少しずつ寒さも緩み、暖かい日が増えてきました。が、白菜やキャベツなど野菜の高値はまだまだ続きそうです。それに対応すべく、食品スーパーは、冷凍野菜の調達先や売り場を広げています。
「いなげや」が新たに仕入れたのは、ペルー産のグリーンアスパラガスや中国産のほうれん草といった海外産の冷凍野菜。「サミット」も、国産の冷凍野菜が品不足になっているため、中国産のほうれん草と小松菜の冷凍品販売に着手しました。「ライフコーポレーション」は、ほうれん草や人参、キャベツなど約20品を冷凍ケースに入れて販売。「いなげや」も改装店2店舗で、青果売り場に平台の冷凍ケースを設置しました。冷凍野菜、特にほうれん草やブロッコリーなどは、柔らか過ぎて水っぽいと敬遠されることも多かったのですが、ここにきて、野菜の高値をきっかけに利用を始め、利便性や保存性に惹き付けられている生活者は少なくないでしょう。
一方、野菜の種も改良が進んでいます。種苗大手サカタが開発したのは、葉が厚く寒さに強い白菜「冬月90」。カネコ種苗の白菜「おもむき」も、温度変化に対応しやすく、低温でも葉が枯れにくいという特性を持ちます。このほか、根が太く強風でも倒れにくいとうもろこし「ゴールドラッシュ90」や、暑さに強いトマト「麗月」、高温でもきれいな球体になるレタス「タフV」など、天候不順に対抗できる品種が相次いで登場しています。
天候に関係なく野菜が安価に入手できる環境が整った時、生活者は冷凍野菜を選ばなくなるのでしょうか。
投稿者: himeko company
集客効果を狙って食市場でも広がる定額制
スマホや音楽配信では当たり前になっている定額制。それが最近、食の分野にも広がっています。
ガッツリ系ラーメンで若者に人気の「野郎ラーメン」。18~38歳の“野郎”世代限定という年齢制限はありますが、月額8,600円で3種類のラーメンから好みのものを1日1杯食べられます。月12杯で元が取れるので、3日に1度以上行けばお得です。西新宿のカフェ「コーヒーマフィア」は月額3,000円で、通常1杯300円のラージサイズコーヒーを無料で楽しめます、1日何杯オーダーしてもいいので、コーヒー好きの人なら、あっという間に元が取れます。フレンチレストランで定額制を導入しているのが、六本木の「プロヴィジョン」です。1名利用なら月額15,000円で、料理とワインなどのお酒を好きなだけ楽しめます。月に何度でも利用可能です。4名まで利用可能な月額30,000円コースもあります。利用回数が多ければかなりお得ですし、毎回会計をする手間が省けるので、接待が多い営業マンや部下とのコミュニケーションを大切にする経営者などには、人気のようです。月額性のフードシェアリングサービスも登場しています。「Reduce Go」は、月額1,980円で1日2回まで飲食店や小売店の余った食品を処分価格で購入することが可能です。
客は、元が取れると思っているから定額制を選択します。一件、店側に損のように思われますが、一度来るか来ないかの客が、何度も足を運んでくれるようになるのですから、決して損だけではありません。客がいない店ほど寂しいものはありません。客が客を呼び、集客に弾みが付くこともあるでしょう。定額制は、生き残りをかけた外食店の集客の手段。それがファン化に繋がればという切望が、導入に向けて背中を押します。
フィギュアスケート選手と食事制限
韓国平昌で行われていた冬季オリンピックが終わりました。日本中の在宅婦人は、心配半分、うっとり半分で男子フィギュアスケートを見たのではないでしょうか。
スポーツ選手にとって、食事はとても大切です。体重の変動がパフォ―マンスを左右するという意味では、冬季オリンピックの競技の中でも、フィギュアスケートが圧倒的に食事に神経を使う競技でしょう。
