コインランドリーと飲食店の意外な親和性

 ファミリーマートがランドリー併設1号店を、千葉県市原市に3/31にオープンさせました。100億円強を投じ、コインランドリー併設店舗を2019年度末までに500店展開する計画で、実現すればコインランドリー業界で最大規模の店舗網になります。ファミリーマートは、洗濯の待ち時間にイートインスペースで淹れ立てコーヒーや弁当、惣菜を利用してもらえればと期待しています。
 コインランドリーは、近隣住民の憩いのスペースにもなっています。東京都墨田区に1月、ランドリーを併設した「喫茶ランドリー」がオープンしました。目的は、街の活性化。ユニークなのは、‟家事室”と名付けたランドリースペースには洗濯機のほか、ミシンやアイロン、裁縫箱や編み物道具なども用意されている点。地元のママ達によるミシンを使った小物作りのワークショップなど、お客様が企画したイベントやワークショップが頻繁に開催されています。またカフェには、コーヒーやビールなどのドリンクに加え、オープンサンドやチョコレートケーキなど、軽食やスイーツを揃えていて、オープンするとすぐに、近隣のお年寄りや主婦、パソコンを持ち込んで仕事をする会社員など、幅広い客層が訪れるといいます。
 井戸端会議という言葉があるように、江戸時代、井戸の周りは洗濯をしながらおしゃべりをする女性たちの社交場でした。洗濯とコミュニティ。親和性の高さは、昔も今も変わらないのですね。

高齢化社会に向けて注目が集まる「ブレインフード」

 高齢者向けに記憶力維持を謳った食品が、相次いで発売され、人気です。弊社は、2016年、脳の活性に役立つ食品を「ブレインフード」というキーワードで紹介しました。ここにきて、いよいよ生活者の認知度が高まってきたと言えます。
 ロッテが発売した「歯につきにくいガム<記憶力を維持するタイプ>」は、脳機能の改善効果があるとされる‟イチョウ葉フラボノイド配糖体”や‟テルペンラクトン”を配合した、中高年層をターゲットにしたガム。認知症予防などの効果を期待して手に取る姿が目立ちます。店頭想定価格は140円前後と標準品に比べて4~5割高いにもかかわらず、発売後2ヵ月で当初の販売目標の1.4倍を売り上げました。
 また日本水産やマルハニチロからは、‟エイコサペンタエン酸(EPA)”や‟ドコサヘキサエン酸(DHA)”を含む冷凍惣菜やレトルトのスープが発売されていますし、不二製油は、記憶力を高めるという‟大豆由来セリルチロシン”をプラスした粉末飲料「ペプチドメンテ」の開発を進めています。今年に入り、ファンケルや森下仁丹も、イチョウ葉の成分を使った商品を機能性表示食品として届け出ています。
 さらには、キリンは3/19、ホップ由来のビールの苦味成分が健常時の記憶力を向上させることを世界で初めて解明。森永乳業は、「ビフィズス菌A1」が軽度の認知障害の疑いがある人の認知機能を改善する可能性があることを確認しました。
 認知症が社会課題となっている中、防止と改善を期待できる成分の発見と開発、効果検証にますます注目が集まっています。

成城石井「トリエ京王調布店」のグローサラント展開

 小売各社が、日本式グローサラントの形を模索する中、成城石井が昨年9月、初めてのグローサラント業態店「トリエ京王調布店」をオープン。月次で当初販売計画の2倍を売り上げていると聞き、行ってみました。
 何を以て“グローサラント”と言うのか未だ明確ではありませんが、スーパーなどが食品の販売促進のために販売している商品を材料に使った料理を外食スタイルで提供。家で作りたいと思ったお客様に、食品を購入していただくという循環を狙った業態という概念が、今のところ広がっていると思います。
 レストランでは、黒毛和牛100%のバティを2枚使った‟フレッシュアボカドチーズバーガー”(税抜き990円)が一番人気なのだそう。黒毛和牛100%というバリューと、口に入るかしらと心配になるほどのボリュームが魅力なのだと思います。
 フランス産全粒粉使用したバンズは、ベーカリーコーナーで販売されていて、月間600パックが売れたこともあったといいます。これをして、グローサラントの成功を謳う声もありますが、ちょっと性急なのではと思います。なぜなら、バンズと一緒に買いたいクオリティ満点のパティは販売されていないのです。さらには、レストランで使用している食材の9割超は店内で販売している食品だというのですが、レストランにおいて、食品売り場への積極的誘導をしているとは、私には感じられませんでした。
 ただ、料理はおいしく、お得感もあり、何よりランチメニューにはプラス100円(税抜き)でソフトドリンクが付き、さらにプラス100円(同)でビールやワインに替えられます。一人客も多く、気軽においしい料理を楽しみたいとき、軽く飲んで帰りたいときなど、とても利用しやすいお店だと思いました。

カタチを変えることで機会創出を狙う基本調味料

 みそ・惣菜メーカーのヤマク食品(徳島)が、真空乾燥したみそを粗く砕いた「くだき味噌」を発売しました。料理に、みその香りや風味を付けるトッピング素材として開発。ソフトクリームやサラダ、パスタ料理や焼き魚にふりかけることを提案しています。
 みそ、しようゆ、酢、みりんなどの基本調味料の場合、販売量を増やすためには、合わせ調味料や簡便調理食品などの原料として使われるか、家庭においてそのまま利用される機会を増やすことが求められます。中でもみそは、家庭での消費量が減る一方。昨今の料理離れが拍車をかけています。そこで開発したのが、調味料ではなくフレーバー食品としてのみそ商品だったのでしょう。
 しょうゆをいち早くフレーク状に加工したのは、老舗しょうゆ蔵のかめびし屋(香川)です。17代目岡田社長は、西洋料理にもしょうゆを使ってもらいたくていろいろなシェフを訪ねたそうです。が、液体だからソースなどの味付けにしか使えないが色が悪くなる。固形ならトッピングに使え、黒い色もアクセントになると言われ、「シーズニングソイソルト」を思い付いたそうです。現在は、すり卸しながらふりかけるキューブ型のソイソルトも開発されています。また山川醸造(岐阜)からは、ムース状のしょうゆ「もこもこ泡醤油」が発売されています。ムービージェニックなだけでなく、泡が食材にしっかりとからむため減塩にも最適だといいます。
 使用頻度を上げるための働きかけは、用途を広げることが主流でした。レシピ提案がそれです。基本調味料は、カタチを変えることで機会創出を狙っています。