過去にも登場した今年のトレンドキーワード-3[和 味]-1

 3回目は[和味]。弊社のトレンド相関図では、これに関連するキーワードが2003年から登場しています。日本の風土に根付き、海外での評価も高まる一方の“和の世界”。4回にわたり紹介したいと思います。奥深いが故のことと、ご容赦ください。
 和の要素がポイントになり魅力が増す“折衷料理”や、和の味そのものを深化させた料理など、日本の食の伝統的な文化や風味、日本テロワールを感じさせる[和味]の世界が広がっています。最近では、ペルーで日系人の飲食店が提供してきた、みそやうま味調味料といった隠し味、高い調理技術が評価され、「ニッケイ料理」への関心が高まっています。米国では、ごま油や、みそなどの発酵食品を使った“UMAMIカクテル”が人気に。フランスでは、パリ・ブレストやモンブランのような見た目の“進化系どら焼き”が登場しています。
 一方、日本においては、だしや和の調味料を加えたカレーや麻辣湯の専門店がオープンしたり、ホテルのレストランが、発酵、乾燥、塩蔵といった伝統的な技法で生まれた日本の保存食を米国の料理に組み合わせたディナーコース“UMAMI FUSION”を企画したり。チーズタルトやマドレーヌ、フィナンシェなどフランス菓子に“みたらし”を合わせた、“和洋折衷スイーツ”も目立ちます。
 洋のスイーツに[和味]を加えたデザートを[創作和スイーツ]というキーワードで最初に紹介したのは03年。背景には、[和カフェ]ブームがありました。抹茶や煎茶と一緒に提供されたのが、栗の甘露煮を添えた“和風パンナコッタ”や“和風クリームブリュレ”。京都ロイヤルホテル(当時)では、伏見の銘酒と西京みそを使ったムースに丹波産の小豆をトッピングした洋菓子“京三昧”が顧客を惹き付けました。
 次は07年、キーワードは[和テイスト]。日本ケンタッキー・フライド・チキンが、焼き海苔とごまをまぶし、しょうがじょうゆで味付けした“香り揚げ醤油チキン”や“湯葉と野菜のスープ”を、ロッテリアが“もみじおろしバーガー”を、ベッカーズ(当時)が“つくねバーガー”を発売するなど、ファストフード各社は和の味わいを生かしたメニューを強化しました。またタリーズコーヒージャパンが、抹茶系ドリンクと相性がよい和デニッシュを導入。有名パティスリーでは、山椒風味のパンナコッタやわさびを入れたほろ苦い抹茶ムースが、片や老舗の和菓子店では、梅酒や八ツ橋を加えたソフトクリームが人気でした。(次号に続く)

過去にも登場した今年のトレンドキーワード-2[ボタニカル]

 2回目は、[ボタニカル]。最近は、[ボタニカル]と言えばジン。ジンは、ジュニパーベリー(杜松の実)の香りを主体とし、草根木皮(ボタニカル)で風味付けした蒸留酒。クラシックとしては、オレンジピールやレモンピール、アンジェリカやシナモン、コリアンダーシードやクローブ、ナツメグなどのスパイスが、ジャパニーズとしては、ゆずなどの柑橘類、山椒や緑茶、クロモジ、スギ、ヒノキなどの木が使われるなどアルコール類の中でもかなり自由度が高く、だからこそ、さまざまなクラフト系が生まれていて、最近では数限りないという印象です。
 ジン関連以外で[ボタニカル]が初めてキーワードとして挙がったのは、2020年。花や木、竹や炭、染料の藍も食品に使われ、香りや色など五感を満足させるアイテムとして人気になりました。特に、当時手頃な価格になった“食用バラ”は、彩りが華やかでSNS映えするだけでなく、甘い香りが料理やドリンクを引き立てると注目され、食材として活用する動きが広がりました。
 一方、[ヘルシー志向]を背景に、木や竹、炭や藍を食材に使ったスイーツやフードもたくさん登場しました。特にスギや竹のパウダーを使った商品は、「想像以上に香りがして、しかもおいしい」と好評でしたし、藍粉をふんだんに使用したフレンチコースを提供するレストランも話題になりました。
 21年には、新型コロナ禍を背景にナチュラル志向が強まる中、ストレスを抱える生活者のニーズは、リラックスできるとしてスギやヒノキのアロマ効果に集中。植物の持つ力への関心が高まり、再び[ボタニカル]がブームになりました。間伐材のスギや枝落とししたヒノキを素材にしたケーキ、放置竹林の竹や笹を使用した和菓子などもSDGsと絡めて話題になりました。
 23年には、世界遺産“高野山”の木の香りが口中に広がる無糖炭酸水「高野六木炭酸」が発売されました。“高野六木”とは、高野山の寺院や伽藍の建築や修繕のため大切に育てられてきたスギ、ヒノキ、モミ、ツガ、アカマツ、コウヤマキの6つの木の総称で、高野山の“宗教と自然”の密接な繋がりを語るうえで欠かせない象徴です。
  神羅万象に神が宿る日本において、[ヘルシー志向]と[癒やしニーズ]が高まるとき、[ボタニカル]は今後も繰り返しキーワードとして登場するでしょう

