取り組み急務。メインユーザーの高齢化

 加工飲食品のメインユーザーの高齢化が進み、その対策が急がされています。
 キユーピーは、マヨネーズの容器に付いているキャップの穴を1つから3つに変更。穴のサイズを小さくすることで、細い3本線が描けるようになります。なぜ今、キャップを変えるのか。理由は、キッズ戦略。模様が描けるようにして、“マヨネーズをかける”体験をさせることです。“子どもはマヨネーズが大好き。そのまま大人になって、何にでもかけちゃうマヨラーになる!”などというイメージはもはや幻想です。子どものときママがかけてくれたマヨネーズ。長じて一人暮らしをすると、マヨネーズが冷蔵庫にない若者が多いとか。実は、キユーピーのマヨネーズのメインユーザーは60代。50代がそれに続きます。一方、若年層のユーザーはかなり少ないといいます。マヨネーズは、コンビニのツナマヨおにぎりやサンドイッチ、ポテトサラダで口にするだけで、料理にかけていただくという発想は、日常にはないのかもしれません。
 「リプトン」ブランドの紅茶を扱うユニリーバ・ジャパンは昨年夏、期間限定のカフェを東京・表参道にオープン。アイスティーに好みの果物を入れる飲み方「フルーツ・イン・ティー」を提案しました。リプトンの顧客は現在40代が中心。SNSで話題になりやすい写真映えする飲み物として提案することで、20~30代女性の需要を開拓したいという戦略です。狙いは見事に命中。連日、炎天下に、若い女性たちの長蛇の列ができていました。
 サバブーム、ロングライフ食品ニーズの両方を追い風に、生産量ではツナ缶を抜いたサバ缶。こちらも購入者の7割が50代以上です。近年は、若い女性の取り込みを狙って、缶におしゃれなデザインを採用したり、パスタやパンに合うようトマトやカレーで味付けしたりした商品なども発売されています。

学習塾と業務提携。セブンの顧客囲い込み戦略

 セブン&アイ・ホールディングスが、通信教育「Z会」や学習塾「栄光ゼミナール」などを展開する増進会ホールディングスと業務提携したという知らせに、驚いた方も多いのではないでしょうか。小売業と教育産業。どんな利益関係が生まれるのかと。
 Z会は、添削による通信教育では老舗中の老舗。添削してもらう答案用紙のやり取りは、ずっと以前は郵便で、その後はFAXになり、今はネットでのサービスも行っています。そのFAXによるやり取りに、「セブンイレブン」のマルチコピー機が利用できるようになります。また学習塾に対しては、塾弁が大変な保護者のためにセブンミールが提供できます。これにより、若者や子どもたちとの接点が増えます。さらに、セブン&アイHDは、自社が運営する商業施設に、増進会HDが展開する学習塾や英会話教室の誘致を検討。集客力のアップを狙います。加えて、セブン&アイHD傘下にはベビー用品を扱う「赤ちゃん本舗」があります。Z会は、幼児教育にも力を入れていて、ここにも親和性が生まれています。
 既に、セブン-イレブン・ジャパンとZ会は、高校生を対象に、スマホのサイトで出題される問題に5問連続で正解すると「セブンイレブン」で使えるクーポンが受け取れるイベントを開催。約10万人が参加したといいます。
 近年、店舗数においては飽和状態と言われ、高価格戦略で客単価は上がったものの、集客数は低下する一方のコンビニ業界。起死回生を狙って各社がどんな一手を繰り出すのか、今後が楽しみです。

