2年ぶりの展示会

 11月10日、業務用食材卸、株式会社久世の展示会に伺いました。昨年は新型コロナウイルス禍で中止したため、2年ぶりの開催です。展示会のテーマは「外食新時代~原点回帰+α~」。FLコスト低減を可能にする食材、汎用性の高い商品・メニューの提案、コロナ収束後を見据えてのサポート提案をメインに展開されていました。 

 SDGsの施策として、入り口で紙製のトレーと箸が渡されます。トレーはほどよい大きさがあり、ヘリが高いので、試食品を載せて持ち歩いても落とす心配がありません。いろいろな試食品を盛り合わせてビュッフェの皿のようにしている来場者もいました。会場の所々に試食テーブルがあり、各ブースで受け取った試食品はそこでいただきます。人気のブースの前に密を作らない工夫です。

 年に1度、展示会でしか会わない食品会社の担当者さんたちがたくさんいます。皆さん、飲食店や宿泊施設などをお客様にする業務用担当ですから、コロナ禍で大変な思いをしていらっしゃいます。2年ぶりにお会いして近況を伺って歩きました。皆さん、売り上げはまだまだ戻らずと困り顔でしたが、一様に、これからに向かって“やるぞ”という思いが伝わってきました。提案している商品も、例年より力が入っているような。

 飲食店の時間制限、人数制限が撤廃され、Go To イートは2022年のゴールデンウイークごろまでの延長が決まりました。ここにいる皆さんの提案力と営業力で、沈んだ外食市場を盛り上げていただきたいと強く願った次第です。

ソースやつゆの濃さと麺の太さ

 今年は濃い系の味がトレンドです。インスタントラーメンも売れている商品は「日清食品 日清これ絶対うまいやつ!」や「明星食品 麺神」など、濃い味、そして濃い味にしっかり馴染む極太もちもち麺がウリです。

 麺の太さや歯応え、のど越しと、ソースやつゆの味や濃度のバランスは、とても大切です。例えばパスタは、ソースによって太さを変えるのは常識。ボロネーゼやカニ風味のトマトクリームなどうま味の強い、濃い味のソースには、しっかりとした歯応えの太めのパスタを合わせますし、生ハムやトマト、レモンを使ったすっきりとした味付けには細いパスタを合わせるのが一般的です。うどんも同様。ずんぐりもっちりとした伊勢うどんには、たまりじょうゆの濃厚なたれがよく合いますし、細くてなめらかな口当たり、のど越しのよい稲庭うどんは、だしが利いた麺つゆでいただくのがおいしいと思います。

 なのに、です。飲食店には、オペレーション優先で、短時間でゆで上がる細めの麺を使っている店が多いのです。ランチメニューでカルボナーラやアマトリチャーナをオーダーしたとき、細いパスタが使われていると本当にがっかりします。中華料理店でも、広東麺の麺が細いと、とっても損した気持ちになります。具材にボリュームがあればあるほど、残念な気持ちは大きくなります。もちろん、ソースや具材、あんにかかわらず、細いパスタや麺が好きな人もいるでしょう。でも私は、うま味の強い濃い味には、それに適した麺を合わせたいのです。

 ご飯や麺の「大盛り」、ラーメンの「油多め」や「麺硬め」と同じように、「麺太め」をオーダーできたらいいのにといつも思います。

飲食店の制限解除を前に食材費が高騰

 ランチの常連店が、11月1日からランチの価格を10~15%値上げすると言います。食材費の高騰が理由なのだそうです。非常事態宣言が解除され、飲食店に対する制限も緩和から解除に進もうとしている今。“さあ、これからだ”と勢いづく飲食店経営者に、食材費の高騰と人手不足という大きな壁が立ちはだかります。

 食材費の高騰には、大きくふたつの原因があります。ひとつは、世界的規模で起こっている異常気象による農作物の不作です。今年だけでも、北米、シベリア、トルコ、ギリシャなど世界各地で大規模な山火事や森林火災がいくつも発生し、農作物に甚大な被害をもたらしました。北半球の各地では、干ばつにより小麦などの作物が生育せず、家畜に与える餌に窮する国もあります。一方、南半球では、異常低温でとうもろこしやコーヒーの収穫に影響が出ています。

