売上確保の手段 “ゴーストFC”。慎重な選択を

 青山骨董通りのニッカウヰスキー本社ビル地下1階に「パブレストラン うすけぼー」があります。オープンは1982年。レンガの壁、Nikkaの文字が彫られた椅子、帆船の模型、ウイスキーが並ぶバーカウンターなど、昭和のモダンな面影が店内の至る所に感じられるなかなか趣のある空間です。
 たまにランチに行くのですが、先週月曜日に行ってびっくり。表に、「旭川味噌ばんから」の看板と開店祝いの花が。どうやら、株式会社花研が展開する「ばんから派出所」、つまり、ばんからラーメンのゴーストフランチャイズに加盟したようです。ラーメン待ちの客にラーメンが一斉にサービスされると、私の周りは一気にトンコツ背脂の匂いに包まれました。食べていたカキフライの味も変わりそうな強さです。
 ランチタイムとはいえ、香りにこだわるウイスキーをウリにしている「うすけぼー」が、トンコツ背脂の匂いを充満させていいものなのか、厨房に匂いと脂がこびりつくのではないかと、何だか心配になりました。
 金曜日、もう一度行ってみると落ち着いた雰囲気に戻っていました。店員によれば、ラーメンとランチメニューのオーダー比率は6対4。ラーメン導入でランチメニューを大幅に削ってのこの比率。ランチメニュー、かなり健闘しています。時短営業要請解除後もラーメンを続けるのかと聞くと、“しばらくは。ただランチメニューは元に戻していく”とのこと。
 パブレストランなのに夜の営業が充分にできない大変さはよく分かります。売上確保のためにいろいろな手段を講じることも大切です。でもその手段が、自店の魅力を損なわないとも限りません。知り合いの年嵩の男性は、「キープしているボトル、返してもらおうかな」と冗談とも本気ともつかぬことを。気持ちは分かります。