ヘルシー志向と食事のマナー

 薄着の季節に向けて、ダイエットを始める人が増える時期。中でも、ご飯やパン、麺などの糖質を控える低糖質ダイエットや、食物繊維をたっぷり含む野菜から食べることを勧めるベジタブルファーストといったダイエット法は、日々の食生活に比較的簡単に取り入れることができる点がウケて、実践している人が多いと思います。
 中年男性に人気なのが、低糖質ダイエット。ランチのご飯を残す男性が増え、ビジネス街の定食屋さんが嘆いています。注文時に「ご飯半分に」とか、提供されたご飯を「減らしてください」とか。忙しく動き回る店員さんを見ると、注文を複雑にしては、手間をかけさせてはという気持ちが働くのも分からないではありません。
 最近、洋食のプレートで、付け合わせの野菜だけを先に食べてしまう女性をちょくちょく見かけます。ベジタブルファーストです。メインの料理だけが残ったお皿。違和感を覚えます。
 盛り付けられた料理は残してはいけない、食べられないのなら減らしてもらう、料理はバランスよく食べる、好きな物だけ先に食べたり、一点食べをしたりしてはいけない。私たちは、そう教えられてきたと思います。
 どう食べようが個人の自由でしょうし、ましてや健康のためだと言われれば、何も言えません。が、ダイエットや健康は、食料をムダにしないという倫理や食事のマナーより優先されるのでしょうか。それとも、そのような考え方自体、既に存在しえないものなのでしょうか。電車の中でのお化粧も然り。そもそも是非を問うことすら、おかしいと思う生活者も増えています。生き辛さは増すばかりです。

セブンプレミアムフレッシュ始動

 セブン&アイ・ホールディングスが、発売10周年を機に「セブンプレミアム」を刷新。ロゴを変更するなどかなり力の入った刷新ですが、なんといってもその目玉は、生鮮品のPB「セブンプレミアムフレッシュ」の誕生です。
 生産地を絞り、製法を管理したバナナや豚肉、サーモンなど第1弾の約30品目を3/9から順次、売り出しています。セブンプレミアムが目立つのはセブンイレブンの店頭ですが、フレッシュに関しては、イトーヨーカ堂やヨークベニマルなどスーパーが主な販路です。コンビニにはあまり行かない高齢者に、セブンプレミアムの存在と価値を知っていただくためのようです。
 例えばセブンプレミアムフレッシュの豚肉は、「カナダポーク」という小麦を多めに配合した独自の飼料を使った豚の肉。価格は100g159円です。私がよく行くスーパーの場合、100g159円は、1アメリカ産 2国産 3国産ブランドの、1と2の間の格。国産にこだわるか、セブンイレブンのPB開発力を信じるか。迷うところです。一度試したお客様が品質と価格を比較した結果、「いままで買っていた国産豚肉より安いのにおいしいから」または「アメリカ産よりちょっと高いけれどおいしいから」とスイッチしてくれれば万々歳。そこまでのアピール力があるとしたら、さすがセブンプレミアムと賞賛されるでしょう。
 コンビニは選択肢を求める場ではありません。今欲しいものがあるかないかだけです。一方、スーパーは選択が前提です。販路をスーパーにこだわらず、一日も早くセブンイレブン全店に広げていただけますように・・・一生活者としての私の要望です。    

ネット市場から実店舗へ。信頼維持が成否を分けます

 ネットショップから実店舗へ進出する元気な企業が続々登場しています。
 例えば、食材宅配のオイシックスは吉祥寺と恵比寿に直営店を出し、都内のスーパーを中心に販売コーナーを展開。コスメ・美容の総合サイトのアットコスメストアは、北海道から福岡まで16店舗を出店しています。また野菜宅配のらでぃっしゅぼーやは、食品スーパー大手のライフコーポレーションと組んで、有機・低農薬野菜の店頭販売を始めましたし、同じく野菜宅配の大地を守る会も、スーパー「Odakyu OX」の一部に売り場を構えています。
 楽天市場で有数の成功ショップと評価されているコーヒー製造会社澤井珈琲(鳥取・境港)は、昨年10月東京・銀座に路面店を出店しました。店舗は1階がコーヒーと紅茶のショップで地下がカフェという造り。カフェでコーヒーを味わい、1階の店舗で購入し、ネットショップも試すといった、さまざまな環流が期待されています。
 ネット市場で成功をおさめた企業が実店舗を展開する理由は、認知度を上げるとともに、信頼性と安心感を実店舗で補完し、さらなるブランド化を図るためです。でもそれは諸刃の剣。澤井珈琲の楽天市場でのユーザー評価は、丁寧な対応や品揃え、スピーディな配送などが評価され、5点満点で実に4.77点を獲得しています。野菜は目で見て手に取って確かめて買いたいという声が大きいにも関わらず、宅配システムが成功しているのは、企業と商品に絶大なる信頼があるからです。実店舗にも、ネットショップと同じレベルの対応と信頼が求められます。悪評は、SNSに載って千里どころかあっという間に地球を駆け巡る時代。実店舗の展開が狙い通りの結果を導くのか。これからが注目です。

わずか2年。ドーナツ戦争が残したものは

 ダスキンは2020年までに、「ミスタードーナツ」の約4割に相当する500店でドーナツの店内調理をやめ、近隣の店舗から届けると公表しました。
 原因はやはり、コンビニのドーナツ市場参入による売上の低下です。セブンイレブンがドーナツの販売を本格化した2015年。6億個販売、600億円の売上を計画していました。これは、ドーナツ市場の半分を飲み込む計算です。が、全国展開が完了した8月頃には早くも失速。翌年1月には全面リニューアルを開始しています。
 一方、ドーナツ市場の9割近くを独占していたミスド。セブンイレブンの脅威に対し、店内でドーナツを揚げていることを武器に差別化が図れるとし、レシピや油の温度などの製造工程を見直しました。また1回に揚げるドーナツの個数を、約70個から、20~30個に減らして商品の鮮度をアップ。「ひと味違う、揚げ立てのドーナツ」をアピールしました。
 しかしわずか2年で方向転換。ここに来て“揚げ立て”を放棄する理由は、利益の確保です。揚げないことで人件費を抑えられるほか、設備の保守など経費も削減できます。現行より2~3割売上高が減っても採算が合うよう、利益構造を組み直すのだそうです。さらに、ドリンクバーを導入したり、食事メニューを増やしたりして客単価を引き上げるとしています。
 ミスドは、ドーナツで勝負することをあきらめてしまったのでしょうか。因みにセブンイレブンは、ドーナツの個包装化を進めていて、一部店舗ではパンコーナーに並べています。もともと100円コーヒーとの併せ買いを狙って投入したレジ横ドーナツ。今はドーナツより、おにぎりやロールパンの方が、コーヒーとの同時購入の比率が高くなっていると言います。
 2年前、火蓋を切った“ドーナツ戦争”。揚げ立てドーナツが簡単に食べられなくなったという結果だけが残りました。セブンのせい? ミスドのせい?