過去にも登場した今年のトレンドキーワード-1[漢方・薬膳]

 [2026年 食市場のトレンド]講演に向けて、相関図や原稿を作成中です。昨年のトレンドキーワードは2017年とよく似ていて、17年を始まりとしたトレンドが、25年になってそのカタチが定着していると考えました。今年のトレンドの特徴も、過去に挙がったキーワードが再び登場していること。そんなキーワードについて、今回から連続して解説したいと思います。
 初回は、[漢方・薬膳]。サントリー食品インターナショナルが、薬膳専門の新ブランド“薬膳好日”を立ち上げ、シリーズ第1弾としてペットボトル入り飲料“ジンジャー&ソーダ”を発売したり、身体を温め、血行をよくし、冷え性や月経トラブルに効果があるとされ、古くから日本人に親しまれている薬草“よもぎ”を発酵させて今風のドリンクに変身させた「THE YOMOGI STAND」が東京・代官山にオープンしたり。[漢方・薬膳]が、またまた今風のスタイルで登場しています。
 過去には05年、株価が当時の過去最高額を記録する前年、薬膳フレンチや薬膳カレー、薬膳パフェなど、おしゃれでプチ贅沢な薬膳メニューが、上昇景気に乗って登場しました。次は13年。かつては薬膳特有の苦味を苦手とする生活者が多かったのが、その苦さが身体によさそうだと本物の味を求める傾向が強くなったのに加え、スタイリッシュな漢方ブティックやおしゃれな薬膳カフェが続々とオープンしたことで、“薬膳=ファッショナブル”というイメージが生まれました。さらなる追い風は、韓流ブーム。“参鶏湯”に代表される本格的な韓国の薬膳料理を口にする機会が増え、生活者は薬膳のおいしさを知りました。また、クコの実を入れればアンチエイジングに、ナツメを使えば疲労回復に役立つなど、効能が分かりやすいことも魅力に。手軽に美と健康を手に入れたい女性はもちろん、うんちく好きな男性をも惹き付けました。
 そして21年。新型コロナ禍で、免疫力を高めるための効果的な手段として[漢方・薬膳]が注目されました。ホテルのレストランや飲食店が相次いで 漢方・薬膳メニューを打ち出し、外食を控える生活者に向けてデリバリー・テイクアウトの薬膳スープ専門店が登場。家庭で作れる薬膳レシピのサイトが立ち上がりました。

コンロとオーブンの取り換えで

 年の瀬、私の一大決心は、コンロとオーブンの取り換え。昨年手に入れた家のコンロはオーブン一体型で、火力がとにかく弱い。フランス製のため日本の安全基準を満たす目的で敢えて火力を弱く調整されているとか。でもでも、ルックスはビンテージ感満載、白一色でとっても素敵。白いタイル貼りのキッチンにぴったりなのです。10ヵ月悩んで、“新年はストレスがない料理をしよう!”と交換するに至りました。
 まずは商品探しから。私の場合、コンロの最重要ポイントは火力。一般のコンロよりも火力が強い商品はグリルが付いていない機種があり、連動して排気口もないため、コンロの下にオーブンを付けられない。火力が強くて排気口があるコンロは、サイズが合わない。火力は普通でいいとあきらめて、ならばキッチンに合うテイストの商品がないかとメーカーのパンフレットを精見してもない。ならば仕方ない、後学のため“最高機種”とやらを試してみようと、またまたコンセプトを変更。ガス会社に見積りを出していただいたその夜、ネットで白いコンロを発見。しかもトップはホーローで今のキッチンにぴったり。さらにフツーのコンロだから、価格は雲泥の差。メーカーがネットでのみ販売している商品で、カタログにも載っていないし、法人には販売しないとのこと。どんな意図があるのかは分かりませんが、ここに辿り着くまでの時間と労力を考えると、カタログに載せて“ネット注文のみ”と明記すればいいのではと憤りすら覚えます。
 オーブンは小学生の頃から使い慣れている機種一択。色を選ぶ余地はありません。近年、コンロやオーブンの色は、黒色に傾倒しているとか。汚れが目立たず、男性ウケがいいからなのだそう。
 クリスマスイブ、取り換えが終了しました。コンロはキッチンの雰囲気にしっかり溶け込んで、そのせいか、下のオーブンも違和感なく。ただ下の子はよくしゃべる。“シャラップ!(音声切り)モード”を選択して解決したものの、使う度に、自動と手動を選ばないと働かない。オーブンのクセ、立ち上がりまでの時間、火力の程度など、情報を集めて“私のオーブン”にしていくのが楽しみなのだから、自動機能は要らないのです。コンロにしても、高機種は鍋を外すと安全装置が働いて弱火になってしまいます。卵焼きや炒め物など、ちょっと火元から外したいときにはイラッとすることも。
 要らない機能をすべて外して安価にしろよと毒づく一方、使ってみれば案外ラクかもと流れそうになり、いやいや頭と勘が大切なのだと背筋を伸ばし。小さな意地とテクノロジーの間で揺らぐお年頃です。