 もうひとつは、ワクチン接種による経済復活の動きと急激な消費量の拡大です。中国は牛肉を輸入したく、米国は、巣ごもり生活と住宅バブルで中国製の家電や家具、自動車部品が欲しい。頻繁な往復に船賃が上がり、“日本行き”は割の合わない航路になっているとか。希少な農産物を高騰した船賃で運ぶのですから、食材費が値上がるのは当然です。

 異常気象と新型コロナウイルス。地球の主人公は決して人間ではないこと、日本は自給率の向上を含め、持続可能な循環型食生活への取り組みを真剣に考えなくてはいけないことを、痛感しています。

料理レシピを愛読します

 料理を作るとき、私はよくレシピを見ます。手慣れた料理でもたまにはレシピを検索して、もっとおいしくなるレシピはないか、おもしろいアレンジをしているレシピはないかと探すのです。

 よく見るのは、「みんなのきょうの料理」(NHKエデュケーショナル)。Webに掲載されているレシピは、今は亡き料理研究家、新鋭の料理研究家、お世話になった料理研究家の息子や娘、親しいシェフたちのオリジナル。どのレシピも、読んでいるだけで楽しく、作りたい欲求が高まってきます。

 料理番組では、昼時間に放映される「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」(朝日放送テレビ)をよく見ます。大阪あべの辻調理師専門学校の、西洋料理、日本料理、中華料理の3人の教授が講師です。司会の上沼氏がひと口食べて感想を話すのですが、その表現がお上手で。今すぐに味見をしたい欲求に駆られます。しかも番組HPに掲載されているレシピもシンプルで、よく考えられているのです。これは、前出のシェフのレシピにも言えることですが、プロの技術とセンスが家庭料理に溶け込んでいて、その点がとても魅力的です。

 私は料理編集者をしていたので、レシピを読むと、料理のポイントと段取りがすっと頭に入ってきます。作りづらい書き方には、ケチをつけることも。“料理記者”の草分け的存在だった岸朝子先生は、「レシピを書く時は、左手に鍋、右手に菜箸を持ちなさい」とおっしゃっていました。順序だけではなく、流れを大切にすることを教えていただきました。

コロナ禍の米国で注目されるケトジェニック・ダイエット

 先々週に引き続き、新型コロナウイルス禍の米国で流行っていることを話題に。巣ごもりで運動不足になり、筋肉が減って代わりに脂肪が付いたと気にしているのは米国人も同じ。日本では、タンパク質を積極的に摂って炭水化物を減らす食生活を心掛ける傾向が高まっていますが、米国で近年実践する人が増えているのが、「ケトジェニック・ダイエット」です。

 私たちは通常、炭水化物や果糖などの糖質が体内で分解されて作られるグルコース(ブドウ糖)を主なエネルギー源にしています。ところが糖質を極端に制限すると、身体は脂肪を分解して「ケトン体」という物質を作り、グルコースの代わりにエネルギー源にするようになります。エネルギー源がグルコースからケトン体に切り替わった状態を「ケトーシス」と呼び、ケトーシス状態になると、身体は「超・脂肪燃焼モード」に。燃費の悪い自動車のように、皮下や内臓に蓄えられた脂肪がどんどん燃やされ、結果、痩せるというダイエット方法です。

 1日に摂取していい糖質の量は、一般に50g以下と言われています。パンやご飯を50gしか食べなければいいと単純に考えがちですが、芋や人参などの根菜類、ソースやみりんなどの調味料にも糖質は含まれていますから、これがなかなか難しいのです。タンパク質は、1日の摂取エネルギーの約20~30%、脂質は約60~70%摂ります。オリーブオイルやココナッツオイル、チーズや濃厚なクリームから。

 米国では「ケトジェニック・ダイエット」を実践している生活者のために、“Keto”“Low Carbo(低炭水化物)”と明記された加工食品も多く、低糖質にするためにパスタの代わりにズッキーニを細く切った「Zoodles」が添えられたりしています。日本でもご飯の代わりにカリフラワーを使った低糖質商品がありますが、白飯が食事の中心に鎮座する食生活を永年続けてきた日本人にとっては、米国人よりハードルが高いダイエット法かもしれませんね。

鳥貴族HD「トリキバーガー」をオープン!

