コロナで「ぬか漬け」始めました

 新型コロナウイルス感染予防で巣ごもりが続く中、東京モンは迷惑をかけてはと遠出も憚られ、お盆も夏休みもなかったという人、多いのでは。私もそうです。こんなに長く東京に居続けたことはありません。コロナが終息しない限り海外旅行はおろか国内旅行も叶わないのなら、いっそ、家に居続けなくてはできないことをやろう。そう思い、再びぬか床に挑戦しています。
 同じことを思う人は多いようで、コロナでぬかが品薄になるほど売れました。マスクを手作りするためにミシンに挑戦する人がいたり、節約を兼ねて家庭菜園を始める人がいたり。家にいる時間を、手を動かすことで充実させたい、豊かにしたいと思う生活者は少なくないようです。
 ぬかに加えるものは、粗塩と水は必須。うま味を与えるカツオ節や昆布、味を引き締め、防腐剤としての役割もしてくれる赤唐辛子、風味をよくする陳皮(干したみかんの皮)や山椒の実など、他に混ぜ込むものは好みや都合。今は、水を入れるだけですぐに本漬けができると謳うぬか漬けの素も販売されています。そこから自分の好みの風味に育てていくのもいいと思います。
 さて、ウチのぬか床はそろそろ本漬け。もちろんまだまだ好みの味にはほど遠く、育て甲斐があります。初めに“再び”と書きましたが、そう、私がぬか床を作るのは覚えているだけでも3回目。いつも飽きて放ったらかしにしてだめにしてしまいます。あのまま手をかけ続けていたら、どんなにかおいしいぬか漬けが食べられたことか・・・。思わないでもありませんが、過去を振り返っていても仕方ありません。今度こそ、“おばあちゃんのぬか漬け”を目指して頑張ります!

具もたれもバラエティ豊かに。深化を続ける冷やし中華

 暑い日が続くと食べたくなるのが、冷たい麺。ランチに冷やし中華をいただくことが多くなりました。
 冷やし中華の具は錦糸卵、きゅうり、ハムやチャーシュー、蒸し鶏などのタンパク質食品。これが定番。現在は、トマトがかなりの確率でのっていますが、昭和の時代には一般的ではありませんでした。反対に、タンパク質食品として魚肉ソーセージも使われていたと記憶しています。紅しょうがと和辛子、炒りごまは必須。たれはごま油入りの酢じょうゆと決まっていました。
 外食で、家庭で、それぞれに深化した冷やし中華。具もバラエティ豊かです。ツナ、エビ、クラゲ、うなぎ、ゆで卵、カニカマ、もやし、貝割菜、コーン、わかめ、ゴーヤ、オクラ、みょうが、アボカド、すいかなどなど、合わないものはないかも。味付けも、ごまだれやマヨネーズはもはや定番。ナンプラーやスイートチリソースでエスニックに、トマトスープでイタリアンに仕上げることもできます。
 「冷やし中華始めました」。店先に貼られる短冊に書かれたこの言葉は、初夏の風物詩になっています。ところが、これに反旗を翻したのが“全日本冷し中華愛好会”。生ビールやアイスクリームは冬でも売っているのに、冷やし中華が夏しか食べられないのは差別だ!という主張を基に、ジャズピアニストの山下洋輔氏、漫画家の故赤塚不二夫氏や作家の筒井康隆氏、タモリ氏などがメンバーになって1975年に発足しました。会報『冷し中華』を発行するなど活動を続けていたようですが、今でも、大半の店が夏しか冷やし中華を提供しない現実をみると、道半ばにして・・・ということでしょうか。

