買いたくてもなかなか買えない野菜のひとつに“せり”があります。家の近くの無粋なスーパーにはなく、と言ってデパ地下の八百屋や高級スーパーで手に入れてもうれしくない。それが“せり”です。
せりは水菜、三つ葉と仲間のように語られることが多いような。昔はそうだったのかもしれませんが、今はまったくの別物という感じ。水菜はサラダに鍋料理にと年中、たっぷりと使え、あるときは量増しに、またあるときは彩りに、そしてまたあるときは歯応え野菜にと大活躍。三つ葉はほんのり香る香草として、吸い口や、煮物、丼の天盛りに。一方せりは、野性味溢れるくせのある香りが身上。鴨鍋やお浸し、天ぷらなどシンプルな料理に合います。
そのせりが今、人気なのだとか。背景にあるのは韓流。韓国では、“ミナリ(せり)”ブームが起こっています。きっかけは、2021年公開の映画「ミナリ」。せりは一度根付くと、特別な世話をしなくても水辺で力強く成長する植物。その「たくましい生命力」が物語のテーマである移民として米国で生きる韓国家族の姿と重なるため、このタイトルが付いたといいます。
都内の韓国料理店では、せりの香味で豚肉の脂をさっぱりと食べられる“ミナリサムギョプサル”や、せりをたっぷりのせた“ミナリユッケビビンパ”や“ミナリサムゲタン”を提供するなど、せりは肉料理と相性がよく、緑が映える見た目も人気。韓国料理以外でも、せりをラーメンにトッピングしたところ、女性客が増えたという店もあり、パスタや炒飯などにせりを使う飲食店も登場しています。 クックパッドの検索データサービス“たべみる”によると、25年のせりの検索頻度は24年比で2割増えたとか。
私は「2026年食市場のトレンドキーワード」に「香り活用」を挙げました。加工食品市場では13年にブームだった“燻製香”が、今再び人気です。食に変化を求める生活者のニーズが、“クセのある香り”に向かっています。