近頃、噛み応えのある粒感を重視した‟しっかり系”の米が多くなっているといいます。例えば、昨年10月に発売された鳥取産のブランド米「星空舞」は、表面が硬く、噛むと跳ね返るような弾力が特徴。開発担当者は「若い層を中心にしっかり系の米が好まれている」と話します。
2015年秋、「ブランド米の下剋上」をトレンドで取り上げました。かつて米の高級ブランドの双璧を成したコシヒカリとササニシキの人気が急落。さまざまなブランド米が登場し、米市場が戦国時代に突入したのです。
当時人気だったのは、特Aを取得した北海道の「ゆめぴりか」や山形県の「つや姫」。両方とも、豊かな甘みと粘り、もっちりとした食味が特徴です。人気の理由は、日本人がしっかり噛まなくなったから。ご飯をよく噛むと唾液が出ます。唾液に含まれるアミラーゼがご飯のデンプンを分解し、マルトースという甘味成分に変えます。だからご飯はほんのり甘く、それがおいしさに繋がるのです。噛まなければ、ご飯は軟らかくなりませんし、甘くもなりません。そこで、初めから甘くて、もっちりと軟らかい食感のお米が好まれたのです。
ではなぜ今、しっかりとした食感の形が崩れにくい米が求められるのでしょう。食事時間が年々少なくなっている日本人が、しっかり噛んでゆっくり食事をするようになったとは思えません。考えられる理由は、1食完結料理が増えたから。共働きで忙しい現代人の食卓に、料理が簡単で短時間で食べられるカレーや牛丼など、ご飯に料理や汁物をかけるメニューが増えたからではないでしょうか。これらのメニューには、硬めのご飯がよく合います。
ブランド米の下剋上は第二幕へ突入しました。次の第三幕は、生活者の食生活のどんな変化が、新しいブランド米を勝者にするのでしょう。