リアルからオンラインへ。講演が一変

 毎年、3月から2ヵ月ほどの期間で行っている「食市場のトレンド」講演。今年は、新型コロナウイルス発生、自粛要請の影響を受けて、すべての講演がキャンセルまたは延期になりました。
 5月に入り、“オンライン講演を”などという声も聞かれ始めましたが、聴講してくださる皆さんのお顔を見ながらのリアル講演がしたいという気持ちが強く、お断りしていました。そのうち、できるようになると思っていたのです。ところが、コロナ終息の兆しは一向に見えず。仕方がないので、“えいっ!”とばかり、オンライン講演実施のための準備に入りました。
 Zoom、Microsoft Teams、Google Meet。それって何?から始まり、デスクトップのパソコンだからカメラが要ると知り、声が反響するとご指摘をいただきマイクを購入、Zoomのウェビナーを契約しました。人に聞いたり、試してみたり。準備にかかった期間は2週間ほど。6月にはオンライン講演を始めました。
 それでも、聞く人が誰もいない状態で話すのはツライと思い、講演主催の会社様に伺って少人数を対象に話している姿をオンライン配信させていただくなどしていましたが、来訪者禁止の会社様もあり、とうとう自室で一人配信することに。初めての時は、何て話しづらいのだろうと思いましたが、今では、まったく苦ではありません。
 来年計画されているイベントでの講演依頼が既に入っていますが、すべてオンラインです。コロナによる「新しい生活様式」。私の場合は、まさに講演が一変しました。

日照不足の次は、猛暑。農畜産物には過酷な夏です

 今年も、ものすごく暑い夏が始まりました。梅雨が長引いて青空が恋しかったのに、既に暑さにうんざりしています。
 でも、よいこともあります。日照不足や長雨の影響で心配されていた野菜の価格が、今月の後半には平年並みになるそうです。農林水産省によると、東京都中央卸売市場での主な野菜の価格は、3日の時点で平年と比べて、レタスが2.7倍、じゃが芋や人参が2倍になっているほか、ピーマンやきゅうり、なすは6割から7割高くなっているとか。葉物野菜は天候の影響を受けやすい印象がありますが、ピーマンやきゅうり、なすといった夏野菜は、安値安定の安心野菜と思っていたので、ちょっとびっくりです。
 今後、猛暑が続くと、レタスやキャベツ、ほうれん草といった葉野菜が値上がりします。それから、かつては暑さで乳牛の搾乳量が減ったり、鶏も夏バテで卵を産まなくなったり、あまりの暑さで豚が倒れたり。人間だけでなく、家畜のための快適な環境作りも必要になります。
 巣ごもりが続き、生活者は健康不安を抱えています。長引く自炊生活の中で、野菜のニーズが高まっています。野菜、特に葉野菜や果菜は、先買いして貯蔵しておくことはできません。猛烈な暑さや強烈な日差しに強い野菜の開発を期待するとともに、野菜加工品を上手に利用するといった生鮮にこだわらない摂取方法を取り入れるなど、意識の変革が必要なときに来ているのかもしれません。

コロナで進むワンストップコンビニ

 新型コロナウイルスで自粛要請が発令されて以降、コンビニ各社は売り上げを落としました。が、一方で、客単価は上がりました。その理由はよく分かります。感染予防を考えたら、遠くて混み混みのスーパーより、近くて空き空きのコンビニに行こうと思うのは当たり前です。特に高齢者は。
 しかも最近のコンビニは、弁当・惣菜、飲料や菓子だけで集客しているのではありません。使用頻度が高い野菜や果物を売り、人気ラーメン店とコラボしたオリジナルのカップ麺を次々に開発し、テレワークで在宅飲酒の機会が増えた客の利用を見込んで酒類を充実させ、家で料理を作ることが多くなった生活者のために基礎調味料や合わせ調味料の商品群をスーパー並みに拡充しています。
 以前、私がコンビニで酒や調味料を購入するのは、「しまった買い置きがない!」という緊急避難的な場合に限られていました。スーパーより値段が高く、しかも小さなサイズなので、割高感、損している感がかなり強かったのです。でも最近は、通常のサイズがあり、しかも安価なPB商品も揃っています。NB商品を選んだとしても、コンビニだから高いという感覚は薄れています。私がそんな感覚になっていったことには、PBの納豆がかなり貢献しています。卵10個入りも、スーパーの通常価格より安いですし、大きさが揃っていない分、L玉が案外の確率で入っていて、得した気分にもなるのです。
 春、通勤路にローソンがオープンしました。向かいには、大手飲料メーカーの本社。その集客を見込んでいた矢先のコロナです。近隣にはマンションも多いためか、戦略を切り替えて弁当・惣菜の種類を絞り、野菜や日配品に力を入れていて、近隣住民にはありがたがられているようです。

