今年も3月から、「食市場のトレンド」講演をしています。相関図のキーワードに「NEXT甘じょっぱ」があり、その中でスナック菓子市場でも甘じょっぱ味が人気という話をしています。
例えば、カルビーはクセになる甘じょっぱさが楽しめる“ポテトチップス しあわせバタ~”を4年ぶりにリニューアルしたのですが、この商品は、同社のポテトチップスシリーズの中で、“うすしお味”“コンソメパンチ”“のりしお”に次ぐ、人気のフレーバーといいます。湖池屋は、厚切りポテトチップス“ピュアポテト”ブランドから、冬の定番バター味をはちみつと岩塩で甘じょっぱく仕上げた“ハニーバターと岩塩”を発売。2023年3月に実施したブランド発売5周年企画のファン投票で“甘じょっぱい味わい”が1位を獲得したとか。
青春時代をスナック菓子で過ごした私にとって、ポテトチップスに求めるのは、コンソメ味やバーベキュー味などの肉フレーバー。甘さを求めることは信じ難く。講演会場。前に陣取った新入社員たちは納得顔、最後列の上司たちは、気持ちは私と同じ。“Why!”の表情です。
もうひとつ。今年のキーワードに「とろみ食感」があります。コメダホールディングスは、高齢者の誤嚥を防ぐためにとろみを付けたインスタントコーヒーの売り込みを強めています。また昨年の講演では、森永乳業の“つるりんこシリーズ・シュワシュワ”を紹介しました。嚥下障害がある高齢者が炭酸飲料を摂取するためのとろみ調整食品です。大学の講義でこの話をすると、学生たちは、嚥下障害がある高齢者がコーヒー?炭酸飲料?という顔をします。が、高齢者の朝食は圧倒的にパン食が多く、コーヒーを常飲していることは想像に難くなく、国立長寿医療研究センター老年内科の医師、前田圭介氏が21年に実施した、1100名が対象の嗜好調査アンケートによると、高齢者の56.6%が過去1ヵ月間に炭酸飲料を飲んでいて、仮に炭酸飲料を飲むことを禁じられた場合、60.5%が“受け入れられない”と答えています。
年代によってスナック菓子に求める味は変わり、若いときに楽しんでいた嗜好品は老齢期になっても味わいたい。味のトレンドと普遍性は、興味深いテーマです。