お盆に帰省し、懐かしいお母さんの味、郷土料理を堪能した方も多いのでは。郷土料理には、初めて聞く人にはどんな料理なのか想像できない名前が付いていることが多いものです。
 有名なところでは、「いちご煮」。分かりやすい料理名を付けるとしたら、「ウニとアワビの潮汁」です。青森県階上町の猟師料理で、今は、ハレの日や祝いの席で供されるといいます。赤みが強いウニの卵巣の塊が、野イチゴの果実のように見えることからこの名が付いたそうです。
 愛媛県宇和島市には、食欲が出ない夏の暑い日によくいただく「さつま汁」という郷土料理があります。真鯛を焼いて身をすり鉢に。麦みそを加えてよくすり、すり鉢をコンロの火にかぶせて炙ります。マダイの頭と骨でとっただしでのばし、薬味のみかんの皮、ごま、ねぎ、刻み海苔などを入れ、ご飯や麦飯にかけていただきます。宮崎県の「冷汁」にとてもよく似ています。では、なぜこの料理が「さつま汁」と呼ばれているのでしょう。それは、ご飯に汁がよく馴染むよう、お茶碗に盛ったご飯に十文字の切り込みを入れるのですが、この形が、薩摩藩島津家の家紋に似ているからだそうです。
 一方、ご当地鹿児島県の郷土料理「さつま汁」は、鶏肉を大根、里芋、ごぼう、ねぎなどの野菜と煮たみそ汁。江戸時代、薩摩藩では薩摩鶏による闘鶏が盛んで、闘鶏の際に負けた鶏を殺して食べたのが「さつま汁」の始まりといいます。さつま芋を入れるから「さつま汁」と思っている人もいるようですが、さつま芋の有無は関係ないようです。

菓子作りで科学を学ぶ。自由研究に悩む親の救世主?

 子どもの夏休みは早くも中盤戦。小学生を持つ親の頭を悩ませるのが、自由研究です。私も毎年、自主性のない息子を見かねて参入。何をテーマにしようかと悩んだり、できるだけ息子主体に進めようとしたり、怒ったり、なだめたり、自分がやったらどんなに早いかとイライラしたり。自由研究の思い出においては、当の本人より、私の方が感慨深いのではないかと思います。
 息子が1年のときは、ベランダでトマトやなす、ピーマン、タイムやバジルなどのハーブを育てて観察日記を作成。収穫した野菜で「ラタトゥイユ」を作って食べるというストーリーで展開しました。前年に上映された「レミーのおいしいレストラン」というアニメーション映画を息子が気に入り、その中で、「ラタトゥイユ」がストーリーのキーになっていたのです。
 4年生の時は、サーフィンに夢中になっていたので、海水から塩を作る工程を写真で追いました。海から海水を持ち帰り、煮詰めて濾してを繰り返します。私も初めての体験で、でき上がった塩がとてもおいしかったことを覚えています。食関連はそのくらい。後は、富士登山と高山植物、旅行と地理、歴史をからませて仕上げるなど。いずれも、親が関わっているのが見え見えの自由研究でした。
 6月、学研プラスから刊行された、アイスクリームやパンケーキ、シャーベットなどの菓子作りを通じて科学を学べる書籍が、夏休みの自由研究に悩む小学生や親たちの間で話題を呼んでいるそうです。加えて、学研プラス運営のウェブサイトには、自由研究のテーマや進め方、まとめ方などが掲載されているとか。子どもより真剣に検索している親の姿が見えるようです。

料理がツラくなるほどの酷暑で宗旨替え?

