先週に引き続き、今年1月、オンラインで開催された「CES」で紹介された“食と健康”に関するテクノロジーを紹介します。
ひとつめは、パナソニック発の技術・アイデアで次世代を牽引する事業を育成・創出することを目的として設立したBeeEdgeの投資事業会社「ギフモ」の「DeliSofter(デリソフター)」。ステーキや煮物など料理を入れてボタンを押すだけで軟らかくなるという、介護食向けの調理家電です。詳しい構造は分かりませんが、おそらく加圧蒸気によって軟らかくすると推測します。喫食者の状態に合わせて、歯茎で潰せる段階まで軟らかさを調節できます。何よりも有り難いのは、軟らか食を別に調理しなくてもいい点。家族の料理を1人前取り分けて「DeliSofter」にセットするだけです。難を言えば、過加熱になるため野菜などの色が悪くなること、ステーキと野菜の付け合わせを一緒にセットした場合、堅い食材に合わせるため、野菜が軟らかくなり過ぎること。更なる進化を求めるとしたら、%を指定すると余分な塩分が抜ける機能があれば、より介護食として完璧かなと思います。難しいことだとは思いますが。
もうひとつは、TOTOの「ウェルネストイレ」。その名の通り、健康維持に役立つトイレです。トイレの便座と皮膚が接することを利用して血流データを、また尿や便からの臭気データを収集。健康に関するレコメンドをスマートフォンを介して利用者に伝えることを想定しています。今はまだコンセプトレベルですが、数年内の実用化を目指しています。
月: 2021年1月
指示待ちしない家事ロボット
毎年1月、ラスベガスで開催される「CES」。世界160ヵ国以上から17万人強が訪れる世界最大のコンシューマーテクノロジー展示会ですが、新型コロナウイルス禍の今年は、初めてオンラインで開催されました。
最先端のテクノロジーが集まるイベントだけに、無人オペレーション(自動運転)から画面が拡がるスマホまで、何を見ても聞いても驚き、興味を惹かれるものばかりですが、その中から“食と健康”に関するものを今回と次回の2回に分けてご紹介しましょう。
コロナで家事負担が増えた生活者の期待を集めそうなのが、サムスン電子が紹介した家事ロボット「Bot Handy」。アームがあり、モノを掴むことができます。例えば、シンクに溜まった皿を一枚一枚掴んで食器洗浄機にきれいに並べたり、花を花瓶に差したり、ワインをグラスに注ぐことも。大したことないと思われそうですが、モノの形状や堅さを認識してちょうどよい力加減で掴むことはとても高度な技術です。
サムスン電子は昨年の「CES」で、知能型コンパニオンロボット「Ballie(ボーリー)」を発表しました。手のひらサイズのカメラ付きボール型ロボットで、常に家の中を動き回ってモニタリングしてくれますから、家主はスマートフォンで、外出先からでも家の様子が確認できます。それだけならただのカメラですが、「Ballie」は、西日が差してくれば電動カーテンを稼働させ、ペットが部屋を汚せばロボット掃除機を起動させます。このテクノロジーがおそらく「Bot Handy」にも利用されているのでしょう。動画の中には、椅子に掛けられた洗濯物を掴んでランドリーらしき場所に運ぶシーンも。まだ実用化には至っていませんが、指示をすることなく率先して家事を手伝ってくれるロボットとしての開発が続くのだと思います。
政府の無策と飲食店への責任転嫁
年明け早々「緊急事態宣言が再び発令か?!」の報道が流れ、7日、1都3県にとうとう発令されました。
政府が出した緊急事態宣言の中身に、“???”と思った国民は少なくないと思います。飲食店とカラオケ店は20時までの営業時間短縮、20時以降の不要不急の外出は控えるようにとのこと。逆の表現をすれば、20時までなら外出して飲んで騒いでもいいということ?と。私が通っている習い事の先生は、「19時クラスはできるけど、20時クラスはどうしましょう」などと悩んでいました。発したメッセージをこんな風に受け取る国民がいることを、政府は予想できていたのでしょうか。まさしく、緊急事態宣言の「目的」と「手段」の整合性が取れていないからではないでしょうか。
そして今度も協力を求められているのは、飲食業界。飲食店には、十分か否かは別として補償金が入ります。でも、食材や飲料、酒、氷、おしぼり、生花などを飲食店に納入する業者には何の補償もありません(12日時点では給付金を検討中)。私の知る限り飲食店は、感染者を出すまいと一生懸命、感染予防に取り組んでいます。客側が、そのような店を選び、節度をもって飲食をすればいいだけの話だと私は思います。
緊急事態宣言が発令された7日、都内の新型コロナウイルス感染者は過去最多の2447人、重症の患者も過去最多の121人でした。専門家は医療崩壊寸前だと言います。このままの状態が続けば10人に1人が新型コロナウイルスに感染し、でも治療は受けられないという当然起こり得る事態を、政府はなぜ強くアピールしないのか。無策ゆえにスピード感に欠け、出た結論が飲食店への再びの責任転嫁。憤懣やるかたない。