令和ラーメン業界。“海を渡れ!?”

 2024年、ラーメン店の倒産件数は前年比3割超と急増。史上最多を更新し、その流れは今年に入っても続きました。それが今、落ち着きつつあるとか。
 倒産ラッシュの主要因は、原材料費の高騰と人手不足。そこに燃料代の値上げが追い打ちをかけました。しかもラーメン業界には、言わずと知れた“1000円の壁”があります。ラーメン1杯の税込み価格が1000円を超えると客離れが起こるというもの。経費の増加分を適正に価格転嫁させてもらえないという現実は、生活者のラーメンに対する価値観そのものです。人気店がラーメン1杯に賭ける熱量は原材料費と時間に比例し、ラーメンは“庶民の味”から“グルメ料理”へと価値を変えました。その波に乗れなかった店は、“庶民の味”であり続けることすら難しくなっていったのです。
 そんな状況下、ラーメン業界を商機ととらえているのが、大手外食チェーン。松屋フーズは7月、ラーメン専門店「松太郎」の1号店を東京・新宿にオープン。“しょうゆラーメン”は680円。富士山麓の自社養豚場で育てた“富士ポーク”を低温調理したチャーシューをウリに、多店舗展開を図ります。大量調達した食材を集中調理し、人件費を抑える店舗開発を得意とする大手だからこそ可能な“庶民の価格”です。一方、吉野家ホールディングスは、ラーメン事業を次の成長の柱にすべく、麺やスープを製造する「宝産業」や、京都の人気ラーメン店「キラメキノトリ」を運営する「キラメキノ未来」を買収。大手二社は牛丼依存から脱却し、ラーメンで世界進出を狙います。
 私が長年贔屓にしているラーメン店も、国内の店舗を急速に減らし、海外進出に注力しています。そんなこともあって新しい“ご贔屓ラーメン店”を探索中。先日伺った店は、今年6月にオープンした「鮨とラーメン うおがしや 渋谷」。経営母体は、魚介系の飲食店を多店舗展開している「FIRST DROP」で、24年に1号店を新橋にオープンしてからの早くも6店舗目。カツオだしがベースのラーメンに、店内で“機械で”削ったカツオ節が提供される“追いかつお”のサービス。寿司とラーメンの飲食異業種合体に加え、すべての展開がインバウンド向けに見えて。“やっぱり海の向こうのお客様が大事なの?”と、ちょっと寂しくなったりもします。