 涼しかった7月から一転、8月に入り酷暑が続いています。8月最初の週末、私は家から一歩も出ることなく、動物園の白熊よろしく、グタッ~としたまま2日間を過ごしました。
 辛いのは3度の食事の支度。冷たい素麺は食べたいのですが、ゆでることを考えると却下。飲み物に氷を使うので、ゆでた素麺を〆る氷も惜しい。因みに酷暑時、近所のコンビニではロックアイスの品切れが常態化しています。流水にさらすだけで食べられる麺もありますが、ゆでた麺のほうがおいしいのではと手を出さずにいました。同様に、暑い時におすすめの料理法として電子レンジ活用術がいろいろ紹介されていますが、それとて火を使った従来の料理に敵うはずはないと、試したこともありませんでした。
 大学で調理学を学んだからでしょう。‟簡便”を‟省略”と意訳する習性で、ちょっと頑固な抵抗感があり、頭で科学的に理解するか、或いは、試作して味を確かめなくては受け入れられないのです。が、さすがにこの酷暑は、そんな私の習性を覆すに十分なようです。
 ゆでなくてもいい麺も、電子レンジ料理も、試しながら取り入れていこうと思うようになりました。そうそう、出前館やウーバーイーツでデリバリーを利用することも考えましたが、「この暑さの中、配達員の方に悪い」と思ってしまうという、経済活動に水を差すだけの習性も併せ持っていて。つまり私は、今風に言えば「こじらせ女子」だと気付いたのです。

アリババのコンビニ市場参入は生活者ニーズを掴むため

 米国、ウォルマートの逆襲でも明らかなように、今、小売市場においては、ネットと実店舗の融合が不可欠になっています。ECがあらゆる買い物行動のプラットフォームとして機能するようになるEC3.0時代を迎え、実店舗はモノを売る場所ではなく、商品を知ったり、試したりなど体験する場所、ネットで購入した商品を受け取る場所に変わりつつあります。
 前回のコラムでは、アリババ集団が中国のコンビニ市場に参入したことを話題にしました。急成長する小売り大手の百聯集団と組んでの展開です。ネット市場の覇者が実店舗を構える意味は、顧客データの収集のためです。アリババ集団は、生活者が日々利用するコンビニこそ、真の顧客ニーズが拾える場と考え、即効性の高いデータ収集という観点において、コンビニに大きな魅力を感じているのです。中国において、ネット通販市場は近年鈍化傾向にあるとか。アリババ集団といえども、ネット通販に依存する経営体質に危機感を感じていても不思議ではありません。生活者のニーズを的確に掴むことができれば、さらなる需要の掘り起こしが可能となり、それはネット市場にも活用できます。
 ビックデータという言葉が注目されたのは、2013年。ローソンが「Ponta」を、ファミリーマートが「Tポイント」を導入したことで、コンビニ市場は、年間延べ150億人分の購買履歴が収集可能な「宝の山」に生まれ変わりました。それから6年。EC3.0時代の到来と共に、情報収集の場としても、再びコンビニが大きく貢献することになりそうです。

アリババ集団参入で、コンビニに新たな展開は

 日本では、コンビニ飽和論が再燃していますが、まだまだ出店の余地が多い中国では群雄割拠。そこに、ネット業界の最大手アリババ集団までもが参入。覇権争いに名乗りを上げました。
 小売市場の実店舗の現状は、中国も例外ではありません。先進他国と同様、ネット通販の拡大によって苦戦を強いられています。そんな中、唯一成長しているのがコンビニです。
 米国で生まれたコンビニが日本に上陸したのは、1974年。それから現在に至るまで、日本のコンビニは、固有の進化を続けてきました。最大の特徴が、各社開発に凌ぎを削る弁当・惣菜。中食市場伸長に大きな役割を果たしてきました。中国も同様、弁当・惣菜部門に注力することで、外食市場から客を奪う戦略が奏功しています。
 特に、武漢を拠点にする新興チェーン「Today」はサンドイッチやサラダなどの惣菜開発を、北京に拠点を置く新興チェーン「便利蜂」はレジ横の惣菜や弁当を充実させています。一方アリババ集団は、急成長する小売り大手の百聯集団と組み、3月、上海にコンビニ1号店となる実験店「逸刻EGO」を開業しました。巨大なオープンキッチンとイートインスペースを開設。でき立ての惣菜やパンをウリにしています。
 明らかに中国コンビニの見本となった日本勢も、ここにきて出店を急いでいます。ローソン、ファミリーマート、セブンイレブン3社の18年の純増数は約1100店に達しています。
 アリババ集団は、コンビニ業界にどんな旋風を巻き起こすのでしょう。オムニチャネルやシステムの導入などはお手の物でしょうが、“食の提供”という側面においての覇者にはなれるのでしょうか。従来の弁当・惣菜とは異なるコンビニの新たなウリを創造することはできるのでしょうか。もしそれができれば、即日本に逆輸入されることでしょう。

