東の食べ物、西の食べ物

 東の人はよく食べるが、西の人は余り食べない。そんな印象がある納豆ですが、近年、関西で、納豆の消費量が上昇しているそうです。総務省の家計調査によると、2016年の年間消費量は12年比で48%も増加。わずか4年間5割近く増えたことになります。
 その理由は、商品開発にあります。納豆の発酵を抑えて匂いを控えたり、たれのだしをカツオベースにしたり。西日本の人にも食べやすくしたからです。そう言えば、「日清のどん兵衛 きつねうどん」は、東日本向けはカツオだしを基本に濃口しょうゆを、西日本向けは昆布だしを基本に薄口しょうゆを使っているとか。そしてその境界線は、岐阜県関ヶ原だそうです。
 うどんと言えば、西日本の食べ物。そばとの境界線は、関ケ原、愛知、富山と諸説あります。とは言え、西日本の中でも、うどんはひとつではありません。東日本で広く知られている「讃岐うどん」は強いコシとツルツルののど越しがモットー。でも「福岡のうどん」はとっても軟らかでコシがなく、『腰抜けうどん』とも呼ばれています。また「伊勢うどん」は、麺は極太で柔らかく、モチモチの歯応え。たまり醤油にカツオ節やいりこ、昆布等のだしを加えた、黒く濃厚なたれをからめながらいただきます。具は、刻みねぎだけ。お伊勢参りに来た忙しい商人たちが、さっと食べられるように柔らかな麺になったのだとか。熱い汁をかけずたれでシンプルに仕上げているのも、そのためです。江戸の職人たちが盛りそばを愛したのも、同じ理由。今風に言うなら、ファストマーケティングです。

韓国でも増えるひとりごはん。「ホンパプ」

 儒教文化の影響を受け、家族の団欒をとても大切にする韓国においてすら、近年、独身世帯の増加に伴い、ひとりで外食する若者が増えているといいます。
 日本で「おひとりさま」が話題になったのは、2005年。それまで2人以上で行動していた女性たちが、人に気を使いたくないという理由で、ひとりで行動するようになりました。食事も、飲みも、ひとり。この流れを受けて、女性ひとりでも気軽に入れる立ち飲み屋が増え、旅館は「おひとりさまプラン」を企画しました。当時、雑誌「Hanako」は、「おひとりさま」の特集を展開。ひとりで行けるフレンチや和食などのゴージャスラインから、普段着ごはん、カフェやバー、ホテルや温泉旅館まで、さまざまな「おひとりさま御用達」を紹介しています。
 そして今再び、人気漫画「孤独のグルメ」さながらに、外食店で‟ひとり夕食”を楽しむ20〜30代が目立つようになっています。ホットペッパーグルメ外食総研の調査によると、2014年度の外食店でのひとり夕食の市場規模(首都圏・関西圏・東海圏)は3114億円で、13年度比3.1%と伸び率がトップ。外食単価をみても、15年度の全体平均が14年度比4.1%増だったのに対し、ひとり夕食は1211円と同12%増えたといいます。理由はやはり、人に気を使いたくないから。コンビニで食事を買って家で食べると、ゴミが出るから嫌だという意見もあります。
 韓国では最近、ひとりの食事を意味する‟ホンパプ(ひとりごはん)”という造語が浸透しているとか。ストレスフルな日常の中で、食事くらいは気を遣わず好きにしたいという気持ち、日本も韓国も同じなんですね。

水清ければ海苔育たず。海苔価格が高騰

 海苔の価格が急騰しています。理由はずはり、生産量の落ち込み。海苔は、海苔メーカーが養殖業者から海苔の原料となる海草を仕入れて加工します。その仕入れ価格が上がっているのです。漁業・養殖業生産統計によると、海苔の養殖生産量は1994年の48万3000トンから2016は30万トンと4割近く減少しました。価格高騰は、4年連続。毎年10%近く上昇しています。
 海苔は保存ができるので、生鮮野菜のように悪天候即値上がりとはなりません。だだ、これまでは周期的に訪れていた豊作に恵まれず、不漁が連続。結果、流通在庫を確保できなくなっています。加えて、産地が点在していたため、北はダメでも南はイイと、平均値を取ることができたのですが、東日本大震災で宮城県の生産力が低下。供給バランスがくずれました。
 生産量減少の背景にあるのは、海水の水質なのだそうです。と聞くと、悪化しているから?と思いますが、実は反対。きれいになったからなのだそうです。「水清ければ魚棲まず」という言葉が「孔子家語」にあります。過剰に清廉な人は、却って人に親しまれず孤立してしまうことの例えですが、事実、あまりにも水が清く澄んでいると、魚の餌になるプランクトンが繁殖しないので魚は棲みつかないとか。海苔生産地では、養殖シーズンの冬場に海水の栄養を取り戻すため水質を維持しつつ、下水処理能力を落とす取り組みを進めているといいます。
 海苔と言えばコンビニのおにぎり。価格に敏感な業態だけに、「塩むすび」のアレンジや海苔を使わない新種のおにぎりの商品化を始めているかもしれません。

ファミリーマートがコインランドリー事業に参入

 ファミリーマートが、100億円強を投じてコインランドリー事業に参入すると発表しました。これには驚くと共に、正直、いいところに目を付けたと思いました。
 現在コンビニ業界は、客単価は上がっているものの、集客数は伸び悩んでいます。弁当・惣菜といった自社開発商品での差別化、雑貨の値下げでの集客には限界があります。そこで目を付けたのが、近年、急成長しているコインランドリー市場です。集客手段は、コンビニ目的でなくてもいいという発想がそこにはあると思います。加えて、都心部以外、コンビニには広い駐車場は付き物。その空間を有効利用するというアイデアです。
 以前はコインランドリーというと、洗濯機を持たない下宿生活の大学生や単身者が利用するというイメージが強く、若い女性は、特に夜間は怖くて利用しづらい存在でした。ところが最近は、そんなイメージを一変するコインランドリーが次々にオープンしています。布団やカーペットが洗える大型機、衣類がふんわりと仕上がるガス乾燥機、清潔で明るい店内は防犯の目的でガラス張りが基本です。滞在時間に読めるものは、新聞から女性向け雑誌まで最新号が揃っていますし、Wi-Fiが使える店もあります。単身者の増加、共働きで休日にまとめて洗濯をする生活者が多いこと、布団やカーペットなどの大物に洗える素材の商品が増えたことなどが、コインランドリーの利便性をより高めていると言えます。
 ファミリーマートは、コインランドリー併設店舗を2019年度末までに500店展開する計画で、実現すればコインランドリー業界で最大規模の店舗網になります。因みに、ファミリーマートの現在の店舗数は、サークルK・サンクスを合わせると1万8000店舗以上。これは奇しくも、現在のコインランドリー店とほぼ同じ数です。