スタバとマック。プラスチックストロー完全廃止に

 先週、米国スターバックスは2020年までに、米国マクドナルドは2025年までに、プラスティックストローを全面廃止すると発表しました。
 海には、年間1000万トンのプラスチックごみが投棄され、それが海洋生物の生態系を壊しているといいます。テレビのニュースやSNSでは、鼻に入ってしまったストローを抜いてもらう痛々しいカメの様子が映し出され、それは、世界中の人々の心を動かすのに十分な衝撃でした。両社の英断にも、少ながらず影響していると思われます。
 スターバックスはプラスティックストローがなくても飲めるよう、新しいプラスチックのリッド(ふた)を開発しています。結局、プラスチックなのですが、こちらは再生可能といいます。また紙製のストローの導入も考えていますが、プラスチックに比べて10倍のコストがかかるため、使用商品の値上げに繋がるかもしれません。
 海に行くと、流木や小枝と一緒に、多くのプラスティックゴミが流れ着いている光景を目にします。意図して捨てたものなのか、水害で流出してしまったものなのか、それは分かりません。ただ、分解されない物質で作られたものによって享受した便利さのツケが回ってきているのは事実です。近年、多くの魚や魚の缶詰、カキやムール貝から、“マイクロプラスチック”と呼ばれる長さ5ミリメートル未満のプラスチックくずが見つかっています。既に、私たちの口に入っているかもしれません。

周りの視線が気になる乙女心にハマった透明飲料

 オレンジジュース、コーラ、カルピス、乳酸飲料、紅茶からビールまで、透明な飲料がブームです。
 なぜ、透明にできるのか不思議ですね。紅茶に関しては、サントリー食品が昨年11月1日、紅茶の日を記念して透明な紅茶飲料の製法を動画で公開しています。それによると、茶葉の下から蒸気を当てて紅茶の香りが付いた水蒸気を集め、冷やして液体にしたものが透明な紅茶になるとのこと。ミルクティの場合、加える牛乳は、牛乳に含まれている成分の中から、「乳糖」と「乳清ミネラル」という透明な成分のみを抽出して使用することで、透明でありながらコクのあるミルクの味わいが実現できるそうです。
 透明な飲料に関しては、テレビ番組でもいろいろ取り上げています。生活者の声は、賛否両論。クリアな感じがいいという意見もあれば、ケミカルなイメージがあってイヤという意見もあります。さまざまな声の中でおもしろかったのは、よく利用するという女性の「オフィスのデスクの上に置きやすい」という意見。コーラやジュースなど甘い飲料をデスクに置いておくと、「だから太るんだよ」という声無き声が聞こえるのだそう。でも透明なら水に見えるから気にしなくていいと言います。飲料ひとつにも周りの目を気にする乙女心、よく分かります。
 かなり昔、清涼飲料の商品開発をしたとき、コンビニや自販機で手軽に買えて歩きながら飲む飲料は、ストリートファッションのアイテムとして捉えなくてはならないとメーカーに提案しました。その飲料を持っている自分が素敵に映る、ずっと持っていたいと思えるものでないといけないと。先の女性の言葉から、そんな過去の話を思い出しました。

東京都受動喫煙防止条例が成立で心配なこと

 東京都が独自に定める受動喫煙防止条例案が先月27日、賛成多数で可決、成立しました。これにより、従業員を雇っている飲食店は原則禁煙。喫煙ルームを設置すれば喫煙可能ですが、中で飲食はできません。これに対し国の法案は、客席面積が100㎡以下で個人などが営む既存の飲食店を喫煙可能としていて、明らかに都の方が厳しい内容になっています。
 都の受動喫煙防止条例は、子どもと従業員を受動喫煙の害から守ることが主目的です。ですから、従業員が喫煙ルームに入らなくても済むよう、中での飲食は禁止になっているのです。都によると、都内の飲食店の84%が規制対象になるそうです。この条例は、2020年東京オリンピック・パラリンピック直前の平成32年4月に全面施行されます。
 飲食店が基本禁煙になるのなら、私は、喫煙スペース以外の路上喫煙も、全面的に禁止すべきと考えます。飲食店を一歩出ればたばこが吸えるとなれば、路上喫煙は増えるのではないでしょうか。大きな駐車場を持つファミリーレストランなどは、駐車場の隅に喫煙スペースを設置することは可能でしょうが、都心部の飲食店では、そうはいきません。
 夜な夜な、インバウンドを含めた大勢の大人たちで賑わう恵比寿横丁。20の小さな飲食店が軒を連ね、狭い路地にまでテーブルが並びます。喫煙できる店もあるのですが、やはり隣の人が気になるのか、横丁を出て喫煙する人が多く、出入り口に面する道路は吸い殻だらけです。横丁は復活しましたが、街は以前より汚れています。