セブンイレブン、“地元の味”を武器に沖縄県に初上陸

 先週11日、セブンイレブンが満を持して沖縄県に初上陸。14店舗を一斉にオープンさせました。那覇市国際通りなど人が集まる場所に集中的に出店。海外からの観光客も狙っています。迎え討つのは、先に上陸した競合2社。1987年に1号店をオープンさせたファミリーマートと、97年に進出したローソンです。
 沖縄の人たちのセブンイレブンへの期待はかなり大きいようで、ニュース番組のインタビューでは、「セブンイレブンは(弁当・惣菜が)おいしいと聞いているから楽しみ」という声が多く挙がっていました。セブンイレブンもそれに応えるように、県内に製造工場を竣工。「ポーク玉子おむすび」「ゴーヤーチャンプルー丼」「じゅーしーごはん」「TACORICE」、沖縄そばを使った「島ナポリタン」、宮古島市産玄蕎麦を使った「もりそば」など、沖縄らしい商品をラインアップ。地元のお客様に求められる味についても、充分に研究しての始動です。
 一方ファミリーマートには、それを20年以上かけて続けてきた実績があります。加えて、焼き立てパンやピザ、ソフトクリームといったファストフードを充実させるなど、本土より即食ニーズが高いとされる沖縄の人々のニーズをしっかり掴み、売上を伸ばしています。
 ちょっと街中を外れると、今でも万屋のような小さなスーパーが、手作りの“郷土の味”を並べている沖縄。セブンイレブンの弁当・惣菜開発の技術が、そんな沖縄でも高い評価を受けるのか、注目しています。

復活したウェンディーズ。FKとのWブランドに違和感

 先日、かなり久しぶりにウェンディーズに入りました。1980年代、チリが好きでよく行きました。今の店名、正確には“ウェンディーズファーストキッチン”のダブルネームです。
 ウェンディーズ、日本での始まりは1980年。中内功氏の肝入りで、ダイエーが日本上陸を果たしました。その後、2002年にゼンショーに買い取られ、09年には米国本社との契約期間満了を期に全店閉店。撤退しています。その後、11年にヒガ・インダストリーズと米国本社が合弁会社を設立して再開。16年、サントリーホールディングスから買い受けたファーストキッチンの店舗をウェンディーズとのダブルブランド店にすることで、店舗数を増やしています。
 私が行ったのは、渋谷宮益坂店。ランチには早い午前の時間帯だったせいか、客は私一人。店内は薄暗く、スタッフの活気はゼロ。2階の飲食スペースは、古いビルにありがちなトイレの臭い。分別トラッシュボックスの上には片づけられていないゴミが。客がいないから、余計に汚さ、雑さが目立つのです。
 米国からやって来た、マクドナルドよりダイナー感のあるハンバーガー、チリやチリ&チーズがかったフレンチフライが食べられるバーガーショップとして、私には少なからずブランド力が感じられていたのですが。ただでさえ、ファーストキッチンとのダブルブランドで、希薄になる個性。メニューも店内の雰囲気も、大分ファーストキッチンに引っ張られているように感じました。そもそも、ファーストキッチンのターゲットと、本来ウェンディーズが求めるべき顧客とは異なると思うのですが。とにかく、しばらくは行くことはないと思いました。