近場で楽しむ旅の食体験

 東京都を除外して“go to トラベル”キャンペーンが始まりました。4連休初日の23日、東京だけでなく、大阪、愛知でも、感染者がかなり増えましたから、首長から言われるまでもなく、「家から出ないようにしよう」と思っている人は多かったのではないかと思います。
 新型コロナウイルスの感染防止で自粛要請が出て以来、遠出をしていない生活者に向けて、“食”で旅行気分が味わえる商品や飲食店が登場しています。
 ファミリーマートは東京都と神奈川県の約1000店舗で7/21から期間限定で、“身近なコンビニで気軽に旅気分”をコンセプトに、「気軽に旅気分!北海道&沖縄」フェアを開催しています。普段は地区限定で販売されている売れ筋商品やみやげ商品25品をラインアップしていて、特に沖縄カテゴリーでは、「ファミリーマートコレクション 沖縄風じゅーしぃの素」や「ぬちまーすランチョンミート」など、全国発売の要望もある沖縄ファミマ限定のPB商品を取り揃えています。
 一方、外食市場では、ダイヤモンドダイニングが7/9、東京・上野に、47都道府県を代表する郷土料理や食材を使った料理を取り揃えたビュッフェレストラン「大地の贈り物」をオープンさせました。
 楽天市場では、日本各地の特産品を詰め合わせた「ふっこう復袋」が人気ですし、観光地の高級旅館ならではの名物食品を直販するECサイトは、自宅でちょっと贅沢な旅気分味わいたいというニーズをとらえています。
 旅の楽しみに食体験は欠かせません。このまま感染者が増え続ければ、夏休みも我慢が必要になるかもしれません。近場で旅気分。ニーズはまだまだ続きそうです。

盛り上がるポテトサラダ論争。作れば分かる面倒臭さ

  “ポテトサラダ論争”が、 SNSやテレビのワイドショーを賑わせています。発端は、スーパーの惣菜売り場でポテトサラダを買おうとした子ども連れの女性が、高齢の男性に「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」と言われ、うつむいてしまったという出来事を綴ったツイッター。これに対し、「料理をしたことがないから言える言葉」「自分で作ってみたら分かる」「簡単そうな料理こそ手間がかかる」という反論の声が上がり、ついには、「どんな料理が面倒だと思うか」など、論点の裾野が拡がっています。
 料理というものは押し並べてそうですが、少しでもおいしさの高みを目指そうとすると手間が増えるし、面倒なことが多くなります。ポテトサラダも同様。じゃが芋を皮ごとゆでて熱いうちに潰して下味を付けるから、じゃが芋のコクと甘味、ホクホクのおいしさが味わえるのです。でも、丸ごとのじゃが芋をちょうどよいゆで加減で火を通すには経験が必要ですし、ゆで立ての熱々のじゃが芋の皮を手でむくのは大変です。簡単に作ろうと思えば、皮をむいてカットしたじゃが芋をゆでればいいのですが、それではどうしても水っぽくなります。
 メインディッシュに添えられたり、居酒屋でお通しとして出てきたり、外食市場においてポテトサラダの地位は決して高いものではありません。ポテトサラダとはそういうものだと思っている方は、「ポテトサラダぐらい・・・」という言葉がついて出るのだと思います。
 この夏、在宅勤務で1日3回食事を作っているパートナーに、「そうめん“で”いいよ」「冷やし中華“で”いいよ」などとは決して言いませんように。両方とも、面倒な料理に挙がっていますから。

