この冬登場した過激な“アンチヘルシー鍋”

 この冬、ボリューム&プリン体たっぷり、ハイカロリーな鍋を展開する飲食店が目立ちました。中でも積極的に展開していたのが、幅広いジャンルで40ブランドのレストランやショップを運営する「ダイヤモンドダイニング」です。プリン体が多い食材を使用した9種の‟痛風鍋”を、グループの居酒屋やレストラン12店で提供しました。
 例えば、濃厚なカルボナーラにウニがからんだ‟雲丹カルボナーラ鍋”、プリン体がたっぷり摂れそうな‟白子とあん肝の痛風いくら鍋”など。カキ、あん肝、白子、イクラなどの素材をたっぷり使用しています。
 また名古屋を中心に飲食店を運営する「イートジョイ・フードサービス」も、運営している居酒屋で“禁断の鍋 北海!痛風鍋”を提供しました。プリン体を多く含むあん肝、白子、カキ、イカ、イクラを使った背徳感と幸福感が溢れる鍋で、コースで頼めば、前菜から〆の‟いくらこぼれ飯”まで、プリン体グルメが楽しめます。
 その他、「ディー・アール」が運営する居酒屋で提供したのは、‟唐揚げマヨの肥満鍋”。‟デブ活最強コラボ”と謳う、フライドポテトと唐揚げを山盛りにした‟揚げ物×揚げ物”の鍋で、マヨネーズを好きなだけかけることができます。
 見た目は、SNSウケを狙ってこれでもか! というボリューム感を演出。“痛風鍋”“デブ活”といったワードをメニュー名に入れ込み、背徳感を逆手に取って自虐ネタに変えてもらう戦略。ヘルシー志向全盛の昨今、“アンチ”をするなら徹底的にということでしょうか。

害獣も食材になれば一転“ジビエ”。オルタナフードとして流行の予感

 2019年のトレンドキーワードのひとつに、「オルタナフード」を挙げています。「オルタナフード」とは、食糧問題、環境問題など食に関わる問題の解決や、食の伝統の保護に繋がる食材のことを言います。代表的なのは、飼料効率がよいダチョウや、害獣とされるイノシシや鹿などを使った料理、流通に乗らない未利用魚などを活用した食べ物も含まれます。
 害獣と嫌われるイノシシや鹿。食材になれば一転“ジビエ”と呼ばれ、重宝がられる存在に変わります。東京・池尻大橋のフレンチレストラン「Lien」には、“女性ハンター吉井さんの京都丹波産仔鹿モモ肉のロースト”というメニューがあります。吉井あゆみ氏が“仕留めた”という意味で、吉井氏は、狩猟を生業とするプロの猟師です。
 ちょっと前までジビエと言えば、フレンチレストランで山鳩や山鶉、野うさぎなどの輸入品が提供され、時々、北海道の蝦夷鹿が登場する程度でした。山間の村落では、イノシシを食する習慣はありましたが、牡丹鍋が一般に食べられることはありませんでした。それが昨今、一流の猟師による処理の良さ、販売ルートが確保されたことで鮮度がいいまま料理されるなど、新鮮でおいしいイノシシや鹿を食することができるようになり、そのうまさに魅了される人も増えています。
 とはいえ、害獣として捕獲されたイノシシや鹿のジビエとしての利用率は全国で約7%に留まっています。また、ロース肉は豚肉の3倍の価格なのに、スネ肉やモモ肉などの多くは廃棄されています。今後、国産ジビエに対する生活者の認識が変われば、使用部位の選択肢が増え、平均価格も下がり、ジビエ料理は外食市場で加速度的に拡がる可能性があります。

御役目御免? 販売減少に転じた恵方巻き

 今年、多くのメディアが取り上げていた恵方巻きのフードロス問題。節分を前に、農林水産省も注意を喚起。作り過ぎないように勧告を出しました。スーパーやコンビニは、予約販売を積極的に展開し、フードロス対策に貢献の姿勢を見せましたが、一方で、前年実績を上回る販売目標を立てていて、そのせいか、廃棄量は前年と変わらなかったようです。
 節分の日に、その年の決まった方角を向き、願いを込めて無言で一気に食べると縁起が良いとされる恵方巻き。もともとは関西を中心に行われていた風習だったのが、20年ほど前からコンビニが全国的に展開を開始。今では具のバリエーションも増え、エスニック風からスイーツまで登場しています。
 そもそも関西の風習がなぜここまで広がったのでしょうか。その理由は、主婦の言い訳消費を喚起したからです。「縁起が良くて願い事も叶う(かもしれない)家族で楽しめるイベント」。スーパーやコンビニが用意してくれている恵方巻きを購入するには、充分な理由です。夕食を、惣菜を買って済ますことに後ろめたい気持ちを持つ主婦も、この日ばかりは、前向きに買って帰れます。
 恵方巻きを購入する人は、平成29年をピークに減少に転じています。夫婦共働き世帯が急増し、食の外部化が急速に進んでいる今、恵方巻きに言い訳を求める必要がなくなっているのかもしれません。

バレンタイン。義理チョコはパワハラ?

今年もバレンタインの季節が始まりました。
注目のチョコレートは、なんと言っても、ルビーチョコレート。スイスのチョコレート会社「バリー・カレボー」が開発したピンク色のチョコレートで、ダーク、ミルク、ホワイトに次ぐ第4のチョコレートとして、約80年ぶりに発明された全く新しいカテゴリーのチョコレートです。2017年から、さまざまなブランドがルビーチョコレートを使った新作スイーツを発表していますが、今年は、今までになく洗練されたデザインの商品が揃いました。
昨年、ゴディバが日本経済新聞に「日本は義理チョコをやめよう」というタイトルの広告を、代表取締役社長ジェローム・シュシャン氏からのメッセージというカタチで掲載しました。「バレンタインデーは嫌いだ、という女性がいます。」という書き出しで始まる内容は、バレンタインデーが楽しい日であって欲しいと願う同社の気持ちが込められています。
そして今年ニュースになったのは、義理チョコがパワハラにつながる恐れがあるため、社内でのチョコレートのやり取りを禁止する会社が増えているというもの。ある調査では、男性社員が女性社員に義理チョコを要求することに対し、4割近くの人がパワハラだと思うと回答しています。
今のご時世、立場を利用して「チョコレートをくれ」と上司がせがめば、間違いなくパワハラでしょうし、社内で慣習になっていれば、女性社員にとっては義務以外の何物でもありません。でも、会社が規制すべきことなのでしょうか。ゴディバのメッセージは理解できますが、会社という組織においての禁止措置は、私には行き過ぎたことのように思えます。