小西先生からの贅沢な春のお土産

 毎年春、母校であり客員教授を仰せつかっている女子栄養大学(以下栄大)に、特別講義をするために伺います。昨年はオンライン講義で行くことができず、2年ぶりです。

 その際、必ず立ち寄るのが調理学研究室(以下調研)です。私は本心、栄養学よりも調理学が学びたくて栄大に入学し、入学式を待たずに調研の扉を叩きました。それからは、調研に入り浸り。先生に「あなた授業はいいの」と心配されるほど。そんな風に過ごしたからか、年に一度調研に行くと、故郷に帰って来たような思いがします。もちろん、当時大変お世話になった高橋先生は教授になった後、退職していらっしゃいますし、助手だった松田先生は教授になられています。現在の准教授や講師の先生方は、皆私の後輩ですが、私には先生としか思えないのは、学生時代に染み込んだ人間関係の所以です。

 高橋教授退職後、佐賀大学から栄大に教授としていらっしゃったのが小西史子先生です。小西先生は、私にいつもお土産をくださいます。「講義が終わったら、必ず戻って来てくださいね」のお言葉は、私には「おいしいお土産、用意してますよ」と聞こえます。そして今回も。

 ふきとわらびの煮物、ほうれん草の胡麻よごし、筑前煮、筍とふきのちらし寿司には海老と錦糸卵、木の芽が散らされ、まさに春満開のお弁当です。食べ慣れた落ち着く味、「年寄りの煮物です」という先生のお言葉通りのやさしい硬さ。それらのお料理が、先生が日々の折々に取っておかれたのでしょう。可愛らしいお菓子の紙箱にラップを敷いて盛り付けられているのです。これ以上の贅沢はあるでしょうか。家に帰り、着替えは後回し、まずはふきの煮物をつまみ食い。至福のひとときでした。