蛇口から何が出る?

 蛇口から水ではない液体が出てくる「〇〇蛇口」。アサヒ飲料が始めたのが、蛇口をひねると“カルピス”が出てくる機材“カルピスじゃぐち”の実証実験。三重県多気町の「HOTEL VISON(ホテルヴィソン)」に設置し、ウェルカムドリンクとしてカルピスを提供します。その目的は、カルピスとの親和感の醸成と体験価値の提供と推測します。
 「〇○蛇口」は、地域活性にも利用されています。愛媛県松山市の学校施設をリノベーションした施設「シン・エヒメ分校」。元学校の手洗い場には、5種類のみかんジュース(有料)が選べる蛇口があります。「ホテル道後やや」では宿泊客に限り、蛇口をひねれば3種のみかんジュースがいくらでもいただけます。神奈川県の「箱根関所旅物語館」に設置されている蛇口からは、伊豆産ニューサマーオレンジの果汁。東北自動車道国見SA下り線(福島県)では桃ジュースが、神戸淡路鳴門自動車道淡路SAでは「たまねぎスープ」が。香川県高松空港のターミナルビル2階にある「空の駅かがわ」の一角に設置された蛇口から出てくるのは、いりこ、カツオ節、昆布をブレンドした「かけだし」です。
 一方、蛇口を人手不足に利用しているのが、飲食店。客席に設置された蛇口からいろいろな種類の酒が出てきます。基本、時間内であれば無制限に飲めますが、氷や割り材は有料。“常温ストレート派”が最強を極めるシステムです。
 “蛇口から何かが出てくる!”。かなり非日常的でワクワク感があり、楽しい仕掛けです。茶処静岡県西部で育った私の場合、小学校の給食時には、大きなやかんで煎れた緑茶が提供されました。それがとても珍しいことだと知ったのは、東京に来てから。“静岡県の小学校の水飲み場には<水> <お茶>と選べる蛇口があった”なんていう愉快な都市伝説。ひそかに妄想しています。