卵不足の状況が続く中、キユーピーは業務用として販売する卵をブラジルから輸入することを決めました。ヨーロッパ、ロシア、北米、南米の西側、インド、アジアと広がっている高病原性鳥インフルエンザ。ブラジルではまだ発生していないようで、世界各国から卵の注文が殺到。取引価格は、現在の日本の卵の1.5倍になっています。卵の価格はいつ元に戻るのでしょうか。鶏舎を消毒し、ひなを卵が産めるようになるまで育てる間は現状が続くでしょうし、海外に依存している飼料の価格が下がらなければ、卵の価格は高値定着のままかもしれません。
鳥インフルエンザは、渡り鳥やねずみ、家禽やペット、時には人間が媒介になって鶏に感染します。世界的に広がっている養鶏に関するアニマルウェルフェアへの対応に日本が消極的なのは、そこにも理由があります。鶏をケージに入れず平飼いにすれば、感染リスクが高まると思われるからです。
新型コロナウイルス感染を予防するためには「3つの密(密閉・密集・密接)」を回避することが求められました。ケージで飼育されている状態は、まさに3密。窓がない鶏舎もあるようでウイルス感染予防に効果的な換気は、換気扇に頼るしかありません。また高齢者や持病がある人は重症化しやすい一方、抵抗力が強い若者は感染しても軽度な症状で済んでしまうことも知りました。狭いゲージで運動もしない鶏は、抵抗力も弱いでしょうし、太陽の光を浴びなければ、ウイルスに対抗するビタミンも体内で生成できないでしょう。
鳥インフルエンザは、卵を工場生産品のように、効率と安定供給を優先し、大量生産をしてきたツケなのかもしれません。1羽が感染したらすべての鶏を殺処分しなくてはならない現状は、命と向き合っているとは言いかねます。卵の価格が下がることは喜ばしいことですが、そろそろ日本も、アニマルウェルフェアについて業界を上げて積極的に取り組む姿勢が必要なのではないかと思います。