産業という側面だけでは測れない食の世界

  玩具販売大手の米国トイザラスが経営破綻しました(日本トイザらスは100%子会社ですが、今回の案件の対象には含まれていません)。ショッピングモールでよく見かける大型店には、子どものおもちゃからベビー用品、ランドセルや自転車、クリスマスの電飾まで、何から何まで揃っています。昭和の時代、街角には個人経営のおもちゃ屋さんがたくさんありました。それがトイザラスの上陸で、あっという間になくなってしまいました。そのトイザラスが今、ネットショップに押されているのです。
 ファストファッションのブランドとしていち早く日本に上陸したGAPも、経営不振に喘いでいます。ユニクロやしまむらといった和製ファストファッションからの圧力に加え、デザインが平凡過ぎるという批判もあります。誰でも着られる無難さがウケた時代もあったのですが。確かに、ZARA 、forever 21、 H&Mなど後発のブランドは、デザイン性を重視しています。ファストファッションの隆盛によって、街の洋品店は姿を消し、百貨店は集客に苦しんでいます。そして今、服にお金をかけたくない若者たちは、メルカリなどのフリマアプリで服を売ったり買ったりする時代。ファストファッションにも終焉説が流れています。
 食はどうでしょう。日本に初めてファミリーレストランとファストフードが登場したのが1970年。ブランドアピールとチェーン展開を武器に、外食市場という大きなマーケットを生み出しました。では今、おもちゃ屋や洋品店のように個人経営の店は消えたのかと言われれば、そうではありません。個人経営の喫茶店は減少しましたが、今また、店主のこだわりに惹かれて通うお客様が増えています。
 成長と拡大が常に求められ、効率化を図って生産性を上げなくてはならない産業としての外食。そこにはないもの、それと相反するものも同時に求められるのが、食の世界です。