飲食店の想定外の残念なサービス

 飲食店での残念な体験は、料理の内容よりも、サービス面でのことが多いと思います。大きな期待を抱いて訪問した店の場合は料理のハードルも高くなりますが、そうでないとき、料理は往々にして想定内、一方サービス面は想定外のことが稀に起こります。
 宴会場での講演後、場は懇親会に移ります。円卓に着席してのイタリアン。全員が着席する前に注がれたスパークリングワインは、乾杯のときには既に泡はなく。残念ですが、“ありがち”で済ませます。驚いたのは、その後。パンが2個ずつ配られました。私が「ひとつで結構です」と言うと、「ひとり2個ですから」と受け入れてもらえません。しばらくして対面にお座りだった会長がサービスの方に「パンお替わりください」。返事はやはり「ひとり2個ですから」。さすがに同卓の皆さんもびっくり。「私のをどうぞ」と一斉にパン皿を差し出す事態に。“パンの2個縛り”で起こったこの珍事。さすがの私も初めての体験でした。
 上野で人気のそば屋へ。メニューにある“二色鴨ざる”の二色とはなんだろう。更科そばと田舎そばの組み合わせ?変わりそばかな?秋だから菊、さつま芋、ごま?などと思いを巡らせ、サービスの女性に尋ねると返って来たのは「2枚ということです」。「同じものが2枚、大盛りということ?」「はいそうです」。運ばれたのは、案の定、普通のそばと田舎そばの組み合わせでした。
 「パンはひとり2個ですから」はおもてなしの気持ちからは生まれない言葉だし、メニューにある料理の内容を理解していないのは、サービス担当としては致命的です。人手不足が深刻な業界。すぐに辞めてしまうかもしれないアルバイトにムダな時間は割けないし、多く(?)を求めたら辞めてしまうかもしれないということなのでしょうか。そう思うと、過客に過ぎない私が物申してもという気持ちになり。同時に、もう何でもいいからがんばれ!という気持ちにもなり。愁う秋です。