2010年のバンクーバー冬季オリンピックで3位に輝いた高橋大輔選手が、海外遠征時、お腹が空いたときは食事管理を依頼している日本の栄養士にその都度電話をすると言っていました。小さなおにぎり1個なら食べていいなど指示を受けるのだそうです。少しでも体重が増えると、回転のバランスが崩れ、動きの切れも悪くなるのだとか。といって、体重を減らせば体力が落ちる原因にもなり、ベストなバランス状態を維持することはとても難しいのだと思います。
ソチ冬季オリンピックに出場した、キャンドル・スピンで有名なロシアの女子フィギュアスケーター、リプニツカヤは摂食障害を患い、平昌前の昨年秋、19歳で引退しました。同じくソチに出場した女子フィギュアスケーターの鈴木明子選手も、摂食障害だった過去を公表しています。厳しい練習と自由の少ない生活だけでも若い女性にはストレスなのに、それを発散させる手段のひとつでもある食を制限されるとなると、その辛さは容易に想像できます。
生活のすべてを競技にかけてきて4年に1度があるから、私たちはこんなにハラハラドキドキして、涙が出るほど感動するのだと改めて思った2週間でした。
ネットと実店舗の融合を急ぐ楽天とヤフー
米国アマゾンはホールフーズ・マーケットを買収、中国のアリババ集団は生鮮食品スーパー「盒馬鮮生」を傘下において、それぞれ実店舗の展開を急いでいます。
一方、日本においても同様の動きが活発化しています。
楽天は、ウォールマート・ストアーズ傘下の西友と共同出資会社を設立。新サービス「楽天西友ネットスーパー」を始めます。西友の店舗から商品を届ける仕組みはそのまま。別に、ネットスーパー専用の物流拠点を設けます。楽天サイトですでに扱っている地方の産品や加工食品なども、ネットスーパーで買えるようになります。
またヤフーは、ソフトバンク、イオンと、ネットと実店舗の双方の店舗運営や商品販売で提携します。イオンは、通販サイト「イオンドットコム」や「イオンネットスーパー」を展開していますが、商品アイテムでは、ネット通販専門会社には到底敵いません。一方、ヤフーは「ヤフーショッピング」で多くの種類の商品を扱っていますが、大手メーカーの定番商品の価格などについては、大量に仕入れて販売するアマゾンに分があります。お互いに弱いところを補完するのが狙いです。
セブン&アイホールディングスは、アスクルと組んで、すでに生鮮食品の宅配を始めています。
アマゾンの脅威に対抗するために、実店舗の活用を急ぐ、楽天とヤフー。日本では実店舗を持たないアマゾンが展開する「アマゾンフレッシュ」は、配送料、配送までの時間に関しては、ネットスーパーのほうが断然利便性が高く、ネット通販での強みは見られません。品揃え、価格、利便性。3拍子揃うのはどこなのか。この先が楽しみです。
ネットと実店舗の融合を急ぐ盒馬鮮生と米アマゾン
米アマゾンは、実店舗の展開を加速させています。昨年6月、「米ホールフーズ・マーケット」を137億ドル(約1.5兆円)で買収すると発表。いよいよネットと実店舗の融合が始まるのかと楽しみに思いました。
でも、もっと先を行く企業があります。中国のネット通販最大手アリババ集団です。すでに傘下に生鮮食品スーパー「盒馬鮮生」を抱え、ネットと実店舗を融合したスーパーを展開しています。現在は、上海を中心に26店舗を運営していますが、今後は北京をはじめ、内陸部や南部の都市にも出店を広げる計画です。盒馬鮮生のすごいところは、店舗から半径3㎞までの範囲なら、ネットで購入した商品を30分以内に届けるシステムを構築している点。近隣の店舗で選任のスタッフが注文された食材をピッキング。専用バッグに入れて売場の端にあるクレーンに載せると、天井に張り巡らされたレールで運ばれ、バッグヤードの配送スタッフに届きます。ピッキングとチェック、発送係の分業が、配送時間30分というサービスを可能にしているのです。因みに配送料は、どんなに安い商品でも無料です。
