子どもの頃、母が作る麦茶には砂糖が入っていました。昭和の話です。今は、細かく粉砕された大麦がティーバッグに入っているので水出しも可能ですが、当時は、炒っただけの大麦。大きなやかんでじっくりと煮出します。熱いうちに砂糖を入れて溶かし、冷蔵庫で冷やします。
甘い麦茶が当たり前だったのに、いつの間に甘くない麦茶がフツーになったのか、思い出せません。一方、スタッフの中には、同世代でも一度も甘い麦茶を飲んだことがない人もいます。甘い麦茶は、時代物ではなく、地域物のようです。確かにネットで検索してみると、私の出身地の静岡県、山梨県、栃木県、山形県、新潟県、富山県、四国では香川県あたりではあり、関西と九州はなし、沖縄では一部で砂糖を入れるようです。
なぜ麦茶を甘くするのでしょうか。おそらく、ひとつにはエネルギー補給のため、もうひとつは、甘いものが豊富ではなかった時代、贅沢品だった砂糖を入れてお客様にお出ししたからではないかと思います。事実、私の実家は燃料屋をしていて、プロパンを配達する社員たちがひっきりなしに飲んでいたのを覚えています。トラックにはクーラーがない時代です。体力の消耗も激しかったことでしょう。そして、お客様に氷を入れたグラスで甘い麦茶をお出しするのは私の仕事でした。
当時は、コーヒーにも紅茶にも砂糖を入れるのが当たり前。甘い飲み物は、ちょっと幸せな気分にしてくれたのだと思います。最近は、フルーツの香りを生かした甘い茶飲料が人気です。紅茶に加え、烏龍茶にも甘い商品(サントリー果茶 芳醇な白桃)が登場しています。