ヘルシー志向で、馬肉人気が再燃

 新型コロナウイルス禍でヘルシー志向が強まる中、赤身のヘルシー肉として馬肉が注目されています。

 回転寿司チェーン「スシロー」は4/7から、期間限定で“馬刺し食べ比べ”を提供しました。さっぱりとしながらも馬肉のうま味が感じられる“赤身”、脂のり抜群な“とろ”、卵黄じょうゆを加えてコク深く仕上げた“ねぎとろ”を食べ比べできる贅沢なひと皿です。馬肉のユッケをのせた寿司“ユッケ寿司”もブームになりつつあります。東京・新大久保などの飲食店で提供されていて、長さが50cmもある見た目が特徴的。人気ユーチューバーが配信したことから人気に火が付きました。

 日本初の「馬刺し冷凍自動販売機」も登場しています。馬刺し・馬肉製品の老舗「若丸」が長野県飯島町の本社工場敷地内に設置したもので、“馬刺し赤身(300g3000円、200g2500円)”のほか、“焼き肉用タレもみ馬肉”“馬タテガミと赤身のセット”など5アイテムが揃い、24時間購入できます。メディアに取り上げられると県内外から購入客が殺到。ゴールデンウイークの6日間で、例年5月1ヵ月分の約8倍の販売額を記録したといいます。

 予約困難な会員制馬肉専門店「ROAST HORSE」(東京・広尾)と、プロアスリートを食で支えるブランド「ベルメシ」が、最高ランクの馬肉のみを贅沢に使ったレトルトカレー“SPICY HORSE CURRY”を開発。「R&Oフードカンパニー」が予約販売を始めています。

 因みに、新型コロナウイルスで巣ごもり生活が長引く中、JRAの年間売り上げは9年連続で最高額を記録しているとか。私は、こちらの方ではかなり貢献しています。

不景気に流行る内臓料理とマイブーム

 新型コロナウイルス禍の生活が続き、不景気感も強まっています。そんなときに流行るのが、内臓料理です。

 バブル崩壊後の1990年前半、東京では繁華街のあちらこちらに、「もつ鍋1990円」の幟が立ちました。リーマンショック翌年の2009年にも全国的もつブームが到来。網でさっと焼いてから煮込む「炙りもつ鍋」や、脂が乗ったこってり味のもつをさっぱりといただく「酢だれもつ」など進化系のもつ料理が登場。女性たちの間では、もつ鍋や焼きもつをシャンパンといただく「もつシャン」も流行りました。さてさて、第三次もつブームは来るのでしょうか。

 私も今、ちょっとした内臓料理ブームの中にいます。ひとつはレバー。鉄分補給のためにレバーを日常的に食べたいと思っているのですが、毎日スーパーに行けるわけでもなく、ランチタイムに、「レバニラ炒め」のある店を選んだりするほかなかったのです。が、ある日突然「そうだレバーペーストを作ろう!」と思い立ったのです。バターを入れるのでカロリーは少し高くなりますが、大量に食べるものではありません。まとめて作って小さなココットに小分けにし、冷凍庫で保存すれば、解凍していつでも食べられます。おいしいパンとワインがあれば、毎夜リッチな外食気分です。

 もうひとつが、トリッパ。牛の2番目の胃袋です。ハチノス(蜂の巣)と呼ばれる通り、六角形が並んだような凹凸のある表面で、それゆえ独特の歯応えがあり、そこが魅力です。そのままでは硬くて臭みも強いので、ゆでて皮をむき、さらに長時間ゆでて臭みを取るのですが、最近は下処理済みのものをネットで購入することができ、とてもラクになりました。トリッパを香味野菜やハーブと一緒にトマトソースで煮込んだり、ピリッと辛いアラビアータに入れたり、いろいろ楽しめます。

