40度に届きそうな猛暑日が続いています。こうなると心配なのが、農畜産物への影響です。強過ぎる日差しで葉が焼けたり、表皮にキズが付いたり、病気が出たり。家畜は暑さで衰弱したり、乳牛は乳が出なくなったり。過去にも猛暑が食卓を直撃しました。
そんな中、Oisixが展開しているのが、猛暑の影響で形が不揃いになったり、見た目が悪くなったりで通常の流通ができなくなった野菜の販売です。例えば、栃木県産のパプリカ。ビニールハウス内の温度があっという間に50度を超えてしまい、パプリカの表面から水分が抜ける蒸散量が一気に増え、表皮にクレーターのようなでこぼこが。また福島県産きゅうりは、生育時に異常な高温と過度な日照が続いたことで、水分が実に十分に行き渡らず、皮が引っ張られるような状態になって大きく曲がってしまっています。茨城県産のかぼちゃは猛暑で生育が進み、大きくなり過ぎて販路の確保が難しく、熊本県産のシャインマスカットは、猛暑で実にかけた袋の中が蒸れてしまい、表面にシミができてしまっています。いずれも味や歯応えは、通常品と変わらないと言います。
農産物が天候の影響を受けるのは避けられないことです。自分で育てたものならキズついていようが、曲がっていようが気になりませんし、大きく育ったらうれしいはずです。道の駅で生産者の方が「わたしが作りました」と売ったら、曲がったきゅうりにも愛着が沸きます。スーパーの店頭では、ついつい選り好みしてしまいますが、野菜の向こうにいる生産者のことを想像して有り難く手に取ろうと思います。
投稿者: himeko company
ゴッドファーザーとカンノーリ
7月、米国の俳優ジェームズ・カーン氏が亡くなりました。映画「ゴッドファーザー」でのドン・コルレオーネの長男ソニー役が印象強く、久しぶりに「ゴッドファーザー」を見ました。
映画を見ていてよく思うことは、それが何であるのかを知っているのと知らないのとでは、解釈や感情に大きな違いがあるということ。今回のそれは“カンノーリ”です。カンノーリは、小麦粉で作った生地を筒型に揚げ、クリームをたっぷりと絞り込んだお菓子。「ゴッドファーザー」と「ゴッドファーザーRARTⅢ」に出てきます。
「ゴッドファーザー」では、ドンの部下、クレメンザが広大な麦畑のような場所に車を止めさせて小用を。その間に手下は車内で裏切り者を銃殺。クレメンザは何事もなかったように、車の中に置いてあった、奥さんから買ってくるように頼まれたカンノーリを持ってこさせるのです。せりふは、“Take the cannoli”ですが、字幕は“ケーキを(持って来てくれ)”。1972年の日本では、カンノーリを知っている日本人はほとんどいなかったからでしょう。
「ゴッドファーザーRARTⅢ」では、コルレオーネ家のドンとなったマイケルの妹コニーが、ドン・アルトベッロを毒殺するのにカンノーリを使います。ドン・アルトベッロは観劇中、コニーから誕生日のお祝いにもらったカンノーリを、おいしそうに食べ続けていました。
カンノーリの発祥の地は、イタリアのシチリア島。ドン・コルレオーネはシチリア島のマフィアから逃れて来た移民、アメリカンマフィアの起源はシチリア島にあります。強面のマフィアもメロメロになるのは、故郷のお菓子、マンマの味だからでしょう。それを理解して見ると、ふたつのシーンが一段と残酷さを帯びてくるのです。
甘い麦茶
子どもの頃、母が作る麦茶には砂糖が入っていました。昭和の話です。今は、細かく粉砕された大麦がティーバッグに入っているので水出しも可能ですが、当時は、炒っただけの大麦。大きなやかんでじっくりと煮出します。熱いうちに砂糖を入れて溶かし、冷蔵庫で冷やします。
甘い麦茶が当たり前だったのに、いつの間に甘くない麦茶がフツーになったのか、思い出せません。一方、スタッフの中には、同世代でも一度も甘い麦茶を飲んだことがない人もいます。甘い麦茶は、時代物ではなく、地域物のようです。確かにネットで検索してみると、私の出身地の静岡県、山梨県、栃木県、山形県、新潟県、富山県、四国では香川県あたりではあり、関西と九州はなし、沖縄では一部で砂糖を入れるようです。
