食卓においても市民権を得た“左利き”

 私が子供の頃、右利きが当たり前でした。左利きは1クラスに1人いるかいないか。特に女子は、幼少期に右利きに矯正されるのが当たり前だったように思います。
 ハサミも包丁も右利き仕様。洋包丁は両刃なので問題ありませんが、和包丁は片刃なので左利きでは使えません。また食卓では、右利きの人と左利きの人が並んで食事をすると肘がぶつかることもあります。皆一緒、横並びを良しとしてきた日本において、それは異様な光景に映りました。
 かつて料理雑誌の編集をしていた頃、料理に添える箸は右利き仕様が鉄則でした。万が一、箸先を右にして撮影しようものなら、大目玉をくらって再撮を命じられました。左利きは正しくないという不文律が、日本人の中に明らかに存在していたのです。
 ところが最近は、そうでもないようです。象徴的なのは、左利きのタレントをテレビで見る機会が増えたこと。例えば、テレビ東京で土曜日に放送されている「男子ごはん」のメインキャスター、TOKIOの国分太一氏、コマーシャルでは、味の素「ほんだし」の小栗旬氏、同「Cook Do 今日の大皿」の小池栄子氏、かつて西武鉄道のコマーシャルで、吉高由里子氏は旅館の夕食シーンで左手に箸を持っていました。因みに、元AKBの前田敦子氏は、丸美屋「のっけるふりかけ」のコマーシャルで、左利きを封印したそうです。グルメ番組のレポーターにも左利きのタレントが採用されていますし、料理雑誌もデザイン的に処理された構図では、箸が左から出ているものもよく見ます。
 私は、左利きをまったく否定していません。それはマナー違反ではないから。が正直、左手で箸を持つ姿に未だ違和感が拭えません。そのうち、慣れるのでしょうか。