 8/23、鳥貴族ホールディングスの子会社、TORIKI BURGERが運営するチキンバーガー専門店「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」の1号店が、大井町駅前にグランドオープンしました。敢えて申し上げることでもありませんが、居酒屋主体の経営からの脱却戦略の一歩です。

 メニューは、「トリキバーガー」「焼鳥バーガー~てりやき~」「サラダチキン~柚子胡椒マヨ~」「サラダチキン~バジル~」「チキンカツ」「つくねチーズバーガー」「チキン南蛮」「ヤンニョムチキン」のバーガー8種類。価格はすべて単品390円(税込)、ポテト&ドリンクMのセットは590円(同)。朝のメニューは、「たまごロール」「あんバターロール」「ベーコンエッグ」「コロッケバーガー」と前出の「サラダチキン」2種の6種類。価格はすべて290円(同)、ニョッキボール&ドリンクMのセットは490円(同)。統一価格にしたのは、値段に関係なく、食べたいものを選んでほしいとの気持ちからとか。鳥貴族らしいです。

 「トリキバーガー」はクリスピーな衣に、しっとりムネ肉。とても肉厚でボリュームもあり、満足度100%。味付けは、スパイシー感はほどほど、と言って和に寄せているわけでもない絶妙なバランス。しかもバンズとの相性もよく、検討を重ねた開発の苦労が偲ばれます。「サラダチキン」の白いバンズには米粉が使われていて、もっちり食感。こちらも蒸し鶏との相性が抜群で、女子好きするバーガーに仕上がっています。

 オープン当日は10時開店。10時に伺うと既に長蛇の列。100名は優に並んでいます。私も、およそ1時間並びました。その間、鳥貴族HDの大倉社長には女性客から「一緒に写真を」のお声が次々と。その1回1回に、ジャケットを羽織り直し、一瞬だけマスクを外して対応する大倉社長。さすがです。

コロナ禍で米国でも人気再燃。料理キット

 新型コロナウイルス発生後、家庭で料理を作ったり、食べたりする機会がぐんと増えたことは、世界共通の現象です。そんな中、売れているものも一緒のようです。そのひとつが、料理キット。日本では、料理キット宅配サービスのOisixが急激に売り上げを伸ばしましたし、米国でも料理キットの人気が再燃しています。

 米国では日本よりも早く、5年以上前から料理キット市場が拡大。ドイツ発の「ハローフレッシュ」を始め、「ブルーエプロン」や「プレーテッド」などのブランドがしのぎを削っていました。「ブルーエプロン」の場合、月に800万食を宅配。1食分9.99ドルという料金と、センスを感じさせるメニューで人気を集め、あっという間に上場しました。

 2017年当時、向こう5年間で市場規模は10倍に膨らむと予想されていて、新規参入組も林立。新聞社のニューヨーク・タイムズが、食材宅配会社の「シェフド」と組んで料理キット宅配サービスに参入したり、日本でも有名な料理研究家、マーサ・スチュワート氏も、オリジナルレシピが家庭で楽しめる食材宅配ビジネスに乗り出したりするほどの過熱ぶり。これには、食品スーパー業界も脅威を感じずにはいられず、全米最大のスーパーマーケットチェーンの「クローガー」や「ホールフーズ・マーケット」が、“ミールキット宅配事業”に乗り出したほどです。

 米国では現在、有機食品ミール、無添加ミール、ダイエットミール、ビーガンミール、グルテンフリーミール、パレオダイエット(旧石器時代の狩猟生活に根差した食生活)ミールなどや、さまざまなアレルギー対応ミール、また自分の健康状態に合わせて作成されるオリジナル献立の料理キットなどもあり、かなりの深化ぶりを見せています。

変異株で拡がる“inコロナ”生活の不安と「家族市場」

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進む国では規制が解除され、マスクなしで飲食を楽しむ様子がテレビで紹介されるようになりました。“withコロナ”から“afterコロナ”へ・・・と期待したのも束の間、変異株が次々と発見され、“inコロナ”、コロナウイルスの傘の下で生活する日々がこの先ずっと続くのではないかという不安が私たちを襲っています。

 そんな中で迎えた、今年のお盆。西村経済再生担当相は、「帰省をして親族で集まるとか同窓会で集まるとか、絶対に避けていただきたい」と国民に訴えました。が、高齢者のワクチン接種が進み、今年は「帰ってきていいよ」と久しぶりに子どもたちを迎える選択をした親も多かったようです。帰る方も待つ方も、一緒に食卓を囲むことを楽しみに集うお盆。それがこんなにも貴重な時間だったとは、コロナ前までは、思いもしませんでした。

