食品を運ぶ自走ロボット。「食のトレンド情報」で初めて取り上げたのは、2016年11月。米国・ワシントンDCで、スターシップ・テクノロジー社が開発した「無人自走ロボット」によるグロッサリーやレストランの料理のデリバリーテストが行われているという内容です。因みに英国では、このロボットをデリバリーサービスに使用しているレストランが既に登場していて、ヨーロッパでは複数の国で実用化されていました。
それからおよそ7年。ようやく日本においても自律走行ロボットによる料理配達サービスが東京・日本橋エリアで始まりました。Uber Eats Japan(ウーバーイーツジャパン)、三菱電機、米国のスタートアップ企業Cartken(カートケン)が業務提携した事業で、ウーバーイーツが同サービスを提供するのは、米国に続き世界2ヵ国目です。三菱電機が日本仕様への適合と導入、運用を担当。Cartkenがロボットを設計し、ウーバーイーツアプリ上で展開されます。
ロボットは、7年前にワシントンDCでテストされたものとほぼ同じ6輪バギー車に似た形。GPSやカメラ、センサーなどを使って障害物を避けながら走行し、歩行者に遭遇したら脇に寄って道を譲るようプログラムされている点、ロボットが目的地に到着したら、お客はアプリケーション・コードを使って商品を受け取る仕組みなど、基本となる設計やシステムは当時とそれほど変わってはいないでしょう。何事においても実用化までに時間がかかるのは、日本のお家芸。慎重さ故ととらえられなくもありませんが、時勢の後追いは否めません。
ロボットの稼働時間は平日10~17時。夜道は怖いし、大きな歩道がある上品な街じゃないと働けないよね。
月: 2024年3月
家の近くに「まいばすけっと」がオープン!
家から徒歩4分の場所に「まいばすけっと」がオープンしました。徒歩5分に「マルエツ プチ」が、徒歩6分に「ライフ」がある買い物環境。たれが付いていない納豆を売っているのは、「まいばすけっと」だけです。以前「himeko’s COLUMN」で書きましたが、私は“納豆に付いているたれは使わない派”。“たれなし納豆”を求めて徒歩19分の離れた「まいばすけっと」に通っていた身にとって、この上ない幸せです。オープン前日、前を通りかかったとき準備をしている店員に思わず「たれなしの納豆、売りますか」と尋ねたくらい。オープン当日は出張で行けず、翌日に行ったら、“たれなし納豆”は売り切れていました。
イオン系小型スーパー「まいばすけっと」は、ドミナント戦略で有名です。月に1度通っている神奈川県某所。バスに乗っている5分ほどの間に「まいばすけっと」を3店舗数えることができます。特定の地域内への集中的な出店は、近隣の生活者の認知度を高め、親しみやすさを植え付け、生鮮食品を始めとする品揃えはコンビニでは拾い切れない需要をある程度満たし、イオンのPBや仕入れのスケールメリットで価格訴求を可能にしています。
今回オープンした場所も、高齢者の買い物難民が多い地域。「まいばすけっと」の登場を、私の何倍も喜んでいらっしゃるでしょう。ただ「まいばすけっと」に対する私の印象は“雑さ”。とても残念なことですが、どこの「まいばすけっと」を覗いても同じ印象です。店内の造りにも、商品の品揃えにも、商品の配置にも、商品自体にも、セルフレジにも、店員にも、すべてに“雑”を感じるのです。“雑”が価格に繋がるとは、決して言ってほしくないと思います。“たれなし納豆”一択の目的通い。私の「まいばすけっと」ルーティンになりそうです。
「癒やしニーズ」と「甘じょっぱ」
今年も「食市場のトレンド相関図」を作成しました。日常生活は取り戻したかのように思いますが、経済成長を伴わないインフレ、日本の経済力の低下など、先行き不安は解消されないままの日々が続き、「癒やしニーズ」はますます強くなっています。今年トレンドとして挙げたキーワードの傾向は、過去の先行き不安だった年と同じ内容のキーワードが多く、それがさらに深化していることです。
例えば、「NEXT甘じょっぱ」。「甘じょっぱ」は、「癒やしニーズ」が強くなると派生するキーワードで、過去には、2007年に塩味のジェラートやチョコレートなどのスイーツが人気になり、飲食店では「ゲランドの塩」などブランド塩をウリにしたスイーツが提供され、マクドナルドが「マックグリドル」を発売しました。2000年代は、給与が伸び悩み、「実感なき景気回復」と言われた時代。不況対策としての量的金融緩和政策を06年3月に解除したことから、翌07年から景気の転換局面に入り、リーマンショックが追い打ちをかけました。
その次は、15年。消費税が5%から8%に引き上げられた翌年で、節約志向が定着。生活が良くなっていないと感じる生活者は、4年後に予定されていた10%増税に猛反対していました。この年は、甘いクレープにトリュフやキャビアを合わせたり、最近日本でも見られるようになった「ドーナツバーガー」が米国でブレークしたり。その米国の甘じょっぱを代表する老舗ハム店「ハニーベイクド・ハム」が日本に初上陸しました。
今年は、「甘じょっぱ」感がより濃厚になり、かつ大人の風味や辛味が加わってリッチなテイストに仕上げているのが特徴。次のステージにアップしているので「NEXT甘じょっぱ」というキーワードで表現しました。
「癒やしニーズ」が高まると「濃い系」の味も求められます。ペットボトルの飲料やスナック菓子、氷菓や調味料、ピザやラーメンなども濃い系が続々登場。しかも今年は、過去の「濃い系」よりもさらに濃い味の食品やメニューが多く、「濃厚系」をキーワードにしました。
米国の「TVディナー」
主食とおかずを組み合わせたワンプレートタイプの冷凍食品の市場規模が急拡大しているという記事が、2/14の日経MJ(流通新聞)に掲載されていました。インテージによると、2023年の推計市場は86億円と17年比で7.7倍に達し、年代別にみると、1人あたりの購入金額が最も多いのは60~70代。ただ、金額の伸びが目立つのは30代以下で、30代の購入金額は6年間で2.4倍に。メーカー各社は、若年層を意識した商品を相次ぎ投入。中でもニチレイフーズの、「デミグラスハンバーグ&ナポリタン」「チキン南蛮&ボロネーゼ」「厚切りベーコンのグラタン&オムライス」など洋食の王道メニューを組み合わせた「三ツ星プレート」シリーズが好調だといいます。
この記事を読んで、1970年代に初めて聞いた「TVディナー」という言葉を思い出しました。「TVディナー」とは、米国において、例えば肉のトマト煮とグリンピースのバターソテーなど、メインディッシュと付け合わせが一緒にトレイにセットされた冷凍食品のこと。テレビを見ながらでも作れることから、このように言われるようになりました。食事の簡便化を皮肉混じりに表現した言葉なのかもしれません。
当時、「TVディナー」を日本の食事スタイルに置き換えた場合、ご飯、焼き魚、和え物が仕切りのあるプレートに盛り付けられて冷凍されているという発想になり、すべての料理をちょうどよい温度に温め直すことはできない。従って日本ではTVディナーの展開は難しいという結論に行き着きました。ご存知の通り、電子レンジ加熱は食品に含まれる水分量や大きさ、形に大きく影響されるからです。その点、米国の料理は電子レンジに向いていると言えますし、だからTVディナーなるものが登場したのでしょう。
ピザだけで食事を済ますなんて考えられないという時代。今より、ずっと日本の食のカタチが固定化されていました。なんだか嘘みたいな話です。