出勤の支度をしながらAMラジオを聴くのが朝の習慣です。ニュースや街の情報が端的に分かるのが魅力ですが、何より、リスナーのメールやツイートはまさに「時代の空気」そのもの。興味深いです。
ある朝の番組で、「友だちが“森のバターと言われているほどおいしいのよ”と言ってアボカドを出してくれたが、バターとはほど遠い味で、バターのようにおいしいものではない」という内容のメールが紹介されました。これをきっかけに、話は食べ物を別の食べ物に例えた表現に。「大豆を畑の肉と呼ぶが、大豆はそもそもおいしくて立派な食品。わざわざ肉に例えなくていい」「カキのことを海のミルクというのもおかしい。たしかにカキの白い所はミルクみたいな見た目かもしれないが、口に入れたときの味はミルクとはほど遠い」とか。
私の頭にたくさんの“?”が浮かびました。
アボカドを“森のバター”、大豆を“畑の肉”、カキを“海のミルク”と呼ぶのは、味が似ているからとか、そのくらいおいしいからとか、が理由ではなく、バターのように、肉のように、ミルクのように栄養価が高い、または栄養成分が似ているからなのでは? 栄養成分が似ていれば、もちろん味も似ています。例えばアボカドは良質な脂質を多く含んでいるので、バターのような滑らかな口当たりです。大豆も言わずと知れた、植物性タンパク食品の雄。プラントベースミートの材料です。カキも牛乳のように栄養価が高く、真ガキのうま味が凝縮されたクリーミーな味わいをミルクと表現しているのだと思います。
番組のMCは、春風亭一之輔氏。博学の落語家さんだけに、話を盛り上げるためにわざと・・・かもしれませんね。
月: 2022年2月
コンビニで冷凍のお刺身買ってみた
ローソンで冷凍のお刺身を買いました。「カンパチお刺身」と「真鯛お刺身」、いずれも税込498円です。
「カンパチ」は鹿児島産の養殖カンパチ、「真鯛」は高知産の養殖マダイを使用しています。委託先の工場で切り身にした後、株式会社テクニカンの液体急速凍結機「凍眠」で冷凍され、店舗に届きます。テクニカンのHPによると、【液体凍結とは、パックした食品をマイナス30℃の液体(アルコール)で冷凍する手法 ~ 通常の冷凍庫は「冷たい空気」で冷凍しますが、凍眠は「冷たい液体」を使って冷凍します。】とのこと。
商品の内容量は、どちらも40g。お刺身というより薄切りが6枚。しょうゆとわさびが付いています。スーパーのお刺身に比べれば、確かに高過ぎる、そして、かなり薄過ぎる。解凍方法は流水で10分。生活者が水道代をもったいないと思うぎりぎりのところを考えると、厚くはできないのか。急速冷凍にコストがかかるのか。お刺身の弾力のある歯応えと噛むほどに強くなるうま味を期待するのは無理ですが、どうしてもどうしてもどうしてもお刺身が食べたいときに、わさびじょうゆをたっぷり付けて、また食べてみようかなと思いました。
コンビニで初めてお刺身を販売したのは、ファミリーマートで2008年のことです。中高年層を取り込むために『刺身亭』のブランドで、「まぐろのたたき」や「たこスライス」などの販売を始めました。その後、「活〆かんぱち&甘海老」「サーモン単品盛り」など切り身商品も出たのですが、いつの間にか止めてしまいました。コスト面、流通面、管理面でいろいろと難しかったのでしょう。野菜、精肉と来て、次は鮮魚、特にお刺身。期待しています。
中国で盛んなダチョウビジネス
1月、夜の車道をダチョウが爆走している中国の映像をニュースで見ました。近くの農場から逃げ出したとのこと。中国では近年、ダチョウビジネスが盛んで、短期間にダチョウ飼養企業が次々に誕生。その数は優に200社を超え、このほかに小規模な飼育場が多数存在しているといいます。
中国でダチョウビジネスが急速な成長を遂げてきた背景には、①広大な牧草地帯などは必要なく、限られた面積で飼育が可能 ②飼育管理に手間が掛からないうえ、 繁殖力が強く、 かつ乾燥や高温といった厳しい気候にも耐性がある ③飼料は、草や茎、ふすまや豆かすなど「粗食」でよい ④肉質は、高タンパク、低脂肪、低コレステロールのヘルシーミート ⑤卵は、大きいもので鶏卵30個分。しかも1羽が産む数は、年間50~100個。かつ長期間に渡り産卵が期待できる ⑥皮は、言わずと知れた「オーストリッチ」。クイルマークと呼ばれる独特なドット柄の羽軸跡は、日本の女性にも人気の高級レザー ⑦羽は、衣装の飾りに使われるほか、車のほこり取りとして今でも人気。つまり、飼育効率が高い、捨てるところがない家畜なのです。
日本で近年、ダチョウの話題といえば、やはり「ダチョウ抗体マスク」でしょう。ダチョウの卵を使って生成したウイルスの抗体を塗ったマスクです。ダチョウ抗体は、安価で素早く、大量生産できる点で、新種のウイルスが原因のパンデミックに対し、かなり有効な対策になります。因みにダチョウ抗体は、新型コロナウイルスの変異株にもしっかり結合することを、京都府立大学塚本康浩学長の研究グループが確認しています。
脳に快楽を与える「超加工食品」と甘味料
Newsweek日本版の2/1号の表紙は、大きなハンバーガーの画像と、“あぶない超加工食品”の見出し。思わず手に取ってしまいました。Newsweekは、時に食市場に警鐘を鳴らします。しかも過激気味に。こと、食に関しては極端に横ブレする米国の週刊誌らしい切り口の情報が、日本語で読むことができます。
筆者の意図と多少なりとも齟齬があることを恐れずに概要を申し上げれば、「超加工食品」とは、食品を、それらを構成する化学物質のレベルまで分解。その化学物質に手を加えてから再び合成するという工程を経た食品を指し、それらは人間の脳の“弱み”に付け込むように作られている。脳に快楽という刺激を与えるため、継続的に多食化する。米国の肥満率が高いのはそのせいである。加えて砂糖(甘味料)も同様でコカイン並みに依存性が強く、米国のスーパーで売られている食品の66%に甘味料が加えられている。問題なのは、ヨーグルトやスパゲティソースなど昔は甘くなかった食品にも含まれていること。こんな感じです。
この見解。ひとつひとつ頷けます。加工食品は日々進歩していますし、利用する生活者はますます増えています。糖分はクセになり、その常習性については広く知られているところです。日本でも、高級な食パンは甘くなっていますし、「甘じょっぱ系」の味は定着しつつあります。隠し味に甘みを加えるのは近年よくある手法ですし、外食店の料理も家庭料理のレシピも、味付けが甘くなっているように、私は感じています。
地球環境に配慮して開発されたプラントベースミートは精肉より加工度が高く、脳の唯一のエネルギー源は分解された糖質です。食の持っている多面性を表わしています。
2022年1月1日 1アカウント3,300円(税込)/月で閲覧できる「食のトレンド情報Web」をリリースしました。
→ https://trend.himeko.co.jp