なぜ麦茶を甘くするのでしょうか。おそらく、ひとつにはエネルギー補給のため、もうひとつは、甘いものが豊富ではなかった時代、贅沢品だった砂糖を入れてお客様にお出ししたからではないかと思います。事実、私の実家は燃料屋をしていて、プロパンを配達する社員たちがひっきりなしに飲んでいたのを覚えています。トラックにはクーラーがない時代です。体力の消耗も激しかったことでしょう。そして、お客様に氷を入れたグラスで甘い麦茶をお出しするのは私の仕事でした。
当時は、コーヒーにも紅茶にも砂糖を入れるのが当たり前。甘い飲み物は、ちょっと幸せな気分にしてくれたのだと思います。最近は、フルーツの香りを生かした甘い茶飲料が人気です。紅茶に加え、烏龍茶にも甘い商品(サントリー果茶 芳醇な白桃)が登場しています。
2011年、節電の夏の食市場
節電への協力が求められている今夏は、例年以上に暑さ対策が重要になっています。思い出されるのは、東日本大震災が起こった2011年の夏。現在よりもさらに強く節電が求められました。日差し対策にゴーヤーを栽培する生活者が急増したのもこの年。食市場では、さまざまな涼活戦略が展開されました。
食品会社はこぞって、火を使わない、冷たくいただく商品を開発。冷やご飯にふりかけて冷たい水を注ぐだけのフリーズドライ商品や温めなくてもおいしいレトルトカレー、麺と具材をカップに入れて電子レンジで加熱し、水を注いで冷やし、その後水切りして、ジュレ状のソースやだしをかけていただく冷製カップ麺などが発売されました。
外食市場では、涼しくなるドリンクメニューを強化する店舗が増加。冷たいだしをかけて食べる“天ぷら茶漬け”や“冷やし茶漬け風親子丼”、“冷やしおでん”や“冷やしカレー”など、さまざまなヒンヤリメニューが登場しました。
スーパーは、暑くて火を使いたくない生活者の中食需要を見込んだ戦略を展開したほか、冷たいメニューの提案や電子レンジ商品の販促などを積極的に行いました。また売り場においては、お客様に涼しさを体感してもらえるよう、棚に敷くシートの色を従来の暖色系から水色に変え、見た目の涼しさを演出。そうめんなどをアレンジした「涼感メニュー」の提案型売り場を展開したほか、電子レンジで調理する商品を集めたコーナーを売り場ごとに設置しました。一方コンビニ各社は、節電で揚げ物調理を敬遠する生活者が増えていることに着目。スーパーの特売価格と同じ価格のトンカツを発売したり、揚げ物の取り扱い店舗を増強したり。利益率が高い惣菜に力を入れて収益を高めるとともに、スーパーから「おかず需要」を奪う作戦に乗り出しました。
土用の丑の日。蒲焼き風商品はいかが
今夏、土用の丑の日は7/23と8/4の2回です。日本で出回るうなぎのほとんどは、養殖物です。冬から春にかけて捕獲した天然の稚魚、シラスウナギを養殖池で育てます。近年は、2020年をピークに稚魚の捕獲量は年々減少傾向。今年は、18年よりも少なく、うなぎの価格が高騰するのは確実です。
毎年、うなぎの蒲焼きを摸した商品の情報が多くなるのがこの時期です。Mizkanは、「金のつぶ うな重納豆 3P」を発売しました。蒲焼きの風味を生かしたたれが付いている商品です。同社は昨年も同様の商品をエリア限定で発売しています。今年は、北海道、九州、沖縄を除く全国で発売しましたから、昨年の手応えが良かったのでしょう。
岡山のナショナルデパートは、「特濃うなぎバター」の先行予約をECサイトで開始しました。うなぎの蒲焼きのうま味を濃縮した自家製ペーストを国産フレッシュバターに練り込んで成形。山椒バターを重ね、最後にうなぎの蒲焼きをトッピングした食べるバターです。熱々のご飯にのせ、溶け出すバターとのマッチングを楽しむのが一番のおすすめといいます。
大学生協のコンビニの商品開発をお手伝いしていた2018年、ご飯の上に蒲焼きのたれだけをかけた「土用のたれめし198円(税込)」を発売しました。たれをそのままかけたのでは、蒲焼き丼風にはなりません。炭火で焼いた蒲焼きの香りとうま味が浸み込んだようなたれでないと。そんな業務用商品を見つけるのに苦労しました。
ウクライナ料理とロシア料理のこと
ユネスコは7/1、ウクライナを代表する料理「ボルシチ」を無形文化遺産に登録することを決めました。「ボルシチ」はロシアでも広く親しまれている料理ですから、ロシア政府はもちろん反発。ウクライナ国民は、ほんの少しでしょうが、溜飲を下げることができたのではと思います。
