三菱商事とKDDIがローソンの株式を50%ずつ保有する「共同経営」体制へ移行すると発表。KDDIの思惑を取り上げる情報が多い中、KDDIの全面協力を得るローソンの今後の動きによっては、コンビニ業界の戦略に大きな変革が起きるのではないかという意見もあります。徹底した効率化と圧倒的な商品開発力で揺るぎないものになっていたセブンイレブンの地位が、携帯キャリアの約30%のシェアを占めるKDDIが持つ顧客のビッグデータをAIによる分析で有効活用すれば、ローソンに取って代わられる可能性もあるというものです。
“ビッグデータ”。懐かしい単語です。「2013年 食市場のトレンド」でキーワードに挙げました。当時、コンビニ業界は、ローソンの「Ponta(ポンタ)」やカルチュア・コンビニエンス・クラブの「Tポイント」などのポイントカードや電子マネーの普及によって、年間延べ150億人分の購買履歴が収集されていました。それまでは、店員がレジに入力した顧客の性別や年代といった大まかな情報しか得られなかったものが、詳細な個人情報を登録するポイントカードなどにより、あらゆるマーケティングの材料に活用できる“宝の情報”に生まれ変わったのです。
が当時、データを集めに集めても、それを分析するのがひと苦労。そこから有効な戦略を構築できるのかというそもそも論も起こっていました。そこで、ローソンやサンリオなど流通、サービス企業が投資ファンドを立ち上げ、米国・シリコンバレーのIT企業に出資。日本企業が持つ膨大な販売情報や顧客情報といったビッグデータを最先端のデータ解析技術と結び付け、効果的な商品開発や販売促進に繋げる計画を立ち上げました。さらに三菱総合研究所やTOPPANホールディングス(当時は凸版印刷)は、企業に向けてビッグデータの活用支援サービスをスタートさせています。
ビッグデータのAIによる分析のスピード、正確性、多面性、重層性などは、AIが存在していなかった当時とは比較にならないでしょう。が、データ活用の前提になるのは、仮説の立て方と分析の道筋、結果からの導きと具現力。そこに人間の経験と知恵と想像力が不可欠であることは変わらないと思います。