2020年、新型コロナウイルスの影響が及ぶ前の「食市場のトレンド相関図」。キーワードのひとつに「辺境料理」を挙げました。
世界各国の料理が本場の味で楽しめる日本。よりディープな未体験の味を求める生活者の興味が“辺境の地”の料理へと向かい、中国の地方料理、中でもヘルシー志向を受けて、「発酵」という料理技術を多用する南部の料理に注目が集まりました。
辺境料理のおもしろさは、未知の食材や料理がもたらす新鮮さや個性だけでなく、その土地に脈々と流れてきた、文化や伝統が色濃く反映されている点です。例えば中国南部に、食材を発酵させたり、スパイスを多用したりする料理が多いのは、食材の保存や菌の繁殖を防ぐため。先祖から受け継がれた知恵が料理に独特の風味を与え、そこがまた魅力にもなっているのです。この点は、今年のトレンドキーワード「日本テロワール」にも通じるところがあります。
日本に発酵中華を紹介した東京・白金の「蓮香(レンシャン)」は、雲南省や貴州省の少数民族が暮らすエリアの食文化を再現。塩水で乳酸発酵させた茶葉を塩の代わりに使ったり、大豆をすりつぶして板状に成形し、天日干しした干し納豆で風味をつけたりする料理法が注目されました。また同・三軒茶屋の湖南料理店「香辣里(シャンラーリー)」では、発酵させた白身魚の蒸し煮や発酵食品とともに、湖南料理の特徴でもある燻製食品を調味料兼食材として使った料理が話題でした。
最近、日本人の好みに寄せていない本場の中華料理が味わえる「ガチ中華」が人気だとか。規制が外れ、自重しながらでも外食が楽しめるようになった今、食に対する興味は再び未知なるものへと引き寄せられているようです。