久しぶりに旧知のシェフの料理をいただきに、五反田のフレンチレストラン「ヌ・キ・テパ」に行きました。シェフの田辺氏とは、かれこれ30年のお付き合いです。
「ヌ・キ・テパ」は、ドイツ大使の邸宅として使われていた一軒家を改装したおしゃれな空間ですが、田辺シェフが独立して初めてオープンした恵比寿の「あ・た・ごおる」は、居酒屋の居抜き物件。カウンターと小さなテーブル席が4つくらいの小さな店でした。厨房はカウンターの中だけです。
毎週、週によっては毎日のように通っていただけに、思い出も数知れず。食通には有名な店だっただけに連日大賑わいで、雨の中、ビールケースを椅子代わりに、ビニール傘をさしながら食べたこともありました。料理本の撮影をしたときのこと、田辺シェフがオーブン焼きをするというので、ちょっと大きめのオーバル型のグラタン皿を用意しました。すると田辺シェフが「これオーブンに入らないよ」と言うのです。オーブンに入らないなんてと思い、カウンターを覗いてみると、小さな家庭用のオーブントースターが。「だって元は居酒屋なんだから、オーブンなんてないよ。いつもこれで焼いてんだから」とあっけらかん。驚くやら、おかしいやら。田辺シェフらしいエピソードとして忘れられません。
田辺シェフは、肉は料理しません。素材は魚介と野菜のみ。そして土です。指定した場所からおいしそうな(?)土を掘り出し、それをオーブンで焼いて殺菌。水で煮出して土のブイヨンを作ります。これがソースになったりデザートになったり。おいしい土はおいしい水を作り、おいしい野菜を育てます。それが土を料理に使う理由なのだそうです。
月: 2018年5月
この春大阪にオープンした話題の3業態
先週、大阪の話題の新スポット3か所を見学に行きました。「無印良品・イオンモール堺北花田(堺市北区)」「キッチン&マーケット ルクア大阪店(大阪市北区)」「ミオえきッチン(大阪市天王寺区)」です。グローサラントの風に乗ってか、それぞれが、それぞれのカタチで、物販と外食の融合に挑戦しています。
「無印良品」は、「無印良品」の世界感で衣食住を提案。それが何の違和感もなく融合しているところが流石です。青果、鮮魚、精肉の生鮮3品が放つ生命力と存在感、美しさが、整然とした空間の中で見事に演出されています。無印良品だからやれること、やるべきことが、まだまだたくさんあると思うと、今後の動向がとても楽しみです。
「キッチン&マーケット ルクア大阪店」は、その名の通り、路地のマーケットのよう。もちろんおしゃれに演出されてはいるのですが、いい意味での猥雑さに地下の暗さが加わって、一風変わった雰囲気が醸し出されています。平日の昼下がりでもお客様で賑わっているのは、オープン景気もあるのでしょうが、やはり駅隣接という立地の強み。今後、お客様がどのように利用されるかによって、中身も変化するでしょう。それを見たいと思います。
「ミオえきッチン」は、フードコートに生鮮3品がない食料品店が併設された構成。外食店の料理もパック売りの弁当・惣菜も、飲食スペースでいただけます。こちらも駅ビルという好立地。オープンスペース的な気軽さが、立地に合っていると思います。ただそれだけに、食料品店など物販部門においてどの程度の売上が期待できるのかは、未知数だと感じました。
「働き方改革」で生まれている新たなニーズ
「一億総活躍社会」の実現を目指し、政府主導で進められている「働き方改革」。「一億総活躍社会」とは、「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」のことなのだそう。“50年後も人口1億人”というかなり高い目標に向かって政府がまず進めたのが、労働時間の短縮と働き方の多様化です。実際、退勤時間を早め、在宅勤務を認める企業が増えています。
早い時間に帰宅すれば子どもが生まれ、男性も育児に参加することで、女性は子どもを生みやすくなる・・・とでも考えているのでしょう。政府の思惑通り、子どもが生まれ、人口が増えるのか定かではありませんが、市場にはすでに変化が生まれています。
まず、夫婦で働くパワーカップルの世帯年収は、明らかに上がっています。食材は、週末にまとめ買いをするので大型冷蔵庫が売れ、週末まとめ洗いをするので、大型洗濯機が設置されたコインランドリーが人気になり、市場は一気に拡大しました。日々の食事に惣菜を利用する生活者が増えたことは、エンゲル係数上昇の一因になっています。
早く帰宅するおとうさんに人気なのが、高アルコールのビール系飲料や缶チューハイです。残業代が減って収入は伸び悩み。安くてしっかり酔えるアルコール飲料が、ニーズにぴたりとはまりました。
在宅勤務の生活者が頼るのは、仕事ができるスペース。星乃珈琲は、落ち着いて仕事ができる場所として利用する来店者が増え、15分100円からと気軽に使えるスペースや保育施設が併設されたスペースなど、さまざまなコワーキングスペースも登場しています。
美腸活。かつてデトックス、今はクレンズ
近年、腸をきれいにする美腸、腸を整える腸活に、老若男女問わず、注目が集まっています。腸内環境の研究が進み、自律神経が腸の動きを制御するだけでなく、腸の状態が脳に影響を及ぼすという双方向の関係が明らかになってきて、それも腸に関心を持つきっかけになっているようです。
2006年、「デトックス」という言葉が、食市場のトレンドキーワードに挙がりました。日本語では「体内浄化」と訳します。体内に溜まっている重金属やミネラルなどの毒素、広くは小腸や大腸に溜まったカスまで、とにかく体内に溜まっている悪いものをすべて排出して健康になろうという発想です。当時、男女問わず雑誌の「健康になる」「美しくなる」「痩せる」の切り口は、ほとんどこの「デトックス」に集中していました。
展開としては、サプリメント、腸内洗浄、マクロビオティック、漢方薬膳、週末断食などさまざまで、今も女性を中心に流行っている、ピラティスやホットヨガ、岩盤浴なども、このデトックスの発想から人気になったものです。
そして今年は、体内浄化が「クレンズ」というキーワードになって登場しています。体に溜まっている不要なものをいかに効率よく排除するかまではデトックスと同じですが、クレンズして体内環境を整えるだけでなく、体をより強く、美しくする成分を同時に摂取する‟クレンズ&エンパワーメント”が今年の特徴。食物繊維と一緒に、健康や美容によいとされる食品を摂取することが勧められています。