海に面した温泉旅館を訪ねて知多半島へ。観光地としては余りメジャーではありませんが、食に関してはとても興味深い半島です。
知多半島に位置する半田市には、ミツカンの本社とミュージアムがあります。ミュージアムでは、酢造りの歴史や工程を実物の桶や実際に発酵している様子を見ながら学べると共に、身体を動かしながらそれらを覚えられるアトラクションもあります。米酢はふつう米から造りますが、ミツカンは酒粕を原料にしています。酒造業を営んでいた創業者の中埜又左衛門は、酒と同時に大量に産出される酒粕を上手く利用できないかと考え、酒粕から酢を造ることを思い付いたといいます。
半田市にはビール会社もありました。ここでも登場するのは、中埜又左衛門。と言っても四代目です。明治20(1887)年、敷島製パンの前身である敷島屋製粉場を開業した盛田善平と共に、「丸三ビール醸造所」を設立。数年後には、本格的ドイツビール製造に向けてドイツからビール醸造器械を買い入れ、ドイツ人醸造技師を招いて「カブトビール」を発売しました。「カブトビール」は、東海地方では最大のシェアを持つほどに急成長。今でも醸造所の一部が「半田赤レンガ建物」として残されていて、当時としては先進的な「カブトビール」の販促物をいろいろ見ることができます。盛田善平は、ソニーグループの創業者、盛田昭夫の実家、盛田の関係筋に当たります。盛田も日本酒やしょうゆ、みそなどを製造する醸造会社で、発祥は知多半島の常滑市です。常滑と言えば、急須に代表される六古窯のひとつ、常滑焼が有名。もうひとつ、知多半島の入り口東海市は、カゴメの創業の地です。
海に囲まれた知多半島は、海運業も盛んでした。ミツカンの酢は、半田運河で船に積まれ、握り寿司がブームになった江戸の街に運ばれて行ったのでしょう。(※敬称略)