あなたは何の「プロパ志向」?

 春は講演の季節。講演原稿作成のため、暮れから2月初めまで忙殺されます。晩秋、社内会議を重ねて決める翌年のトレンドキーワード。原稿を重ねていくうちに、次から次へとキーワードに関する新しい情報が入り、原稿の刷新を繰り返します。手前みそですが、弊社が挙げたトレンドキーワードが間違っていないという証しです。
 2/12から幕張メッセで開催されるスーパーマーケットトレードショーのセミナーで、“2025年 食市場のトレンド ―「タイパ」と「プロパ」のハイブリッド戦略―”というテーマでお話をします。だからでしょう。お昼ご飯を作っているときなど、「プロパだなぁ」としみじみ思うのです。忙しいのだから、ちょっと出掛けて食べても、コンビニで買って来てもいいのに、料理をしたくなるから不思議です。気分転換? 逃避かも。
 料理のプロパの魅力は、料理を1度も、1ミリも楽しいと思ったことがない人、料理をまったくしない人には分からないでしょう。たとえば、古い家具を補修して磨き、ペイントするプロセスを楽しむ人がいます。それを面倒だと思う人は、家具屋に行って新品を買えばいいのです。私は、古いタオルで雑巾を縫います。針と糸でシクシクシクシク。新品のタオル地、ミシン縫いですが3枚110円で売っています。縫い物が苦手な人には、無駄なプロセスに思えるでしょう。昨今、梅干しを漬けたり、ぬか床を育てたり、そんな“手仕事”に挑戦する生活者が増えています。お金と引き換えに得るものではなく、頭と手を動かして時間を楽しむものに癒やされ、そこに価値を求め、アイデンティティの確認をしているかのように思えます。そして今、フツーの高齢者が著す“ていねいな暮らし本”が人気です。
 料理をあまり経験していない食業界人さん。あなたが好きなプロセスはありますか。大丈夫。その気持ちを思い起こしながら「プロパ志向」を理解していただければ、外すことはないと思います。