私は、学生時代の2年間、女子栄養大学の寮で過ごしました。当時、寮は大学の敷地内にあり、ほとんどが4人部屋。2年生の先輩と1年生の後輩が一緒に生活します。人生初の寮生活。思い出は数知れずですが、最も懐かしく思うのは、厨房で調理をしたことです。
学生寮では、調理の先生のご指導の下、当番の学生が朝食と夕食を自分たちで作ります。栄大らしいでしょ。当番は1週間続きます。朝はいつもより早く起き、身支度を整えて厨房へ。寝坊していると放送で呼び出しがかかります。夜遊びに出かけ寮に帰って来ない子がいると、連帯責任で同部屋の子が代わります。冬の早朝は寒くて辛いと思いましたが、厨房のガス台に火が入り、料理ができ上がる頃にはすっかり温かくなっていて、いつまでもここに居たいと思ったものです。
栄大では、もちろん集団給食(大量調理)を学びますが、それより前に寮で実地を体験することになります。大きな回転釜を前に一寸法師よろしく櫂のようなしゃもじで具材をかき混ぜたり、仕上がった料理の重量を図って1人分を算出。整然と並べた100個余りの器に適量を盛り付けたり、大きな水槽に水を張って流れ作業で食器を洗ったり。いずれも家庭ではできない初めての体験。先生におしゃべりを注意されながら、皆で調理をする楽しさは、寮生活ならではです。
現在の寮は、ご時世に合わせてマンションタイプの一人部屋。厨房もありません。寮生はその方がうれしいのでしょうが、私には少し可哀想に思えるのです。