「ボルシチ」のように、ロシア料理として日本に紹介され、実はウクライナ発祥かもと思わせる料理が、その名の通り「キエフ風カツレツ」です。
私が、「キエフ風カツレツ」という料理を初めて知ったのは、高校生の頃。プロ向けの料理本です。目の細かなパン粉衣に包まれたラグビーボールのようなそれは、いかにも洋風料理の見た目。しかも、お皿の上で半分にカットされた断面から熱せられたバターが溶け出しているビジュアルは、まさに垂涎モノです。ロシア料理などというものが、身の回りにはもちろん、テレビの中にも存在しない時代でした。
大学生になり、初めて渋谷のロシア料理店「ロゴスキー」を訪れたときは、狂喜乱舞。“赤い料理”をおっかなびっくりいただいた「ボルシチ」、名前の響きがロシアっぽいと思った「ピロシキ」、パンの帽子を被ったマグカップが可愛い「つぼ焼き」、紅茶にジャム?と驚いた「ロシアンティー」。因みに、ウクライナではジャムを紅茶に入れますが、ロシアでは紅茶が冷めるのを嫌ってジャムを舐めながら紅茶を飲むのだそう。ということは、日本の「ロシアンティー」も、ウクライナ発祥ということになりますね。
シロップをかけただけ。シンプルなかき氷が大好きです
気温が30℃を超えると氷菓やかき氷が売れるようになると言われています。日本各地が酷暑に見舞われた6月最終週。例年より早めに、かき氷をメニューに掲げる飲食店が増えると思います。
私も、かき氷大好きです。子どもの頃、夏のおこづかいはほぼ、駄菓子屋のかき氷に消えました。大きなかき氷機に氷屋から仕入れた四角い透明な氷を載せ、大きな歯車を勢いよく回します。シャッ、シャッという氷が削られる音を聞いているだけで涼しくなったような気がしたものです。シロップは、いちごとレモンとメロン。練乳や小豆、ましてやアイスクリームやフルーツといったトッピングなどありません。ただシロップをかけただけのシンプルなかき氷。私は、それが一番好きです。
が、東京のど真ん中には、そのようなかき氷を食べさせてくれる店はありません。シロップではなく果肉たっぷりのフルーツソース、練乳はエスプーマ仕立てと凝りに凝っています。贅沢にフルーツをのせたり、マスカロポーネのソースをかけたり。天然水で作られた氷や自然の寒さだけで作られた天然氷のやわらかで繊細な舌触りは、若い女性たちを魅了しています。当然値段は800円以上。ランチより高いカフェもあります。
駄菓子屋のかき氷には、遊びながら食べられる工夫がありました。削られていく氷を小ぶりな皿で受け、山になったら真ん中に割り箸をのせ、その上に再び氷を削ります。山になったかき氷を、同じ大きさの皿で上からぎゅうっと押すと・・・。でき上がるのは、かき氷のペロペロキャンディ。「いちごとレモン」と2面の味をオーダーすると、おばさんがシロップをかけてくれます。 “ワンハンドかき氷”。駄菓子屋のおばさんは敏腕マーケターです。
水上レストラン「ジャンボ」が沈没。またひとつ、“あの香港”が消えました
先週、香港の水上レストラン「ジャンボキングダム」が沈没したというニュースが入りました(その後、転覆はしたが沈没はしていないなど、情報が錯綜していますが)。香港に行ったことがある、特に団体旅行でなら、「ジャンボ」で食事をした経験のある人は多いと思います。その名の通り、“大きな王国”は豪華絢爛な中国風の建築様式。内装からテーブル、椅子、調度品、チャイナドレスのウエイトレスまで、観光客が喜びそうな、つまりは中国人以外の観光客が思い描く“中国”を裏切らない中国が、完璧に演出されていて、それはまるで中国宮廷をコンセプトにしたテーマパークのようでした。乗船しなくても、アバディーン湾に浮かぶその姿を見るだけでも、香港に来たんだと感動するほどの迫力がありました。
私が初めて香港を旅したのは、1976年の初夏。「ジャンボ」が再建されたのが同年10月とのことなので、そのときには見ていません。その後、何度か訪ねる機会がありましたが、「ジャンボ」に乗船したのは1度きり。香港のダウンタウンや屋台に惹かれる一方、「ジャンボ」は1度で十分と思っていました。