日本でもアマゾンフレッシュがネットスーパーを始めています。実店舗はなく、送料は1回の注文が4,000円未満だと500円。配送は2時間ごとの時間帯から選べますが、商品があれば最短で4時間、普通は翌日配送のようです。
日本の場合、家庭の支出の1/4は食費。食市場は、やはり大きくて確実な巨大マーケットです。ネットスーパーが苦戦する中、アマゾンフレッシュは顧客獲得ができるのか。米アマゾン、盒馬鮮生と合わせて、今後も注目していきたいと思います。
多様化するバレンタイン市場。ゴディバが「義理チョコやめよう」の提案
2/14は、バレンタインデー。百貨店やコンビニ、製菓会社は、毎年、さまざまな趣向で商品を展開し、紙面を賑わせます。
百貨店は、イートインに注力しています。西武百貨店池袋本店、小田急百貨店新宿店、高島屋新宿店いずれもその場でいただけ有名ブランドのチョコレート、チョコレートソフトクリーム、チョコレートシェイクなど、限定商品を販売して連日満席の人気ぶりです。
バレンタインデーは本来の「女性が心に秘めた思いを男性に告白する日」から、「義理チョコで職場の人間関係を円滑にする日」「家族でチョコレートをあげ合う日」「自分にご褒美をあげる日」と多様性が市場を拡げ、イートインで限定商品をいただくという楽しみ方も生まれました。
そんな中、ゴディバが日本経済新聞に「日本は義理チョコをやめよう」というタイトルの広告を、代表取締役社長ジェローム・シュシャン氏からのメッセージというカタチで掲載しました。「バレンタインデーは嫌いだ、という女性がいます。」という書き出しで始まる内容は、バレンタインデーが楽しい日であって欲しいと願う同社の気持ちが込められています。ですから、楽しい義理チョコは否定していませんし、女性同士でバレンタインデーを祝うことも歓迎しています。
この広告に対して、ネットやワイドショーではいろいろな意見が。女性の多くは、実際そうするかは別として「よくぞ言ってくれた」という賛同の声が、男性の中では「義理でもいいから欲しい」という意見が多いようで、義理チョコ消滅はなかなか難しそうです。
サードプレイスとしての存在価値が高まるプロント
1/31までの期間限定で提供しているパスタメニュー‟サーモンとほうれん草のアーモンドミルクソース”を食しに、久しぶりにプロントへ行きました。このメニューは、アーモンドミルク飲料「アーモンド効果」を使用した、江崎グリコとのコラボ商品。「アーモンド効果」自体、それほど強い風味ではないので、パスタソースはやわらかなクリーミーさで汎用性のある味に仕上がっています。
プロントと言えば、フードメニューに力を入れてきたコーヒーチェーン。パスタメニューが女性に人気で、ランチタイムには、パスタにプラス300円で小さなサラダとドリンクをセットした食事を楽しむ女性たちで賑やかです。加えて、トレンドをいち早く取り入れるのも得意で、今年流行りそうな、消化されにくい難消化性デンプン「レジスタントスターチ」を含む“ハイレジ生パスタ”を使ったメニューを、2016年に既に展開しています。またベーカリーやアルコールの導入も早く、今ではすっかり“食事&アルコール”の利用スタイルが定着。会社からまっすぐに帰宅せず、気分転換をしてから帰路につきたい女性たちのオンオフ消費の場としても人気です。弊社近くの青山店では、生ビールなどを割引価格で提供する平日16~19時の利用客の半数は女性。ひとりで1~2杯飲んで帰る常連客も多いそうです。
今年、働き方改革の推進によって退勤時間が早まり、職場でも家庭でもない居場所、「サードプレイス」を求める生活者が増加すると予想されています。プロントは、ずっと以前からそれを提供してきたことになります。
野菜の価格が高騰。この冬、人気の鍋料理は?