2026年のキーワードは「自分ファースト」

2026年が始まりました。今年も、なんとなく不安な気持ちでお正月を迎えました。不安感は、年々強くなっているように思います。
 昨年1月、下水道管の腐食が原因で道路が陥没。日本の生活インフラに対する不安が広がりました。「令和の米騒動」と酷暑による野菜価格の高騰は家計を圧迫し、秋に入るとクマの被害。自然環境の変化と空き家問題という無関係に思えるふたつの事柄がクマと人間の共存を難しくしているようです。そして日本初の女性総理大臣の誕生。何やら隣国はご立腹のようですが、生活者の不安感を増長させることにならなければよいと祈るばかりです。
 そこで、“2026年 食のトレンド予想”の決定に当たり、私は昨年同様、「身体と心の健康」と「癒やしニーズ」を柱に、「自分ファースト」を1位に挙げました。自分にとって最も重要なことは、“我が身の健康”と“我が心の平穏”。“健康は富に勝る”という格言通り、健康を維持することは、何にも勝る節約術です。そして、「癒やしニーズ」の強まりと共に最近再びよく聞かれるようになったキャッチフレーズが「自分ご褒美」。ひとときの安らぎと幸福感をもたらしてくれる食への期待は、ますます高まっています。
 「ヘルシー志向」を反映するキーワードとして「予防食」「漢方・薬膳」「コスパ栄養」「おやつ食」などを、「癒やしニーズ」のそれとして「ご褒美ウェルビーイング」「思考キャンセル界隈」「リカバリー消費」「逆タイパ志向」などを挙げました。また「地球沸騰化」によって生まれた「汗活」「ぬる温活」「耐暑食品」、活気づく「Wシニア市場」からは「エンジョイシニア」や「ハイシニア向け食品」などのキーワードが登場しています。
 2/18の“スーパーマーケットトレードショー”を皮切りに、今年もさまざまな会場で「2026年 食市場のトレンド」講演をいたします。ぜひ、最新の情報を聞きにいらしてください。もちろん、「食のトレンド情報Excel版」法人会員の皆様には、貴社に伺って講演をさせていただきます。皆様にお会いできますことを楽しみにしています。

新巻鮭、私の今昔物語

 スーパーのお歳暮コーナーに“新巻鮭”の文字が。冷蔵・冷凍状態での保存や輸送は当たり前、核家族化が進む現在、塩に漬けられた鮭丸ごと1尾をいただいて喜ぶ生活者はいるのだろうかと足が向きました。私の“それ”の印象は決してよいものではなく、子どもの頃、“それ”が私の部屋に吊り下げられたことが。海のある温暖な土地で生まれ育った母にとっては、「これはどうしたものか」の贈答品。冷蔵庫に入らないため、比較的温度が低い部屋に吊るしておけばいいとでも思ったのでしょう。怖い顔をした銀色に光る“それ”からは、脂は落ちるは生臭さは発せられるはで、さすがに閉口しました。
 ところが、スーパーの陳列用冷蔵庫に納まっている新巻鮭は、塩を纏わぬすっきりとした出で立ち。私の印象とはまったく違うものです。秋に獲れた鮭に粗塩をすり込み、塩漬けにした後、北国の冷たい風にさらして干したもの―。これが私の“それ”に関する知識のすべてですが、近年の新巻鮭は作り方のベースは変わらないものの、やはり昨今のギフトに相応しいカタチに変化しているようです。
 まず腹をさばいて内臓を取り出し、全体にまんべんなく塩をまぶして漬け、うま味を凝縮させます。昔は、鮭と塩を交互に積んで重石をかける「山漬け」製法が主流だったようですが、今は、生活者の減塩志向に合わせて塩分濃度を調整した塩水に漬け込むのが主流。手間がかかる「山漬け」は高級品とか。その後、昔は水洗いして塩を落とし、寒風にさらしてじっくりと干すことで独特のうま味が熟成されました。一方、今では、温度や湿度を管理した室内で乾燥されることが多く、天候に左右されず安定した品質を保つことができます。
 昔の“それ”は調理する前に塩抜きが必要でしたが、今の新巻鮭には必要ないものもあります。冷蔵・冷凍技術を利用することで、甘口の新巻鮭が誕生したわけです。見た目すっきり、うま味が凝縮、手間要らずの新巻鮭。誰か送ってこないかな、できれば切り身の真空パックがいいな・・・などと手のひら返しの年の暮れです。