精肉売り場の品揃えに感動。「明治屋ジャンボ市」

 先週、スーパーマーケットの社長および後継者が集まる勉強会にお呼びいただき、講演をしました。講演会場は、福岡県でスーパーを3店舗経営する明治屋食品さんが展開しているキッチンスタジオ併設の施設で、スーパー「明治屋ジャンボ市」が隣接しています。
 空き時間に店舗を見せていただきました。明治屋食品さんは精肉店をスーパーに転換した歴史があるだけに、精肉売り場の充実度は、完璧です。
 後藤社長がこだわり続けたのが、対面販売。人手がかかるという理由で、何度か止めようという意見も出たとか。それでも続けてきたのは、「お客様と会話をしながら販売する」ことへの社長の信念とか。対面販売というと単価の高い肉の専用コーナーという印象がありますが、ここでは安価な肉も好みの重量、厚さで販売しています。パックコーナーは、冷蔵あり、冷凍あり。ブランド肉から輸入肉まで、塊肉からミンチまで、とにかく幅広い品揃え。カルビだけでも4種類が揃います。
 小規模なスーパーしか近隣にない環境に住む私にとって、パラダイスのように思えました。塊肉はあっても300-400gにカットされているため、それに合わせて料理をするしかありませんし、薄切り肉も“薄切り”と“しゃぶしゃぶ用”の2種。例えば同じ生姜焼きでも、肉の厚みによっておいしさが変わります。“今日はちょっと厚めでいただきたい”などと思っても、かないません。アウトパック主体の店ではなおのことですし、店内カットの店でも、さまざまな理由でカットしてもらえないことが増えました。
 週末、料理に腕を振るいたい生活者にとって、求める素材が求めるカタチで売られていることはとても重要です。素材が料理のやる気を奮い起こしてくれると言っても過言ではありません。恵まれないスーパー環境に住む私は、狭隘な素材範囲の中、料理選びに四苦八苦しています。

家事は男女協働が当たり前。食市場も男性をターゲットに

 「働き方改革」のお蔭で“家事は夫婦で協力して行うもの”という当たり前の概念が定着しつあります。実際、「食品の買い物」に関する調査では、女性では95%、男性では90%が「週に1回以上スーパーで食品を購入する」と回答。男性の65%は「週に2回以上スーパーで食品を購入する」と答えています。しかも「夫婦または家族で買い物に行く」場合、98%の人が「男性が購入を決める食品がある」と回答。男性も、自らが好む食品や気になる食品は積極的に購入を決めていることが分かります。
 さらに最近、インテリアやグッズにこだわる家事男子に、黒いキッチンツールが売れています。象印マホービンが2月に発売した、黒を全面に押し出したキッチン家電の新シリーズ「STAN.(スタン)」。炊飯ジャーの発売1ヵ月の売り上げが計画比の2倍を超えました。また道具メーカーのTAKAGIが3月に発売したキッチンツールの新ブランド「DYK(ダイク)」は、黒い商品群が好評。真っ黒なおたまやトング、刃まで真っ黒な包丁などが揃い、夏には、黒いまな板も発売予定だとか。
 冷蔵庫や洗濯洗剤のコマーシャルに男性俳優が起用され、テレビ東京の人気ドラマ「きのう何食べた?」では主人公の男性が毎回料理を紹介。レシピ本が出版されるほど注目されています。男性が家事や育児、介護に積極的に参加する時代。も、スーパーも食品メーカーも、そろそろ重い腰を上げてもいいのではないでしょうか。

給食で人気だつたソフト麺。今は、家庭でモテモテ?!

 小学校の給食でたまに出されていたソフト麺。覚えている人も多いと思います。私が小学生だった頃は、米飯給食はまだ始まっていなかったため、主食は食パンとコッペパンのみ。月に1回程度提供されるソフト麺とカレー味のソースのセットが、とてもうれしかったことを覚えています。
 そのソフト麺、学校給食から姿を消しつつあります。
 きっかけは、平成21年に文部科学省が出した“週3、4回は米飯給食にしましょう”という内容の「学校における米飯給食の推進について」のお達し。週5回しかない学校給食の内、3、4回を米飯にするこということは、残りの2、3回を、パンもしくはソフト麺以外のラーメンやうどんなどの麺類と分け合うことになります。
 ソフト麺は、提供される日の当日、40分かけて90度の蒸気殺菌を行い、ホカホカの状態で午前中に学校に納入しなくてはならず、手間がかかるのだとか。納入回数が減れば、自ずと、ソフト麺から手を引く製麺会社、廃業するソフト麺製造会社は増加します。
 が、“捨てる神あれば・・・”なのか、ソフト麺は今、家庭用として注目され始めています。乾麺と違って水分が含まれているため、電子レンジで温めるだけで簡単に調理ができる点が時短簡便を求める生活者のニーズにはまっていることが理由のようですが、コシの強さがウリの冷凍うどんより軟らかな食感は高齢者向きとも言えるし、懐かしさも追い風になるでしょう。
 因みに、給食の食材にソフト麺を採用しているのは、主に中部地方から東のエリアの18道県のみ。うどんやラーメンの文化が浸透している西日本や四国、九州ではあまり拡がらなかったようです。