昨年秋の長雨や台風などの天候不順が原因で、野菜の高値が続いています。この年末年始、休業する外食チェーン店が増えたこと、そしてスーパーで野菜が高かったことが、今年最初の困り事です。
雑煮に入れる小松菜、鍋の材料、白菜、おでんの具、大根。すべてが高く、お正月の献立に困りました。白菜はたっぷり使いたいので1個丸ごとが欲しかったのですが、すべて1/4カット。それでも200円近くします。丸ごとなら800円。それでは高い印象で売れないからでしょう。農家の方に聞くと、今年は白菜が巻かなかったとか。スーパーの白菜も、どれもスカスカです。
小松菜は茎が細くて短いものが多く、1把の株数は通常より少なめ。大根は細く、太い時期のものに比べると、半分の重さです。青果卸によれば、野菜の高値は2月頃まで続くそうです。
野菜の高値は、家計に影響。生活者の消費意欲を冷え込ませています。内閣府が発表した2017年12月の景気ウオッチャー調査で、家計動向の景気実感を示す現状判断指数(DI)は、前月比0.4ポイント低下の52.3と2ヵ月ぶりに悪化しました。おそらく1月は、もっと低下するものと思います。
葉野菜が高騰すると鍋料理の主役は、じゃが芋や玉ねぎ、にんじんといった根菜やきのこ、もやし、練り製品などになり、それらが使いやすい、トマト鍋やカレー鍋の登場回数が多くなります。この冬、どんな鍋料理で、生活者はこの難局を乗り越えているのでしょう。
年末年始、休業する外食チェーン店が増えました
今年の年末年始。外食市場には大きな変化がありました。言わずもがな、一部外食チェーン店の休業です。
ロイヤルホールディングスは、ファミリーレストランの“ロイヤルホスト”、天丼チェーンの“てんや”、ステーキチェーンの“カウボーイ家族”のほとんど全店を元旦休業にしました。また居酒屋チェーン“天狗”などを運営するテンアライドは大晦日を一斉休業に、“大戸屋ごはん処”を展開する大戸屋ホールディングスは、直営店の半数に当たる約80店で大晦日と元日を休業にしました。因みにすかいらーくグループは、“ガスト”で、年末年始のランチとハッピーアワーを休止しました。
この流れを作っているのは、人手不足による人件費の高騰や、従業員の働き方の改善を試みる企業側の意識の高まりです。大戸屋は、「少子高齢化で労働人口が減少していくことを考えると、従業員が働きやすい環境を整えることは重要」と言い、テンアライドは、「年末年始は忙しく従業員が疲弊しがち。特別な手当も支給するため人件費も上がり利益は小さい。思い切って休業を決めた」と説明します。
私は例年、年末年始は地方の街で過ごします。31日は、丸源ラーメンも、餃子の王将も休み。郊外店の多くが広い駐車場を持ち、大看板に「年中無休」とあります。「おっ、空いている」とばかり、駐車場に乗り入れて下車し、休業と知ってまた車に乗り込む家族が次々と。せめて「年中無休」の文字を隠すぐらいの配慮があってもと思いました。
東の食べ物、西の食べ物
東の人はよく食べるが、西の人は余り食べない。そんな印象がある納豆ですが、近年、関西で、納豆の消費量が上昇しているそうです。総務省の家計調査によると、2016年の年間消費量は12年比で48%も増加。わずか4年間5割近く増えたことになります。
その理由は、商品開発にあります。納豆の発酵を抑えて匂いを控えたり、たれのだしをカツオベースにしたり。西日本の人にも食べやすくしたからです。そう言えば、「日清のどん兵衛 きつねうどん」は、東日本向けはカツオだしを基本に濃口しょうゆを、西日本向けは昆布だしを基本に薄口しょうゆを使っているとか。そしてその境界線は、岐阜県関ヶ原だそうです。
うどんと言えば、西日本の食べ物。そばとの境界線は、関ケ原、愛知、富山と諸説あります。とは言え、西日本の中でも、うどんはひとつではありません。東日本で広く知られている「讃岐うどん」は強いコシとツルツルののど越しがモットー。でも「福岡のうどん」はとっても軟らかでコシがなく、『腰抜けうどん』とも呼ばれています。また「伊勢うどん」は、麺は極太で柔らかく、モチモチの歯応え。たまり醤油にカツオ節やいりこ、昆布等のだしを加えた、黒く濃厚なたれをからめながらいただきます。具は、刻みねぎだけ。お伊勢参りに来た忙しい商人たちが、さっと食べられるように柔らかな麺になったのだとか。熱い汁をかけずたれでシンプルに仕上げているのも、そのためです。江戸の職人たちが盛りそばを愛したのも、同じ理由。今風に言うなら、ファストマーケティングです。