町中華の至高のルーティン

 今週の「食のトレンド情報」に、ASPiA JAPAN(アスピアジャパン、東京・台東)が1cc精密ディスペンサー「ECOSAS味ピタ」を開発したという記事がありました。ワンタッチ操作で液体調味料を正確な分量吐出できるため、経験や勘、感覚に頼ることなく、新人でも初日から熟練者に近い調理品質を再現できるといいます。HPでは、お玉の底で押すとディスペンサーから調味料が出てくる、中華料理店の厨房を想定した動画が見られます。
 突然ですが、私は町中華が大好きです。その魅力は、何といっても油っぽくて濃い味付けの料理を、ビールやチューハイで流し込むことにあり。〆の炭水化物まで用意されている憎らしい飲食業態と言うほかはありません。
 そんな店で時々出会うのは、齢70を過ぎているであろう中華鍋を振る料理人。炎に向き合って〇十年の蓄積を表すものは、身体の曲がり具合です。コンロの角度に沿うように曲がったまま。彼らに共通しているのは、大きなお玉で調味料をそれぞれの適量、次々にすくい取り、中華鍋に放り込む技。仕上げの水溶き片栗粉も、お玉の中で溶かして回し入れる。この一連の無駄のない動作は、見惚れるほどの完璧さです。
 渋谷にある24時間営業の町中華の店は、何といっても料理の提供スピードが速い。体感では1分以内にビールと炒め物が揃います。ここでも中年男性二人が中華鍋を振りまくり。もっと眺めていたいのに、ゆっくり食べていては申し訳ないほど、客の回転も速いのです。
 強い火力とベテランの迷いなき動き。ルーティンと表現しては失礼なほどの領域に入った“至高のルーティン”。それもまた町中華の魅力。やっぱり町中華は、経験と勘に裏付けされた熟練の技を楽しみたい。“鍋振りパフォーマンス”のカッコよさは、ディスペンサーを使っていては成り立たぬと思うのです。

変化する試食の目的

 新型コロナウイルス禍を機にすっかり影をひそめてしまったスーパーの試食・試飲販売。古くて確かな手法は、時代とともにその目的を変え、さまざまなカタチで展開されています。
 「お歳暮を贈る習慣がない」「お歳暮は自分には関係ない」と感じている若い世代に、贈る前に“自分で試す”という“新しいお歳暮体験”を提供する目的で試食の場を開いたのが、「新宿高島屋」(東京・新宿)。11月、お歳暮ギフトのカタログ“Tasty Days”に掲載されている商品を店頭で味わえる“お歳暮カフェ”をオープンしました。
 インフルエンサーやプレス関係者を対象に試食会が開かれるのが一般的なクリスマスケーキ。2012年、客から「失敗したくない」という声が多く寄せられていたため、好みのケーキを探してもらえるよう一般の客向けにクリスマスケーキの試食会を開催したのが、当時の「東急百貨店東横店」(同・渋谷)。東急フードショーと東横のれん街の12店、計18種類のケーキを少しずつ、事前に試すことができました。
 因みに14年には、コンビニでもお試しクリスマスケーキが登場。ローソンは、「ホールで買う前に試食したい」「ホールサイズでは大き過ぎるが、クリスマス気分を楽しみたい」という要望に応え、予約専用のホールケーキを小さくした“味見”用を店頭で販売。お試し需要と個食需要の両方の取り込みに成功しました。その後、同様の目的で、おせち市場にも試食用個食型商品のトレンドが。「失敗したくない」「一人でも楽しみたい」ニーズは今も健在です。
 バレンタインデー向けチョコレートの試食で名を馳せたのが今はなき「プランタン銀座」(同・銀座)です。06年、女性が商品を選ぶときの参考になるようにとの目的で、広告会社やアパレル勤務の“イケメン”男性を招き、33ブランド約100種類のチョコレートを採点する試食会を開催しました。結果、酒のつまみにも合うチョコや高級チョコへの流れが加速。その後、プレゼントする前に味見をしたい女性向けに試食用商品を販売。自分のために購入する“ご褒美チョコ”需要の取り込みが始まりました。

