昭和の洋菓子。今と異なる「見た目」の印象

 食べ物の思い出は、味もさることながら「見た目」の印象がとても強く残っているものだと思います。
 昭和の高度経済成長の波に乗って育った私は、豊かさとともに大衆化した新しい食べ物に次々に触れて育ちました。特にスイーツ、中でも洋菓子は、“ゆとり”の象徴のような存在で、憧れの食べ物でした。
 料理好きの母は、洋菓子をよく作ってくれました。例えば、プリン。オーブンで蒸し焼きにしたプリンはどっしりとしていて、表面にいくつもの小さな窪みがあり、ゼラチンで冷やし固めたり、プリンの素で作るプリンのような軽やかさはなく、ツルンとした滑らかな見た目ではありません。バースデーケーキは、生クリームが手に入りづらかったため、バタークリームを塗ったホールケーキです。色粉でピンクやグリーンに色付けし、バラや葉っぱの形に絞り出したもので飾られています。真っ白なショートケーキとは異なり、黄色っぽいのが特徴。高級バター人気を受けて、今密かにブームになっているようです。お菓子を作り始めた頃よく作ったのが、マドレーヌ。型と敷き紙を使うと、売り物と同じ見た目になるのが自慢でした。クッキーもよく焼きました。ドーナツ型で抜いてドレンチェリーやアンゼリカをのせ、「泉屋」の“リングターツ”を真似ます。秋は、モンブラン。家庭ではもちろん、ケーキ屋でもさつま芋で作っていましたから、クリームは黄色っぽく、麺状に絞り出した見た目がお約束。昨今のように栗をふんだんに使った茶色のモンブランは、私にとっては“贅沢”の象徴のような存在です。しかも角錐や円錐に整形されたものも多く、昭和のそれとは大分印象が異なります。

北海道発スープカレー店「Suage」

 東京オリンピックは来年に延期されましたが、東京にたくさんの人が集まることを期待して、既に地方のさまざまな飲食店が東京初出店をしています。その中のひとつが北海道の人気スープカレー店、「Suage」。2019年5月に東京1号店を渋谷に、同年10月に丸の内に2号店をオープンしています。北海道でスープカレーが親しまれているのは、寒い冬、辛くて温かい身体がホカホカする汁物が好まれるからでしょうか。
 「Suage」が東京に進出して以来、一度食べてみたいと思っていました。というのも、カレー風味のスープやスープカレーをいただいて、私は今まで一度もおいしいと思ったことがなく。北海道で人気の店のスープカレーなら、きっと私の印象を変えてくれると思っていたからです。先週、チャンス到来。仕事の帰りに丸の内店に行きました。
 まず具材の違うカレーの中からひとつを選びます。次に、スープを決めます。鶏ガラとトマトをベースに何種類ものスパイスを加えた定番の「Suageスープ」、エビエキスでコクとうま味をプラスした「エビ赤」、イカ墨を加えた「イカ黒」、マイルドな「ココナッツ白」からひとつをチョイス。その後、辛さの度合いを選択し、加えたいトッピングがあれば追加します。店名の「Suage」の意味がトッピングで分かります。かぼちゃやブロッコリー、オクラなどの野菜はすべて素揚げされているのです。いずれも大ぶりで、食べた感は十分です。丸の内店の価格は1500円近辺。カレーとしてはいい値段です。
 で、私の印象は。今まで食べたカレー風味のスープやスープカレーと比べると、うま味が強く、スパイスがしっかり利いていて。さらにトッピングが魅力でリピートに繋がるのだろうこと、よく理解できます。きっと食べ慣れると、無性に食べたくなるのかもしれません。が、私はもちろん、まだその域には達していません。

