今夏も続々“冷やしカレー”

 気象庁が7~9月の3ヵ月予報を発表。今夏も危険な暑さが予想されています。言われなくても既に心構えはできています。冷たい食品に心惹かれながら、ひたすら耐えるだけ。
 今年もまた、“冷やしカレー”の情報が上がっています。「無印良品」を展開する良品計画は、“冷やして食べるカレー”シリーズに“レモンクリームチキンカレー”を投入しました。昨年発売した“チキンジンジャーカレー”“えびとトマトのカレー”が好評だったからとのこと。ハウス食品は、期間限定で“冷製カレーうどんの素”を発売。同社は2011年には“冷やしカレーうどんの素”を上市しています。
 外食市場では、丸亀製麺が“豆乳仕立ての冷やしトマたまカレーうどん”の提供を始めました。21年に発売した“トマたまカレーうどん”を応用した初めての冷やしバージョンで、氷水で締めたうどんに冷えた“トマたまカレー”をかけ、豆乳クリームとカツオ粉をトッピングします。香辛料の刺激的な香りとカツオ粉の香ばしい香りがミックスした、うどん店ならではの仕立てです。
 石川県に拠点を置くチャンピオンカレーは、夏季限定メニュー“冷やしカレー”の販売を23店舗で展開します。昨年までは、開発担当者が手作りしていたため「野々市本店」(石川)でしか提供できなかったのですが、想像以上の反響に、フランチャイズ店でも販売できるよう工場での大量生産を検討。3年をかけて研究開発しました。合わせるライスは酢飯。酢飯でカレーといえば、くら寿司が15年に発売した“すしやのシャリカレー”が記憶にあるところ。確かに、冷やしたルウと酢飯の相性はよさそうです。
 食のトレンド情報に、初めて「冷やしカレー」のキーワードが上がったのは、05年。外食市場では、冷凍庫でカッチカチに凍らせたルウをクラッシャーで一気に粉砕してご飯に添えるメニューが話題になりました。

過去のコラムにみる「異常気象と食料供給の深刻化」

気象庁は6/9、「エルニーニョ現象」が発生しているとみられると発表しました。「エルニーニョ現象」が起きると日本では冷夏になると思われていますが、地球温暖化に加え、今冬の「ラニーニャ現象」の影響で日本付近は暖かい空気に覆われやすいことから、今夏は高温傾向が続き、降水量の見通しも平年並みとみています。
 日本で「エルニーニョ現象」が発生するのは、2018年秋~19年春に観測されて以来。当時の「himeko’s COLUMN」を読み返すと、18年9/25のコラムでは、9月に入り曇りや雨の日が多くなり、野菜が高くなるのではと心配し、前年、秋の長雨と台風の影響で葉野菜の価格が高騰。リンガーハットが“ちゃんぽん”を値上げ、サラダクラブも品薄状態で値上げせざるを得ない状況であったこと。一昨年も、同様であったため、“異常気象と野菜の価格高騰の常態化”を嘆いています。同年12/17のコラムでは、秋に入り気温が高い日が続いたため野菜の成長が早く、鍋野菜の価格は安くなっていたのに、12月に入っていきなり気温が下がり、一転、低温と大雪による鍋野菜の高騰を懸念しています。
 その前は、14年春~16年春。14年5/26のコラムでは、「メニュー提案、販促案に【季節×気候×経済】の方程式を」のタイトルで、5年前、09年8/10のコラムを紹介。天候不順で、卸値が倍以上になっている野菜もあること。折しも、前年秋にはリーマンショックが発生。高騰した鍋野菜には手を出しづらく、節約志向が充満した家庭の食卓には、価格が安定している根菜を使った「カレー鍋」や「トマト鍋」が上ったとあります。〆の文章は、“【季節×気候×経済】の(中略)考え方は、気候変動が年々激しくなり、加えて食料連鎖も経済状態も国家間の関係を無視しては成り立たない今、ますます重要なのではないでしょうか”。
 このときから14年。線状降水帯発生による大雨や、すぐに巨大化する台風やハリケーンによる洪水。干ばつや熱波とそれによって発生する山火事、寒波による大雪被害などの気象現象に加え、ウクライナ危機がもたらした食品価格の高騰、アジア各国の経済発展よる食料の争奪戦などなど。食の供給を取り巻く環境はますます深刻化しています。