初訪港で覚えている景色は、奇妙奇天烈なオブジェに度肝を抜かれた「タイガーバームガーデン」と母が異常に興奮していた「慕情の丘(と呼ばれている場所)」。両方とも今はありません。最後に香港を訪れたのは、中国に返還されて大分経った2014年。都会化が進んだ一方、ダウンタウンの活気がいまひとつと感じたのは、気のせいでしょうか。その後の香港が辿った道筋は知っての通り。もうあの香港は存在しないのだと思うと、寂しくて仕方ありません。
ノスタルジーというものは、深く美しく演出されるようです。私の場合のそれは、「Love Is a Many-Splendored Thing」をバックに慕情の丘を駆け上がるジェニファー・ジョーンズの映像と、暗闇にまばゆい光を放つ「ジャンボ」の雄姿です。
価格の優等生も値上げ。PBは6月末まで価格据え置き
食品や外食の価格が次々に高騰する中、年内に値上げが予定されている食品の数が、1万品目を突破することが分かりました。
物価の優等生と言われている卵も然り。鶏のエサは、とうもろこしや大豆の搾りかすなどで、そのほとんどを輸入に頼っていますから、円安が直撃します。卵の包材は石油から作られるプラスチック製品。輸送にも石油が使われていますから、値上がりするのも当然です。
同じく価格が余り変動しないバナナ。6/8に駐日フィリピン大使が緊急記者会見を開き、「バナナを値上げして適切な価格で販売して欲しい」と訴えました。燃料代や肥料代が値上がりし、加えて経済水準が上がっているため人件費は倍近くに跳ね上がっているとのこと。バナナ農家は大変なのだとか。日本との長年に渡る取引関係を考えると、値上げ交渉は簡単ではないと推測され、苦悩した末の大使の発言だったのでしょう。
一方、値上げラッシュの中、踏み留まっているのが、プライベートブランド(以下PB)です。イオンは、6月末までPB「トップバリュ」商品約5000品目で価格を上げない「価格凍結」を宣言。西友も、PB「みなさまのお墨付き」の全商品約1200品目の価格を、イオンと同様、6月末まで据え置くと公表しました。もちろん、内容量を減らすステルス値上げもしないといいます。マヨネーズやレトルトカレー、冷凍餃子など、商品によってはメーカー商品の半額近いものもあり、売り上げは好調です。
6月末までとのことなので在庫で賄えるでしょうが、売れている勢いに乗って価格据え置きを続けるようであれば、今度は、PBの製造会社にしわ寄せが行くことに。バナナ農家の苦境と被ります。
ワールドカップに向けて盛り上がれ!食市場
今年は、4年に1度のサッカーFIFAワールドカップ(以下WC)開催年。開催国カタールで11/21から始まります。新型コロナウイルス対策の規制が緩和されたままであれば、再びあの熱狂が繰り広げられ、食市場も盛り上がるでしょう。
弊社が提供している「食のトレンド情報Web」のアーカイブでは、2004年からの情報を順次アップしています。現在2010年半ばまでアップされていますが、そこで“ワールドカップ”と検索すると、2006年ドイツWCが開催されたときのトレンド情報が挙がってきます。
前年の2005年は、日本における「ドイツ年」。日本代表のドイツWC出場も決まり、ドイツ熱が高まった年です。日比谷公園や神宮外苑など首都圏5ヵ所で、ドイツ各地の地ビールやソーセージ、ザワークラウトといったドイツフードが楽しめる「東京オクトーバーフェスト」が開催されたり、札幌の岩田醸造が「ドイツワインの試飲展示会」を行ったり、ドイツワイン基金駐日代表部が、チョコレートにドイツのアイスワインを組み合わせるギフトを提案してバレンタイン商戦に参入したり。ネットのお取り寄せでは、通常のクロワッサンよりも層が多く、よりサクサクした歯応えが特徴のドイツ生まれのクロワッサン「ギッフェリ」が話題になりました。ドイツに限らず、欧州に対する関心が高まり、輸入ビールの人気が徐々に高まった年でもあります。
奇しくも、カタールWCの日本の初戦の相手は、ドイツ。WC熱が高まりを見せる中、食市場ではどんな提案や仕掛けが展開されるのか楽しみです。
ドイツWCを最後に引退した中田英寿氏。東京・青山でカフェをプロデュースしたり、東ハトの執行役員になって商品開発に参画したり。そんな話題も食市場を賑わせました。