どうしても気になってしまう飲食店の接客

 新型コロナウイルス発生以降、会食を避けていましたが、先週久しぶりに友人と外食をしました。オープンエアが安心なのでテラス席を予約し、女性3人。それこそ、姦しいひととき(?) でした。
 そこでのひとコマ。テーブル担当は若い可愛らしいお嬢さんでした。友人の一人はピーマンアレルギーです。フムスをオーダーするとき、「ピーマンがだめなの。入ってない?」と聞きました。その後、追加のオーダーで「お勧めは何?」と聞くと「ラザニアです」との応え。ではと、ラザニアをオーダー。ピーマンが入っていました。おしゃべりに夢中で注意を怠った私たちもいけないのですが、彼女もピーマンアレルギーのことはすでに聞いているのですから、ピーマンが入っている料理は勧めるべきではないし、私たちが選んだら「ピーマンが入っていますよ」と一言添えてはと思い、彼女にそれをやさしく伝えました。が、そもそも彼女は、自分が勧めた料理のことは名前と視覚による情報しか持ち合わせてはいないのではと後になって考えました。マネージャーから動きや段取りは教えられていても、接客の本当の意味については何も教えられていないのではと。
 今回だけではありません。飲食店でそれを強く感じるのは、空いた皿を下げに来られた時です。食べ終わりそうなタイミングを注視しているかのような素早さで、皿を下げに来ます。しかも同伴者がまだ食べているのに。皿は空いていても、そのテーブルはまだ食事中です。客を急かすような不快な行動ですが、空いた皿をすぐに下げることが、気が付く良いサービスと勘違いしているのではないかと思います。
 飲食店の従業員にはアルバイトの大学生も多く、慣れていない、教える時間がない、短期だからなどの理由で仕方ないとも思うのですが、やはり気になり、“やさしく笑顔で”を心がけて諭してしまうのです。

近隣にあるとうれしい魚屋さん

 自粛要請で飲食店が休業し、行き場をなくした鮮魚。それを有効利用する動きがありました。いつもなら魚を仕入れて料理にして提供する居酒屋が、仕入れたばかりの魚を店頭で売り始めたのです。休業中、魚を売れば少しは売り上げになりますが、料理をしてなんぼの商売。そのまま売っても売り上げが戻るわけではありません。魚卸のためです。売り先がなくなった卸のために、少しでも魚を捌こうという気持ちです。そんな気持ちに呼応してか、近隣の主婦には大好評。スーパーより新鮮な魚が手に入る。しかもその場でおろしてくれる。商店街から魚屋が消えて久しく、人気になるのも分かります。
 通常営業に戻った現在も、魚を売っている居酒屋があります。鮮魚居酒屋「魚まみれ眞吉 原宿店」です。“近くに魚屋がないから助かる”と喜ばれ、連日ほぼ完売なのだそう。無料で三枚におろすほか、500円の手間賃で焼き魚や煮魚、刺身などにもしてくれます。魚の販売が呼び水になり、テイクアウトや本業の居酒屋も好調といいます。
 先週、代官山にユニークな魚屋「魚屋かどはち」がオープンしました。鮮魚、刺身、寿司、和洋中にアレンジされた魚料理と魚弁当。ウリは、マグロ、ブリ、タイなどから好みの切り身を選んで刺身の盛り合わせを作ることができる「刺身ブュッフェ」と、地下の仕込み室でオーダーごとに作る「でき立て弁当」です。目の前に代官山駅と高層マンション。近隣の皆さん、さぞやお喜びのことと思います。

10月1日は「しょうゆの日」

 10月1日は「しょうゆの日」です。和食に欠かせない調味料であり、みそや納豆と並ぶ日本を代表する大豆発酵食品です。
 中国をルーツに、弥生時代からその歴史が始まっていると言われるだけあって、地域に根差した文化があるのも、おもしろいところです。とは言え、現在では出荷量の8割以上が一般に「しょうゆ」と呼ばれる「濃口しょうゆ」。色よく仕上げたい料理に欠かせない薄口しょうゆが1割強です。「薄口」とは色が薄いという意味で、味が薄い、塩気が少ないわけではありません。反対に、色を薄くするために塩を多く添加しています。
 夫の実家がある愛知県では、「たまりじょうゆ」も一般的です。「さしみじょうゆ」とも呼ばれ、とろりとしていて濃厚なうま味と強めの香りがあります。岐阜県、三重県を含めた東海3県が「たまりじょうゆ」の産地です。その起源は諸説あるのでしょうが、私が聞いたのは、徳川家康の家来がみそを作る過程でみその上に溜まった液をなめたところおいしく、それを「たまりじょうゆ」として広げたというもの。戦に忙しい時代、製造過程で攪拌しなくてはならないしょうゆよりも手間がかからず、重宝したのでしょう。愛知県碧南市は、薄口しょうゆよりもさらに色が薄い「白しょうゆ」の産地でもあります。
 九州のしょうゆが甘いことは皆さんご存知だと思います。私も、初めて口にしたときはびっくりしました。マグロやカツオに代表される赤身文化とフグやカレイに代表される白身文化。それぞれに合うしょうゆが広がったと聞いています。