豆の話

 最近、週末は朝から豆を煮込むことが多くなりました。レッドキドニー、白いんげん豆、青えんどう豆、ひよこ豆など、前日の夜、料理に使う豆をたっぷりの水に漬けて置きます。翌朝には二回りも三回りも大きく膨らんでいて、“さあ煮込むぞ”と思わせてくれます。
 ゆでた豆の缶詰もありますが、乾燥豆を戻すところから始めるのは、豆をゆでていると甘くてほくほくとした香りがキッチンいっぱいに広がり、幸せな気分になれるから。もうひとつの理由は、“絶対においしい料理がいただける”という期待感を高めてくれるからです。 
 合わせるのは、牛肉や豚肉、鶏肉や鴨肉と、ハムやベーコン、ソーセージやウインナーなどの畜肉加工品の中から。たっぷりの野菜と合わせてイタリアンなスープにしたり、玉ねぎやにんにくなどの香味野菜と合わせて豆とソーセージが主役のフレンチ風のスープにしたり。牛肉と合わせてメキシコ料理の「チリコンカン」を作ったり、鴨やラム、生ソーセージなどを贅沢に使ってフランス南西部の郷土料理「カスレ」に挑戦したり。肉や畜肉加工品のうま味と塩味、香りと脂がたっぷりとスープに溶け出し、それを豆がお腹いっぱいに吸い込んで。おいしくならない理由が見つかりません。フレンチ風のスープは、仕上げにレンズ豆を加えると、ポテッとした煮込み料理にもなります。
 豆料理は世界中に広がっていて、穫れる豆によって料理が異なり、加工の仕方もさまざまです。例えば、北南米や欧州には煮込んだ料理が多い一方、中近東やアフリカでは豆を潰してコロッケのように揚げた「ファラフェル」が有名です。東アジアでは豆から豆腐や納豆、みそやしょうゆを製造し、豆腐は水分を抜いて豆腐干や高野豆腐に加工。もちろん煮豆は日本の伝統食ですし、北陸や東北には大豆を潰して平たくし乾燥させた保存食「打ち豆」もあります。
 豆はタンパク質と食物繊維が豊富で、ビタミンやミネラルをバランスよく含む栄養的に優れた食品。卵が命の元のように、豆は植物の種子、発芽の元です。“食べれば絶対にパワーをいただける”。そんな気になれるのも豆の魅力です。

“チップ”という商習慣

 今年のゴールデンウイークは、海外に行く人よりも国内旅行や身近なレジャーを楽しむ人が多かったようです。でも夏休みは、4年ぶりの海外旅行を計画している人が増えるでしょう。友人がゴールデンウイークにハワイに行ったそうで、日本人が少ない分、本土から旅行に来ている米国人が目立ったと話していました。そしてもちろん円安の洗礼も受けたようで、ただでさえ高いハワイの外食費がさらに高くなり、そこに州税とチップが加わった金額に驚愕したと。
 チップという日本にはない商習慣は、慣れていない私たちにとっては面倒で、やっぱり損した気分になることは否めません。レシート下部の「サービス料」、頼んでもいない「お通し代」、仲居さんへの「心付け」など、日本にも同様のものはあるのですが。
 初めて米国に滞在したとき、タクシーでもホテルでもレストランでも、どこでもチップが必要で常に1ドル札を用意していないと困ってしまう毎日に、なんて面倒で損する“きまり”なんだろうと思っていました。特に、当時はビンボー旅行。チップがサービス業で働く人たちの大切な収入源だということは理解していましたが、上乗せされる金額に素直に納得できなかったのは、やはり日本にはない商習慣だからでしょう。
 しかも当時は、ウェイトレスがガムを噛みながらテーブルにやって来て、腰に手を当てながら“早く決めなさいよ”という態度(に見えた)で注文を取り、サーブしながら同僚と大声で無駄話をし、注文を間違っても言い訳しかせず・・・。そんなことが珍しくなかったような。そして最後は決まって笑顔で「エンジョイ?」。“エンジョイできるか!”と心の中で叫んでいました。それでもチップは払うのです。“おまえのサービスはチップに値しない!”という内容をスマートに表現できる忍耐力も語学力も勇気も持ち合わせていません。
 当時のチップは10%程度だったと記憶していますが、現在の米国では飲食店のランクによって15~25%のようです。円安の今、“旅行の醍醐味は大盤振る舞い”を常に心で唱えていないと、小心者の私は心身症になってしまいそうです。