 血が繋がった家族でも、離れて暮らしていれば会うことも叶わなくなる。東日本大震災後、故郷にUターンする生活者が増えました。大きな津波が一瞬にして家や車を海に引きずり込む映像は、家族に会えなくなる日が突然来るかもしれないことを強烈に印象付けたからです。そして今、東京を離れる人が増えています。テレワークの広がりで、家賃が高い東京に留まる必要がないという理由だけでなく、生まれ育った場所に戻って家族と一緒に暮らしたいという願望もあるのでしょう。

 震災があった2011年、食市場では、「助け合い三世代消費」がトレンドキーワードになり、ターゲティング戦略のテーマのひとつに「家族市場」が挙がりました。“in コロナ”が続けば、「家庭回帰」「家族回帰」のトレンドは、今後もますます強くなるでしょう。

ワクチンの副反応対策。用心金は食事

 新型コロナウイルスのワクチン、2回目の接種をしました。1回目の後は、打った箇所にかすかな痛みがある程度。でも2回目は熱が出たり、倦怠感が強くなったりと大変だと人伝てに聞き、SNSで調べ、用心することにしました。

 食いしん坊の用心金は、食事です。副反応対策、正しく表現すれば“副反応が出て食事の支度ができなかったときの空腹を回避するための対策”の準備をしました。未だかつて、具合が悪くて食欲がなくなったという経験がないため、余計に用心深くなったのかもしれません。

 さっぱりとした味わいの料理がいいかも、栄養をバランスよく摂れる料理がいいかも、などといろいろ考えていくうちにまとまらず。結局、さっぱり候補で、アジの干物と青じそ、みょうが、新しょうがの混ぜ込みご飯、栄養バランスとそのとき食べたかったという理由で、野菜と肉をたっぷり入れた焼きそば、毎朝のルーティンフードの仕込みとしてひじきご飯。あと、何も食べられない状態になったときのことを考えて口当たりのいい豆腐を用意、薬味も切っておろしてと万全の準備をしました。

 そしてその日の夜中2時。熱っぽさと身体の痛みで目が覚め、それから朝まで眠れず。翌朝には熱も下がっているだろうと思いきや、普段は爬虫類レベルと自認している体温は38度に。腕はどんどん痛くなるし、どういうわけか打った側の足側部の脱力感がすさまじく、何が起こっているの???状態。その日は会社を休んで寝たきり。水分補給はしたものの、身体を動かすこともしんどくなり、ましてや何か食べようなどという気は一切起こりませんでした。

 結局、用心金は無用になり、“副反応は若者に出やすい”の情報にすがって“体内年齢は若い”と自分を励ます次第。でも、コロナ発症による呼吸ができない苦しさ、その後いつまで続くか分からない後遺症の恐ろしさを考えると、この程度で済めば御の字です。

料理を堪能するなら「マスク飲食」

 神奈川県の黒岩知事や大阪府の吉村知事が一時積極的に進めていた「マスク飲食」。神奈川県のホームページによると「マスク飲食」のやり方は、【料理が来るまでマスク → 食べる時は黙食 → 会話する時は再びマスク】。ポスターの写真が居酒屋設定だったため、ハードルがちょっと高いなという印象を受けました。

 が、改めて振り返ると、私の外食は案外「マスク飲食」可能でした。おいしいものをおいしく食べたいからです。飲食店の料理は、提供されたときがおいしさの頂点。熱い料理は熱いうちに、冷たい料理は冷たいうちに味わいたい。最初のひと口から最後のひと口まで存分に楽しみたいから、料理には真摯に向き合います。おしゃべりをするのは、もっぱら皿と皿の間。もちろん料理を口に運びながら、「おいしいね」とか「これは何?」など一言二言は話しますが、それ以上の会話はありません。食べるとしゃべるを同時にしないのです。

 私はかつて「カルヴァドス」というフランス・ノルマンディ地方のりんごから作る蒸留酒の日本大使の任を仰せつかっておりました。年に4回ほどフレンチレストランでパーティを催します。会員は皆さん、食とお酒が大好きな方々。料理が運ばれたテーブルから順に静かになり、食べ終わると次の皿までおしゃべりが続く。そんな感じでした。

 いつだったか、学者気質の建築家と食事をしたことがあります。おしゃべりが大好きで話題も豊富な人でしたが、食に対しての興味は余り。フォークに刺した肉を持ち上げたまま、5分以上話し続けているのです。私の視線は、どんどん冷めて乾いていく肉にくぎ付け。“早く口に運んで!”そればかりが気になって彼の話はまったく耳に入りませんでした。