改めて認識させられたセブンイレブンの技術力の高さ

 7/11、TBSのジョブチューン「セブン-イレブンの中華メニューを超一流中華料理人がジャッジ!」を見ました。セブン-イレブン開発担当者50名が選ぶイチ押し中華メニュー TOP10を、7人の有名中華料理店のシェフが合格、不合格をジャッジするというもの。7人の内4人が合格札を出せば、その商品は合格となります。
 満場一致で合格したのが、「Wガラスープが自慢!6種具材のタンメン(398円)」と「1/2日分の野菜!9種具材の海鮮中華丼(460円)」の2点。両方に共通する評価は、野菜のシャキシャキとした歯応えと、前者はスープの、後者はあんのうま味の奥深さ。満場一致ではありませんが、過半数のシェフが合格を出したのが、「6種具材のこだわり夏の冷やし中華(460円)」「大盛ご飯 5種唐辛子!四川風麻婆丼(460円)」「春巻き/豚肉と筍(88円)」「7プレミアム極上炒飯(298円)」の4点。10点中6点合格で、なんとか面目を保つことができました。(すべて税抜き価格)
 私の想像ですが、シェフたちはおそらく、コンビニ商品としてではなく、料理としての評価をして欲しいと制作サイドから言われていたと思います。もしそうであれば、この評価は素晴らしい結果だと思います。セブンイレブンの技術力の高さを改めて認識させられました。
 番外編としてジャッジされたのが、私のお気に入り「お肉の旨味!ジューシー焼き餃子(230円)」。開発者は皮のもちもち感を最も重視したそうですが、これに対しシェフは「焼きのカリッと感があってのもちもち」と評価は全員不合格。確かにそうなのですが、電子レンジで温め直す商品には難しく、だから敢えてそこは狙わずもちもち感で勝負した商品なのになあ・・・。とついつい開発者に感情移入してしまうのです。

飲食店に今必要なのは食品会社と卸会社の積極的な支援

 自粛解除後、普通営業に戻った飲食店に、客足は戻っていません。店内での新型コロナウイルスの感染を恐れている生活者は多く、飲食店にとってはまだまだ苦悩の日々が続きます。
 そんな飲食店をこれまで助けてきたのは、料金前払い予約アプリだったり、飲食店の売れ残りを安く買い取る‟フードシェア”サービスだったり。居酒屋で余った生ビールを無償でクラフトジンに加工して返してくれる酒造メーカーや、近隣の飲食店が作った弁当を販売してくれるスーパーやコンビニもありました。とにかく飲食店の経営維持を最優先させた支援でした。
 思いも寄らない環境の中で再スタートをしなくてはならない飲食店に今必要なのは、ウイズコロナ下でも持続可能な営業形態への転換です。それを支援するために、食品会社や卸会社の積極的なアプローチが求められています。
 外食の頻度を減らした生活者に選ばれるために、飲食店には今まで以上に差別化が求められるでしょう。驚きや楽しさ、トレンド感や珍しさが大切な要素になります。その意味では、営業活動の中でもメニュー提案の重要性は一段と増すものと思われます。また中食と外食の違いをしっかりと伝え、中食に合った料理の作り方、料理の構成、業務用食材の選び方などのレクチャーも今なら積極的に受け入れてくれるでしょう。
 ほとんどの飲食店が、市場情報と具体的な手法を求めています。この苦境を、“飲食店と共に外食市場を再び盛り上げるチャンスが来た”ととらえ、会社の財産とも言える、技術と経験、情報を総動員して、情熱を持って取り組んでいただきたいと思います。応援しています。

学校再開。でもにぎやかな給食時間は戻らず

 小学校が再開され、給食も元に戻りつつあります。休校中、給食が食べられなくなった子どもたちの栄養格差が心配されていましたから、給食の再開は喜ばしいことですが、それでもまだ地域格差があるようです。
 例えば、兵庫県淡路市は7月から月に1度、ハモや淡路ビーフなど地元産の高級食材を使った「夢と希望のふるさと給食」を、全小中学校で提供すると発表しました。地場産業を支援するとともに、子どもたちが故郷に目を向ける機会にしたいといいます。1食分500円を想定していて、給食費との差額は国が新型コロナ対策のために成立させた第2次補正予算などで賄います。
 一方、新型コロナウイルス感染拡大を懸念して、おにぎり、パンとジャム、デザート、牛乳などパッケージされた食品のみを毎日提供している地域もあります。保護者からは、高学年の子どもたちには量が少ない、栄養が足りないといったクレームも出ているようです。給食風景も様変わりしています。以前は机を向かい合わせにしておしゃべりしながら食べていたのが、今は全員が前を向き、静かにいただきます。
 好きな献立、嫌いな料理、おいしいおいしくないは人それぞれですが、多くの人が懐かしく思うのが、友だちと一緒に食べた給食です。1日も早く、学校ににぎやかな給食時間が戻ってくることを願ってやみません。