家で料理をする頻度が増え、“簡単”“便利”に対するニーズが高まる中、そこに、“新しさ”、もっと言えば“斬新さ”のある商品が登場しています。切り口が斬新だと、“手間要らず”の簡便商品というやや後ろめたさを伴う商品に、興味と楽しさが生まれ、マイナスの部分が払拭されることがあります。
昭和産業が3/1に発売した、挽き肉と野菜を混ぜて焼くだけで、外側がパリッとした新感覚の餃子が作れる『もう包まない!混ぜ餃子の素』。家庭で人気が高い一方、作るのが面倒なメニューの代表格“餃子”をアレンジした、“混ぜ餃子”を提案しています。粉を水で溶き、別に用意した挽き肉やキャベツ、にらといった具を混ぜて焼くだけです。米粉やデンプンなど、粉の絶妙な配合により、皮がないのに外側はパリッとした食感に仕上がるといいます。こしょうやにんにくなどの調味料があらかじめ配合されているため、たねに下味を付ける必要もありません。大きく焼いて切り分けながら食べるのもおすすめだといい、パッケージでは調理例の写真の周りに大量の謳い文句を配置し、斬新さをアピールしています。
敢えて「混ぜ餃子」としていますが、包まない餃子は、はたして餃子と言えるのでしょうか。社内試食会の場で、“焼き役”の私は「お好み焼き、もう少しで焼けます」と“お好み焼き”を連発。スタッフからその都度「餃子!」と訂正を入れられていました。どう見ても“お好み焼き”は、“餃子”と呼ぶのが難しかった。
フリーの料理編集者だったとき、料理研究家の故小林カツ代先生が、挽き肉の具をワンタンの皮で包まず、挽き肉団子とワンタンの皮を一緒にスープで煮た料理を“我が道を行くワンタン”と名付けて料理本に掲載しました。カツ代先生曰く、「皮で包むなんて、家庭でそんな面倒なことしなくていいのよ。口に入れれば一緒なんだから」。駆け出しの私は、これはそもそも“ワンタン”と名乗っていい料理なのかと悩みましたが、豪快なカツ代先生のおっしゃる通りにいたしました。そんな昔の出来事を彷彿とさせる商品です。