最近、“アップサイクル”という言葉がトレンドキーワードに度々登場します。815号の「himeko’s VIEW!」でも取り上げましたからご存知の方も多いと思いますが、“従来は廃棄されていたものに新たな用途や価値を与えて進化させる”という考え方で、2019年に米国企業を中心に設立された「The Upcycled Food Association(アップサイクル食品協会)」は、アップサイクル食品を“本来は人間の食用にされなかった原材料を用い、検証可能なサプライチェーンで調達、生産され、環境によい影響をもたらす食品”と定義しています。
日本には、古くから“丸ごといただく”食文化があります。米の外皮はぬか床になり、それに野菜やすいかの皮を仕込んで漬け物にしていただく。大豆を絞って豆腐にし、絞りカスは卯の花にしていただく。私は、ごぼうは皮をむきません。そこにごぼうの香りがあるからです。大根の葉は炒めてふりかけにします。ブロッコリーは茎のほうが好きです。これらはまさに、“ホールフード”の実践です。
では“アップサイクル”との違いは? 例えば、ひよこ豆のゆで汁でビーガンマヨネーズを製造する。これはアップサイクルっぽい。かぼちゃやアボカドの種から油を搾汁する。これはホールフードかな。
“従来は廃棄されていたもの”“本来は人間の食用にされなかった原材料”の判断がとてもややこしいのです。そもそも食べられる部分か否かは、食文化、食習慣に大きく関わってくること。欧米ではかんきつ類の皮を多用し、東南アジアではパクチーの根っこは欠かせない食材です。
言葉の認知が高まると存在の必然性が生まれます。“アップサイクル”は、商品開発やメニュー提案の新しいキーワードになり得るかもしれません。なんとなく理解することで安心する日本では余り問題にならないと思いますが、この言葉の定義の解釈はややこしい。