フラメンコとシェリーと「エル・ロシオの巡礼」

 5月21~24日は、昨年は新型コロナウイルスまん延防止のため中止になった、スペイン最大の巡礼祭「エル・ロシオの巡礼」です。

 スペイン南部アンダルシア州ウエルバ県に位置する集落エル・ロシオにある礼拝堂で毎年行われるお祭りで、人々は、年に一度だけ目にすることができるマリア像に会うために、数日をかけてエル・ロシオを目指します。ウエルバやセビージャ、カディスなど街ごとに花で飾られた馬車や荷車に乗って向かう人、それを囲むように歩いて向かう人人人。女性は皆、色鮮やかなフラメンコの衣装を着ます。衣装は数枚用意するのが普通。テントで眠る日々ですが、おしゃれも旅の大切な楽しみです。

 ゆっくりと進む長い行列は、時に木陰で休み、食事をし、そして日本の盆踊りに例えられるフラメンコのセビジャーナスを歌い踊り、酒精強化ワインのシェリーを飲みます。酒精強化ワインとは、醸造過程でアルコールを添加してアルコール度数を高めたワイン。日本では、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラで作られるティオ・ペペ (ペペ叔父さん) が有名です。ヘレスにあるボデガ(貯蔵熟成庫)には、皇太子時代の徳仁天皇がサインをした樽もあります。

 サンルーカル・デ・バラメダの巡礼者たちが飲むのは、シェリーの1種、マンサニージャ。パロミノ種のぶどうを使い、サンルーカルで作られたシェリーのみが、マンサニージャと呼ばれます。

 マリア像に会える喜びを胸に、飲み、歌い、踊る日々。その行程のすべてが、アンダルシアの人々が待ち焦がれる、年に一度のお祭りなのです。フラメンコとシェリーを愛する私が、いつか必ず参加したいお祭りです

餃子と呼びずらい餃子

 家で料理をする頻度が増え、“簡単”“便利”に対するニーズが高まる中、そこに、“新しさ”、もっと言えば“斬新さ”のある商品が登場しています。切り口が斬新だと、“手間要らず”の簡便商品というやや後ろめたさを伴う商品に、興味と楽しさが生まれ、マイナスの部分が払拭されることがあります。

 昭和産業が3/1に発売した、挽き肉と野菜を混ぜて焼くだけで、外側がパリッとした新感覚の餃子が作れる『もう包まない!混ぜ餃子の素』。家庭で人気が高い一方、作るのが面倒なメニューの代表格“餃子”をアレンジした、“混ぜ餃子”を提案しています。粉を水で溶き、別に用意した挽き肉やキャベツ、にらといった具を混ぜて焼くだけです。米粉やデンプンなど、粉の絶妙な配合により、皮がないのに外側はパリッとした食感に仕上がるといいます。こしょうやにんにくなどの調味料があらかじめ配合されているため、たねに下味を付ける必要もありません。大きく焼いて切り分けながら食べるのもおすすめだといい、パッケージでは調理例の写真の周りに大量の謳い文句を配置し、斬新さをアピールしています。

 敢えて「混ぜ餃子」としていますが、包まない餃子は、はたして餃子と言えるのでしょうか。社内試食会の場で、“焼き役”の私は「お好み焼き、もう少しで焼けます」と“お好み焼き”を連発。スタッフからその都度「餃子!」と訂正を入れられていました。どう見ても“お好み焼き”は、“餃子”と呼ぶのが難しかった。

 フリーの料理編集者だったとき、料理研究家の故小林カツ代先生が、挽き肉の具をワンタンの皮で包まず、挽き肉団子とワンタンの皮を一緒にスープで煮た料理を“我が道を行くワンタン”と名付けて料理本に掲載しました。カツ代先生曰く、「皮で包むなんて、家庭でそんな面倒なことしなくていいのよ。口に入れれば一緒なんだから」。駆け出しの私は、これはそもそも“ワンタン”と名乗っていい料理なのかと悩みましたが、豪快なカツ代先生のおっしゃる通りにいたしました。そんな昔の出来事を彷彿とさせる商品です。