春キャベツとアンチョビのパスタ

 春キャベツが出回っています。淡緑色と淡黄色のコントラスト、縮れたようなウェーブがかかっていて、空気を含んだ尖がり頭。私の、春キャベツのイメージです。葉は軟らかでみずみずしくて、“若い!”という言葉がぴったり。私はずっと昔、春の早い時期に収穫するから葉が軟らかく、時間が経つにつれて堅くなると思っていました。若葉がそうだからです。でも考えれば分かること。キャベツは木の葉ではないし、畑でじっと収穫の順番を待っているわけでもありません。秋に種をまいて3~5月に収穫するのが春キャベツ、夏に種をまいて11~3月に食べ頃を迎えるのが冬キャベツです。この間に、群馬県嬬恋村など冷涼な高原で栽培される高原キャベツもあります。

 春キャベツは軟らかく水分が多いので、サラダや和え物、サンドイッチの具など生でおいしくいただけますし、火の通りも早いのでスープ煮にするなど手軽に楽しめます。でも春キャベツと言えば、私の場合はやっぱり「キャベツとアンチョビのパスタ」です。

 30年前、東京・西麻布に「リストランテ ダノイ」がオープンしました。小野清彦シェフが作る料理はどれもおいしくて温かくて、すぐに常連に。そこでこの料理をいただいたのです。今ではレシピサイトや料理番組で紹介されていますが、当時はダノイを代表する名物メニューでした。キャベツは通年野菜ですから、いつ行っても食べられるのですが、春キャベツが出回ると、縮れたような軟らかな葉がパスタにからまって、イタリアンらしいビジュアルになるのです。もちろん、おいしさも格別です。ダノイは今はなく、自分で作らなくてはなりません。スーパーで春キャベツを見つけると、その足でアンチョビ売り場に向かいます。