秋の味覚、不漁と天候不順で。一方、松茸は・・・

 9月に入り、大分過ごしやすくなりましたね。夜には虫の音が聞こえ、秋を感じます。
 今年、「サンマ」は驚異的不漁。8月の漁獲量は、過去最低だった昨年の2割程度でした。サンマの水揚げ量が日本一の北海道・根室の花咲港では、初競りで付いた値段は、かつてない最高値のキロ5,508円。産地の北海道東部でも1尾300円前後で売られているといいます。一方、秋を待たずして豊作だったのが、「松茸」。6~7月の記録的な降水量と涼しい気候のおかげで、7月末から採れ始めました。今秋は量が多く、価格も安めのようです。ハロウインが近くなると、惣菜やスイーツで大量に使われる「かぼちゃ」。産地の北海道では長雨と日照不足の影響で生育が悪く、収穫量も少なめ。8割高で推移しています。秋スイーツの材料として女性に大人気の「栗」は、開花時期の7月が低温、夏は猛暑で虫が大量発生。イガは大きいのですが、虫喰い状態で売り物にならないものが例年より多くなっています。同じく女性が好きな「さつま芋」。今年は安定しているようです。
 さつま芋は、土地がやせていても、素人でも作りやすいと言われる優良野菜。私も学生のときに必須科目の生物学で畑を一区画与えられ、さつま芋を植えました。今思えばもったいない話ですが、当時はまったく関心がなく、雑草だらけ。それでもちゃんと収穫できました。そんなたくましいさつま芋、安値安定のイメージがありますが、近年は焼き芋人気で価格は上がっています。

コロナのおかげ?! 動画で見られるプロの技

 新型コロナウイルスの感染対策が続く中、料理人たちが料理動画の配信を積極的に展開しています。
 緊急事態宣言が発令されたとき、NHKが「仕事の流儀」の緊急企画として「プロのおうちごはん」と題する番組を放映していました。日本各地のプロの料理人たちが「自宅でできる簡単・絶品レシピ」を自撮りで紹介する番組で、プロならではの“知恵”と“技術”が詰まっていました。
 そんな動画を、今、You Tubeでたくさん見ることができます。家庭でできるよう、材料も作り方もシンプル。でもプロのコツはしっかり教えてくれているので、挑戦欲をかき立てられるという意味では、料理に余り自信のない男性にもぴったりです。
 家庭料理だけでなく、店で提供しているメニューのレシピを公開する料理人もいます。自慢料理のレシピは、店の財産。門外不出とも言えるのではないかと思いますが、レシピを公開した方が店にとってのメリットは大きいと考える人が増えているそうです。理由は、レシピを試した人から感想が届き、それを参考に作り方を改良することができたり、紹介した料理がおいしいとネット上で評判になれば料理人や店が有名になり、「店で食べてみたい」と思う人が出てきたりもするから。
 もともと個性豊かな人が多い料理人。料理だけでなく、シェフのキャラクターも楽しめるのは、動画ならではです。馴染みのシェフたちの動画には、それぞれに人柄が滲み出ていて。お店に行かれない分、余計に懐かしさがこみ上げてきました。

コロナ禍の今冬、鍋トレンドは個鍋?!

 飲食店のメニュー写真投稿サイトを運営するSARAHが、約70万の投稿データを元に生活者の外食嗜好を分析するサービス「Food Data Bank」で6月の投稿数を分析した結果があります。
 それによると、鉄板や大皿で提供され、客同士が席で分け合うことが多いメニューが敬遠される一方、ラーメンやカレー、うどん、パスタ、ハンバーグなど、1人前ずつ提供される料理の投稿は多くなっているとか。そう言えば、高島屋の来年のおせち商戦。1人用や少人数向けのタイプを例年の1.5 倍に増やす計画なのだそうです。帰省しないでひとりでお正月を過ごす人が多くなるとの予想もありますが、コロナ禍で取り分けて食べるスタイルを敬遠する向きもあるとか。
 ならば、今冬の鍋市場はどうなってしまうのでしょうか。もちろん、忘・新年会などできる状況ではないと考える生活者も多いでしょうし、密になりやすいので宴会料理として選びづらい状況でもあり、外食市場における鍋料理の出現率はかなり低くなると容易に予想できます。
 一方、ここ1年、「しゃぶしゃぶつかだ・渋谷スクランブルスクエア店」(東京・渋谷)や「ひとりしゃぶしゃぶ 七代目 松五郎」(同・赤坂)など、ひとりしゃぶしゃぶの店が大人気です。数年前、デパ地下では「ひとり鍋」がよく売れました。家族の好みに合わせてひとり鍋を複数個購入する客が増えたのです。今冬の鍋トレンドは、やはり“個鍋”でしょうか。