食肉としてのクマ

 日本各地でクマの出没が相次ぎ、人的被害も続く中、猟師が営むジビエ店が連日満員なのだそう。駆除したクマの肉を消費することで、増えすぎたクマを適正な数に戻す動きが始まっています。
 ジビエ人気で、鹿やイノシシ、鴨などが気軽に食べられるようになりましたが、クマの肉はあまり目にしないと思います。実は、クマ肉のおいしさは高級和牛と比較されるほど。特に、冬眠前の秋。クマはどんぐりなどの木の実を食べて脂がのっているため、最もおいしいとか。一方、脂肪が抜けた春は、さっぱりとした味わいで、それはそれで美味といいます。
 部位によって味が異なり、ロースやヒレは、薪焼きやソテー、煮物に、脂が少なく焼くと硬くなるモモは煮込みに、内臓や脳みそはクマ汁のだしに使われます。クマ肉料理で有名なのは、手の平“クマ掌(ユウショウ)”。中国で古くから珍重されている部位です。味は、ゼラチン質のぷるぷるとした食感と、肉の濃厚なうま味が特徴。クマは右利きで、利き手ではちみつを舐めるからはちみつが染み込んだ右手がおいしい、いや左利きで、利き手で獣を襲うから肉がしまっている左手がおいしいなど、さまざまな風聞がありますが、実際の取引では右手のほうが高いそうです。
 ぬいぐるみや擬人化キャラクターとして世界中で人気者なのに、日本では、すっかり恐ろしい悪者になってしまったクマ。でも日本においては古くから、捨てる部分がないと言われ、特に山で暮らすマタギの文化にはなくてはならない存在でした。毛皮で暖をとり、肉を食べ、油を採り、胆嚢は今でも「クマの胆(クマノイ)」に加工され、鎮痛剤、胃腸薬として利用されています。
 人智が及ばないのが自然界であるということは重々承知しているつもりですが、地球の生態系が壊れていくプロセスが、私たちの想像をはるかに超えるスピードで進んでいること、そしてその主因が私たちヒトに在ることだけは十分に理解できます。

秋の魚とカニの話

 魚好きの私にとって、初秋のサンマ豊漁の便りは何にも代えがたい喜び。大根のすりおろしも苦ではありません。“慌てる乞食は貰いが少ない”。秋も深まったほうが脂がのって丸々太った・・・。と、時期を見定め意気揚々とスーパーへ。が、期待に反して細くて小ぶりなサンマばかり。期待し過ぎで錯覚を起こしているのかと思いきや。どうやら、8、9月のサンマの水揚げ量は、合計約2万8500トンで、前年同期比2.4倍増。この時期、サンマの群れがたまたま北海道の東寄りを泳いできたからなのだとか。サンマの漁獲高は復活したわけではなく、専門家によれば、今年も決して豊漁ではなく、昨年並みの低水準と予想していたようです。
 11/6、ズワイガニ漁が解禁されました。今年は調査を始めて以来の大漁が見込まれているそう。カニ好きな人にとってはこの上ない朗報です。がしかし、今後は獲れる数が減ってしまう可能性があるといいます。理由は、少子化。小さいカニが少ないことが分かっていて、約3年後にはズワイガニの量が減り始める可能性があるといいます。因みにオオズワイガニは、天敵となるタコが毒性のあるプランクトンの増殖により逃げてしまったとかで、大大豊漁。1パイ千円を切る安さで売られています。
 一方、秋サケの漁獲量は年々減少。国内漁獲量の9割を占める北海道で前年同期比7割減。卸値は同3倍で過去最高値となっています。当然、サケの卵、イクラも最高値。おせち料理を彩り、インバウンドに人気の海鮮丼にはなくてはならない食材だけに、影響は少なくありません。
 海洋環境の変化により、「獲る漁業」は難しくなっていますが「育てる漁業」は養殖技術の研究が奏功し、供給量が年々増加しています。魚種ごとの養殖割合では、うなぎは100%、マダイは80%、クロマグロは70%、ブリは50%。高値で販売できる魚種、育てやすい魚種においては、養殖魚の比率が高まります。一方、サケに関しては、高い海水温や青潮と呼ばれる水質悪化でサケが故郷の川に帰れず、稚魚放流用の卵確保にも苦戦。「育てる漁業」の継続も難しいといいます。