脱・総合居酒屋を目指すワタミが、長らく続いた低迷から脱しつつあります。回復をけん引しているのは焼鳥店「三代目鳥メロ」と鶏料理中心の居酒屋「ミライザカ」です。2016年6月から出店を始め、今年3月には「和民」からの転換を一気に加速。今期中には「鳥メロ」「ミライザカ」が、和民ブランドの店舗数を抜く見通しです。
ワタミは、脱・居酒屋依存にも挑戦しています。昨年8月には、テキサス風メキシコ料理店「TEXMEX FACTORY」を渋谷にオープン。現地風の内装や賑やかなサービスで非日常感を演出。女性客を増やしています。昨秋オープンさせたのが、ステーキ・サラダ専門店「にくスタ」。店内でカットしたチルド肉のステーキや牛肉100%の粗挽きハンバーグが看板メニューで、集客の目玉は15種類以上の野菜と20種類以上の惣菜などを常時揃えた「サラダ&デリカバー」です。自社農場や食材加工施設を持つ強みを生かし、有機野菜や手の込んだ惣菜を提供しています。集客は順調で、開業の翌月には黒字化。多店舗化を急いでいます。
もちろん、すべての新業態が順調というわけではありません。「にくスタ」より一足先に多店舗化を進めた、刺身定食やしらす丼などを提供する「港町食堂ちゃぶまる」は、2015年に1号店を開業。一時は、首都圏で5店舗まで増えましたが、現在はすべて閉店しています。
因みに、「三代目鳥メロ」展開のきっかけとなった「鳥貴族」は、28年ぶりの値上げが響いたのか、10月の既存店売上高は前年同月比で3.8%減少しました。塚田農場、モンテローザ、コロワイドも参入している焼鳥市場は、いよいよ競争が激化。ワタミに、一服している暇はないようです。
月: 2017年11月
増える情報量。広がる食環境の格差と強まるストレス
給食受託サービスのミールケアが、幼稚園や保育園を対象に、AIを利用した給食献立提案サービスを始めます。
サービスに加入すると、園には、保護者が入力した園児たちの情報を基に組み立てられた献立表が届きます。全園児、同じメニューにはなりますか、アレルギーのある園児には配慮したメニューが提供されます。一方保護者には、園児が園で食べる食材の情報が写真付きで送信されるため、アレルゲンの有無も確認できます。さらには、栄養バランスに優れた1ヵ月分の献立を提案。加えて、園で提供される料理の作り方を動画で見ることができるほか、園での食事から、夜、家で食べるとよい献立なども教えてくれます。まさに至れり尽くせりです。
子どもの食事を真剣に考えている保護者にとっては、うれしいサービスでしょう。文字による献立表では知りえない、さまざまな情報が入手できます。いやな言い方ですが、園の給食をある意味、監視することも可能です。
保護者の中には、子どもが食べた給食の料理と量、栄養を確認して、夕食の献立を考える人もいるでしょう。かなり大変ですが、使いこなせば、完璧な食生活を子どもに実践させることができます。情報は役立ててこそ価値があるもの。前向きな家庭とそうでない家庭。情報が手に入りやすくなればなるほど、子どもの食環境の格差は広がります。そしてもうひとつ言えることは、まったく無関心な人を除けば、保護者にとってはさらなるストレスが加わることになるのです。
肉好きトランプ大統領の来日おもてなしメニュー
トランプ大統領が来日。2日間という短い滞在期間の中で、政府はどんな食事でもてなしたのか、気になるところです。
来日早々、「霞が関カントリークラブ」でのゴルフ会議を前にクラブハウスで提供されたのは、米国産アンガスビーフを使ったハンバーガー。東京・芝の「マンチズバーガーシャック」のオーナーシェフが作りました。“肉好きを120%満足させるMUNCH’S(やみつき)な一品”がコンセプトだけに、つなぎを一切使わず、塊から叩いた肉で作ったパテは、噛みしめると溢れだす肉汁がたまらないといいます。夕食は、鉄板焼きの高級店「銀座うかい亭」。ミシュランで星を得たこともある有名店で、最近はドラマ「ドクターX」のロケ地としても話題です。報道によるとメニューは、北海道産帆立て貝と白トリュフのサラダ、伊勢エビのソテー・ビスク仕立て、但馬牛のステーキです。翌日、迎賓館で行われた歓迎晩餐会では、松茸の茶碗蒸し、伊勢エビの酢の物など和の献立の中に、焼き物として佐賀牛のステーキが入っています。トランプ大統領の肉好きは有名。米国産牛肉と和牛のおもてなしは、米国産牛肉の良さも認めつつ、和牛の格別なおいしさを体験させて強硬な輸入圧力を回避するという目論見なのかな・・・などと、深読みしてしまいます。
因みに、トランプ大統領。ファストフードやスナック菓子もお好きなようで、選挙キャンペーン中の食事は、ドミノピザとケンタッキーフライドチキン、マクドナルドのビッグマックが定番だったとか。こと食においては、「アメリカ・ファースト」を実践しているようです。
ベトナムでひとり鍋がブーム。食習慣に変化?
しゃぶしゃぶの食べ放題店「しゃぶしゃぶれたす」(東京・中目黒)は、1席に1つずつ小鍋を設置。複数人で来店しても同伴者を気にすることなく、ひとり鍋が楽しめるサービスを始めました。メニューは‟和豚のもちぶた”や‟熟成牛タン”、“霜降り黒毛和牛”などメインの肉を選ぶ4コース。だしは、カツオだしや豆乳だしなど8種類、調味料はごまだれやぽん酢など約30種類から選べます。
実はベトナムには、有名なひとり鍋専門の食べ放題店があります。店名は、「KICHI-KICHI」。しかも回転寿司よろしく、具材はベルトコンベアに乗せられて回っています。鍋のスープは、ベトナムではメジャーなきのこ、わさび、トムヤムクン、ちゃんこ(しょうゆ味)の4種類。回っている具材は、肉や魚、野菜やきのこなどの他、〆のインスタントラーメンも。お国柄でカエルもあります。
共働きが一般的なベトナムでは、家族揃っての夕食をとても大切にしています。家族の一体感を重視していて、皆、同じ料理をいただきながら、その日にあったことを話します。そんなベトナムにおいて、ひとり鍋は受け入れられるとは思えないスタイルです。が、ちょっとしたブームになっているのは、提供スタイルの珍しさと、好みに合わせてカスタマイズできる点、そして何よりも、ベトナム人が鍋好きだということが大きいと推測されます。
日本において、鍋料理は家族でつつくものという観念が強くありました。ですから、個食化が進み小鍋ブームが到来したとき、私は強い違和感を覚えました。経済発展と共に、家族の在り方や食習慣が変化した例は、数多くあります。ベトナムのひとり鍋はブームで終わるのか、はたまた、個食化への始まりなのか。注目したいと思います。