コロナで「ぬか漬け」始めました

 新型コロナウイルス感染予防で巣ごもりが続く中、東京モンは迷惑をかけてはと遠出も憚られ、お盆も夏休みもなかったという人、多いのでは。私もそうです。こんなに長く東京に居続けたことはありません。コロナが終息しない限り海外旅行はおろか国内旅行も叶わないのなら、いっそ、家に居続けなくてはできないことをやろう。そう思い、再びぬか床に挑戦しています。
 同じことを思う人は多いようで、コロナでぬかが品薄になるほど売れました。マスクを手作りするためにミシンに挑戦する人がいたり、節約を兼ねて家庭菜園を始める人がいたり。家にいる時間を、手を動かすことで充実させたい、豊かにしたいと思う生活者は少なくないようです。
 ぬかに加えるものは、粗塩と水は必須。うま味を与えるカツオ節や昆布、味を引き締め、防腐剤としての役割もしてくれる赤唐辛子、風味をよくする陳皮(干したみかんの皮)や山椒の実など、他に混ぜ込むものは好みや都合。今は、水を入れるだけですぐに本漬けができると謳うぬか漬けの素も販売されています。そこから自分の好みの風味に育てていくのもいいと思います。
 さて、ウチのぬか床はそろそろ本漬け。もちろんまだまだ好みの味にはほど遠く、育て甲斐があります。初めに“再び”と書きましたが、そう、私がぬか床を作るのは覚えているだけでも3回目。いつも飽きて放ったらかしにしてだめにしてしまいます。あのまま手をかけ続けていたら、どんなにかおいしいぬか漬けが食べられたことか・・・。思わないでもありませんが、過去を振り返っていても仕方ありません。今度こそ、“おばあちゃんのぬか漬け”を目指して頑張ります!

具もたれもバラエティ豊かに。深化を続ける冷やし中華

 暑い日が続くと食べたくなるのが、冷たい麺。ランチに冷やし中華をいただくことが多くなりました。
 冷やし中華の具は錦糸卵、きゅうり、ハムやチャーシュー、蒸し鶏などのタンパク質食品。これが定番。現在は、トマトがかなりの確率でのっていますが、昭和の時代には一般的ではありませんでした。反対に、タンパク質食品として魚肉ソーセージも使われていたと記憶しています。紅しょうがと和辛子、炒りごまは必須。たれはごま油入りの酢じょうゆと決まっていました。
 外食で、家庭で、それぞれに深化した冷やし中華。具もバラエティ豊かです。ツナ、エビ、クラゲ、うなぎ、ゆで卵、カニカマ、もやし、貝割菜、コーン、わかめ、ゴーヤ、オクラ、みょうが、アボカド、すいかなどなど、合わないものはないかも。味付けも、ごまだれやマヨネーズはもはや定番。ナンプラーやスイートチリソースでエスニックに、トマトスープでイタリアンに仕上げることもできます。
 「冷やし中華始めました」。店先に貼られる短冊に書かれたこの言葉は、初夏の風物詩になっています。ところが、これに反旗を翻したのが“全日本冷し中華愛好会”。生ビールやアイスクリームは冬でも売っているのに、冷やし中華が夏しか食べられないのは差別だ!という主張を基に、ジャズピアニストの山下洋輔氏、漫画家の故赤塚不二夫氏や作家の筒井康隆氏、タモリ氏などがメンバーになって1975年に発足しました。会報『冷し中華』を発行するなど活動を続けていたようですが、今でも、大半の店が夏しか冷やし中華を提供しない現実をみると、道半ばにして・・・ということでしょうか。